相続した事故物件を売却したい トラブルなく売るために知っておくこと
相続した事故物件を売却したい。でも、売却は難しい―。基本的な知識があれば、価格をイメージするのに役立ちます。不動産業者に課せられた告知義務も踏まえて説明していきます。
相続した事故物件を売却したい。でも、売却は難しい―。基本的な知識があれば、価格をイメージするのに役立ちます。不動産業者に課せられた告知義務も踏まえて説明していきます。
目次
「事故物件」という言葉を見たり、聞いたりしたことがある人は多いのではないでしょうか。具体的にはどのような物件になるのかを整理しました。
「事故物件」とは、住むことを敬遠するような状態を言い、難しい言葉で「瑕疵(かし)」がある状態の物件を指します。多くの人が連想される「自殺や殺人事件に遭遇した物件」などが当たります。法的な定義はないのですが、不動産業界の一般的な定義では、次の4つに分類されます。
①心理的瑕疵
②物理的瑕疵
③法律的瑕疵
④環境的瑕疵
これらに該当する物件が「事故物件」として表現されます。
それぞれの瑕疵について詳しく説明していきましょう。
建物のある敷地や部屋の中で事故や事件などがあり、住む人にとって心理的に不快感があるような物件を言います。
具体的には、殺人事件や自殺などがあった物件です。また、事故や事件性が無い場合でも、人が亡くなっていれば該当します。つまり、人が亡くなっていれば心理的瑕疵に該当します。ただし、自然死や病死は基本的には心理的瑕疵には当てはまりません。しかしながら、発見が遅れて腐乱していた場合は該当します。
土地や建物の状態・構造に欠陥がある物件です。土地と建物に分けて説明します。
雨漏り、ひび割れ、シロアリの被害がある、アスベストが使われている、床が傾いているといった状態が該当します。目に見えるので、瑕疵の中でも比較的に建物の場合はわかりやすいと言えます。
建物とは違い、表面上、問題なくても、地中に問題が隠れている可能性はあります。例えば、土壌汚染、地盤が不安定、得体のしれない埋蔵物が埋まっている時などに該当します。
建物を建てる時には必ず守らなければならない法律に抵触している物件を指します。例えば、建築基準法や都市計画法や消防法などに適合していない場合です。あえて事故物件と紹介しましたが、一般的には、事故物件とは言わず、違反建築物件とか既存不適格建築物で表現されます。
物件そのものというよりは、その周辺に起因する環境要因による不具合に該当する物件を言います。
例えば、悪臭や騒音などが挙げられますが、具体的には「周辺の道路を暴走族が通る」「交通量が多くて振動と排気ガスがすごい」「そばにゴミ屋敷があって臭い」「反社会的団体の事務所がある」「火葬場がある」などが挙げられますが、判断が難しいものになります。というのも、環境条件の感じ方は人それぞれだからです。例えば、同じ振動を受けた場合でも気になる方とならない方がいるので、瑕疵になるかどうかも、感じ方で異なってきます。
以上のように、瑕疵の中でも「環境的瑕疵」の判断は非常に難しいものとなります。
瑕疵を大きく4つに分類して説明しましたが、法的定義がないので必ずしも明確に分類される訳ではありません。「心理的瑕疵」や「環境的瑕疵」のようにどちらに分類となるのかの判断が難しいケースもあります。いずれの瑕疵においても、最終的には住む方の心理状態によるものばかりになります。どの分類に該当するのかではなく、瑕疵があることに重点が置かれます。
「事故物件」と表現されるものの多くは、一般的には「心理的瑕疵」が多いのではないでしょうか。次に、このような「事故物件」は売却や賃貸が可能なのかを見ていきましょう。
不動産業者は物件の売却や賃貸にあたり、物件に関して調査する義務があり、知り得た事実を買主や借主に書面で伝えなければなりません。これを「告知義務」と言い、宅地建物取引業法に定められております。
この法律に基づく書面の一つに、「物件状況確認書(告知書)」があります。いわば「不動産の健康診断書」で、各項目をチェックして、記名押印して書面にします。この書面に告知義務のあることを記していない場合など、契約成立後に問題が発覚した場合は、契約解除であったり、加えて損害賠償請求の対象にもなりかねません。
「事故物件」と一言で言っても、内容は様々ですので、「心理的瑕疵」を中心に説明していきます。
すでに書きましたが、原則、自然死や病死は「事故物件」に該当しません。「心理的瑕疵」は事件などで人が亡くなることです。最近の出来事であれば(個人的感覚にもよりますが)、近隣の方も事実を承知しているでしょうが、時間が経過して何事もなかったように風化しているような時もあるでしょう。
では、告知義務が生じる期間はどうなっているのでしょうか?
告知義務期間に時効はないので、一般実務としての取り扱いとして説明します。自殺や他殺などによっても変わりますが、一般実務においては売買の場合は5~8年、賃貸の場合は2~4年を告知期間として扱っているようです。また、賃貸の場合は入居者が変われば告知義務はなくなると言われております。(東京地裁H19・8/10)
最終的には、住む方の心理状態に直面するものばかりなので、不動産の売却においては大きな影響は考えられます。事故物件の内容によっても価格は変動しますし、元々のその不動産の立地などによって、売りにくい物件であれば、プラスして価格が大きく値崩れします。価格がつかないことも考えられます。
とはいえ、買主の受け止め方や感受性により金額に差が出ることも事実です。
例えば、マンションの共用部分で事故死があった場合や室内での孤独死の場合、これを容認できる人とできない人に分かれますが、「その程度の内容でこの価格であれば」と受けとる方もいるでしょうし、「絶対にいや!」と考える人もいるでしょう。
法的定義が無いので、不動産業界での一般的な価格相場としては、孤独死の場合は10~20%、自殺の場合は20~30%、事件の場合は30~50%程度は通常相場より低くなるようです。
売却方法は不動産業者に直接売る「買取り」と不動産業者を介して買主に売る「仲介」の2種類があります。
「買取り」の場合は不動産業者が購入するので、事故物件の相場よりもさらに値引きされた金額になりやすく、手元に入る金額はかなり減少するので、「仲介」の選択の方が手元に残る金額は多くはなります。しかしながら、「仲介」は買主がいないと売却できませんので、確実性からすれば「買取り」になります。
今までの説明のように、「事故物件」の多くは建物に関しての事故や事件によるものです。その建物に住むにあたり、嫌悪感などが阻害要因になるので、更地にして売却する方法も考えられます。もちろん、告知義務を果たす必要はありますが、嫌悪感などは払拭される可能性はありますし、売却金額も上がる可能性はあります。
更地にしてすぐに売却する方法もありますが、周辺地域に住む方のイメージが払拭できないと、新しい買主が近隣付き合いが出来ない場合も考えられますので、駐車場やコインパーキングとして一定期間、賃貸する方法も有効です。
①環境がリセットされ、悪いイメージが払拭される。
②賃料収入が得られる。
③時間経過により事件が風化される。
④賃料を得ることが出来れば無理に売却する必要もない。
①建物の解体費用が発生する。(150万円~300万円程度)
②更地になるため、固定資産税・都市計画税が高くなる。
物件の売却は不動産業者に依頼することになります。「買取り」「仲介」問わずに、不動産業者のチラシやホームページなどには必ず、「*告知事項」「*訳あり物件」などの表記があり、通常物件の宣伝とは違っておりますので、見分けはつきます。
最後になりますが、
民法の改正により、「瑕疵担保責任」から「契約不適合責任」に変更になり、今まで以上に責任の所在が明確になりました。
一般的に告知期間が2~8年と説明しましたが、法的に告知義務期間には時効がないのが現状ですので、事故物件の場合は隠さずに明記するのが大切ではないでしょうか。
実際、不動産取引において取引対象の不動産で過去に死亡事故が発生した事実など、いわゆる心理的瑕疵をどのように取扱うかが課題となっています。
不動産仲介業者も実際にどの程度まで重要事項説明時に説明すべきか、明確な基準もなく、このこと自体が既存住宅の流通のハードルになっているとも言われています。
国土交通省も仲介業者である宅地建物取引業者や消費者団体、弁護士等による検討会を立ち上げ、不動産取引における心理的瑕疵に係る適切な告知、取扱いに係るガイドライン策定に向けた検討を進め始めています。
非公開で進められているので、未だに内容がわかりませんが、今後、どのような結論になるのか目が離せません。
ここまで、「事故物件」について説明してきました。買い取ってもらうには、ハードルが高いかもしれません。このため、そういった不動産に専門的に向き合っている会社に相談することから始めるのがいいでしょう。
(記事は2021年1月1日現在の情報に基づいています)
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