目次

  1. 1. コロナ禍のデジタル遺品整理術とは
  2. 2. できないことはできない、焦らずできることを
  3. 3. まずはリアルの遺品から手がかりを探す
  4. 4. カギは書き出してリストアップという「見える化」

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今年70歳になるという愛知県在住の女性・Kさんからは次のようなお便りをいただきました。

「今春、主人に先立たれました。かなり以前からパソコンやデジカメを趣味にしていて、書斎には3台のパソコン。あとは外付けハードディスクが大量に残されています。息子がお盆に整理してくれる予定でしたが、昨今のコロナ禍で延期になりそうです。もう相続手続きは済んでいますが、新たな金融資産などが出てきたらと不安です」

前回(家族が滞りなく引き継ぎできる、デジタル資産の「生前整理」の方法とは)は本人が元気なうちにできるデジタル資産対策を紹介しました。しかし残念ながら、何も準備されないまま本人が亡くなってしまい、遺族が途方に暮れるケースも多いのが現状です。

息子さんの手が借りられないとして、Kさんの不安を解消するにはどうしたらいいでしょうか。

デジタル遺品を怖く感じる大きな要因に、製品の中に入れないと中に何があるか分からない、「見えにくさ」があります。

パソコンやスマートフォンに何が残されているかは、まずはログインし、そのうえでそれぞれの機器の操作法に従って全容を把握するという手順を踏まなければなりません。Kさんの夫君のように複数の機器を残された場合は、この作業を何度か繰り返すことになるでしょう。しかも、インターネット上にしかない資産が残っている可能性もあります。それらをデジタルに不慣れな人が完璧にこなすのは、どうにも難しいものです。

ここはもう息子さんが帰省するまで諦めてしまいましょう。お葬式も終わっていますし、連絡先や遺影写真を急いで探す必要が見当たらなければ、割り切って後回しにしてしまって構わないです。下手にログインを試したり無計画にデータを移動したりすると、かえって難易度を上げてしまう危険があるので、現状維持が最善手といえます。

見えにくい遺品の見えにくい領域を頑張って探すより、見える範囲で重要そうなものを探すほうがはるかに効率的です。放置しておいて危険な遺品は、自ずと見えやすいところに浮上してくる傾向がありますから。

たとえば、把握できている預金口座の取引履歴をつぶさに追っていくうちに、不定期の振り込みや入金などからサブの銀行や証券の口座の存在が浮上するというのはよくある話です。電気ガス水道、ネット料金などの自動引き落としが揃わない場合も、サブ口座がある可能性が高いでしょう。

あとは、夫君の財布や重要書類入れ、亡くなった後に届いた郵送物などから資産の洗い出すこともできます。そうして見つかった金融機関がネット銀行やネット証券であっても、その金融機関に電話やメールで問い合わせば、普通の銀行や証券会社と同じように遺族対応してくれます。

また、有料課金サービスなどを契約していて、引き落とし先の凍結や停止によって支払いが滞ることも考えられます。この場合、一定期間の滞納により自動解約されることもあれば、解約したうえで滞納分の請求がなされることもあります。これも向こうからアプローチしてくれる、つまり見える場所に浮上してくれるわけです。

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このように、デジタルでないところで見えている部分にスポットを当てて、不明な箇所を潰していくのがよいでしょう。

デジタル遺品をリストアップする際は、とにかく箇条書きして、その頭に「必須」「できれば(対応)」「保留(不明)」などと重要度を書き込むと分かりやすいです。解決したら取り消し線を引き、新たな資産候補が浮上したら、下に書き加えて、重要度の見当をつける。その繰り返しが効率的です。

息子さんとの共同プロジェクトと捉え、たとえばコロナ禍が落ち着くまでの間は、ご自身のできる範囲で先行して進めておく。そんなスタンスで向き合えば、デジタル遺品もそこまで怖くはなくなるのではないでしょうか。デジタルであっても、本質的には従来の遺品と同じですから。

前回は、「デジタル資産を生前整理する方法」について書きました。今後もこちらのコラムで、デジタルの遺品や相続にまつわる疑問や不安にお応えしていきます。

(記事は2020年8月1日時点の情報に基づいています)

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