目次

  1. 1. 信託口口座の弱点は
  2. 2. 受託者の新規口座を「信託専用」に
  3. 3. 信託専用口座に求められる情報共有

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前回の記事「信託財産の管理方法① 受託者と委託者の口座は明確に区分を」では、信託金銭は、金融機関で「信託口口座」を作成し、管理するのが最善の策であると説明しました。理由は二つあります。

①:口座名義を見るだけで「信託金銭を預けている口座」「印鑑の届出を含め口座の管理をしているのが受託者」であることが明確であり、分別管理が徹底できる。

②:もし受託者が死亡や大病などで役目を果たせなくなっても、信託契約書で定めておいた予備的受託者がスムーズに口座を引き継げる。

しかし、現時点でメガバンクは「信託口口座」の対応がほぼできていないのが現状です。全国で「信託口口座」に対応できる金融機関は全体の1割に過ぎません。そこで今回は、「信託口口座」が作成できない場合の次善の策について説明します。

「信託口口座」を使わず、信託金銭を長期に安定的に分別管理をするにはどうすればいいでしょうか。実務的には、受託者となる子の個人名義で新規口座を一つか二つ作り、それを家族信託専用の口座として分別管理をするのが、次善の策と言えます。

実際の流れとしては、信託契約締結前に受託者の個人口座を新規で作成。信託契約書に、その口座番号を「信託専用口座」として記載します。そうすれば、口座名義は受託者個人ですが、委託者である親も納得・了承の上で、親の金銭をその口座に入れて管理する便宜上の対応ができます。

その場合、贈与税の課税を心配される方も多いでしょう。しかし、税務は実態課税のため、口座の名義人が誰かということより、そのお金が実質的に誰のもので、それを何に使っているか、という実態が問われます。お金の流れ・使途が明確であれば、税務上も法律上も問題は生じません(親の相続時に、孫名義の“名義預金”は親の遺産として相続税の課税対象に組み込まれます。それは、まさに税務が実態課税だからと言えます)。

受託者個人名義の「信託専用口座」にも、問題はあります。それは、受託者が死亡、あるいは交通事故や大病で受益者である親よりも先に倒れてしまった場合の対応です。このような場合、ATMで少額のお金を下ろすことや口座引き落としを続けることは可能ですが、大きなお金を下ろすことができなくなってしまいます。

「信託口口座」なら、信託契約書に定めた後継受託者にスムーズに財産管理を引き継げます。しかし、「信託専用口座」の場合、金融機関はあくまで受託者個人の財産が入っている口座としか認識していません。受託者個人の預金として処理されてしまうリスクが残ってしまいます。

現時点では「信託専用口座」のキャッシュカードの保管場所と暗証番号を、後継受託者と情報共有しておくことや、「信託専用口座」をインターネットバンク化して、IDとパスワードを後継受託者と情報共有する対応が求められます。

いずれ全国各地で「信託口口座」が作成可能な金融機関は、増えることが想定されます。「信託専用口座」の弱点を考えると、将来的には「信託口口座」の作成を前提に考えることをお勧めします。

そして「信託口口座」が無事作成できたら、その口座をメインにするべきです。「信託口口座」は信託財産の管理口座であることが明快です。「信託専用口座」のように信託契約書に口座番号まで記載しておく必要はないので、「信託口口座」の作成後に改めて契約の変更等を行うこともありません。

なお、外見上は「信託口口座」に見えても、実際は受託者の個人口座に“屋号”として「委託者 山田一郎 信託受託者」が付いているに過ぎないケースも多数あります。この口座では、必ずしも受託者の死亡時に相続預金にならず、次の受託者が口座をスムーズに引き継げるとは限りません。

本当の意味での「信託口口座」なのか、“屋号”扱いなのか、事前に金融機関に確認したいところです。

(記事は2020年3月1日時点の情報に基づいています)

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