目次

  1. 1. 一般的には「親」が亡くなるまで信託を続けるケースが多い
    1. 1-1. 高齢の父母がいる場合
    2. 1-2. 障害を持つきょうだいがいたら
  2. 2. 看取った後の「相続」までカバーできる信託契約も
  3. 3. 将来実現したい未来まで見据えて家族信託の設計をすべき

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親子間の契約でスタートした信託による財産管理は、いつまで続けるべきでしょうか?また別の言い方をすると、家族信託はいつ終わらせるべきでしょうか?
その答えは、信託を組む目的、親の保有財産の状況及び将来の収支予測、家族構成及びその関係性、資産承継の希望などにより変わってきます。つまり、決まったパターンはなく、そこに関わる専門家の力量によって家族信託の設計の品質が左右されるという問題があります。

信託法第163条で規定する通り、信託契約書の中では「信託の終了事由」や「信託契約の期間」等の条項を設け、契約時点で信託契約を終了するタイミングを決めておくのが一般的です。
何を信託財産とし、誰に財産管理を託すか、委託者兼当初受益者が亡くなった後は誰に財産をどのように遺すか等、信託契約の設計時に検討すべきことは多いですが、絶対に欠かせないのは、いつ信託を終わらせるかという“出口”のイメージです。

分かりやすいケースで説明すると、認知症になった高齢の父親資産凍結対策のために家族信託を活用する場合、あくまで老親の生存中の財産の管理・処分が目的です。そのため父親が亡くなった時点で、その役割を終えて信託契約を終了させるというのが一つの考え方です。この父親の生きている間の財産管理という“一代限り”の財産管理のために信託の仕組みを活用するのは最もシンプルな設計で、そのニーズも最も多いといえます。

さらに高齢の父親に加え高齢の母親もいる場合は、父親亡き後に残された母親の老後も磐石にするために信託による財産管理を継続することも多いです。そうすると、父親及び母親を看取るまで、信託契約を継続するという設計も効果的です。

また、息子娘の世代から見て、障害を持つきょうだいがいるケースでは、老親が亡くなっても信託契約を終了させずに、さらにサポートが必要なきょうだいが亡くなるまで信託を継続させることもあります。
このように、当初の受益者(親)または何世代か後の受益者(子や孫)の死去により信託が終了する設計を「死亡終了型」と呼んでいます。サポートが必要な人全員を看取るまで続くこの設計は、最も分かりやすいでしょう。

一方で、親の賃貸物件が信託財産で、親亡き後もその家賃収入を複数の子で平等に分けてほしいケースもあるでしょう。このような時は、親という特定の受益者が亡くなった後も契約を続け、元気な子や孫世代が受益者になった際に、タイミングを見計らって受託者と受益者の合意で信託を終わらせる必要があります。

今の例でいえば、
信託財産の賃貸物件を売却→換金→兄弟姉妹間で売却代金を分配
ここまでで、信託契約が役割を終えて終了するということが想定できます。

このような設計を「合意終了型(無期限型)」と呼んでいます。これは、受益者の急死等で図らずも信託契約が強制終了してしまうことを避け、信託契約の存続期間を完全にコントロールできるという柔軟さがメリットです。が、ちょっと高度な設計になりますので、関与する専門家の力量が試されます。

以上の「死亡終了型」と「合意終了型」の2つの設計パターンは、どちらが優れているというものではありません。大切なのは、「家族会議」で共有した親世代・子世代の希望・“想い”を踏まえ、ケースに合わせて家族全員が安心納得できる未来・実現したい未来を見据えた設計を心がけるということです。

前回のコラム「受託者なのに権限が書かれていない……注意すべきテンプレ契約書の見分け方②」では、家族信託を検討するときに留意すべき、契約書の見分け方について解説しています。

(記事は2020年2月1日時点の情報に基づいています)

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