目次

  1. 1. 相続放棄や限定承認とは
  2. 2. 熟慮期間は原則3カ月以内
  3. 3. 被災地域の熟慮期間は20年5月29日までに
  4. 4. 延長期限までに意思決定できない場合は?

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2019年10月の台風19号は、日本列島各地で住宅などに被害をもたらしました。これを受け、相続の手続きにも影響がおよんでいます。今回は、相続の際に判断すべき「相続放棄」や「限定承認」について、基本的な仕組みを解説するとともに、台風19号を受けて設けられた「熟慮期間の特例」について、元東京国税局国税専門官のライターが解説します。

亡くなった方(被相続人)の相続人は、被相続人が残した財産や債務を相続します。この時、財産よりも債務の方が多ければ、相続により借金などの負担を背負うことにもなりかねません。そうした場合に利用できるのが、民法に規定されている「相続放棄」と「限定承認」です。これらの制度を使うことで、被相続人から過度な借金を引き継ぐ事態を防ぐことができます。

相続放棄をすると、被相続人の財産と債務の一切は引き継がれません。一方、限定承認の場合は、被相続人の財産は相続しながらも、その財産の範囲内で債務を引き継ぐことができます。

たとえば、被相続人が遺した財産が3,000万円あり、債務が4,000万円あったとしましょう。この場合、相続放棄をすると、引き継ぐ財産も債務もゼロです。限定承認を選んだ場合は、3,000万円の財産と3,000万円の債務を相続することになります。

相続放棄や限定承認の手続き期限は、原則として「自己のために相続の開始があったことを知ったときから3カ月以内」と定められています。被相続人が亡くなり、自分が相続人となったことを知ったら、3カ月以内に家庭裁判所で相続放棄等の申述を行う必要があります。

この3カ月を「熟慮期間」と呼びますが、熟慮期間を過ぎると、相続放棄や限定承認を選択できなくなります。この場合、相続人は被相続人の財産と債務の一切を引き継ぐことになりますので、注意しましょう。

今回、19年10月の台風19号を受けて、特例措置(以下「熟慮期間の特例」)が設けられました。熟慮期間の特例は、熟慮期間の終期が19年10月10日以降の日となる場合に、その終期を20年5月29日まで延長するというものです。

たとえば19年9月1日に自己のための相続があったことを知ったのであれば、通常は19年12月1日に熟慮期間が終わりますが、この特例の条件に合致すれば20年5月29日まで延ばすことができます。

なお、熟慮期間の特例の対象となるのは、19年10月10日に、台風19号により災害救助法が適用された一定の地域に住所をもっていた相続人です。対象区域については、内閣府ホームページで確認してください。

また、対象区域に住民票を置いていなかった場合でも、生活の本拠が対象区域にあった場合は、熟慮期間の特例が認められる可能性があります。判断に迷う場合は家庭裁判所に相談をすると良いでしょう。

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熟慮期間の特例が終わる20年5月29日までに意思決定ができないと見込まれる場合は、家庭裁判所に対して熟慮期間の伸長を申し立てることができます。

熟慮期間の伸長を求める場合は、20年5月29日までに家庭裁判所で申し立てを行う必要があり、この日を過ぎてしまうと、相続放棄や限定承認はできません。この場合、被相続人の財産と債務を全て引き継ぐことになるので、手続きのスケジュールはしっかり頭に入れておきましょう。

(記事は2019年12月1日時点の情報に基づいています)

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