災害に遭ったら相続税や相続財産はどうなる?期限延長や減免を解説
2019年の台風19号の被害に遭われた場合の期限延長措置や減免措置について、元東京国税局国税専門官のライターが解説します。
2019年の台風19号の被害に遭われた場合の期限延長措置や減免措置について、元東京国税局国税専門官のライターが解説します。
「相続会議」の税理士検索サービスで
相続税の申告と納付は、原則として被相続人の死亡を知った日から10カ月以内と定められています。ただし、災害により被災した場合は期限が延長され、相続財産が被害を受けた場合は税額の減免措置も用意されています。
相続税の申告と納付の期限は、一般的には被相続人が亡くなった日を起点として10カ月後に定められています。この日までに相続財産の確認や遺産分割協議などを行い、相続税の申告と納税を行う必要があります。
申告や納付の期限に遅れた場合、本来の相続税額に加え、加算税や延滞税が課せられる可能性があるため、必ず期限内に手続きを終えるようにしましょう。
「相続税の手続きは10カ月以内」が原則ですが、災害で被害を受けた場合は、相続財産の確認などに時間がかかり、期限内の申告や納税が困難になることがあります。そうした場合に覚えておきたいのが、申告・納付期限の延長措置です。
たとえば、2019年10月に起きた台風19号を受けて、一定の条件に該当した場合は相続税を含む国税の申告・納付期限が延長されています。今回の延長措置の対象となるのは、2019年10月12日以降に期限が到来する国税ですから、相続税の場合、2018年12月12日以降に相続等により財産を取得した人が、延長措置の対象となる可能性があります。
申告期限等の延長措置の対象となるのは、台風で大きな被害を受けた岩手、宮城、福島、茨城、栃木、長野の各県にある指定地域に納税地がある個人または法人です。相続税の場合、申告・納税をする相続人自身ではなく、亡くなった被相続人の住所地が納税地となります。指定地域については、詳しくは国税庁のホームページで確認してください。
また、指定地域に納税地がない場合でも、台風19号で被災したのであれば、所轄の税務署長に個別に申請することで、申告・納付等の期限の延長を受けられます。
今回の期限延長措置により、申告期限等が具体的にいつまで延長されるのかは確定していません。今後被災者の状況に配慮して検討が進められる予定になっているため、国税庁ホームページなどで確認するようにしましょう。
申告期限等の延長措置に加え、相続した財産が災害により被害を受けた場合は、「災害減免措置」により相続税または贈与税(以下「相続税等」)が減免される可能性があります。
たとえば相続税の申告期限前に相続財産に被害を受けた場合、相続財産の価額から被害を受けた部分の価額を差し引いた上で、相続税を計算できます。また、相続税の申告期限後に被害を受けた場合、いったん申告していたとしても、被害状況に応じて相続税の納付が免除されます。災害減免措置の手続きは次の通りです。
申告・納付期限の延長措置を受ける場合、所轄の税務署に申請します。ただし、この申請自体には期限が設けられていないため、被災された方は、状況が落ち着いてから相談しましょう。
申告期限前に被害を受けた場合と、申告期限後に被害を受けた場合で、それぞれ以下のとおり手続きが違います。不明点や詳細については、最寄りの税務署に相談してください。 住所地の所轄税務署以外でも、相談は受け付けています。
《申告期限前に被害を受けた場合》
「災害減免法第6条の規定による相続税・贈与税の財産の価額の計算明細書」を記載し、相続税等の申告書等に添付して税務署に提出。
《申告期限後に被害を受けた場合》
「災害減免法第4条の規定による相続税・贈与税の免除承認申請書」を記載し、災害のやんだ日から2カ月以内に税務署に提出。
このように、被災された場合は申告・納付期限の延長や、災害減免措置を受けることができますが、所轄税務署での手続きが必要です。これらの措置の対象に該当するなら、一度税務署に相談すると良いでしょう。
(記事は2019年12月1日時点の情報に基づいています)