1. 親子共有名義における7つのデメリット
親子共有名義の不動産は、不動産の売却や建て替え、固定資産税や維持費などの費用負担、相続、住宅ローンなど、将来的にあらゆる面でトラブルに発展するリスクを抱えています。
親子共有名義での購入を検討している場合もすでに所有している場合も、まずは親子共有名義ならではのデメリットやリスクを正確に把握しておくことが大切です。
1-1. 共有名義不動産は自由に扱えない
共有名義不動産は、単独名義のように自分一人の判断で自由に活用したり処分したりすることはできません。不動産に対する行為の内容に応じて、原則として他の共有者の同意が必要になります。
具体的には、不動産全体を売却したり建て替えたりする「変更行為」には、原則として共有者全員の同意が必要です(民法251条)。そのため、1人でも反対する人がいると手続きを進めることはできません。
なお、建物を短期間貸し出すなどの「管理行為」であれば各共有者の持分価格の過半数の同意で可能ですが、一般的な賃貸借契約を結んで第三者に貸し出す場合は「変更行為」にあたり、共有者全員の同意が必要になります(民法251条、252条4項)。
このように、共有名義不動産を運用・処分するためには事前に共有者間で意思統一を図る必要があり、意見の対立や連絡の取れない共有者がいる場合は、希望通りに不動産を扱えないリスクが伴います。
なお、音信不通で意思確認ができない共有者がいる場合は、地方裁判所の決定を得ることで、不明者以外の同意で不動産の売却等を行ったり、不明者の持分を取得・譲渡したりすることが可能になりました(民法251条2項等)。とはいえ、裁判所を通す手間や時間、費用がかかるため、大きなハードルであることには変わりありません。
1-2. 親の判断能力が低下(認知症など)すると不動産の手続きが進めにくくなる
前述のとおり、共有名義不動産を処分・活用しようとする場合、原則として共有者の同意が必要です。
しかし、認知症などで判断能力が不十分な共有者がいる場合、その共有者から同意を得られていたとしても、その同意は法律上無効となります。特に変更行為は共有者全員の同意が必要となるため、親が認知症を患って判断能力が低下してしまうと、そのままでは変更行為を行うのは難しくなります。
このような状況で手続きを進めるためには、家庭裁判所に判断能力が低下した親の「成年後見人」を選任してもらう必要があります。
成年後見人を選任してもらえば、その成年後見人が判断能力の低下した親に代わって意思表示や手続きが行えるようになります。ただし、成年後見人を利用して居住用の不動産を売却・活用する際は、家庭裁判所の許可が必要です。
「親の介護費用の捻出」といった正当な理由がなければ、家庭裁判所の許可が下りないケースもあるため、希望通りに手続きが進められるとは限りません。
1-3. 相続によって共有者が増え、権利関係が複雑になりやすい
相続によって共有者が増え、権利関係が複雑になりやすいことを示した図解。始めは親と長男の1/2ずつだったが、相続が繰り返され、共有関係が複雑になっている
亡くなった共有者の共有持分は、自動的に他の共有者に引き継がれるわけではありません。共有持分は現金や預貯金などと同様にプラスの相続財産として扱われるため、相続人が複数いる場合は、その共有持分についても相続の対象となります。
たとえば、子どもが複数いる家庭の場合、亡くなった親の共有持分は元々共有者だった子どもだけでなく、その兄弟姉妹にも相続する権利があります。
遺産分割協議の結果によっては、亡くなった親の共有持分を複数人で共有することになるため、結果として共有者がさらに増えてしまうことがあります。
このような状態のまま相続が何代にもわたって繰り返されていくと、共有者の数が雪だるま式に膨れ上がり、共有者同士の関係が次第に薄れていくケースも少なくありません。すると、売却や建て替えなどを行う際に必要な同意を得るのがさらに困難になり、最終的に不動産を有効活用できず維持管理費だけを垂れ流し続けるという深刻な事態を招くリスクが高くなります。
1-4. 固定資産税や修繕費の負担割合で対立しやすい
共有不動産の固定資産税については共有者全員に納税義務があるため、それぞれの負担割合については持分割合を基準に話し合われることが一般的です。
しかし、実際には「家に住んでいる人が全額負担すべき」「収入の多い方が多めに負担すべき」といった個々の感情や都合が優先されやすく、これが対立の引き金になるケースも少なくありません。
特に親子間では、その関係性の近さゆえに「親子なんだから少しくらい融通が利くだろう」「どうせ親が払ってくれるだろう」といった甘えや期待が生じやすい傾向にあります。
費用負担のルールも曖昧なまま放置してしまいがちなため、かえってトラブルが深刻化しやすいという側面があります。負担割合で対立してしまうと、それがきっかけで親子関係にも亀裂が生じ、今後の生活設計や相続などにも悪影響を及ぼすリスクがあります。
1-5. ローン返済中に親が亡くなると子の返済負担が増える
団体信用生命保険の加入の有無による違いを示した図解。もし加入していない場合は、親の死亡によって本来親が支払う予定だった返済分が子どもにそのまま引き継がれる
親子で住宅ローンを組んで共有名義の不動産を購入した場合、ローン返済中に親が亡くなると子どもの返済負担が増えるリスクもあります。契約により異なりますが、親子で組む住宅ローンは、子どもが親の連帯保証人や連帯債務者となるのが一般的です。
連帯保証人や連帯債務者は、契約者が病気や死亡などによって返済できなくなった場合、契約者の代わりに残債を返済する義務を負わなければなりません。
その際にもし、住宅ローンの契約時に親が団体信用生命保険に加入していれば、親が亡くなっても子どもは親の返済義務を負わずに済みます。しかし、親子で組む住宅ローンの場合、親の契約時の年齢やローンの契約形態によっては、親が団体信用生命保険に加入できないケースもあります。
親が団体信用生命保険に加入していなければ、親の死亡によって本来親が支払う予定だった返済分が子どもにそのまま引き継がれます。そのため、子どもの返済負担が増大してしまう点には注意が必要です。
特に子どもの収入が少ない場合や子ども自身も主債務者としてローンを返済している場合は、親の返済分が重くのしかかり、生活が破綻してしまうリスクが高まります。
1-6. 結婚・離婚など家族構成の変化でトラブルになりやすい
親子共有名義の不動産は、結婚や離婚などによる家族構成の変化によってトラブルになりやすいデメリットもあります。たとえば、子どもが結婚して家族ができた場合、親子共有名義のままでは将来的に以下のような事態を招くリスクがあります。
- 子どもの配偶者の意向が加わることで、親子間で不動産の管理や処分を巡る意見が一致しにくくなる
- 結婚を機に家から出ていった子どもと、家に住み続けている親との間で、費用負担の不公平感が生じ支払いを巡るトラブルに発展する
- 子どもが離婚する際、子どもの持分が財産分与の対象となり、子どもの元配偶者に持分が移転してしまう
- 子どもが親よりも先に亡くなり、子どもの共有持分を配偶者が相続すると、親は子どもの配偶者と共有関係になる
このように、家族構成の変化によって親子以外の第三者が関わるようになると、不動産の管理や処分を巡る意見の対立や、費用負担を巡るトラブルが発生しやすくなります。
また、持分の売却や相続によって権利関係が複雑化するなど、共有名義特有の問題に発展するリスクも高まります。
これまでは親子でトラブルなく円満に過ごせていたとしても、それがこれからもずっと続くとは限りません。親子共有名義で不動産を購入する際は、現在の状況だけでなく、将来の計画やリスクも視野に入れたうえで慎重に判断することが大切です。
1-7. 持分割合と実際の負担割合が異なると贈与税が発生する
親子で共有名義の不動産を購入した際、登記簿上の持分割合と実際に負担した購入資金の割合が異なると、高額な贈与税が発生するリスクがあります。
たとえば、5000万円の不動産を購入する際、親が3000万円、子どもが2000万円を出資したにもかかわらず、持分割合はそれぞれ2分の1で登記したとします。
この場合、親から子どもへ500万円分の持分の贈与があったとみなされ、贈与を受けた子どもに贈与税が課される可能性があります。
不動産を取得したことで資産が増えたように見えても、現金で納付する贈与税の負担が生じるため、かえって家計の負担となるおそれがあります。手元に十分な預貯金がない場合は、借入れや資産の売却を検討せざるを得なくなるケースもあります。
そのため、親子共有名義で不動産を取得する際は、実際の出資割合に応じて持分を設定し、思わぬ税負担が発生しないよう注意することが大切です。
2. デメリットだけではない?親子共有名義のメリット
親子共有名義には多くのデメリットがありますが、住宅ローンを組んで不動産を購入する場合は、親子共有名義にすることで金銭面・税制面での大きな恩恵を受けられるというメリットもあります。
2-1. 住宅ローンの借入額を増やせる
一般的な住宅ローンの借入額は、年収の5倍から7倍程度が目安とされています。一方で親子共有名義の住宅ローンであれば、親子双方の年収を合算して審査を受けられます。
単独名義よりも年収が増える分、借入額も大幅に引き上げられるでしょう。単独名義では購入できないような高額な不動産も、親子共有名義にすれば購入を実現できる可能性が高まります。
2-2. 親子リレーローンなら返済期間を延ばしやすい
親子リレーローンとは、契約者とその子どもの2世代にわたってリレー形式で返済する仕組みの住宅ローンのことです。
多くの金融機関では住宅ローンの完済時の年齢上限を80歳未満と定めているため、親が単独で住宅ローンを組むと返済期間が短くなってしまいがちです。
しかし、親子リレーローンでは契約者の子どもの年齢を基準として返済期間が決まるため、親が高齢であっても35年ローンなどの長期ローンを組みやすくなります。
返済期間を延ばすことで毎月の返済額も抑えられるため、生活にゆとりを持たせながら無理なく返済を続けやすくなります。
2-3. 親子それぞれ住宅ローン控除を受けられる場合がある
親子がそれぞれ個別にローンを組む「親子ペアローン」や、1つのローンに対して親子双方が連帯債務を負う「連帯債務型の親子リレーローン」を利用すれば、親子それぞれが住宅ローン控除を受けられる可能性があります。
住宅ローン控除とは、年末時点のローン残高に応じて所得税や住民税が軽減される制度のことで、住宅ローンを実際に返済している債務者(主債務者・連帯債務者)を対象としています。
親子のどちらか一方が住宅ローンを単独で組んだ場合は、主債務者が1人しかいないため、住宅ローン控除も1人分しか適用できません。
しかし、親子ペアローンや連帯債務型の親子リレーローンを組んでいる場合は、親子共に債務者となるため、住宅ローン控除も双方が適用できる可能性があります。ただし、住宅ローン控除を受けるには、対象となる住宅に自ら居住していることが条件です。
たとえば、親と同居するために住宅を購入したものの、子どもが転勤などを理由に別の住居で生活している場合は、子どもがローンを返済していても住宅ローン控除を受けられない可能性があります。
そのため、住宅ローン控除の適用を見込んで親子共有名義を検討する際は、居住要件を含む各種適用要件を事前に確認しておくことが大切です。
2-4. 二世帯住宅などでは費用負担を明確にしやすい
共有名義不動産にかかる固定資産税や水道光熱費、修繕費などは、各共有者が持分割合に応じて負担するのが原則ですが、実際の負担割合は当事者間で自由に決められます。
しかし、親子間で費用の負担割合を巡って意見が対立したり、一方的な都合や感情的な理由で支払いを拒否されたりと、費用負担を巡るトラブルに発展するケースは少なくありません。
その点、二世帯住宅では居住空間や水道・電気・ガスメーターなどが分離・独立しているケースが多いです。そのため、それぞれの世帯の実際の消費量や占有面積などの客観的な数値を可視化できます。
これに基づき、「自分の世帯で発生した費用は自分で支払う」というルールを決めれば、不公平感が生まれずお互いに納得しやすいため、費用負担を巡るトラブルのリスクを抑えられます。
3. 親子共有名義に向いているケース
親子共有名義は将来的なトラブルの種を多く抱えているため、「親子だから大丈夫だろう」と安易に選択するのは避けるべきです。
ただし、家族構成や将来設計によっては、親子共有名義のリスクを最小限に抑えつつ、経済的なメリットを最大化できるケースもあります。
親子共有名義が向いているケースとしては、主に以下の4つが挙げられます。
- 二世帯住宅として長期間利用する予定があるケース
- 将来も確実に同居を続けるケース
- 共有者となる子どもが一人っ子で、他に兄弟姉妹がいないケース
- 将来的な売却や相続の方針について家族間で合意ができているケース
将来も確実に同居を続けるケースでは、親子共に「その家に住む」という強い意思があるということです。そのため、親子間で不動産の管理や処分の方針を巡って意見が対立したり、住宅ローンの返済や維持管理費の負担を巡って揉めたりするリスクが低くなります。
また「住宅ローンの借入額を増やせる」「親子それぞれ住宅ローン控除を受けられる」といったメリットも活かせるでしょう。
共有者となる子どもが一人っ子であるケースでは、親に配偶者がおらず、遺言などによる特別な指定がない場合、親の共有持分をその子どもが相続することになります。
親子共有名義で不動産を購入しても、将来的には子どもの単独名義になることが確定しているため、相続後にトラブルが起きる可能性は低いでしょう。相続後は子どもが不動産を自分の判断一つで自由に活用・処分できるようになります。
また、将来的な売却や相続の方針について家族間で合意ができているケースでは、不動産に誰が住み続けるのか、売却する場合はどうするのか、相続発生時は誰が取得するのかといった将来の方向性が明確になっています。
そのため、いざ売却や相続が必要になった際も親子間や親族間で意見が対立しにくく、共有名義によるトラブルのリスクを抑えられます。また、事前に方針を共有しておくことで、遺言書の作成や家族信託の活用など、将来に向けた対策も計画的に進めやすくなるでしょう。
このように、将来設計や相続後の状況が明確であれば、親子共有名義ならではのリスクを最小限に抑えつつ、メリットを最大化できるため、親子共有名義での購入も有力な選択肢となります。
4. 親子共有名義を避けるべきケース
親子共有名義を避けるべきケースとしては、主に以下の4つが挙げられます。
- 共有者となる子どもに兄弟姉妹がいるケース
- 将来的に共有者となる子どもが転勤・独立する可能性があるケース
- 親子間で費用負担や将来の方針について十分に話し合えていないケース
- 親が高齢で認知症リスクが高いケース
共有者となる子どもに兄弟姉妹がいるケースでは、親が亡くなって相続が発生した際、遺産分割協議がまとまらなければその兄弟姉妹も新たな共有者となります。
もしそうなった場合、不動産の管理や処分の方向性を巡る意見の対立や、維持管理費の負担を巡るトラブルが新たに勃発し、これまでの平穏な生活が脅かされてしまうリスクがあります。
将来的に共有者となる子どもが転勤・独立する可能性があるケースでは、家を出て行った子どもと家に住み続ける親との間で不動産の管理や処分の方針を巡って意見が対立するリスクがあります。
特に、住宅ローンや維持管理費の負担割合を巡ってトラブルに発展するリスクが高いです。また、結婚などをきっかけに独立した子どもが新たにマイホームを購入しようと思った際、親子共有名義で組んだ住宅ローンが足かせとなり、新規で住宅ローンを組むのが困難になります。
親子間で費用負担や将来の方針について十分に話し合えていないケースでは、固定資産税や修繕費を誰が負担するのか、将来的に売却するのか住み続けるのかといった重要な事項が曖昧なままになりがちです。
現在は問題なくても、生活環境や経済状況が変化した際に意見が対立し、親子関係の悪化や共有名義を巡るトラブルに発展する可能性があります。
さらに、親が高齢で認知症リスクが高いケースでは、将来的に親の判断能力が低下することで、不動産の売却や建て替えなどの手続きを進めにくくなる可能性があります。
成年後見制度などを利用することで対応できる場合もありますが、手続きが複雑化し、希望どおりに不動産を活用できなくなるリスクもあるため注意が必要です。
このように、ライフスタイルや相続の状況が明確ではない場合は、たとえ現時点では特に問題がなくても、後に自身の首を絞める結果になりかねないため、親子共有名義はできるだけ避けるべきです。
5. 親子共有名義を実現する「2つの住宅ローン」の違い
親子共有名義で不動産を購入する際の住宅ローンとしては、「親子ペアローン」「親子リレーローン」の2種類があります。
どちらも親子の収入を合算して借入ができる点は共通していますが、契約形態や返済方法など異なる点もいくつかあります。それぞれの特徴やメリット、デメリットを理解したうえで、親子の経済状況や年齢に適した住宅ローンを選択することが大切です。
5-1. 親子ペアローン(親子それぞれがローンを組む)
親子ペアローンとは、親子がそれぞれ個別にローンを組み、共同で不動産の購入資金を借り入れる形式です。契約形態は、親子がそれぞれ主債務者となり、お互いに相手の連帯保証人となるのが一般的です。
親子ペアローンでは、親子がそれぞれ借入限度額まで融資を受けられるため、1人でローンを組むよりも総借入額を大幅に引き上げられます。
また、1つの不動産に対してローン契約が2本あるため、親子双方が住宅ローン控除や団体信用生命保険の対象となる可能性があるのもメリットです。
一方で親子ペアローンは、親子がそれぞれ年収や年齢、借り入れ状況などに基づいて個別に審査を受けるため、親子共に安定した収入が求められます。親が高齢の場合、年齢制限から逆算して返済期間が短くなってしまうため、長期ローンを組むのは困難です。
また、返済も2人同時に進めていく形となるため、どちらか一方が返済不能な状況に陥った場合、もう一方は1人の収入で2人分のローンを同時に返済しなければなりません。返済負担が大幅に増えるため、不測の事態に陥った際に家計や返済計画が一気に崩れてしまうリスクがあります。
5-2. 親子リレーローン(親から子へ返済を引き継ぐ)
親子リレーローンとは、親子で1つのローンを組んで購入資金を借り入れ、親から子の2世代にわたって返済していく形式です。最初は親が主債務者として返済を行い、将来的には子どもが返済義務を引き継ぐ仕組みになっています。
契約形態は親が主債務者、子どもが連帯債務者または連帯保証人となるのが一般的です。親子ペアローンと同様に親子の収入を合算できるため、単独でローンを組むよりも高額なローンを組めます。
また、親子リレーローンでは主債務者の親ではなく、後継者である子どもの年齢を基準として返済期間が決まります。そのため、親が高齢であっても長期ローンを組みやすい点もメリットです。
しかし、親が高齢で返済できる期間が短くなると、子どもの返済期間が長くなり、子どもの将来のライフプランに悪影響を及ぼす可能性があります。また、団体信用生命保険の加入対象者は金融機関や商品によって異なります。
もし、親が団体信用生命保険に加入できなかった場合、親が死亡しても残債は一切免除されないため、子どもは残債の全額を返済する義務を負います。
6. 親子共有名義でトラブルを防ぐ6つの対策
親子共有名義での購入を希望するのであれば、将来的なトラブルを未然に防ぐためにも、共有名義のデメリットを理解した上で適切な対策を講じておくことが大切です。ここからは、親子共有名義でのトラブルを防ぐ具体的な対策を6つご紹介します。
6-1. 持分割合と費用負担割合を一致させておく
親子で不動産を購入する際は、登記簿に記載する持分割合と購入費用の負担割合を一致させておきましょう。たとえば、親が3000万円、子どもが2000万円を出資して5000万円の不動産を購入した場合、持分割合も親は5分の3、子どもは5分の2で登記します。
こうすることで、親子間のみなし贈与による贈与税の課税リスクを回避できます。また、持分割合と実際の負担割合を一致させることは、不動産の活用・処分の意思決定や維持管理費の負担、売却代金の分配などを巡るトラブルを未然に防ぐことにもつながります。
たとえば、親が購入資金を多めに出したにもかかわらず、持分割合は2分の1ずつで登記している場合を考えてみましょう。
この状態で家を売却して現金を分配すると、持分割合に応じて売却代金が分配されるため、親が本来受け取れるはずだった金額よりも少なくなってしまいます。その結果、親が一方的に不利益を被ることになりかねません。
持分割合と実際の負担割合を一致させておけば、実際の負担割合に応じて公平に分配できるため、スムーズかつ円満に手続きを進めやすくなります。
6-2. 将来の売却・住み替え方針を事前に決めておく
不動産を親子共有名義にする場合は、将来の売却や住み替えなどの方針について、親子間で事前に取り決めておくことが大切です。
たとえば、以下のようなルールを取り決めておけば、生活環境や家族構成などの変化によって売却や住み替えなどが必要になった際、意見の対立を防ぎつつ、手続きをスムーズに進めやすくなります。
- 親が老人ホームに入居する場合は、家全体を売却する
- 子どもが結婚や転勤で家を出ていく場合は、親が固定資産税や維持管理費を全額負担する
- 築年数が〇年を超えたら、大規模修繕や建て替えを検討する
- 親が〇歳を超えたら、子どもの単独名義に変更する
事前に取り決めた合意内容は、後で「言った」「言わない」のトラブルに発展しないよう、書面として残しておきましょう。
6-3. 遺言書を作成し、共有者である子どもに不動産を引き継ぐ
遺産相続では、原則として遺言書の内容が優先されます。そのため、「親子共有名義の不動産は共有者である子どもが相続する」といった内容の遺言書を作成しておけば、不動産を誰が引き継ぐのかを明確にできます。
遺産分割協議を巡るトラブルのリスクを軽減できるほか、共有者である子どもも不動産を円滑に引き継ぎやすくなるでしょう。
ただし、共有者の子どもが親子共有名義の不動産を相続したことで、他の兄弟姉妹の民法で認められた最低限の取り分である遺留分が侵害された場合、その兄弟姉妹から遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。
そのようなトラブルを回避するためにも、遺言書には「長男が不動産を単独で相続する代わりに、次男には預貯金から代償金として〇〇円を支払う」といったように、他の兄弟姉妹の遺留分にも配慮した具体的な解決策を記載しておくことが重要です。
また、遺言書は法的に有効なものを作成しなければなりません。自力で作成する自筆証書遺言は、内容の不備やミスによって遺言が無効となってしまうリスクが高いため、弁護士や司法書士と連携して作成するか、公証役場で公正証書遺言を作成してもらうのが賢明です。
6-4. 家族信託や任意後見制度の活用を検討する
親が高齢の場合は、認知症による資産凍結のリスクに備え、家族信託や任意後見制度の活用も検討してみましょう。家族信託とは、財産を持つ人(委託者)が信頼できる家族など(受託者)に財産の管理や処分を任せる仕組みです。
家族信託を利用すれば、親が認知症などで判断能力が低下したとしても、親の財産管理や処分を受託者である子どもが代わりに行えるようになります。
共有名義不動産全体の売却やリフォーム、賃貸などについても、信託契約の範囲内であれば、子どもの判断で柔軟に進められるようになります。
一方で任意後見制度は、判断能力が十分にあるうちに将来後見人になる人や支援内容をあらかじめ指定できる制度です。任意後見制度を利用すれば、共有者である子どもを後見人として指定できます。
そのため、親が認知症などで判断能力が低下したとしても、任意後見契約の内容に基づき、後見人である子どもが本人を代理して財産管理や契約手続きを行えるようになります。
ただし、不動産全体の売却や親子間の持分売買など、被後見人(親)との利益が相反する行為は代理できないため、特別代理人の選任が必要となります。また、家族信託や任意後見制度は、いずれも親の判断能力が十分なうちでなければ利用できません。
認知症などで判断能力が低下してからでは手遅れなので、早めに対策しておくことが重要です。
6-5. 固定資産税や修繕費の負担ルールを書面化する
固定資産税や修繕費の負担割合を巡るトラブルを回避するためにも、費用負担のルールについて親子でしっかりと話し合い、合意内容を書面として残しておくことが大切です。
お互いに納得したうえでルールを書面化しておけば、口約束による「言った」「言わない」の水掛け論や感情的な対立のリスクを抑えられます。そのため、親子関係を円満に保ちながら共有名義を続けやすくなります。
共有名義不動産の税金や諸費用は持分割合に応じて負担するのが原則ですが、共有者間で柔軟に決められます。
負担ルールを決める際は、「親が定年退職するまでは親が7割・子が3割負担する」「一方が病気などで働けなくなった場合は、もう一方が全額負担する」といったように、将来のライフスタイルの変化や不測の事態を想定し、誰がどのくらいの割合で負担するのかを具体的に落とし込んでいくことが重要です。
6-6. 親子間で定期的に資産状況を確認する
資産状況を把握せず、親子共有名義のまま放置すると、将来的に思わぬトラブルに発展するおそれがあります。
たとえば、親が認知症になり多額の介護費用が必要になった際、「家を売却できない」「親の口座から現金を引き出せない」といった深刻な事態を招く可能性があります。
一方で、資産状況を把握しておけば、将来の介護や相続に備えて早めに対策を講じられます。「家を売却する」「持分売買や生前贈与によって子どもの単独名義に変更する」「家族信託を設定する」などの選択肢を検討しやすくなり、将来のトラブル防止にもつながるでしょう。
7. 【すでに共有状態の方へ】親子共有名義を解消する6つの方法
すでに親子共有名義の不動産を所有している方の中には、「相続が発生する前に共有状態を解消したい」と考えている方もいるでしょう。
共有状態を解消する方法としては、主に以下の6つがあります。
- 親子間の持分売買
- 生前贈与
- 不動産全体の売却
- 共有持分の売却
- 共有持分の放棄
- 共有物分割請求
それぞれの特徴やメリット・デメリットを理解し、自分の状況に適した方法で共有状態の解消を図りましょう。
なお、住宅ローンが残っている状態で、金融機関の承諾を得ずに持分の売買や生前贈与、持分放棄などによる名義変更を行うと、ローン契約の内容によっては契約違反とみなされる可能性があります。
そのため、住宅ローン返済中に共有状態の解消を検討する際は、事前に金融機関へ相談しておきましょう。
7-1. 親子間で持分売買を行い単独名義にする
親子間で持分売買を行い、どちらか一方がすべての持分を買い取れば、親子共有名義から単独名義に変更できます。この方法は、「家を残したい側」と「家を手放したい側」で意見が対立している場合に有効です。
共有持分を買い取る側は単独名義で自由に不動産を活用・処分できるようになり、売却する側も共有持分に応じた現金を受け取れるため、お互いに納得のいく形で共有名義を解消しやすいというメリットがあります。
ただし、この方法を実現するためには、買取側に共有持分を市場価格で買い取れるだけの資金があることが前提です。相場よりも著しく低い価格で売買すると、相場との差額が贈与とみなされ、贈与税が発生するリスクがあります。
持分の売買では、当事者同士のトラブルや税負担のリスクが伴うため、たとえ親子間であっても、弁護士や司法書士などの専門家に相談しながら手続きを進めていくのが望ましいです。
7-2. 相続時精算課税制度や暦年贈与を活用して生前贈与する
親子共有名義を子どもの単独名義に変更したい場合は、親の共有持分を子どもに生前贈与するという選択肢もあります。生前贈与する際、相続時精算課税制度や暦年贈与を活用すれば、贈与税の負担を抑えつつ、権利関係の整理や相続税対策が行えます。
相続時精算課税制度とは、60歳以上の父母や祖父母から、18歳以上の子・孫へ生前贈与をする際に利用できる制度です。
この制度を適用すれば、それ以降に同じ贈与者から受けた贈与のうち、累計2500万円までは贈与税が非課税となるため、親の共有持分をまとめて贈与したい場合に有効な節税対策となります。
ただし、累計2500万円の特別控除を受けた贈与財産は、贈与者が死亡した際に相続財産に加算し、相続税として清算しなければなりません。そのため、親が亡くなった後に税負担が発生する可能性があります。
一方で暦年贈与とは、年間110万円の基礎控除を活用して毎年少しずつ贈与する方法です。贈与のたびに登記費用はかかってしまうものの、基礎控除の範囲内であれば、まとまった共有持分も贈与税をかけずに少しずつ生前贈与できます。
ただし、毎年同額の贈与を長期間にわたって続けている場合や、当初から一定額を分割して贈与する約束があったと認められる場合には、「定期贈与」とみなされる可能性があります。
定期贈与とは、一定額の財産を将来にわたって贈与する契約のことです。このような契約に基づく贈与と判断された場合には、税務上「定期金に関する権利の贈与」として扱われ、一括で贈与を受けたものとして贈与税が計算される可能性があります。
たとえば、親の共有持分(評価額1000万円相当)について、贈与税の基礎控除の範囲内に収まるよう、毎年少しずつ持分移転登記を行いながら暦年贈与した場合を考えてみましょう。
この場合でも、当初から共有持分全体を贈与する予定だったと税務署に判断されると、「定期贈与」とみなされる可能性があります。定期贈与と判断された場合は、共有持分全体を一括で贈与したものとして贈与税が計算されるため、想定していなかった税負担が発生するおそれがあります。
このようなリスクを避けるためには、贈与の都度、贈与契約書を作成するなど、毎年独立した贈与であることを客観的に説明できるようにしておくことが重要です。
7-3. 不動産全体を売却して共有状態を解消する
親子共に不動産が不要だと考えているなら、不動産全体を売却して共有状態を解消する方法があります。不動産全体を売却すれば、買い手は単独名義の不動産として購入できるため、一般の買い手も付きやすく、市場価格に近い価格での売却も期待できるのがメリットです。
売却が完了すれば、共有者全員が共有名義から抜けられるうえに、まとまった現金が手に入ります。ただし、不動産全体を売却するには、共有者全員の同意が必要です。
親が認知症などで判断能力が低下している場合は、家庭裁判所に成年後見人の選任を申し立てる必要があります。さらに、売却する不動産が親の居住用不動産(自宅など)に該当する場合は、家庭裁判所から売却の許可を得たうえで手続きを進めなければなりません。
7-4. 自分の共有持分のみを第三者や買取業者へ売却する
親子間の持分売買や生前贈与、不動産全体の売却が難しい場合は、自分の共有持分のみを売却することを検討してみましょう。自分の共有持分のみであれば、他の共有者の同意や協力がなくても、自分の意思のみで売却手続きを進められます。
共有持分は、共有者ではない第三者に対しても法律上は売却が可能です。ただし、共有持分の性質上、一般の買い手はほぼつかないため、売却先は「共有持分専門の買取業者」になることが多いです。
買取価格は「不動産全体の市場価格×持分割合」の価格の2分の1から3分の1程度まで下がってしまうケースが多いですが、共有持分を数日から1カ月程度の短期間で現金化できます。
7-5. 共有持分を放棄する
共有持分の放棄とは、自分が所有している共有持分を放棄して共有関係から離脱する方法で、他の共有者全員に対して放棄の意思を示した時点で法的に成立します。放棄した共有持分は、「帰属」という形で他の共有者がそれぞれの持分割合に応じて取得することになります。
共有持分の放棄の意思表示は単独で行えるため、他の共有者からの同意は必要ありません。しかし、放棄した共有持分の名義を他の共有者に変更するためには、法務局で「持分移転登記」を申請する必要があります。
この申請は放棄者と持分を新たに取得する共有者全員で行わなければならないため、結局は他の共有者からの協力が不可欠です。また、放棄した共有持分は他の共有者が無償で取得する形となるため、贈与税の課税対象となる可能性があります。
贈与税は、受贈者側(共有持分を取得した側)に課せられます。年間110万円の基礎控除がありますが、共有持分の評価額はそれを大幅に超えるケースがほとんどです。
贈与税の負担を説明せずに手続きを進めてしまうと、後で他の共有者とトラブルに発展するリスクが高いため、事前にしっかりと話し合い、同意を得たうえで手続きを進めることが重要です。
7-6. 共有物分割請求を行う
上記で挙げた方法で共有状態を解消するのが難しい場合は、最終手段として共有物分割請求を検討してみましょう。共有物分割請求とは、共有者の1人が他の共有者に対し、共有状態を解消するために共有物の分割を求めることです。
各共有者に認められた民法上の権利であり、原則としていつでも共有物分割請求を行うことができます。共有物分割請求を受けた側は、共有物の具体的な分割方法を決めるための協議に応じる義務が生じます。
そのため、もし協議に応じてくれない共有者がいる場合や協議で分割方法が決まらなかった場合は、共有物分割請求訴訟での解決を目指すのが有効です。また、最終的に裁判所の判決によって分割方法が決まるため、共有者間の意見が最後までまとまらなかった場合でも、強制的に共有状態を解消できます。
なお、判決で下される分割方法には以下の3つがあります。
- 現物分割:不動産を物理的に分割する方法
- 代償分割:共有者の1人がすべて持分を取得して不動産を単独所有する代わりに、他の共有者に対して代償金を支払う方法
- 換価分割:不動産を競売にかけて売却し、売却代金を分割する方法
裁判所は、客観的な公平性や実現の可能性を重視して分割方法を選択するため、共有者の希望が必ずしも通るとは限りません。
誰も望まない方法によって分割され、親子共に後悔してしまうという結果にもなりかねません。そのため、共有物分割請求訴訟はあくまで最終手段として捉え、できれば親子間で協議を重ねて双方が納得のいく解決策を模索することが大切です。
8. 親子の共有名義におけるデメリットに関して、よくある質問
Q. 親子共有名義で親が死亡した場合、自動的に子どもの単独名義になりますか?
親子共有名義で親が死亡しても、自動的に子どもの単独名義にはなりません。亡くなった親の共有持分は、原則として法定相続人全員に引き継がれます。 親子共有名義の不動産を特定の子どもが単独で相続するためには、まず法定相続人全員で遺産分割協議を行い、親の共有持分をすべて相続するという合意を得なければなりません。
Q. 親が認知症になった場合でも売却できますか?
親が認知症になって判断能力が低下してしまった場合、その親の売却の同意は法律上無効となるため、このままでは売却手続きを進められません。 どうしても売却したいのであれば、判断能力が低下した親の代わりに法律行為を行う「成年後見人」を家庭裁判所に選任してもらう必要があります。
Q. 親子共有名義は途中で単独名義へ変更できますか?
親子共有名義は、親が認知症などで判断能力が低下している状態でなければ、持分の売買や生前贈与などの方法により、いつでも単独名義に変更することが可能です。 親の判断能力がすでに低下している場合は、売買や生前贈与といった契約行為が法律上無効となるため、原則として相続前に単独名義へ変更することはできません。
8. まとめ|親子共有名義は将来設計まで考えて慎重に判断を
親子共有名義は、「住宅ローンの借入額を増やせる」「返済期間を延ばしやすい」といったメリットがある一方で、将来的に深刻なトラブルを招くリスクがあります。
たとえ親子関係は良好で現時点では特にトラブルがなくても、ライフスタイルや家族構成の変化、相続による権利関係の複雑化をきっかけに新たなトラブルが勃発し、状況が一変する可能性は少なくありません。
そのため、親子共有名義の購入を検討している場合は、将来設計まで考えて慎重に判断することが大切です。
すでに所有している場合は、トラブルを未然に防ぐためにも、単独名義への変更や不動産全体の売却など、親が健康なうちに適切な対策を早めに講じておくことが望ましいです。もし、親子共有名義について何か疑問や不安なことがあれば、弁護士や司法書士などの専門家に早めに相談しましょう。
(記事は2026年8月1日時点の情報に基づいています)
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