目次

  1. 1.相続した空き家を売却する際に活用できる「3000万円特別控除」とは?
  2. 2.相続で「3000万円特別控除」を活用すると税金が0になる仕組みとは?
    1. 2-1.税金が0になる可能性があるのは譲渡所得税
    2. 2-2.相続税の基礎控除とは別制度
    3. 2-3.譲渡所得から最大3000万円を控除できる
  3. 3. 3000万円特別控除の適用要件
    1. 3-1.被相続人が居住していた家屋である
    2. 3-2.1981(昭和56)年5月31日以前建築の住宅である
    3. 3-3. 相続開始から3年目の年末までに売却する
    4. 3-4. 売却価格が1億円以下である
    5. 3-5. 売却まで空き家である
    6. 3-6. 親族や同族会社などへの売却ではない
    7. 3-7. 同一の被相続人から過去にこの特例を受けていない
  4. 4. 親が老人ホームに入所していた場合の取扱い
    1. 4-1. 条件を満たせば適用可能
    2. 4-2. 他人に貸していないことが前提
    3. 4-3. 入所の経緯や利用状況が判断材料となる
  5. 5. 更地・マンションの場合の注意点
    1. 5-1. 分譲マンションは原則対象外となる場合がある
    2. 5-2. 解体して更地にしても適用できる場合がある
    3. 5-3. 買主が解体・耐震改修を行う場合も対象になる
    4. 5-4. 耐震改修により要件を満たす場合がある
    5. 5-5. 共有名義は持分ごとに判断する
  6. 6. 2024年改正による控除額の変更
  7. 7. 取得費加算の特例との違い
    1. 7-1. 取得費加算とは
    2. 7-2. 3000万円特別控除と取得費加算の特例は併用できる?
    3. 7-3. 3000万円特別控除と取得費加算の特例はどちらが有利?判断のポイント
  8. 8. 3000万円特別控除を受けるための手続き
    1. 8-1.確定申告が必要
    2. 8-2. 必要書類一覧
    3. 8-3. 市区町村で取得する確認書とは
  9. 9. 不動産相続の特別控除に関連するよくある質問
  10. 10. まとめ 相続した空き家の売却は3000万円特別控除の要件と期限を理解するのが重要

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相続した空き家を売却する際に活用できる3000万円特別控除とは、被相続人の居住用財産(空き家)を譲渡した場合の特別控除の特例制度のことです(租税特別措置法 第35条第3項)。

相続した実家などの空き家を売却した場合、売却益(譲渡所得)に対して所得税や住民税が課されます。ただし、一定の要件を満たす場合には、この特例を利用することで、譲渡所得から最大3000万円を控除することができます。

この制度は、相続によって空き家となった住宅の売却を促し、空き家の増加や放置を防ぐことを目的として設けられました。控除の適用を受けると、譲渡所得が3000万円以内であれば、所得税や住民税が課されないケースもあります。

もっとも、この特例を利用するためには、住宅の築年数や売却期限、売却相手などについて複数の要件を満たす必要があります。

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相続した空き家を売却した場合、売却益には通常、所得税や住民税がかかります。ただし、3000万円特別控除を利用できる場合には、税額が大きく変わる可能性があります。

ここでは、売却時に税金が発生する仕組みと、特別控除によって税額がどのように変わるのかを整理します。

相続した空き家を売却した場合に問題となるのは、譲渡所得税です。譲渡所得税とは、不動産を売却して利益が出た場合に、その利益(譲渡所得)に対して課される所得税や住民税のことを指します(所得税法第33条)。譲渡所得は、売却価格から取得費や譲渡費用などを差し引いて計算されます。

ここで3000万円特別控除を利用すると、譲渡所得から最大3000万円を差し引くことができるため、譲渡所得が3000万円以内であれば、結果として税金がかからないケースもあります。

相続で3000万円控除という言葉を聞くと、相続税の基礎控除を思い浮かべる人もいるかもしれませんが、ここで説明している3000万円特別控除は、相続税の制度とは別のものです。相続税には、以下の基礎控除が設けられています。

3000万円+600万円×法定相続人の数

この基礎控除の範囲内であれば、相続税は課されません。このように、相続税の基礎控除と空き家の3000万円特別控除は、対象となる税金や適用される場面が異なる制度です。

【関連】相続税の基礎控除とは 遺産はいくらまで無税? 計算式から注意点まで解説

不動産を売却した際の税金は、売却価格そのものではなく譲渡所得に対して課されます。

譲渡所得=売却価格-(取得費+譲渡費用)

取得費とは、不動産を取得した際の購入代金や購入時の諸費用などを指し、相続の場合には原則として被相続人の取得費を引き継いで計算します。また、譲渡費用には仲介手数料や測量費など、売却のために直接かかった費用が含まれます。

3000万円特別控除は、このように計算した譲渡所得から最大3000万円を差し引くことができる制度です。

相続した空き家の売却で3000万円特別控除を利用するためには、いくつかの要件を満たす必要があります。ここでは、3000万円特別控除の主な適用要件について整理します。

3000万円特別控除を利用するためには、売却する住宅が被相続人の居住用財産であることが必要です。つまり、相続開始の直前まで、その住宅が被相続人の生活の拠点として使用されていたことが前提となります。

この特例は、相続によって空き家となった住宅の売却を対象とする制度であるため、原則として被相続人が一人で居住していた住宅が対象とされています。そのため、同居人がいた住宅については、原則としてこの特例の対象外となります

3000万円特別控除の対象となるのは、1981年5月31日以前に建築された住宅です。これは、当時の建築基準法に基づく旧耐震基準の住宅を対象とした制度であるためです。

ただし、旧耐震基準の住宅については、売却時点で一定の安全性を確保する必要があります。そのため、売却までに耐震改修を行って現行の耐震基準を満たすか、建物を取り壊して更地として売却するなどの対応が必要になります。

3000万円特別控除を利用するためには、相続開始から一定期間内に不動産を売却する必要があります。具体的には、相続が発生した日から3年目の12月31日までに売却することが条件とされています。

たとえば、2024年4月に相続が発生した場合、この特例を利用できる期限は2027年12月31日までとなります。

3000万円特別控除を利用するためには、売却する不動産の価格が1億円以下である必要があります。

この売却価格は相続人ごとに判断されるものではなく、対象となる不動産全体の売却価格で判定されます。また、同一の不動産について複数の相続人が持分を売却する場合には、それぞれの売却価格を合計して1億円以下かどうかが判断されます

3000万円特別控除を利用するためには、売却するまでその住宅が、被相続人以外の者によって居住や事業の用に供されていないことが必要です。相続後に第三者へ賃貸したり、事業用として利用したりした場合には、この特例の対象外となる可能性があります。

なお、売却に向けた家財整理や管理のための一時的な利用などは、直ちに特例が使えなくなるわけではありません。

3000万円特別控除を利用するためには、売却相手にも一定の条件があります。売却相手が配偶者や直系血族などの親族、または生計を一にする親族など特別の関係がある人である場合には、この特例を利用することはできません。

加えて、親族が実質的に支配している同族会社などに売却した場合にも、特例の対象外となります。このような制限が設けられているのは、形式的に売却したように見せかけて特例を利用することを防ぐためです。

3000万円特別控除は、同一の被相続人の居住用財産について1回のみ利用できる制度です。そのため、同じ被相続人から相続した居住用不動産についてすでにこの特例を利用している場合には、再度適用を受けることはできません

被相続人が亡くなる前に老人ホームなどの介護施設へ入所していた場合でも、一定の条件を満たせば、3000万円特別控除の適用が認められることがあります。ここでは、老人ホームへの入所と3000万円特別控除の関係について整理します。

被相続人が老人ホームなどの介護施設に入所していた場合でも、一定の条件を満たしていれば、3000万円特別控除の対象となることがあります。

たとえば、被相続人が要介護認定や要支援認定を受けて介護施設に入所していたことや、入所後もその住宅を賃貸などに利用していないことなどが要件とされています。

被相続人が老人ホームなどの介護施設に入所した後も、その住宅を第三者に貸していないことが必要です。入所後に住宅を賃貸していた場合には、被相続人の居住用財産とは認められず、3000万円特別控除の対象外となる可能性があります。

被相続人が老人ホームなどに入所していた場合でも、その入所が介護を目的としたものであり、入所前までその住宅を生活の本拠として利用していたことが必要とされています。加えて、入所後も住宅を賃貸などに利用しておらず、被相続人の生活拠点としての性質が維持されていたかどうかも判断材料となります。

このように、老人ホーム入所の場合には、入所の経緯や住宅の利用状況などを踏まえて、特例の適用可否が判断されます

相続した不動産が必ずしも戸建て住宅とは限らず、建物を取り壊して更地として売却するケースや、マンションを相続するケースもあります。こうした場合でも3000万円特別控除を利用できるのかどうかは、不動産の種類や売却方法によって取り扱いが異なります。

ここでは、更地やマンションを売却する場合の3000万円特別控除の適用関係について整理します。

3000万円特別控除は、相続によって空き家となった一戸建て住宅を主な対象とした制度です。そのため、区分所有建物である分譲マンションは、耐震・空き家要件を満たしにくい特徴があります。

3000万円特別控除は、建物が残った状態で売却する場合だけでなく、住宅を解体して更地として売却する場合でも適用されることがあります。主な条件は次のとおりです。

  • 相続した住宅が被相続人の居住用財産であること
  • 相続開始から3年目の年末までに売却すること
  • 売却価格が1億円以下であること

これらの要件を満たしている場合には、建物を取り壊して更地として売却する場合でも特例の適用が認められることがあります。

以前は、この特例を利用するためには、売主が住宅を解体するか、耐震改修を行う必要がありました。しかし、2024年(令和6年)の税制改正により、住宅を解体せずに売却した場合でも、買主が一定期間内に耐震改修または家屋の取り壊しを行えば、特例の対象となります

具体的には、住宅を現状のまま売却した場合でも、売却した年の翌年2月15日までに買主が耐震改修または解体を行うことなどの条件を満たせば、3000万円特別控除を利用できる可能性があります。

相続した住宅が1981年5月31日以前に建築された旧耐震基準の建物である場合でも、一定の耐震改修を行い、現行の耐震基準を満たすことが確認されれば、3000万円特別控除の対象となることがあります。

この場合には、耐震改修後の住宅が建築基準法に基づく耐震基準を満たしていることを証明する耐震基準適合証明書などの書類が必要になります。

この証明書は、建築士や指定確認検査機関などが発行するもので、売却時に特例の適用を受けるための重要な書類となります。

相続した不動産が複数の相続人による共有名義となっている場合でも、3000万円特別控除を利用できる可能性があります。

この場合、特例の適用は不動産全体ではなく、各相続人の持分ごとに判断されます。そのため、複数の相続人がそれぞれ持分を売却する場合には、それぞれの譲渡所得について特例を適用できるかどうかを検討することになります。

ただし、売却価格が1億円以下であることなどの要件は、不動産全体を基準として判断されるため注意が必要です。

相続した空き家の売却に関する3000万円特別控除は、2024年(令和6年)の税制改正によって一部の取り扱いが見直されました。とくに、相続人が複数いる場合の控除額の上限について重要な変更が行われています。

この特例は、原則として相続人ごとに適用される制度であり、改正前は相続人の人数にかかわらず、それぞれの相続人が最大3000万円の特別控除を利用することができました。

しかし、2024年1月1日以後に行われる不動産の譲渡については、相続人が3人以上いる場合に限り、1人あたりの控除額の上限が2000万円に引き下げられています。具体的には、以下のとおりです。

・相続人が1人または2人の場合:1人あたり最大3000万円
・相続人が3人以上の場合:1人あたり最大2000万

この改正は、2024年1月1日以後の譲渡から適用されます。そのため、相続人が複数いる場合には、不動産を売却する時期や相続人の人数によって、利用できる控除額が変わる点に注意が必要です。

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相続した不動産を売却する際には、3000万円特別控除のほかにも、税負担を軽減できる制度として取得費加算の特例があります。

どちらも不動産売却時の税金を軽減する制度ですが、仕組みや適用条件は異なります。ここでは、取得費加算の特例の内容と、3000万円特別控除との違いについて整理します。

取得費加算の特例とは、相続した不動産を売却する際に、支払った相続税の一部を不動産の取得費に加算できる制度です。

通常、不動産を売却した際の譲渡所得は、売却価格から取得費や譲渡費用を差し引いて計算されます。しかし、取得費加算の特例を利用すると、相続税の一部を取得費として加算できるため、譲渡所得が小さくなり、結果として売却時の税負担を軽減できる場合があります。

この特例は、相続開始から3年10か月以内に不動産を売却した場合に適用されます。

相続した不動産を売却する際には、3000万円特別控除と取得費加算の特例のいずれも税負担の軽減につながる制度ですが、同一の不動産の譲渡について両方を同時に利用することはできません

そのため、不動産を売却する際には、どちらの特例を利用するかを選択する必要があります。

3000万円特別控除と取得費加算の特例のどちらが有利になるかは、売却する不動産の状況や相続税の負担などによって異なります。

一般的には、売却益が大きい場合には譲渡所得から直接3000万円を控除できる3000万円特別控除が有利となるケースが多いとされています。一方で、相続税を多く支払っている場合には、その一部を取得費に加算できる取得費加算の特例の方が有利になることもあります。

実際には、不動産の売却価格や取得費、相続税額などによって税額が大きく変わるため、事前に試算を行い、どちらの制度を利用するか検討することが重要です。

3000万円特別控除は、要件を満たしていれば自動的に適用される制度ではありません。確定申告の際には、空き家特例の要件を満たしていることを証明する書類の提出が求められます。ここでは、3000万円特別控除を利用するための主な手続きや必要書類について確認します。

3000万円特別控除の適用を受けるためには、不動産を売却した年の翌年に確定申告を行う必要があります。この特例は自動的に適用されるものではなく、確定申告の際に必要書類を添付して申告することで初めて適用されます。そのため、申告を行わなかった場合には、要件を満たしていても特例を利用することができません。

また、確定申告には期限があり、原則として売却した年の翌年2月16日から3月15日までの間に申告する必要があります。

3000万円特別控除を利用するためには、確定申告の際にいくつかの書類を提出する必要があります。

  • 不動産の売買契約書の写し
  • 登記事項証明書
  • 被相続人居住用家屋等確認書
  • 耐震改修や建物の解体を証明する書類(該当する場合)

必要書類はケースによって異なる場合もあるため、事前に確認して準備しておきましょう。

3000万円特別控除を利用するためには、被相続人居住用家屋等確認書という書類を取得する必要があります。この確認書は、相続した住宅が特例の要件を満たしていることを証明するための書類で、不動産が所在する市区町村で発行されます。

申請の際には、被相続人がその住宅に居住していたことや、相続後に空き家となっていることなどを確認するための資料の提出が求められます。

Q. 固定資産税を払っている間も控除は使える?

固定資産税の支払いの有無は、控除特例の要件ではありません。相続開始から3年目の年末までに売却するなど、他の要件を満たしていれば特例の適用を受けることができます。

Q. 実家をリフォームしてから売ってもよい?

相続した実家をリフォームしてから売却すること自体は、直ちに3000万円特別控除の適用を妨げるものではありません。ただし、住宅の用途を変更して事業用として利用した場合や、賃貸に出した場合には、特例の対象外となる可能性があります。

Q. 相続してすぐ売らないと損になる?

3000万円特別控除を利用する場合には、相続開始から3年目の年末までに売却すればよいとされています。期限を過ぎてしまうと特例を利用できなくなるため、スケジュールを確認しながら進めましょう。

Q. 相続税がかからなければ売却税もかからない?

相続税がかからなかった場合でも、不動産を売却した際には譲渡所得税が課される可能性があります。相続税と譲渡所得税は別の税目であり、課税の仕組みも異なります。

相続した実家を売却する際には、一定の要件を満たすことで3000万円特別控除を利用でき、譲渡所得から最大3000万円を控除できる可能性があります。

もっとも、この特例を利用するためには、住宅の築年数や売却期限、空き家の状態など、複数の要件を満たす必要があります。加えて、2024年の税制改正により、相続人が3人以上いる場合の控除額にも変更が加えられました。

さらに、相続した不動産の売却では個別の状況によって判断が分かれるケースも少なくありません。
相続した実家の売却を検討している場合には、制度の適用要件や売却期限を確認するとともに、必要に応じて税理士に相談しながら進めましょう。

(記事は2026年4月1日時点の情報に基づいています)

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