目次

  1. 1. 相続税法58条の通知とは
    1. 1-1. 死亡等の情報はオンライン連携で税務当局に共有される
    2. 1-2 市区町村から税務署に通知され、相続人には通知されない
  2. 2.相続税法58条の通知は申告漏れ防止のための制度
    1. 2-1.申告漏れを防ぐための情報共有が目的
    2. 2-2.相続税の課税判断に必要な情報が通知・共有される
    3. 2-3.相続人に届くのは58条通知ではなく税務署の案内・照会
  3. 3. 固定資産税の評価額と相続税の評価額の違い
    1. 3-1.固定資産税の情報は相続税評価の参考とされる
    2. 3-2.固定資産税の評価額=相続税評価額ではない点に注意
  4. 4.相続税法58条をめぐって起こりやすいトラブルや誤解
    1. 4-1.相続税は申告制なので、黙っていればバレないと誤解する
    2. 4-2.税務署が相続財産を把握していることを知らず申告漏れになる
    3. 4-3.固定資産税評価額だけで相続税評価を判断してしまう
  5. 5. 相続税法58条に関してよくある質問
  6. 6. まとめ 相続税法58条は「相続が起きたことを税務署が知るため」の通知

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相続税法58条の通知は、相続の発生に伴い、行政機関が把握した情報を税務当局へ共有するための規定です。

ここでは、相続税法58条が対象とする情報の種類や、法務省・国税庁・市区町村がどのように連携して相続情報を共有しているのか、その全体像を整理します。

被相続人の死亡などの情報は、相続税法58条に基づき、行政機関から税務当局へ通知されます。令和4年度の税制改正により、この仕組みは紙の書類から、デジタルデータによるオンライン連携へと完全に移行しました。

具体的には、市区町村が受理した死亡届の情報は、法務省の戸籍情報連携システムを通じて集約され、法務省から国税庁へ直接、電子的に提供される仕組みとなっています。この中央一括型のオンライン連携により、全国の相続発生に関する情報が効率的かつ正確に国税庁へ集約される体制が整備されました。

なお、これらの通知はあくまで相続税の課税判断に必要な基礎情報を把握するためのものです。この段階で直ちに申告の要否や具体的な税額が確定するわけではありません

相続税法58条に基づく通知は、相続人に対して「通知が送られたこと」が知らされたり、直接書類が送付されたりする制度ではありません。これらはあくまで課税の公平性を期すための連携であり、相続人に対してこの通知自体が何らかの手続きや対応を求めるものではありません。

相続税法58条の通知制度は、相続税の申告が適切に行われるよう、税務署が相続の発生を把握するための仕組みです。ここでは、こうした通知制度がどのような背景で設けられているのか、また、どのような情報が共有されるのかについて解説します。

相続税は、相続人が自ら税額を計算して申告する申告納税制度を採用しています。そのため、税務署が相続の発生そのものを把握できなければ、申告が行われないまま見過ごされてしまうおそれがあります。

相続税法58条の通知制度は、こうした申告制を前提としながら、相続が発生した事実や被相続人・相続人を特定するための基礎的な情報を、税務当局が把握できるようにすることを目的としています。これにより、課税判断を行うための前提条件が行政側でも整理されます。

もっとも、この通知によって直ちに申告漏れがあると判断されたり、個々の相続財産の内容まで把握されたりするわけではありません。あくまで、申告制を補完し、行政側が「申告の必要がある世帯か」を判断するための基礎的な情報提供である点に注意が必要です。

相続税法58条に基づく通知では、課税関係を判断するための基礎情報が、最新のオンラインシステム等を通じて共有されます。

  • 死亡等の情報(第1項):法務大臣から国税庁長官へ、戸籍情報に基づきオンラインで通知されます。
  • 不動産に関する情報(第2項):市区町村長から所轄税務署長へ、固定資産税課税台帳に基づき通知されます。

とくに不動産については、所在や地目、家屋の状況といった情報が把握されており、相続税評価の妥当性を確認するための重要な資料となります。ただし、この段階で税額が確定するわけではなく、具体的な評価や申告は相続人が別途行う必要があります。

相続人のもとに届く可能性があるのは、相続税法58条に基づく通知そのものではなく、税務署が別途送付する文書です。相続税の申告に関する案内や、お尋ね(照会文書)といった書類が該当します。これらは、税務署が58条通知などによって把握した情報をもとに、申告が必要と思われる方へ向けて送付するものです。

一方、お尋ねは、相続財産の内容や申告状況について確認するための照会文書であり、回答内容によっては追加資料の提出や修正申告の検討が必要になることもあります。

どちらの文書が届いた場合も、その時点で、直ちに税務調査が行われると決まるわけではありませんが、税務当局が一定の資産状況や相続の事実を把握した上で送付しているものであるため、届いた場合には速やかに内容を確認し、税理士へ相談することをおすすめします。

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相続に不動産が含まれる場合、固定資産税評価額=相続税評価額と考えてしまう人も少なくありません。

しかし、建物は多くの場合固定資産税評価額と同額ですが、土地は路線価などに基づいた再計算が必要であり、両者の評価ルールは全く異なります。

ここでは、相続税法58条で共有される固定資産情報が実務でどう扱われるのか、混同による申告漏れリスクとあわせて解説します。

相続税の申告において不動産の評価を行う際、市区町村が管理している固定資産税台帳の情報は、極めて重要な基礎資料となります。台帳には所在地や地目、地積、家屋の構造や床面積など、評価の前提となる客観的な情報が記載されているためです。

税務署は、相続税法58条第2項に基づき市区町村から提供される固定資産課税台帳(名寄帳等)の情報を通じて、不動産の存在や概要を正確に把握しています。これらの情報は、不動産が相続財産に含まれているかを判断するための基礎資料として用いられます。

ただし、不動産の種類によって、台帳上の評価額をそのまま使用できるものと、別途再計算が必要なものに分かれる点に注意が必要です。

固定資産税評価額と相続税評価額は、必ずしも一致するわけではありません。両者は評価の目的や基準が異なるため、以下のように扱いを明確に分ける必要があります。

【建物の場合】
相続税評価額は、原則として固定資産税評価額と同額(1.0倍)となります。そのため、多くの場合建物の申告においては台帳の評価額が直接用いられます。

【土地の場合】
相続税では路線価方式や倍率方式といった独自の評価方法が用いられます。固定資産税評価額は「公示地価の約7割」、相続税の路線価は「公示地価の約8割」を目安に設定されているため、土地に関しては固定資産税評価額が必ずしも相続税評価額にはなりません。

この違いを正しく理解せず、土地の評価まで固定資産税評価額で代用してしまうと、意図せず過少申告となるおそれがあり、後日、税務署から申告漏れを指摘されるリスクが生じます

相続税法58条(いわゆる「58条通知」)は、行政機関間で死亡等に関する情報などを連携する仕組みを定めており、その理解が不十分だと不要な不安や誤解が生じることがあります。ここでは、相続税法58条をめぐって実務上よく見られる誤解や注意点を解説します。

相続税は、相続人自らが申告・納税を行う申告制の税金です。そのため、「税務署から何も連絡が来なければ申告しなくてもよい」「黙っていれば相続の事実は分からないのではないか」と誤解されることがあります。

しかし実際には、相続税法58条に基づき死亡に関する情報は法務省(法務大臣)から国税庁(国税庁長官)へオンラインで直接共有されています。最新のシステム連携により、全国どこで相続が発生しても、税務当局はその事実をほぼリアルタイムで把握できる体制を整えています。

相続税法58条に基づく通知により、税務署は相続の発生や被相続人に関する基礎的な情報を把握できる立場にあります。ここで注意が必要なのは、「どの程度の財産情報まで把握されているか」です。

58条第2項に基づき、市区町村からは固定資産(土地・家屋)の課税情報が通知されるため、不動産の所有状況は把握されやすい状況にあると考えるべきでしょう。「通知されるのは名前や住所だけだろう」と甘く見積もり、財産の評価を不十分なまま申告したり、意図的に除外したりすると、後日申告漏れが指摘されます。その結果、修正申告が必要になるだけでなく、重い過少申告加算税や延滞税などのペナルティ(追徴課税)が課されるリスクがあります。

相続税の申告において、不動産の価値をすべて固定資産税の通知書(課税明細書)に記載された金額で計算してしまうのは、非常に多いミスの一つです。前述の通り、多くの場合、建物については固定資産税評価額をそのまま流用しても問題ありません。

しかし、土地については、相続税独自の「路線価方式」または「倍率方式」で評価し直さなければなりません。一般的に、相続税の評価額は固定資産税評価額よりも高くなる傾向があるため、通知書の金額をそのまま使うと「過少申告」となり、税務署から不足分を追及されるリスクが生じます。

不動産の種類に応じた評価ルールの違いを正しく理解し、精緻に算出することが重要です。

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Q. 所轄税務署から案内が来ない場合は相続税を払わなくてよい?

所轄の税務署から案内や通知が届いていない場合でも、相続税の申告義務がなくなるわけではありません。

Q. 相続税法58条の「通知」で相続人に書類が送られてくる?

いいえ、相続税法58条に基づく通知によって、相続人に直接書類が送付されることはありません。

この通知は、行政機関内部のオンラインによる情報連携です。あくまで税務当局が課税判断を行うための基礎情報を整えるための手続きであり、相続人に対して何らかの手続きを通知したり、公表したりするものではありません。

Q. 税務署から「お尋ね」や照会文書が届いたら税務調査?

税務署から届くお尋ねや照会文書は、相続税の申告の必要性や、申告内容の不明点を確認するための文書であり、直ちに税務調査が行われることを意味するものではありません。

相続税法58条は、相続が発生した事実や課税判断に必要な基礎情報を、行政機関の間で共有するための制度です。現在は、死亡情報が法務省から国税庁へオンラインで直接連携される仕組みとなっており、税務当局は相続の発生を把握できる体制を整えています。

もっとも、58条に基づく通知はあくまで行政内部の情報連携であり、相続人に直接書類が送付されるものではありません。また、この通知によって直ちに申告義務や税額が確定するわけでもありません。相続税は申告制であるため、通知の有無にかかわらず、申告が必要かどうかは相続人自身が判断する必要があります。

(記事は2026年3月1日時点の情報に基づいています)