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1. 税務署の「お尋ね」とは
税務署から届く「お尋ね」の正体や、税務署が「お尋ね」を送付する目的などについて解説します。
1-1. 「お尋ね」の正体は
税務署から届く「お尋ね」には、相続税、贈与税、所得税に関するものなど複数の種類があります。共通しているのは「質問に対して回答を記入し、返送を求める」という形式です。
この「お尋ね」は、一般的に「行政指導」に位置づけられています。強制力を持つ「税務調査」とは異なり、あくまで納税者の自主的な協力を仰ぐものです。つまり、納税や申告内容に関する自発的な確認を促すための協力要請となります。
また、国税庁の統計上では「簡易な接触」と呼ばれています。これは原則として、職員が自宅へ訪問する「臨場」ではなく、文書や電話、あるいは来署依頼による面接を行い、申告内容の確認や是正を行う手続きを指します。
1-2. 税務署が「お尋ね」を送る真の目的
税務署が「お尋ね」を送る目的は、単なる情報把握だけではありません。最大の狙いは、納税者に対する「自主的な確認と申告」の呼びかけにあります。
たとえば、相続税の「お尋ね」が申告期限前に送られるケースでは「相続税がかかる可能性がありますが、申告の準備は進んでいますか?」という確認の意味合いが強くなります。
税務署としては、多大な時間と人手が必要となる税務調査をできるだけ避けたい事情があります。まずは書面で回答を求め、その時点で申告漏れを回避できれば、わざわざ自宅まで赴く必要がありません。
逆に言えば「お尋ね」に対して適切な回答が得られない場合、税務署は税務調査に踏み切らざるを得なくなります。
1-3. 税務調査との違い
筆者が税務署に勤務していたころ、「これは税務調査なのか」「回答する義務はあるのか」という質問をよく受けていました。その際、私はいつも「税務調査ではなく、回答義務もありません。ですが、ぜひご協力をお願いします」とお答えしていました。
ここで重要なのは、税務調査と「お尋ね」の法的な違いです。税務調査は、税務署に認められた質問検査権に基づいて行われる手続きであり、原則として拒否できない「受忍義務」があります。
これに対して「お尋ね」はあくまで「任意」の協力要請です。しかし、この「任意」を「無視してもいい」と履き違えると、のちに手痛いペナルティーを受けるおそれがあります。
また、「お尋ね」と税務調査には、調査範囲の深さにおいても大きな違いがあります。たとえば相続税の実地調査の場合、調査官が自宅を訪れ、金庫やタンスの中身、過去10年分の通帳履歴まで精査します。これに対し、「お尋ね」は原則として郵送や電話のやりとりのみで完結します。受ける側の精神的な負担面においても、両者には大きな違いがあります。
1-4. 税務署が資産を把握している仕組み
相続税に関する「お尋ね」は、相続が起きたすべての人に送付されるわけではありません。遺産相続などによって一定以上の資産を手にし、相続税申告が必要だと見込まれるケースに絞って送付されます。
では、なぜ税務署は親族の死亡や遺産の情報を把握できているのでしょうか。それは、主に以下のようなルートで網羅的に情報を収集しているからです。
- 死亡情報:市区町村に提出される「死亡届」
- 生前の所得:過去の確定申告書や、勤務先からの「源泉徴収票」
- 不動産:法務局の「登記情報」や自治体の「固定資産税課税台帳」
- 有価証券:証券会社から提出される「特定口座年間取引報告書」など
- 海外送金:海外への100万円超の送金時に銀行から自動報告される「国外送金等調書」
- 生命保険:保険会社から提出される「支払調書」
筆者が税務署で相続税調査を担当していたころ、「家族さえ知らなかった財産がなぜ見つかるのか」と調査対象者から驚かれる場面に何度も遭遇しました。それは、税務署が長年蓄積してきた膨大なデータの蓄積があるからこそ可能なのです。
2. 税務署から「お尋ね」が届いたらどう対応すべき?
「お尋ね」が届いた際、焦ってその場しのぎの回答をしてはいけません。以下のような流れで冷静に事実関係を確認し、根拠資料をそろえたうえで回答しましょう。
2-1. 封筒の中身を確認
まずは同封されている書類をすべて確認してください。税務署が把握したい内容に応じて、おもに以下のような書類が入っています。
- 相続税関連:「相続税の申告要否検討表」など
- 不動産売却などに伴う所得税関連:「譲渡所得の申告についてのお尋ね」など
- 海外資産関連:「国外財産調書に関する確認」など
次に書類を読み、何について回答を求められているのかを把握しましょう。たとえば相続税であれば、被相続人(亡くなった人)の預貯金や有価証券の有無などが問われますし、不動産の譲渡所得に関するものであれば、売却価格や取得費などが主な確認事項となります。
2-2. 回答書の書き方と注意点
相続税に関する「お尋ね」の場合、送付された封筒には通常、趣旨を説明する文書と、資産状況などを記入する「相続税の申告要否検討表」、そして返信用封筒が同封されています。
「相続税の申告要否検討表」には、以下の回答項目があります。
- 基本情報:被相続人(亡くなった人)の氏名、生年月日、死亡日
- 職業歴:被相続人の生前の職業
- 家族構成:相続人(財産を受け継ぐ権利のある人)の氏名、住所、続柄
- 不動産:被相続人や先代名義の土地や建物の所在地
- 有価証券:株式の銘柄や投資信託など
- 現預金:預貯金の残高や手許現金
- 保険や退職金:生命保険金(死亡保険金)や死亡退職金
- その他財産:自動車、貴金属、家庭用財産など
- 贈与歴:生前に行われた贈与の履歴
- マイナス財産:借入金や未納税金などの債務、葬式費用
回答の際は、必ず通帳や契約書などの根拠資料に基づき、正確に記入してください。回答期日までに確認が間に合わない場合は、あらかじめ税務署の担当部署に連絡し、確認中である旨を伝えておくとよいでしょう。
そして確認した結果、遺産総額が「3000万円+(600万円×法定相続人の数)」で算出される基礎控除額を超えていると判明した場合は、「お尋ね」への回答だけでは不十分です。すみやかに相続税の申告書を作成し、提出する準備を進める必要があります。こうしたケースでは、税理士への早急な相談をお勧めします。
2-3. 不明な場合の書き方
「お尋ね」に回答しようとする際、「正確な金額がわからない」「古い資料を紛失してしまった」といった事態が起きるのは珍しくありません。そのような場合、空欄のままにするのは避けたほうがよいでしょう。
不明な項目がある際は、備考欄などに「現在調査中につき、判明次第報告します」などと一筆添えるか、税務署の担当部署に連絡して状況を説明しておくと安心です。
実地調査を避けるには、「隠す意思はなく、協力する姿勢がある」と示すのが鉄則です。正当な理由を示さずに未記入で提出すると、税務署側に「何かを隠蔽しようとしている」という疑念を抱かせ、かえって実地調査を誘発する事態になりかねません。
2-4. 回答期限と提出方法
「お尋ね」には通常、2週間から1カ月程度の回答期限が設定されています。提出は郵送が一般的ですが、内容に不安があり、直接説明したい場合には税務署への持参も可能です。その際は、事前に電話予約をしたうえで来署するとスムーズです。
ただし、税務署に持参する場合は注意が必要です。担当者とのやりとりは記録されるため、不用意な回答がのちの税務調査で不利に働く可能性も否定できません。
来署して説明したいけれども担当者とのやりとりに不安がある場合は、専門家である税理士に同席を依頼するのが最も安心な選択と言えるでしょう。
3. 税務署の「お尋ね」を無視や放置するとどうなる?
税務署の「お尋ね」を無視や放置した場合に何が起こるのかを説明します。
3-1. 税務調査までの流れ
「お尋ね」への回答は任意ですが、だからと言って軽視すべきではありません。回答を無視し続けると、税務署側の対応が以下の流れで、書面などで軽微なミスや申告漏れの是正を促す「簡易な接触」から、正しく税務申告しているかを調べる「税務調査」へと一気に格上げされる可能性があります。
- 無視や放置:税務署側が「回答を拒否する特別な理由がある、隠蔽の疑いがある」と判断
- 電話による督促:担当者から直接連絡が入り、回答を求められる
- 実地調査の選定:「お尋ね」では解決不能とされ、実地調査の対象リストに入る
- 実地調査の実施:複数の調査官が自宅などを訪れ、税務調査が行われる
実地調査に移行すると、「お尋ね」の段階では聞かれなかった「過去10年分の通帳の動き」や「亡くなる直前の現金の動き」まで厳しく追及されます。結果として、より多くの申告漏れが発覚するリスクが高まります。
なお、回答さえすれば安心というわけではありません。特に以下のケースでは、疑念を払拭できず税務調査に切り替わる可能性が高いため、細心の注意が必要です。
- 情報の食い違い:お尋ねの回答と、登記や支払調書など税務署が事前に把握している情報にズレがある
- 虚偽や矛盾:回答内容に明らかな嘘や、つじつまの合わない点がある
3-2. 申告漏れが発覚した場合のペナルティー
「お尋ね」を放置し、その後の税務調査で申告漏れが発覚した場合、本来の税金に加えて以下のような重いペナルティーが課されます。
- 無申告加算税:期限内に申告しなかったことに対する罰金。原則15%を基準に、申告のタイミングや無申告となった税額の大きさによって5%から30%まで変動します。具体的な区分や税率は、国税庁の「加算税制度(国税通則法)の改正のあらまし」などで確認してください。
- 延滞税:納期限から遅れた日数分かかる利息。2026年分(2026年1月1日から2026年12月31日)の延滞税の特例税率は、納期限から2カ月以内は年2.8%、2カ月超は年9.1%。
- 重加算税:意図的な隠蔽とみなされた場合、原則として納付すべき税額の35%または40%。短期間に繰り返して無申告や仮装・隠蔽が行われた場合、10%の加算措置が設けられており、重加算税の税率は45〜50%となります。
申告期限を過ぎてから「お尋ね」が届いた場合、その時点での申告は「期限後申告」となり、原則として無申告加算税の対象です。しかし、ここですみやかに動くかどうかで、無申告加算税の割合は変わります。
税務調査の通知を受ける前に自ら申告すれば、無申告加算税は5%に軽減されます。しかし、調査によって指摘されたあとに申告すると、無申告加算税は15%に跳ね上がる点に注意が必要です。また、無申告の税額が一定額を超える場合、無申告加算税の税率は、20%(50万円超300万円以下)、30%(300万円超)と上がっていきます。
この税率の差は、遺産額が数千万円単位になれば、数百万円単位の負担増となって跳ね返ってきます。「お尋ね」が届いた時点でのすみやかな行動、正直な期限後申告が、被害を最小限に抑える唯一の方法です。
4. 税務署から「お尋ね」が来る時期と対象になりやすいケース
「お尋ね」が届く時期に厳格な決まりはありませんが、税金の種類ごとに届きやすいタイミングが存在します。
【相続税:発生から6カ月〜1年後が目安】
相続税の「お尋ね」は、被相続人が亡くなった日、つまり相続発生の日から6カ月から1年程度で届くのが一般的です。相続税の申告期限は「10カ月以内」であり、税務署はこの時期に「申告が必要なのに出ていない世帯」や「財産状況から見て申告が必要そうな世帯」をリストアップし、集中的に確認を行うからです。
【不動産売却による譲渡所得:売却した翌年以降】
不動産を売却した際の「お尋ね」は多くの場合、売却した翌年の申告期限である3月15日以降に届きます。税務署は法務局から「不動産の登記情報」を収集しており、不動産が売却された事実を把握しています。そのうえで売却益が出ているはずなのに、確定申告がされていない人をピンポイントで抽出して送付します。
つまり、「お尋ね」が届くのは、税務署が申告が必要な何らかの根拠をすでにつかんでいるサインだと言えます。
4-1. 相続などによって高額の資産を取得した場合(相続税)
ここからは、実際に「お尋ね」の対象になりやすい具体的なケースを見ていきましょう。
最も届きやすいのは、全国の国税局や税務署をネットワークで結び、確定申告データや納税記録、不動産情報、金融データなどを一元管理している「国税総合管理システム(KSK)」などで蓄積された情報から、高額の資産の相続があったと見込まれるケースです。この場合は相続税の「お尋ね」が届きやすくなります。
たとえば亡くなった人が高額な不動産を所有していた場合や、高額な死亡保険金が支払われた場合、その世帯は「お尋ね」の送付リストに載ると考えて間違いありません。
4-2. 事業所得や不動産所得が多い場合
亡くなった人が開業医や弁護士、経営者などの個人事業主である場合や、多くの賃貸不動産を所有していた場合も、「お尋ね」が届く可能性が高まります。
税務署は過去の確定申告の情報を蓄積しており、「これだけの年収があれば、生涯でこれくらいの資産を蓄えているはずだ」という資産規模の推計を行っています。その推計から相続税申告が必要だと見込まれた場合には、確認のための「お尋ね」が送付されます。
4-3. 所得が少なすぎる場合
意外と盲点なのが、亡くなった人の所得が少なかったケースです。資産規模に対して生前の所得が過少である場合も、所得を隠していたのではないか、という疑念が生まれ、「お尋ね」が送付される可能性があります。
4-4. 不動産や株式を売却したケース
不動産の売買が行われ、登記が書き換わると、その情報は法務局から税務署へと自動的に通知されます。税務署はこれらの情報をもとに、売却益が出ていると見込まれるのに翌年の確定申告がされていない人を特定し、「お尋ね」を送付します。
特に注意が必要なのは「3000万円の特別控除」などの特例を利用する場合です。特例を適用した結果、最終的な税額が0円になるとしても、その特例を受けるためには確定申告が必須です。申告を忘れていると、税務署からは単なる「無申告」の状態に見えるため、確認の「お尋ね」が届きます。
5. 税務署からお尋ねが来る確率とは
期限内申告を促すために申告期限前に送付される「お尋ね」については、具体的な実施件数などは公表されていません。しかし、申告期限後に行われる「簡易な接触(お尋ね等)」の実施状況については、国税庁のホームページでその詳細が公開されています。
国税庁が発表した「令和6(2025)事務年度の統計資料」によれば、相続税における「簡易な接触」の件数は令和2年度(2020年度)の1.6倍を超える2万1969件にのぼりました。前年度から約17%も増加しており、これは職員が自宅などを訪れる「実地調査(9512件)」の約2.3倍の規模にあたります。この数字からは、税務署がいかに効率的な手法として「お尋ね」を多用しているかがわかるでしょう。
また、「令和6(2025)事務年度の統計資料」の「所得税の調査等の状況 」によれば、2025事務年度に簡易な接触を受けた件数は68万9000件にのぼり、申告漏れ所得金額は3502億円、追徴税額は299億円という巨額に達しています。
6. 税務署から「お尋ね」を受けた場合に、税理士に相談するメリット
「お尋ね」が届いた際、税務に詳しくない人が自力で回答するのには相応のリスクが伴います。その点、専門家である税理士への相談には大きなメリットがあります。
まず、税理士は税務署側の意図を的確に読み取れます。「この『お尋ね』が来たのであれば、相続財産の申告漏れを疑っているはずだ」といったように、当局の視点に立ってリスク箇所を特定し、適切な対策を講じてくれます。
さらに、万が一申告漏れが判明した場合でも、税理士を通じてすみやかに自主的な期限後申告を行えば重い加算税を回避し、問題を早期に収束できます。専門家に助力を求めるのは、不必要な実地調査を未然に防ぐための賢明な選択と言えるでしょう。
7. 税務署のお尋ねに関してよくある質問
Q. 税務署から「お尋ね」が来た場合は「疑われている」ということ?
正確には「税務署として確認が必要な事項がある」状態です。必ずしも疑われているわけではなく、税務署が保有するデータと、実際の申告状況、あるいは無申告の状態について、その理由を確認したいという意図です。
Q. 「お尋ね」の回答期限に間に合わない場合はどうすべき?
絶対に放置せず、封筒に記載された担当部署に電話してください。「資料の取り寄せに時間がかかっている」「税理士に相談中である」と正直に状況を伝えれば、通常は1週間から2週間程度の期限延長を認めてもらえます。
Q. 「お尋ね」と税務調査は何が違う?
「お尋ね」は任意の行政指導であり、書面や電話による確認が中心です。対して税務調査は、法律に基づく受忍義務を伴う質問検査権の行使であり、自宅などへの立ち入り調査を伴います。
「お尋ね」は、いわば本格的な税務調査に発展させないための「事前の確認段階」とも言えます。
Q. 税務署からの封筒や電話が本物かどうか確認する方法は?
昨今は税務署をかたる詐欺なども発生しているため、注意が必要です。
税務署を名乗る相手から電話がかかってきて不安を感じた場合は、その場で即答したり指示に従ったりせず、いったん電話を切りましょう。その後、国税庁の公式ホームページなどで該当する税務署の代表番号を調べ、「〇〇課の〇〇さんをお願いします」とつないでもらうのが最も確実で安全な確認方法です。
8. まとめ 税務署から「お尋ね」が届いて困ったときには税理士に相談を
筆者はかつて国税専門官として数多くの納税者と向き合ってきましたが、「お尋ね」に対して誠実に対応した場合は、結果として最小限の負担で問題が解決していました。一方で、「お尋ね」を無視したことで税務調査を招き、多額のペナルティーを課されるケースも目の当たりにしてきました。
税務署からの「お尋ね」は本来、適正な申告を促すための確認作業や、税務署の情報収集の一環として行われるものです。したがって、過度に恐れる必要はありません。むしろ、本格的な税務調査が来る前に与えられた「自主的な手続きのチャンス」ととらえるべきです。
「お尋ね」が届いた際には、まずは中身を確認して何についての回答を求められているのかを把握し、通帳や契約書などの根拠資料に基づいて正確に記入してください。回答期日までに確認が間に合わない場合は、税務署の担当部署に連絡をしてその旨を伝えましょう。回答を無視し続けると税務調査の対象になる可能性がありますので注意が必要です。
もし手元に「お尋ね」が届き、どう回答すればいいか迷った場合には、税の専門家である税理士への早期の相談をお勧めします。
(記事は2026年4月1日時点の情報に基づいています)
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