積立NISA(新NISA)は相続できる? 手続きや相続税、注意点を解説
近年の株高を背景に、新NISAを活用した資産運用を始める人が増えています。しかし、口座の名義人が亡くなった場合の取扱いや手続きが分からず、不安を感じる方も少なくありません。NISA口座を保有する人が亡くなった場合、相続税の専門家である税理士に相談するとよいでしょう。NISA口座の相続手続きと相続税のポイントについて税理士が解説します。
近年の株高を背景に、新NISAを活用した資産運用を始める人が増えています。しかし、口座の名義人が亡くなった場合の取扱いや手続きが分からず、不安を感じる方も少なくありません。NISA口座を保有する人が亡くなった場合、相続税の専門家である税理士に相談するとよいでしょう。NISA口座の相続手続きと相続税のポイントについて税理士が解説します。
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NISA(ニーサ)とは、「少額投資非課税制度」の略であり、少額の株式投資に対し所得税・住民税が課税されない制度のことをいいます。株式を売却して利益が出ると、通常は利益に対し所得税・住民税が20.315%かかります。また、配当に対しても同じ税率で税金がかかりますが、NISA口座に入れておいた株式については、売却益や配当金に対する所得税・住民税はかからないという非常にお得な制度です。
NISA自体は2014年から始まりましたが(旧NISA)、2024年に制度が大幅に拡充されました(新NISA)。旧NISAは、投資額は年間120万円まで、非課税期間は5年間という期限付きでしたが、新NISAは投資額は年間360万円まで(成長投資枠240万円、積立投資枠120万円)と増額され、非課税期間は無期限になりました(総額で1800万円まで)。
このようにお得なNISA制度ですが、開設できるNISA口座は1人当たり1口座のみなので、複数の金融機関でNISA口座を作ることはできません。ただし、途中で金融機関を変えたい場合、NISA口座を別の金融機関へ移すことは可能です。
NISA口座の保有者が死亡した場合、NISA口座に入っている資産はどのように扱われるのでしょうか。
NISA口座の所有者が亡くなった場合、口座に入っている株式など財産自体は相続人に引き継がれます。ただし、NISA口座そのものは相続人へ引き継がれないので、亡くなった時点で非課税制度は終了し、財産は相続人の口座へ移管されることになります。相続人が移管の手続きをするには、亡くなった人の口座がある金融機関へ移管の申請をする必要があります。
NISA口座自体は相続人へは引き継がれないので、保有資産は相続人の課税口座(特定口座または一般口座)へ移管されることになります。この場合、死亡日の終値でいったん売却したものとみなされるので、被相続人の死亡までの運用益は非課税ですが、相続人の資産の取得価格は死亡日の終値になります。
そのため、被相続人が取得した価格より相続人が安く売ったとしても、相続した日の終値より売却価格の方が高ければ、所得税が課税されてしまう点に注意が必要です。例えば、被相続人がA株式を100万円で購入してNISA口座へ入れ、その後相続が発生し相続人が自身の口座へ移管し(死亡日の時価は80万円とする)、相続人がA株式を90万円で売却したとすると、90万円-80万円=10万円が利益になり税金がかかってしまいます。
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相続の相談が出来る税理士を探すNISA口座内の資産を相続する場合、具体的にどのような手続きが必要なのかを説明します。
まず、被相続人が死亡した旨をNISA口座のある金融機関に連絡します。死亡の連絡を受けた口座は凍結され、それ以降の売買はできなくなります。その後の相続手続きについての案内を金融機関から受け、すみやかに「非課税口座開設者死亡届出書」を金融機関へ提出する必要があります。
NISA口座だけでなく、遺産を相続するには誰がどの財産を取得するのかを確定する必要があります。遺言書があれば遺言内容により、誰がどの資産を相続するかを確認します。遺言書が無い場合には、相続人の間でどのように分けるかを話し合い、遺産分割協議書を作成し相続する人を決定します。
遺産を誰が相続するかが確定したら、遺産分割の内容を金融機関へ届け出ます。遺言書または遺産分割協議書に、戸籍謄本や印鑑証明書など必要書類を添付して金融機関へ提出または提示します。その後、移管手続きの書類に記入・押印し、有価証券の移管手続きを行います。
有価証券の移管にあたっては、その金融機関の相続人の口座が必要な場合があるため、口座作成が必要なのかも確認する必要があります。
必要書類を提出し、金融機関の審査が通れば、被相続人がNISA口座で保有していた資産が相続人の口座へ移管されます。同じ金融機関内の口座でないと移管してくれない場合があるので、金融機関に確認しましょう。その場合、もしその金融機関に相続人の口座がなければ、新たに口座を作成する必要があります。
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相続の相談が出来る税理士を探す所得税が非課税となるNISA口座ですが、口座内の株式などを相続した場合、相続税はかかるのでしょうか。
NISA口座で非課税となるのは、売却益や配当金などにかかる所得税と住民税のみです。NISAであっても相続税は課税されるので、財産と合わせた財産の総額から債務などを引いた額が基礎控除額を超えれば相続税が課されることになります。
相続税の基礎控除とは、相続財産から控除できる金額のことであり、「3000万円+法定相続人×600万円」で計算します。仮に、法定相続人が3人であれば、基礎控除は4800万円で、課税財産がそれ以下であれば相続税は非課税となり、超える場合は基礎控除を引いて相続税を計算します。
NISA口座内に上場株式がある場合の相続税の評価方法については、課税口座と同じく、以下の価格の一番低い単価をもとに計算します。
なお、これらの評価額は依頼すれば証券会社が出してくれる場合もあります。
投資信託の評価については、相続開始日の基準価格(時価)に未収分配金を加算し、解約手数料等を控除する方法で計算します。証券取引所の休場日に被相続人が亡くなった場合は、その日に一番近い日の価格を採用します。
NISA口座を保有する人が亡くなった場合、相続税の専門家である税理士に相談するとよいでしょう。具体的にどのようなケースで、どのタイミングで相談すればよいか説明します。
相続財産を取得すると、遺産額によっては相続税申告が必要な場合があります。相続税は不動産・有価証券の評価方法が難解なうえ、各種特例・申告手続きも複雑です。相続税申告が必要かを判断するためには、相続税専門の税理士に相談したほうが手続きをスムーズに進められます。
相続税申告が必要な場合、原則的に亡くなった日から10カ月以内に申告・納税が必要です。納税資金の確保にも時間がかかることが想定されるため、早めに相談されることをおすすめします。
資産の種類が多岐にわたると、それぞれ評価方法が異なり複雑化するため、税理士のアドバイスを受けるのが安心です。評価方法を一つずつ調べて評価していくのは、思った以上に大変な作業です。筆者のお客様からも、「最初から専門家に任せておけばよかった」という声をよく聞きます。
また、専門家に任せることで、処理の誤りを防げるとともに、複数の評価方法から適切なものを選択することによって税額の軽減にもつながるケースもあります。
相続後に株式を売却すると、課税口座内の株式売却のため所得税・住民税がかかります。相続税の評価と売却時の譲渡損益の計算は税目も違い、全く方法が異なります。
また相続税を払って相続財産を売却した場合は、所得税の取得費が増える特例もあるので、税理士のアドバイスを踏まえた対応をしたほうが、節税の観点から見てもメリットが大きいといえます。
NISA口座の所有者が死亡した場合、速やかに相続手続きをすべきです。何もせず放置しておくと、相続口座内の資産の売却や出金ができない状態が続くので、適切なタイミングで売約できないなどのデメリットが発生します。遺産分割協議が長引くなどの理由がない限り、早めに手続きをしましょう。
特定口座(源泉徴収あり口座)であれば売却益の税金を金融機関が天引きしてくれるので、原則確定申告をする必要がありません。
一方、一般口座の場合、利益が出れば自分で確定申告をする必要があるので、その手間を考えると特定口座のほうがよいと考えられます。ただし、特定口座でも源泉徴収なしを選択すると自分で確定申告をする必要があります。
NISA自体は所得税・住民税の非課税口座であり、相続税は課税されるため、直接的には相続税対策にはなりません。ただし、例えば、親族へ贈与税の非課税範囲内(年間110万円以下)で資金贈与をし、そのお金を親族がNISA口座に入金して運用する場合は、将来の相続財産は減り、受贈者も無税で財産を増やせる可能性が高まるので、相続税対策になるといえます。
新NISAは売却益・配当の所得税・住民税の非課税期限が無制限になったことから、今後も口座開設は増えていくと思われます。株式や投資信託を含めた資産が多岐にわたる場合や、相続後にNISA口座内の資産を売却しようと考えているときは、早めに専門家である税理士に相談することをおすすめします。
(記事は2026年3月1日時点の情報に基づいています)
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