不動産を相続したらどこに相談すれば?無料相談できる9の窓口を事例別に紹介
不動産を相続する立場になった場合、「何をすればいいの?」と迷うことが多いでしょう。その際は、自身のニーズに対応できる会社や専門家に相談しながら手続きを進めるのが一般的です。この記事では、無料で相談できる9の窓口を、自らもマンション経営を実践している不動産コンサルタントが解説します。
不動産を相続する立場になった場合、「何をすればいいの?」と迷うことが多いでしょう。その際は、自身のニーズに対応できる会社や専門家に相談しながら手続きを進めるのが一般的です。この記事では、無料で相談できる9の窓口を、自らもマンション経営を実践している不動産コンサルタントが解説します。
目次
不動産を相続したとき、その後のニーズはさまざまでしょう。土地をビジネスに生かしたいという人もいれば、相続に必要な手続きが複雑で難しいので代行を依頼したい人もいると思います。
不動産相続において会社や専門家に相談するときは、自身の要望にあわせて相談相手を選ぶことが重要となります。それぞれ対応できる内容が異なるためです。
これらの相談先のうち、役所や法務局は無料で利用できます。それ以外については、無料で相談できるところもありますが、一定の範囲に限られていることがほとんどのため注意が必要です。
例えば、大手ハウスメーカーや管理会社、不動産会社などは、提案書・見積書提出は無料ですが、それ以外のことをお願いする場合、基本的に料金が発生します。
司法書士、弁護士、税理士なども初回相談のみ無料で、それ以降は有料となるのが一般的です。法テラスについても、無料範囲は3回までの相談(1回の相談は30分まで)に限られます。
相続した不動産を土地活用したい場合には、相談先としてハウスメーカーが適しています。
土地活用は、アパート・マンション経営や駐車場経営、トランクルーム経営、店舗経営、オフィスビル経営など多岐にわたります。
相続した不動産を大手ハウスメーカーに相談した場合、立地や周辺環境などを勘案しながら最適な土地活用手法を提案してくれます。
それぞれの土地活用において要する建築費や諸経費の見積りを算出するだけでなく、建築後の収益や節税額などのシミュレーションもしてくれます。
タイミングとしては、遺言書の記載内容、もしくは遺産分割協議の内容に応じて遺産分割を行い、不動産の名義を変更した後が良いでしょう。誰がその不動産の所有者なのか明確にしたあとのほうが、ハウスメーカーとの土地活用の話がよりスムーズに進むことが多いためです。
ハウスメーカーに相談するときは、相談先を1社だけに絞るのではなく、複数社(3社以上)に相談することをおすすめします。複数社から提示される提案書や見積書を比較検討しながら、最も相応しい土地活用手法を見出すことが可能です。
複数社を自分で見つけるのが難しい場合は、相続会議の「土地活用一括資料請求」のような、複数社に一括相談ができるインターネットサービスを利用するのも良いでしょう。
なお、狭小地や変形地、高低差の大きな敷地の場合、規格商品を扱う大手ハウスメーカーでは対応できない場合があるため、中小規模のメーカーのみに絞って相談したほうがスムーズかもしれません。
大手ハウスメーカーであれば、どの土地活用においても、提案書(基本計画図)・見積書・事業計画書の提示までは無料となります。
ただし、中小規模のハウスメーカーの場合、提案書(基本計画図)に対する費用を請求される場合もありますので、事前確認が必要です。
被相続人(亡くなった人)が生前アパート経営やマンション経営を行っていて、それを引継ぎたいときは、当該不動産の管理会社に相談します。
管理会社に依頼・相談できることは、入居者管理と建物管理です。
入居者管理には、入居者募集、賃貸借契約、家賃集金、トラブル・クレーム対応、契約更新、退去手続きなどがあります。
建物管理には、清掃や植栽管理のほか、建物の外回りや共用設備(エレベーターや給排水設備、消防設備など)、住戸内設備(キッチン、浴室、洗面、トイレ、エアコン、給湯器など)の点検・修理があります。このほか、長期修繕計画の立案や、大規模修繕工事の実施も建物管理の対象です。
管理会社への相談・依頼は速やかにすることをおすすめします。特に入居者からの問い合わせや不動産仲介会社からの空室状況の確認などが遅くなると、思わぬトラブルが発生することがあります。
管理会社に相談・依頼するときは、被相続人と管理会社がこれまでどのようなやり取りをしてきたのか確認しつつ、疑問点があればその場ですぐに解消することが大切です。
なお、被相続人が利用していた管理会社を無理に利用し続ける必要はありません。相続を機会に、これまで利用してきた管理会社を含め、あらためて複数の管理会社から管理内容(入居率向上に向けた施策がなされているか否かが重要)や管理費用を提示してもらい、比較検討しながら選択してみるのも一つです。
管理会社に相談するだけなら無料です。
正式に依頼した場合、家賃収入の5%程度の管理費用が発生します。入居率向上を図る目的で、住戸内の模様替えやステージングなどを依頼すると別途費用がかかるため注意しましょう。
相続した不動産を売却したい場合には、不動産会社に相談するのが一般的です。
ただし、不動産会社には、以下のようにさまざまなタイプがあります。
兼用している会社もありますが、売却したいときは不動産の売買を主たる業務とする不動産会社を選択することが重要のため、会社のWebサイトを見て確認しましょう。
不動産会社にできることは、売却方法の相談や売却価格の査定の依頼です。
例えば、築年数がかなり経過した建物の場合、リフォームやリノベーションをした方が良いのか、解体した方が良いのか迷うところでしょう。その場合、不動産会社に相談すると、担当者が現地調査や市場調査、役所調査などを行い、適切な対処方法をアドバイスしてくれます。
また、相続税の納税資金として不動産の売却を検討している場合、早く売却することが重要となります。その際も不動産会社に相談すると、早く買い手が見つかる方法を助言してくれます。場合によっては、不動産会社が直接買い取ってくれることもあります。
さらに不動産会社は、これらの売却方法の検討時に、不動産をさまざまな角度から調査し売却価格の査定も行ってくれます。査定価格は立地条件・建物条件(最寄駅からの距離、土地面積、建物面積、法規制、築年数、劣化損傷程度、周辺環境、競合物件価格、利回りなど)を総合的に鑑みて算出するのが一般的です。
不動産会社へ相談したほうが良いタイミングは、ケースによってさまざまです。
例えば、売却したいと考えているが売却金額によっては相続の権利を放棄したいと考えている場合、相続放棄の期限が相続発生認知から3カ月以内と決められているため、それまでに相続不動産に関する資料をそろえて不動産会社に相談する必要があります。
また、売却金額を相続税を支払うための資金としたいと考えている場合、納付期限が相続発生認知から10カ月以内と決められているため、同様に余裕を持って不動産会社に連絡したほうが良いでしょう。
一方、将来的に売却を考えているがそこまで急いでいない場合、相談のタイミングは自由です。ただ不動産を保有していると固定資産税・都市計画税が毎年かかるため、最も高価に売却できる方法をなるべく早めに見つけることをおすすめします。
不動産会社に相談するときのポイントは、複数社(3社以上)に連絡をし、売却方法や売却査定価格を比較・検討することです。特に売却査定価格は、その不動産会社の売却実績や営業姿勢などによって大きく変わります。
また、売却価格を比較・検討していると、他の不動産会社よりも飛びぬけて高い査定価格を提示する不動産会社が現れる場合があります。
その場合、その不動産会社の査定価格を疑ってみる目も大切です。なぜなら、不動産媒介契約を締結したいがために、わざと高い査定価格を出している可能性が高いからです。
その査定価格で売却活動を開始すると、相場よりも高いため売れ残り物件と化し、最終的に大幅値下げをせざるを得ない状況になることも珍しくありません。
不動産会社に相談する際の費用は、原則かかりません。
ただし、遠方にある不動産で、不動産会社が調査を行うのに高額の旅費交通費などが発生する場合、その旅費交通費分を請求される場合があります。
いずれにしても、費用発生の有無は事前に確認するべきです。
正式に依頼することになった場合、仲介手数料が必要になります。不動産会社の仲介手数料は宅地建物取引業法(宅建業法)で上限が決められています。
不動産を相続したときは、不動産の名義変更などを始め、さまざまな手続きが必要となります。この手続きを自分で行うのが難しい場合は、司法書士に相談しましょう。
司法書士に相談・依頼できる内容は、下記の通りです。
相続に関する各種手続きは弁護士が対応できるものが多くありますが、不動産の名義変更手続きは司法書士が行うのが一般的です(トラブル対応の一環として弁護士が対応する場合もあります)。
相続人同士などでトラブルが起きていない限りは司法書士、と覚えておいたほうがわかりやすいでしょう。
不動産の名義変更(相続登記)については速やかに依頼しましょう。不動産を相続したことを知ったときから3年以内に登記しなければ、10万円以下の過料が発生する可能性があります。相続登記は2024年4月1日から義務化されているため、どの人も例外ではありません。3年もあるからと後回しにしていると、気づいたら間に合わない状況にもなりかねないため、早めに司法書士に相談することをおすすめします。
相続放棄の場合は、不動産を相続したことを知ったときから3カ月以内に手続きをしなければ、「単純承認」(借金などの負債も相続)という扱いになります。手続きできる期間が短いため、こちらも速やかに司法書士に相談・依頼しましょう。
司法書士と弁護士は、手続きの範囲が違います。弁護士は家事事件の代理権がありますが、司法書士には家事事件の代理権がなく、依頼できるのは書類作成のみです。相続手続きにおいて訴訟が発生した場合、あるいはその可能性がある場合は弁護士に相談してください。
司法書士への相談料は、法律相談の場合には、1回あたり5,000円が相場です。初回相談は無料にしている事務所もあるため、事前に確認しましょう。
正式に依頼したときは、不動産名義変更(相続登記)の場合であれば55,000円以上、遺産整理業務(相続手続き全般への対応)の場合であれば275,000円以上の費用がかかります。ただし内容や司法事務所ごとによって変わるため、こちらも事前に確認することが大切です。
費用に不安がある場合、相続登記相談センターがあります。相続登記相談センターは、日本司法書士会連合会が運営している相談窓口です。司法書士が、電話や対面、オンラインなどで相談に応じる時間を設けてくれます。
全国47都道府県対応
不動産の相続相談ができる司法書士を探す相続人の間で、トラブルが発生した(あるいは発生しそうな)場合は弁護士に相談しましょう。
通常は税務と不動産登記以外のたいていの相続手続きについて相談、依頼できます。
弁護士は、相続に関する問題に対応できる「トラブルの専門家」です。
トラブルや裁判調停に発展しそうな遺産相続手続きや、紛争になる可能性が高い遺産分割協議などの場合、当人同士で解決を図ろうとすると事態が悪化して収拾により時間がかかる可能性もあるため、できる限り早い段階で弁護士に問い合わせることをおすすめします。
弁護士は、相続人間でトラブルになるのを避け、スムーズに手続き、協議を進めるために調整を図ってくれます。
弁護士に相談・依頼をするときは、一つの法律事務所だけにするのではなく、複数の法律事務所に相談をし、比較検討した上で対応を依頼しましょう。
なお、トラブルが起きる可能性がなく、司法書士で対応できる内容であれば、司法書士に依頼した方が一般的に費用は抑えられます。
弁護士への相談料は、法律相談の場合には30分あたり5,000円が相場です。初回相談については無料としている法律事務所もあるため、事前に確認しましょう。
正式に対応を依頼することになった場合は、着手金や報酬金の支払いが発生します。
以前は日本弁護士連合会(日弁連)にて報酬基準が示されていましたが、現在金額については法律事務所ごとに異なるため、相談時によく確認しましょう。
全国47都道府県対応
不動産の相続相談ができる弁護士を探す不動産を相続したとき、相続人に相続税が発生します。税金の計算や申告などについて困ったときは、税理士に相談しましょう。
税理士に相談できることとしては、準確定申告と相続税申告が挙げられます。
準確定申告は、被相続人が亡くなった年の1月1日から亡くなる日までの所得に対して、いくらの税金が発生したのか計算し、税務署に申告する手続きのことです。
相続税申告は、相続人が被相続人から引き継いだ全財産に対してかかる税金を計算し、税務署に申告する手続きを言います。相続税の納税義務者は、被相続人の全財産の相続税評価額が基礎控除額を上回る人です。基礎控除額は、「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人数」の計算式で算出します。
税理士には、これのほかに法定相続人調査や相続財産調査、事案によりますが遺産分割協議書の作成も相談・依頼することができます。
準確定申告の場合、申告・納税期限が相続の開始を知った日の翌日から4カ月以内と決められています。相続税申告の場合は、相続の開始を知った日の翌日から10カ月以内です。
ただ、各種申告においては相続資産の把握、遺言書の確認や有効性、遺産分割協議などが必要になる場合もありますので、相続の開始を知ったタイミングで速やかに税理士に相談・依頼することをおすすめします。
税理士に相談・依頼するときのポイントは、相続税に強い税理士を選択することです。相続税の案件は所得税の案件と違って数が少なく、税理士とはいえ相続税に慣れていない場合もあります。
相続税に慣れている税理士であれば、不動産の相続税評価額を下げるさまざまなノウハウを有しているため、相続税納税額を抑えることができます。平たく言えば、定価で購入するのを避け、割安で購入できるようなイメージです。
税理士への相談料は、法律相談の場合には1回あたり5,000~10,000円が相場です。初回相談は無料にしている事務所もあるため、事前に確認しましょう。
正式依頼になると、税務代理報酬や税務処理の作成報酬が発生します。トータルの報酬額は遺産総額の0.5~1%が相場で、ここに申告の難易度に準じた報酬が加算されます。例えば相続人が多い、申告期限までの時間が短いなどの場合、相場よりも高くなる傾向にあります。
こちらも実際には税理士事務所ごとに異なるため、相談時によく確認するようにしましょう。
全国47都道府県対応
不動産の相続相談ができる税理士を探す不動産相続で、一般的な内容を相談したいときや必要書類を自分で作成したいとき、経済的な余裕がないときの相談先を紹介します。
明確に相談したい内容が決まっておらず、相続の全般的な相談をしたいときには、役所の窓口に相談すると良いでしょう。公的機関が窓口となり無料であることから安心して相談できます。
相談員は、弁護士・司法書士といった専門家が担当することが多く、不動産相続のトラブルや登記に関する相談も可能です。
ただし、相談時間は20~30分に制限されている場合が多く、具体的な解決には至らない可能性が高いことには注意する必要があります。
自身で相続の必要書類を作成したいときは、法務局に相談します。
法務局は全国に配置されており、相続登記に関する相談を受け付けています。相続登記に関する書類の申請方法や記入方法などを教えてもらえます。
ただし、遺産分割などに関する相談はできません。
弁護士や司法書士に依頼したくても、経済的事情で相談できない人については、法テラスに問い合わせるのがおすすめです。
弁護士や司法書士に最大3回まで無料で相談可能です(1回の相談時間は30分まで)。
不動産相続の相談を行うにしても、手ぶらの状態で相談すると、相談される側(弁護士、司法書士、税理士など)も適切なアドバイスをすることができません。
自分で確認できることはした上で、相談するように心がけましょう。
まずは遺言書があるかを確認します。遺言書とは、被相続人が生前に遺産を誰にどれだけ相続させるのかを記したものです。
司法書士が不動産の名義変更手続きをするにしても、税理士が相続財産をもとに相続税を算出するにしても、そもそも誰がどの程度の遺産を相続しているのかがわからなければ、手続きを進めることができないため、必要書類の一つとなります。
もし遺言書がない場合は、相続人全員による遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を提出します。
ただ、遺産分割協議は時間や手間が非常にかかり、相続人同士のトラブルの種になることもしばしばあります。被相続人が遺言書を残している可能性が考えられるのであれば、必ず探しておきましょう。
遺言書(もしくは遺産分割協議書)以外の相続に関わる書類も、可能な限り用意します。
例えば、不動産の資料(固定資産評価証明書、登記済権利証など)、被相続人の資料(戸籍謄本、除籍謄本、住民票の除票など)、相続人の資料(戸籍謄本、住民票など)などです。
相談時に上記資料が欠けていたり違っていたりする場合、手続きに時間を要したり、追加の費用がかかったりする可能性があります。
相続税は、プラスの資産やマイナスの資産を全て把握した上で算出されます。したがって、被相続人の財産を全て把握(相続財産調査)する必要があります。
この確認作業については司法書士や弁護士に依頼もできますが、自分で行うことも可能です。相談相手の手間を減らすことは報酬費用の負担軽減につながるため、できる限りしておくことをおすすめします。
【プラスの資産の例】
【マイナスの資産の例】
相続人を確定しておくことも大切です。当人が相続人だと思っていても、法的にはそうではなかったというケースがあります。また、まれに被相続人に隠し子がいて、遺産分割協議がこじれる場合もあります。被相続人の本籍地を管轄する役場で戸籍謄本を取得し、確認するようにしましょう。
相続人となれるのは配偶者、それ以外は血族の中で優先順位の高い人となります。
【法定相続の優先順位】
第1順位:子および代襲相続人(孫)
第2順位:直系尊属(両親)
第3順位:兄弟姉妹および代襲相続人(甥・姪)
相続にはさまざまなケースがあり、必要となる知識も異なります。相談内容により相談先が異なるため注意が必要です。ケースによっては、複数の専門分野にまたがって解決を図らないといけない不動産相続案件もあります。
相談する際は、一人の専門家だけに問い合わせるのではなく、複数の専門家に問い合わせることが大切です。提案内容や見積内容を比較検討しながら、決定するのが良いでしょう。
この記事では不動産を相続してからの相談タイミングを記しましたが、ベストなのは相続発生前(生前)です。早ければ早いほど選択肢も増え、節税対策も打つことができ、トラブルを未然に防ぐことが可能です。
いずれにしても、相続に関する資料を速やかに収集し、専門家への早めの相談が鍵となります。
(記事は2024年5月1日時点の情報に基づいています)