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1. 相続登記の義務化、高齢化によって相談者が増加

ーー高齢化が進んでいるなかで相続に関する関心が高まっていますか。

森川:今年4月27日から始まる「相続土地国庫帰属制度」や、2024年4月1日から始まる「相続登記の義務化」などの法改正によって、相続への関心が高まっているように感じます。また、空き家を問題視した自治体による相続登記の促進や、広報誌での紹介も追い風となっている部分もあります。近年の傾向として、司法書士への相談件数に対して相続の比率が高まっているのが特徴です。

ーー相続が発生してから相談する人が多い印象です。

森川:やはり事後に相談されるケースが多いです。ただ、遺言や任意後見制度などのように生前にしかできない対策があるので、セミナーや相談会を通して「生前対策の大切さ」を伝えていく努力をしています。

平方:セミナーや相談会の参加者は、自身の相続に不安を持っている人がほとんどですが、なかには認知症の親をもつ推定相続人が参加されていることがあります。ただ、認知症になってしまうと、生前対策がほとんど打てなくなってしまうので、生前であっても早めの相談が大切です。

奈良県司法書士会が開いた相続登記に関する無料相談会(写真提供:奈良県司法書士会)
奈良県司法書士会が開いた相続登記に関する無料相談会(写真提供:奈良県司法書士会)

2. 認知症になると生前対策が限定的に

ーー認知症になると取れる対策が変わるのでしょうか。

平方:変わります。認知症になった人の判断能力にもよりますが、遺言書や任意後見制度が利用できないケースが考えられます。これらの制度を利用できなければ、相続発生後にトラブルになったり、不動産が売却できなかったりする可能性があります。

ーー認知症がどれくらい進むと対策ができなくなるのですか。

平方:対策の種類や内容によって、求められる判断能力が変わります。たとえば、「自分が亡くなったときにAさんに全財産を相続させる」という単純な遺言書は作成できても、「Aさんが亡くなっていればBさんに証券を、Aさんが存命であればBさんへ不動産を相続させる」といった複雑な遺言書は、判断能力がなければ作成できないケースもあります。

公正証書で作成する場合は、最終的に公証人が判断することになるので、認知症が進む前に行動しておくことが重要です。

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3. まずは「財産の把握」から始める

ーー相続に対する不安を持ちながらも、多くの人が行動できていないのが現状だと思います。そういった人は何から始めるべきですか。

森川:まずは「財産の把握」から始めるのがおすすめです。財産をまとめるときは、現預金以外の証券や不動産といった資産まで把握することが大切です。なかには、土地に面している道路の所有権が先々代のままで残っていたり、建物の増改築が登記簿に反映されていなかったりといった事実が判明して、土地売却に影響することも考えられます。

また、プラスの財産だけでなく、マイナスの財産も把握しておくことも大切です。債務の借入先や金額などをまとめておけば、相続人が不安に感じたりトラブルに発展したりすることが防止できます。

ーーただ、個人で始めるには少しハードルが高いように思います。

森川:そういったときは「エンディングノート」を活用してみるのも手段の一つです。法的な効力がなくとも、相続が発生したときの財産調査に役立ちますし、自身の想いを伝えることにもつながります。財産の把握が、遺言や後見制度などを検討するきっかけになる場合もあるので、ぜひ試してみてください。

平方:財産の把握と並行して「どんな人が推定相続人になるのか」を調べておくのもおすすめです。認知症や行方不明といった特別な事情がある相続人にいると、思うように相続手続きが進まないことがあります。預金が引き出せなかったり、土地が売却できなかったりすることがないように、事前に確認しておくと安心です。

オンライン取材に応じる奈良県司法書士会の森川崇会長(右)と平方貴之副会長
オンライン取材に応じる奈良県司法書士会の森川崇会長(右)と平方貴之副会長

4. 無料相談会やセミナーを活用して早めの相談を

ーー不安が明確化されていない漠然とした状態で相談してもよいのか不安です。

平方:漠然とした不安がある状態で相談いただいても問題ありません。反対に「成年後見制度を利用したい」「家族信託について教えてほしい」といった明確な理由があるケースの方が少ない印象です。

奈良司法書士会では、居住地や体調にあわせて活用いただくために出張相談やウェブセミナーにも取り組んでいます。相続に対する不安を軽減させるためにも、なるべく早い段階で相談してほしいです。

ーーこれから相続登記を検討されている人にアドバイスをお願いします。

平方:相続に対して不安を感じたら、まずは司法書士に相談してください。成年後見制度や民事信託などに関与している割合が専門職のなかでも高い司法書士は、生前対策から相続までワンストップで対応できます。

ほかにも、不動産分野における専門性にも強みがあります。相続税申告された財産の約30%が不動産が占めているといわれています。司法書士にご相談いただければ、不動産の専門家としてのアドバイスはもちろんのこと、弁護士や税理士、不動産会社などへの橋渡しをする窓口になることも可能です。

森川:相続登記の義務化によって相続への関心が高まってますが、その根底には不動産の未登記や管理不全が社会問題となったことがあります。土地の所有権が確認できずに東日本大震災の復興が遅れてしまった事実もあるので、一人ひとりが相続登記への意識を高めていくことが大切です。相続登記の義務化をきっかけに、できるだけ早く司法書士にご相談ください。

奈良県司法書士会
奈良市の本会のほか、奈良県内に北支部と南支部を設置。奈良県内の司法書士が約200名と、5つの法人が登録している。自治体と連携した定期相談会のほか、ウェブセミナーや地方相談会に取り組んでいる。

(記事は2023年2月1日現在の情報に基づきます)

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