市民活動の「血液」である資金を助成

――佐賀未来創造基金では、どのような活動をされているのでしょうか。

市民や企業から頂いた寄付を、子どもの貧困対策や環境問題、災害対応などの地域課題を解決するために活動している団体へ助成しています。助成の対象となる団体には、NPO法人だけでなく、老人会や婦人会などの市民活動をしている団体も含まれます。これらの団体を人的・資金的に支援することが主な目的です。

佐賀県には現在、NPO法人が約400団体ほどあり、老人会やPTAなどの市民活動団体も含めると数えきれないほどの団体があります。ただ「地域をよくしたい」と考えていても、資金的な問題から活動が続けられない団体が多いのも実情です。だからこそ、活動の「血液」となる資金を助成するのが大切だと考えています。

遺贈寄付の活用事例が少ないのが現状

――どのようにして寄付金を募っていますか

市民や企業からの寄付や、佐賀県版「ふるさと納税(NPO指定寄付)」で助成活動をしています。ほかにも、「休眠預金等活用事業」の資金分配団体として受け取った休眠預金(10年以上取引のない預金)を活動に充てています。

――遺贈寄付はいかがでしょうか。

遺贈寄付の相談自体は年4、5件はあるのですが、実際に遺贈していただくケースは、ほとんどありません。

遺贈寄付として相談に来られるケースのほとんどが「不動産」です。なかでも、山中にある一軒家や畑など、活用しづらい物件が多いので、引き受けができていない状態です。

近年の傾向から「おひとり様」が増えているので、住む人がいない空き家が増えるのではないかと思います。佐賀市内も路地に一歩入ると空き家が多いんですよね。私たちはNPO法人「空家・空地活用サポートSAGA」さんなどと協働して有効活用の方法を探っています。

「まだ遺贈寄付の認知度は低いので、まずは認知の拡大が大事です」という佐賀未来創造基金の吉村興太郎専務理事
「まだ遺贈寄付の認知度は低いので、まずは認知の拡大が大事です」という佐賀未来創造基金の吉村興太郎専務理事

遺贈された民家を地域のために活用

――遺贈寄付の事例にはどんなものがありますか。

佐賀県鹿島市内の女性から遺贈寄付を受けた事例があります。

女性は晩年を老人ホームで過ごされており、法定相続人がいらっしゃいませんでした。遺贈を受けた財産としては、築約100年の自宅と預金が約300万円。建物を解体すると、約150万円かかる状況でした。

鹿島市社会福祉協議会とボランティア団体と連携して建物の補修を行い、民間の防災拠点「傍楽庵(はたらくあん)」として、災害物資の備蓄やボランティア参加者の宿泊施設として生まれ変わりました。

これらの改修にかかった費用には助成金などを活用しました。女性から遺贈を受けた預金300万円は地域基金として、まちづくりをするために活用しています。

――寄付された方には、どんな”想い”があったのでしょうか。

「地域に迷惑をかけたくない。地域に恩返しをしたい」といった”想い”が非常に強くありました。なので、自宅を防災拠点として再生し活用させていただくことにしました。また、まちづくりやコミュニティの活性化のために、残された預金は大切に使わせていただいています。

公正証書遺言の作成をする際に「このあとは頼むね」と何度も頼まれました。あとのことを頼める相手がいることに安堵しておられたと思います。こういったことを「どこに相談すればいいのか」と悩まれていたのでしょうね。

「傍楽庵」は、「地域に恩返しがしたい」という想いが実り、災害物資の備蓄やボランティア参加者の宿泊施設に使われています
「傍楽庵」は、「地域に恩返しがしたい」という想いが実り、災害物資の備蓄やボランティア参加者の宿泊施設に使われています

遺贈寄付という選択肢を知らない人が多い

――ちなみに、この寄付された女性が直接相談に来られたのでしょうか。

いえ、違います。「遺産を地域に役立ててほしい」という想いから、元々は社会福祉協議会に連絡し、法律事務所に相談されていました。その法律事務所の方から佐賀未来創造基金へ遺贈寄付をしたいとの連絡を受けました。

法律事務所の所長さんに聞いたところ「不動産などの遺産を地域に活かすためにどうすればよいのか」と探している中で、佐賀未来創造基金を見つけていただいたそうです。ユニセフや赤十字社も検討されたようですが、「地域のために」という部分が決め手になったようでした。

――やはり、士業の方もどこに話を持ちかければいいのか悩まれているのですね。

そうですね。佐賀県で活動されている士業の方も、私たちのように遺贈寄付を受け付けている地域の団体の存在を知らない人が多くいると思います。当然、遺贈する人も「どこに相談すればいいのか」と悩まれているでしょう。

認知を拡大するために、数年前から士業向けの遺贈寄付セミナーをしているのですが、それだけでは拡大せず、最近では遺贈者が遺贈について相談する「最初の窓口」となる地元の銀行やJA、そしてこれらの案件を多数扱っている法律事務所との連携を模索しています。

佐賀県では、NPO法人や市民活動団体、ボランティア団体、婦人会、老人会、PTAなどをCSO(市民社会組織)と呼び、さまざまな誘致活動が行われています。写真は財団主催の「佐賀の未来につながるCSO(市民社会組織)交流会」の様子
佐賀県では、NPO法人や市民活動団体、ボランティア団体、婦人会、老人会、PTAなどをCSO(市民社会組織)と呼び、さまざまな市民活動が行われています。写真は財団主催の「佐賀の未来につながるCSO(市民社会組織)交流会」の様子。マイクを持って話しているのは、山口祥義・佐賀県知事

少額の遺贈でも、子どもの進学を支援できる

――佐賀未来創造基金に「遺贈寄付をしたい」と考えたときは、何円ぐらい必要なのでしょうか。

「冠基金」といって、30万円から設立できる基金があり、子育てや環境、まちづくりなどのテーマを決めることができるので、自身の想いを伝える手段として活用できます。

具体的には、生活が苦しく高校に行けない子どもがいる世帯に、通学のための自転車や授業で必要な体操服などの支援をしています。ほかにも、子ども食堂やフードバンクをつくり、食べ物を届けるフードドライブをする団体等があります。

――寄付で子ども達への支援ができるのですね。

そうです。少ない金額であっても、みんなで持ち寄れば何百万円という大きなお金になり、多くの子どもを助けられます。遺産のほんの一部でもいいから「地域に貢献したい」という想いと一緒に持ち寄ってくだされば嬉しいです。

――まずは、「知ってもらうこと」が大切なのですね。

そうですね。活用してもらうにしても、まずは知ってもらう必要があります。佐賀未来創造基金としては、先ほどの法律事務所や社会福祉協議会、行政などと協力して遺贈寄付を広めていきたいです。

私たちは、士業や行政はもちろんのこと、NPO法人や市民活動団体との協働も強めています。こういった「地域の受け手」でありながら「繋ぎ手」にもなれる団体が、佐賀未来創造基金であると自負しています。そのためにも「遺贈を考えているけど、どこに相談すればいいのかわからない」といった方に寄り添える団体であり続けます。

公益財団法人佐賀未来創造基金
市民や企業からの寄付をNPO法人や市民活動団体などのCSOに助成することで、地域や社会の課題解決や活性化に取り組む財団。休眠預金事業の資産分配団体に指定され、生活困窮者や子育てへの支援を行っている。

(記事は2022年12月1日現在の情報に基づきます)

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