目次

  1. 1. アパート経営で節税できる税金の種類
  2. 2. アパート経営による相続税の税金対策
    1. 2-1. 土地建物の購入による節税
    2. 2-2. 貸地、貸家による節税
    3. 2-3. 小規模宅地の特例による節税
  3. 3. アパート経営で贈与税の税金対策する方法
    1. 3-1. 相続時精算課税制度による節税
    2. 3-2. 賃料を贈与して節税
  4. 4. アパート経営で所得税、住民税の税金対策する方法
    1. 4-1. 損益通算
    2. 4-2. 繰越控除
    3. 4-3. 節税の計算例
    4. 4-4. 法人化や青色申告で節税
  5. 5. アパート経営で固定資産税を節税する方法
    1. 5-1. 住宅用地の特例で税金対策
  6. 6. アパート経営で節税する際の注意点
    1. 6-1. 赤字経営は本末転倒
    2. 6-2. 節税効果は徐々に薄れていくことも
    3. 6-3. 税金対策より利益の追求が重要
  7. 7. まとめ

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アパート経営で節税できる税金の種類と節税方法は下表のとおりです。

アパート経営で相続税の税金対策をする方法について解説します。

不動産は一般的に現金よりも相続税評価額が低くなります。そのためたとえば、1億円の預金を残して亡くなったら1億円に対して相続税が課税されますが、生前に1億円で土地とアパートを購入していたら、その評価額を下げることができるため、節税となります。

アパートのような収益物件では、相続税評価額の計算ルールとして土地は貸家建付地(かしやたてつけち)による評価減、建物は借家権割合による評価減が適用されます。それぞれの求め方は以下のとおりです。

借地権割合とは、30~90%の範囲で定められた数値のことです。借家権割合とは、全国一律で30%です。賃貸割合とは相続時における入居率になります。

小規模宅地の特例とは、一定の要件を満たす土地について限度面積まで相続税評価額を80%または50%まで減額する制度です。

アパートのような収益物件は、「貸付事業用宅地等」と呼ばれる土地に分類され、200平米までの土地が50%まで減額されます。

贈与税の制度を駆使して、相続税の対策をすることができます。

相続時精算課税制度とは、成人した子や孫に生前贈与する時は2500万円までは非課税だが、贈与した人が亡くなった際に贈与した財産を組み戻して相続税を計算する制度です。

結局、相続時に贈与した分を差し戻す制度なので、相続税が減るわけではありません。

しかしながら、アパートのような収益物件を生前に子に贈与することで、子が賃料収入を得ることができ、子が相続税の納税用の資金を貯めることができます。

よく行われるものとしては、相続時精算課税制度を使ってアパートの建物だけを子に贈与する対策です。子が相続税の納税資金を準備できることから「納税対策」と呼ばれます。

暦年贈与を利用して、賃料を贈与し、相続税対策をすることができます。暦年贈与とは、年間110万円以下の贈与であれば贈与税が非課税となる制度です。

親が子に毎年110万円ずつ贈与していけば、親の財産が増えることを抑えられ、相続税の「節税対策」となります。また、子が暦年贈与によって相続税の納税資金を貯めることができるため、「納税対策」にもなります。

アパート経営で所得税や住民税の税金対策をする方法を解説します。

損益通算とは、マイナスの所得をプラスの所得に合算して全体の所得を小さく計算できる制度です。所得が少なくなることから、所得税と住民税を節税することができます。

アパート経営で得られる所得は「不動産所得」です。不動産所得は以下の計算式で求めます。

不動産所得 = 収入金額 - 必要経費

不動産所得は損益通算が認められている所得であり、不動産所得でマイナスが出たらほかの給与所得等に合算することができます。不動産所得を計算するうえで、経費となるものは以下のような費目です。

【必要経費】

  • 公租公課(固定資産税、都市計画税、不動産取得税、登録免許税、印紙税)
  • 損害保険料(火災保険、地震保険)
  • 修繕費
  • 管理委託料
  • 入居者募集のための仲介手数料や広告宣伝費
  • 共用部分の水道光熱費
  • 解体費・立ち退き料
  • ローン保証料
  • 借入金利子
  • 減価償却費
  • 賃貸経営に必要な通信費、交通費、接待交際費、新聞図書費、消耗品費等

減価償却とは、建物部分の価格を一定の年数に分けて、毎年の経費として計上する会計処理のことで、不動産所得を抑えることができます。

必要経費の中に、借入金の「利子」はありますが、「元本」は必要経費とならない点は抑えておきましょう。

個人の損益通算では、初年度に控除しきれなかったマイナスは、翌年以降3年間にわたって繰り越して控除することができます。

まず、アパート経営に関しては、継続的に毎年赤字が発生することはほとんどありません。健全なアパート経営であれば、経費率は建物の減価償却費も含めて家賃収入の6~8割程度です。つまり、アパート経営の利益に相当する不動産所得は家賃収入の2~4割程度となります。

ただし、「初年度」や「外壁塗装等の大規模修繕を行った年」や「アパートを解体した年」などにおいては、支出が大きくなり不動産所得が赤字になってしまうこともあります。

初年度が赤字になるのは、初年度には不動産所得税や登録免許税、全戸分の仲介手数料といった初年度特有の費用が生じるためです。

たとえば、年収900万円の給与所得者の所得税を計算してみます。給与所得や配偶者控除、保険料控除等を合計した所得控除額は250万円と仮定します。

所得税(復興特別所得税を除く)の金額は以下のとおりです。

所得税 = (900万円 - 250万円) × 20% - 42.75万円
    = 87.25万円

次に、年収900万円の給与所得者がアパート経営によって初年度に▲100万円の赤字をだしたと仮定します。損益通算により、その年の所得は以下のとおりです。

所得 = 給与所得(900万円) + 不動産所得(▲100万円)
   = 800万円

所得税(復興特別所得税を除く)は以下のように計算されます。

所得税 = (800万円 - 250万円) × 20% - 42.75万円
    = 67.25万円

所得税は87.25万円から67.25万円となり、20万円の節税となりました。その他、住民税の税率はおよそ10%なので、所得が100万円減ることで住民税は約10万円節税されます。つまり、約30万円(所得税20万円+住民税10万円)の節税効果が生まれるということになります。

ただし、繰り返しの説明となりますが、これだけの節税ができるのは、物件購入の際に諸経費が発生する初年度特有の事情があります。2年目以降、同程度の節税が続くわけではない点は注意しましょう

個人の所得が900万円超になると、個人よりも法人の方が税率は低くなるため、法人化したほうが有利です。また、個人でも10室以上のアパート経営になると、親族に支払う給与を青色事業専従者給与として必要経費に計上でき節税ができます。

アパート経営で固定資産税を節税する方法について解説します。

アパートのような住宅を建てると土地に住宅用地の特例が適用され、自然と土地の固定資産税が安くなります。ほとんどのケースで、課税標準額が固定資産税の6分の1となって計算されます。

アパート経営で節税する際の注意点について解説します。

所得税や住民税を節税するために、不動産所得が赤字となる赤字経営は本末転倒です。
意図せず赤字が出そうな場合に損益通算の制度を思い出し、上手に節税することをお勧めします。

不動産所得は、1年目は不動産所得税や登録免許税といった費用が生じることから赤字になりやすいです。また、築年数の経過に伴い、設備や躯体の償却が終わっていくと、減価償却が計上されなくなるため、赤字になりにくく、節税効果は薄れていくことになります。

アパート経営によるメインの税金対策は相続税対策です。損益通算による所得税や住民税の節税は付随的なものとなります。

アパート経営では損益通算による税金対策をめざすのではなく、利益の追求のほうが重要です。所得税と住民税の節税は過度に追求せず、たまたま赤字となってしまった場合に損益通算を利用するようにしましょう。

以上、アパート経営による税金対策について解説してきました。アパート経営は税金対策につながりますが、所得税の節税に重きを置きすぎるのはリスクとなる可能性もあります。

アパートは、健全経営をしながら上手に税金対策しましょう。迷ったら、一括プラン請求なども活用しながら、税理士や不動産投資に詳しい不動産会社へ相談してみるのもお勧めです。

(記事は2022年7月1日時点の情報に基づいています)

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