目次

  1. 1. 市街化調整区域とは
  2. 2. 建物を建てるために必要な開発許可とは
  3. 3. 市街化調整区域で家を建てる方法
    1. 3-1. 開発許可が不要な建物を建てる
    2. 3-2. 宅地利用が認められた土地で一定の建物を建てる
    3. 3-3. ディベロッパーが開発許可を取得した土地上で建てる
    4. 3-4. 立地基準を満たした土地の上に建てる
  4. 4. まとめ

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市街化調整区域とは都市計画法で定められた「市街化を抑制すべき区域」のことです。市街化とは建物を建てて、街づくりを推進していくことを指します。

市街化調整区域の存在理由は、乱開発を防止することが目的です。市街化調整区域は、全国の政令指定都市や県庁所在地、中核市などの比較的大きな自治体で指定されています。戦後の高度成長期では、人口増加が著しい都市部おいて住宅地の乱開発が問題となっていました。当時は都市の近郊においても農業が盛んに行われていたため、そのまま住宅の乱開発が進むと大切な農地が失われていく可能性がありました。そのような時代背景の中、都市近郊にある農村地帯を守るため、開発を規制する必要性が出てきました。そこで登場したのが「市街化調整区域」です。

都市計画法では、急速に乱開発が進む恐れがあった自治体の区域を市街化区域と市街化調整区域の2つにエリアを分けました。市街化区域と市街化調整区域に分ける線引き行為は、多くの自治体で昭和40年代に行われています。

市街化区域とは、「既に市街化を形成している区域、またはおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域」のことです。市街化区域は、市街化を促進していく地域であるため、市街化調整区域とは対照的に建物を建てやすい地域となっています。都市部を市街化区域と市街化調整区域を分けたことで、宅地の乱開発は抑えられ、都市部の農業は守られていきました。

ただし、市街化調整区域は制度化から50年近くが過ぎています。現在では就農者が減っており、制度ができた当時とは時代背景が変わってきたことから、市街化調整区域内の不動産所有者で悩みを抱えている人が増えています。

市街化調整区域では、建物を建てるために開発許可と呼ばれる許可が必要となります。開発許可とは、開発行為を行う者に対して行政が出す許可のことです。開発行為には、「区画の変更」「形状の変更」「形質の変更」の3種類があります。

「区画の変更」とは、敷地内に新たに道路を設置するなどの行為のことです。「形状の変更」は、一定の高さ以上の盛り土や切り土のことを指します。「形質の変更」とは、「宅地以外の土地」を「宅地」に変更することです。ここでいう宅地とは、建物の敷地に供される土地のことを指します。

市街化調整区域においては、土地の面積に関わらず、開発行為を行う場合には開発許可が必要となるという点がポイントです。

例えば、建物が建っていない雑種地や原野、山林などに建物を建てることは、「宅地以外の土地」を「宅地」に変更する「形質の変更」に該当します。市街化調整区域では、土地の面積に関わらず、開発行為には開発許可が必要となるため、「形質の変更」を行う場合には、開発許可が必要となるのです。ただし、開発許可は要件を満たせば許可は下ります。そのため、市街化調整区域であっても、開発許可を取得すれば建物を建てることは可能です。

一方で、許可要件を満たさないものに対しては、開発許可は下りません。要件を満たさなければ「宅地以外の土地」を「宅地」にする形質の変更はできず、その結果、建物を建てることができなくなるのです。

この章では、市街化調整区域で家を建てる方法について解説します。

市街化調整区域で家を建てる方法としては、まず開発許可が不要な建物を建てることがあげられます。具体的には、「農林漁業を営む者の居住用建築物」は開発許可が不要です。そのため、農家の人なら自宅を普通に建てることができます。

市街化調整区域では、宅地利用が認められた土地なら一定の建物を建てることができます。例えば既に建物が建っている土地であれば宅地利用が認められていることから、「宅地以外の土地」を「宅地」に形質変更するための開発許可は不要となります。ただし、宅地利用が認められている土地であっても、自由に建物が建てられるわけではありません。

宅地利用が認められている土地において建てられる建物は、都市計画法第34条に該当する建物に限定されます。都市計画法第34条によって建てられる家としては、「住宅兼用店舗」「分家住宅」「既存住宅の建て替え」があげられます。

「住宅兼用店舗」とは、自宅と店舗が一体となった建物のことです。建築可能な店舗としては、日常生活のため必要な物品の販売、加工、若しくは修理その他の業務を営む店舗であり、自ら営むものに限定されています。

また、分家住宅とは農業を営んでいる本家から分家した人が建てる自宅のことです。分家住宅であれば、都市計画法第34条の条件を満たす建物であるため、市街化調整区域内の宅地で建てられることになっています。

さらに、既に住宅が建っている土地であれば、基本的に同規模・同用途の建物なら建て替えることが可能です。同規模・同用途の建物に建て替える限り、乱開発が行われるわけではないので、新たに自宅を建て替えることができるようになっています。

なお、既に宅地利用が認められている土地の場合、開発許可は不要となりますが、市街化調整区域における建築許可(都市計画法43条の許可)を受けることは必要です。

市街化調整区域内においても、ディベロッパーが大規模に開発した分譲住宅地が存在します。このような分譲地はディベロッパーが既に開発許可を取得していますので、後から購入した一般の個人でも普通に家を建てることができます。ディベロッパーが大規模に開発した住宅地は、見た目上、市街化区域にある住宅地とほとんど違いがありません。建築可能な建物は低層の戸建て住宅に限るなどの一定の要件はありますが、その要件の範囲内であれば家を自由に建てることができる土地となっています。

市街化調整区域でも、都市計画法第34条11号に定められた立地基準を満たす土地であれば、家を建てられる可能性は高くなります。

都市計画法第34条11号の規定は、以下の通りです。

【都市計画法第34条11号】

イメージとしては、市街化区域との境界付近のような土地が法34条11号の条件を満たしている可能性があり、家を建てられるケースもあるということです。

以上、市街化調整区域で家を建てる方法について解説してきました。市街化調整区域とは、市街化を抑制する区域のことであり、原則として建物を建てることができません。市街化調整区域内で家を建てる方法としては、「開発許可が不要な建物を建てる」、「宅地利用が認められた土地で一定の建物を建てる」などがあります。市街化調整区域で家を建てられるかどうかを判断するには専門的な知識を要するため、まずはハウスメーカーなどに相談することから始めてみてください。

(記事は2021年8月1日時点の情報に基づいています)

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