1.賃貸に専任媒介という契約はない

媒介契約とは、不動産会社に依頼する仲介の契約のことです。

不動産会社が行う仲介業務には、売買仲介と賃貸仲介の2種類があります。

売買仲介とは「売主と買主」との間を仲立ちして売買契約の成立に尽力することであり、賃貸仲介とは「貸主と借主」との間を仲立ちして賃貸借契約の成立に尽力することです。

媒介契約に関しては、宅地建物取引業法第34条2項3号に以下のような規定があります。

【宅地建物取引業法第34条2項3号】

宅地建物取引業法では、上記の第34条2項3号に初めて「専任媒介契約」という言葉が登場します。

専任媒介契約は、他の不動産会社に重ねて依頼することを禁ずる契約であり、つまり、1社にしか仲介を依頼できない契約になります。

条文では専任媒介契約を「売買又は交換の媒介又は代理を依頼することを禁ずる媒介契約」と定義しており、賃貸仲介を指す「貸借」は含まれていないという点がポイントです。つまり、「売買又は交換の媒介」には専任媒介契約というものがありますが、賃貸に関しては法律上、専任媒介に相当する媒介契約は存在しないことになります。

売買の媒介契約においては、「一般媒介」と「専任媒介」、そして「専属専任媒介」の3種類が存在します。

一般媒介は複数の不動産会社に同時に仲介を依頼できる契約のことです。専任媒介または専属専任媒介は1社の不動産会社にしか仲介を依頼できない契約になります。

専任媒介と専属専任媒介の違いは、自己発見取引ができるかどうかです。自己発見取引とは、売主が自ら買主を見つける取引のことを指します。専任媒介では自己発見取引が認められており、専属専任媒介では自己発見取引も禁じられています。

売買仲介における専任媒介と専属専任媒介は一般媒介の特殊形であり、原則的な媒介契約は一般媒介です。

賃貸の媒介契約には一般媒介や専任媒介、専属専任媒介といった分類はありません。特殊形が定められていないので、賃貸の媒介契約は売買の「一般媒介」、つまり複数の不動産会社に同時に仲介を依頼できる契約に相当します。よって、賃貸の媒介契約では他の不動産会社に重ねて媒介の依頼を禁ずる契約形態はできず、媒介であれば重ねて他の不動産会社に依頼することができるのです。

2.賃貸で専任媒介に相当するのは代理

賃貸仲介でも、実務においてはあたかも専任媒介のような形式をとることができます。

賃貸で専任媒介に相当する契約形態は「代理」です。代理とは、不動産会社が貸主または借主からの依頼を受け、依頼者により代理権が与えられている範囲内で、不動産会社が依頼者に代わって意思表示を行って賃貸借契約を成立させる業務になります。

簡単にいうと、媒介では不動産会社は依頼者の「使者(メッセンジャー)」の立場になるのに対し、代理では不動産会社は依頼者の「代理人」の立場になります。

代理人とは、本人に成り代わって意思表示ができるため、代理人がその場で判断をすることができます。一方で、使者とは本人の意思を伝えるだけであり、使者がその場で判断をすることはできません。

たとえば、賃貸仲介では「入居審査」というものがあります。入居審査とは、「この人を入居させて良いか」という審査のことです。

媒介では、本人に代わって不動産会社が判断をすることができませんので、貸主に「この入居希望者と契約して良いですか?」と最終的にお伺いを立てることになります。つまり、媒介における入居審査とは「入居審査の補助業務」になります。

それに対して、代理では本人に代わって不動産会社が判断することが可能です。貸主にお伺いを立てなくても、「この人なら大丈夫だろう」と判断し、賃貸借契約も締結することができます。つまり、代理における入居審査は、補助業務ではなく「入居審査」そのものということです。

代理人とは本人に代わって判断もできるため、代理権を与えられている不動産会社は貸主として意思表示ができることになります。

なお、媒介でも代理でも不動産会社が受け取ることのできる報酬は、原則として家賃の1カ月分(消費税別)が上限です。よって、貸主の経済的な負担は媒介でも代理でも同じということになります。

3.賃貸仲介の契約の種類と特徴

続いて、賃貸仲介の契約の種類と特徴について解説します。

3-1.媒介契約

賃貸の媒介契約は、売買でいう一般媒介に相当します。

貸主は複数の不動産会社に媒介契約を依頼することができるため、物件情報が多くの入居希望者の目に触れる機会が増え、借主が決まりやすくなる点がメリットです。実際に、空室対策として代理を媒介契約に切り替える人もいます。

一方で、複数の不動産会社が同時多発的に入居者をあっせんするため、順位の保全等にトラブルが発生しやすく、入居者募集の管理が煩雑になるという点がデメリットになります。入居審査等の判断も、毎回、お伺いを立てられることになりますし、賃貸借契約にも立ち会わなければいけないことになります。

戸建て賃貸のような戸数の少ない物件であれば媒介でも対応できますが、媒介の場合、賃貸マンションのような戸数の多い物件では貸主にかなりの負担が生じます。

3-2.代理契約

代理契約は、すべて不動産会社に任せることができる点がメリットです。入居審査や賃貸借契約の締結も、不動産会社が本人(貸主)に成り代わって行ってくれるため、貸主は何もしなくても入居者を決めることができます。賃貸借契約の立ち会いも不要です。

一方で、代理契約は、入居の良否が代理人である不動産会社の力に大きく依存してしまう点がデメリットです。力のある不動産会社が代理人であれば、むしろ代理のほうが良いですが、力のない不動産会社が代理人となると貸主まで力を失ってしまいます。

代理契約をする際は、不動産会社の実績等を見極めて、信頼できる会社を選定することがポイントです。

3-3.代理および管理委託契約

代理および管理委託契約とは、代理権を与えて不動産会社に物件の管理も委託する契約のことです。管理委託契約では、この「代理および管理委託契約」の形式が広く採用されています。

代理および管理委託契約は、仲介も管理も一社にすべて任せることができる点がメリットです。一方で、賃貸経営の成否が代理人かつ管理会社である不動産会社の力に大きく依存してしまう点がデメリットとなります。管理委託の手数料は、家賃収入の5%程度です。

3-4.サブリース

サブリースとは、転貸形式による管理方式のことです。貸主がいったん管理会社に賃貸し、管理会社が転貸人となって各入居者と転貸借契約を締結します。

アパートや賃貸マンション等で「一括借り上げ」と呼ばれる管理方式ではサブリースが採用されます。

一般的なサブリースは、空室が発生しても賃料が変動しない点がメリットです。一方で、管理会社から貸主に振り込まれる賃料は、満室想定賃料から15%程度の手数料が差し引かれるため、管理委託よりも収益性が低い点がデメリットとなります。

まとめ

以上、賃貸の専任媒介について解説してきました。

賃貸には専任媒介という契約は存在しません。実務では、専任媒介のような形式を取るために、代理が用いられています。媒介と代理の違いを意識しながら、自分に合った契約形態を選択するようにしましょう。

(記事は2021年9月1日時点の情報に基づいています)