サブリースと相続対策3 賢く付き合うために 相続時の注意点も解説
相続対策に使われてきたサブリースについて取り上げた連載の最終回です。今回は、国がのり出した規制の内容を取り上げます。それとともに、相続する財産の中にサブリース物件が含まれていた場合に気を付けるポイントも解説していきます。
相続対策に使われてきたサブリースについて取り上げた連載の最終回です。今回は、国がのり出した規制の内容を取り上げます。それとともに、相続する財産の中にサブリース物件が含まれていた場合に気を付けるポイントも解説していきます。
目次
法的には、サブリースは転貸借といわれ、賃貸借と同じ扱いを受けます。ですから、家主から見るとサブリース業者は「賃借人」です。サブリース業者は不動産業者であることがほとんどです。本来であれば、宅建業法という厳しい法規制を受けるはずです。ただ、宅建業の中には、自ら賃貸業を営む大家さんは含まれません。
そもそも、いくら資金力もあり信用力が高いサブリース業者であっても、家主から見れば、契約上は借り手です。借家契約は借地借家法という法律により、「借り手有利」「家主不利」という土地の扱われ方をします。
具体的には、例えば「30年一括借り上げ」など長期のサブリース契約だったとしても、通常の借家契約と同様、法的には入居状況の悪化や近隣の家賃相場の下落など状況変化に伴って、契約期間中でも賃料が減額されたり、場合によっては契約が解除されたりできます。
こういった場合に備え、家主は、サブリース契約の締結前に業者に対して、賃料が変動した場合の条件や契約解除に関する事柄について、しっかりと説明を求めて内容を確認してください。納得できなければ、契約を結ばない選択も必要です。
国土交通省でも、標準契約書のひな形を用意しているので、一度、ご覧になってください。サブリース業者から提示された契約内容と国交省の標準契約書の内容がかけ離れていたら、交渉してみましょう。例えば、家主にとって不利で受け入れがたい内容であれば、契約内容の変更を要求することです。
投資用の物件を購入する際は、通常、融資を受けることになるでしょう。ただ、過去には、無理に融資審査を通すために、サブリース業者が自己資金のない投資家の預金残高を改ざんするなど、不正を行ったケースが多数あったようです。
また、不動産業者と組んだ金融機関が、融資の条件として、家主にとって不必要なカードローンや定期預金、保険商品等の抱き合わせ販売を行っていたケースもあり、被害規模が拡大しました。本来、居住用でしか借り入れできないフラット35を投資用の賃貸住宅に不正利用したケースも多くあり、大問題となりました。
不正融資を受けた場合は、一括返済などを請求され、その後の人生や賃貸経営、家計管理にも悪影響を受けることになりますから、業者選びも慎重に行いましょう。
繰り返しになりますが、投資開始後のトラブル防止のためにも、サブリースの契約内容を把握しておくことが大切です。実際に契約内容を明確に理解しないまま不動産投資を始めてしまった人ほど、後々のトラブルに巻き込まれることが多いです。
そもそも、サブリースは「又貸し」です、家主から見た時の賃貸借取引の相手先はサブリース業者です。決まった期間、決まった賃料を支払ってくれるなど、契約内容通りであれば、問題はありません。
つまり、サブリース業者が今回のコロナウイルスショックのような社会不安が拡大している時や災害といったトラブルが発生しても、対応できるのかどうかを見定めることも大切です。
その裏付けは、サブリース業者が、家主に家賃を支払い続ける体力が、どれだけあるかということです。具体的には、収益と保有資産になります。サブリース業者から財務諸表を提供してもらい、財務状況を確認すべきです。法令違反といった問題を起こしているサブリース業者でも、その対応の良し悪しとは別に、財務的に問題がなければ、時間をかけて問題解決を図ることも考えられます。
もし、財務を分析できなければ、不動産投資に詳しく財務を分析できるファイナンシャルプランナーなど専門家に確認をしてもらいましょう。
今年3月、続発するサブリースに関するトラブル防止を図るため、「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律案」が閣議決定されました。
サブリース業者と家主で交わす特定賃貸借契約(マスターリース契約)の適正化を図るため、サブリース業者やサブリース業者と提携して勧誘する業者に対して、以下の対応を求めています。
1. 勧誘時に、家賃の減額リスクなど相手方の投資判断に影響を及ぼす事項について故意に事実を告げなかったり、不実(噓)を告げたりする等不当な行為を禁止する
2.サブリース業者と家主のマスターリース契約の締結前に、家賃や契約期間等を記載した重要事項説明書面を交付して説明することを義務づける
これは不動産の売買や仲介などのルールを規定している宅地建物取引業法や分譲マンションの管理のルールについて規定しているマンション管理適正化法を準用したともの思われます。違反者に対しては、業務停止命令や罰金等の措置も規定し、実効性を担保しています。
また、賃貸住宅における良好な居住環境を確保しつつ、悪徳業者を排除し、業界の健全な発展・育成を図るため、賃貸住宅管理業の登録制度も創設します。
具体的には、家主から委託を受けて賃貸住宅管理業務(賃貸住宅の維持保全、金銭の管理)を行う事業を営もうとする場合、国土交通大臣の登録を義務づけます。管理戸数が一定規模未満の者は対象外となる予定です。
登録を済ませた賃貸住宅管理業者に課せられる義務は、以下の四つになりそうです。
1. 事務所ごとに、賃貸住宅管理の知識・経験等を有する者を業務管理者、つまり責任者として配置する
2. 管理受託契約締結前に、具体的な管理業務の内容や実施方法等の重要事項について書面を交付して説明する
3. 委託管理する家賃等について、自分自身の固有財産と分別して管理する
4. 業務の実施状況等について、管理受託契約の相手方、つまり家主に対して定期的に報告する
これらを義務づけることで、トラブルを減らしていく考えです。国土交通省の「賃貸住宅管理業務に関するアンケート調査(家主)」 (令和元年度)では、「管理業者との間でトラブルが発生したと回答したオーナーの割合」が約46%に上りました。10年後の令和11年に、この割合を15%まで減らすのが目標のようです。
今回の記事では、サブリースの問題点と対応策について触れてきましたが、最後に、サブリース物件を相続した場合の注意点についても紹介します。
節税と納税準備の両面の相続対策でも、サブリースで対応できます。ただ、争族防止対策には、工夫が必要です。
サブリース契約をした賃貸物件は、そのまま相続人に引き継がれます。事前に何も知らされていない相続人が対応に困り、トラブルの種になる可能性もあります。
そういった事態を避けるためには、日ごろから、しっかりと情報を共有することが大切です。契約や物件の状況、収支状況などを目に見える形にまとめておくと、相続する際にもスムーズに判断できるでしょう。また、後々、「聞いた、聞いていない」というトラブルを避けるためにも、日常的なコミュニケーションが大切です。
現在、サブリース物件を所有している人は、ぜひとも、今から実践してください。
(記事は2020年4月1日時点の情報に基づいています)