不動産の等価交換とは? 仕組みやメリットとデメリットを解説
土地活用の手法の一つに等価交換があります。聞きなれない言葉でもあるため、等価交換に対して不安のある方もいらっしゃると思います。等価交換は、メリットとデメリットをしっかり踏まえた上で選択することがポイントです。この記事では「不動産の等価交換」について解説します。
土地活用の手法の一つに等価交換があります。聞きなれない言葉でもあるため、等価交換に対して不安のある方もいらっしゃると思います。等価交換は、メリットとデメリットをしっかり踏まえた上で選択することがポイントです。この記事では「不動産の等価交換」について解説します。
目次
等価交換とは、ディベロッパーが土地上に建物を建て、竣工後に土地の一部と建物の一部を等価で交換する建築方式のことです。
等価交換は、土地所有者が建築費を負担することなく土地活用を始められる開発手法になります。賃貸マンションやオフィスビル、分譲マンション等の比較的大きな建物を建築する目的で利用されることが多いようです。等価交換は、多くのケースではディベロッパーが個人の土地所有者に対して話を持ち掛けることが一般的となっています。等価交換を個人同士で行っても問題はありませんが、ケースとしては少なくなっています。
等価交換では、まずディベロッパーが全て建物資金を支出して建物を建築することから始まります。ディベロッパーが建物を建てたままで終わると単なる借地事業ですが、等価交換では竣工後に建物の一部と土地の一部を等価で交換するため、お互いが土地と建物の所有者になるという点がポイントです。等価交換は、土地と建物を等価で交換することから、最終的な土地建物の所有権の割合は、元々の土地価格と建物の建築費との関係で決まります。
例えば、元々の土地価格が70億円、建物の建築費が30億円の場合、土地と建物の所有割合は、元々の土地所有者が70%、ディベロッパーが30%となるということです。等価交換は、言わばディベロッパーとの共同事業であり、計画時だけでなく竣工後もディベロッパーと運命を共にする関係となります。
そのため、等価交換を行うにあたっては「馬が合わない」、または「信用できない」ディベロッパーと組むことは避けるべきです。等価交換を行うなら、信頼できるディベロッパーをパートナーとすることが最も重要なポイントとなります。
この章では等価交換のメリットについて解説します。
元々の土地所有者にとって等価交換は借入金を組まずに事業ができる点が最大のメリットとなります。土地所有者は建物投資を行わないことから、自己資金も借入金も不要です。仮に将来家賃収入が減少したとしても、借入金返済に対する不安もないため、事業リスクは極めて小さい土地活用と言えます。
等価交換では、課税の繰り延べ措置がある点もメリットです。具体的には、「中高層耐火建築物等の建設のための買換えの特例」という制度があります。課税の繰り延べとは、税金が課税されることを先送りにしてくれる制度のことです。
等価交換は、実態としてはディベロッパーに対して土地を売却していることになりますが、特例を利用することによって一定の要件を満たすと売却時に税金が課されないことになっています。よって、等価交換時に一定の要件を満たせば税負担を負うことなく事業を行うこともできるのです。
等価交換はディベロッパーが主導になって事業を進めてくれることから、知識がなくても土地活用ができる点がメリットです。
賃貸マンションやオフィスビル等の高層建築物を失敗なく建てるには十分な知識が必要となりますが、ディベロッパーならノウハウが豊富なため、長期にわたって稼ぎ続けることができる優良資産を建ててくれることが期待できます。巨額な建物投資でも、ディベロッパーのノウハウを無料で最大限に生かすことができ、土地活用で失敗するリスクは低くなります。
一部の意見として、「等価交換はディベロッパーの言いなりになってしまう点がデメリットとなる」という見方をする人もいますが、実際にはディベロッパーのノウハウを享受できるメリットは大きいです。竣工後の賃貸経営もディベロッパーのブランド力を生かせる点は大きいと言えます。
この章では等価交換のデメリットについて解説します。
等価交換のデメリットは、まずは良い立地でないと話が来ないという点です。等価交換は、一見するとタダで土地活用ができる都合の良い手法に思われますが、そもそもディベロッパーが事業を行いたいと思えるような土地でないと話がありません。
また、ディベロッパーも相応の収入が得られる土地でないと等価交換をしたがらないため、立地だけでなく面積も広いことが求められます。よって、等価交換は全ての土地所有者がやりたいと思ってもできる手法ではなく、「限られた条件の良い土地」でないとできないという点がデメリットです。
等価交換では、竣工後の不動産の権利が複雑化する点もデメリットになります。竣工後、建物に関しては共有または区分所有によって1つの建物を2者以上で所有することになります。また、土地に関しても共有とすることが一般的です。1つの不動産を2者以上で所有することから、竣工後の管理や売却、将来の建て替え等にも支障を生じることが考えられます。
例えば、建物を共有してしまうと、将来売却する場合、共有者全員の同意が必要です。建物を区分にしたとしても、将来建て替える場合、区分所有者および議決権の5分の4以上がないと建て替えができないことになります。
また、複数人で物件を所有することは、意思疎通の面においてもデメリットを生じます。ディベロッパーは企業ですので、いずれ担当者や経営者も変わり、当初の取り決めや方針が変わることもあります。開発当初の担当者は話の通じる人であっても、いずれは担当者が変わってしまい、意思疎通がしにくくなってしまうこともあるのです。
等価交換ができるような土地は、立地が良い物件が多いので、ディベロッパーに頼らずとも単独で事業ができる可能性は高いといえます。せっかく単独事業ができるような土地でも、等価交換によって権利が複雑となることで、将来の売却や建て替え、意思疎通等において一定の支障が生じてしまうことも考えておかなければなりません。
等価交換では、ディベロッパーとの間で最終的な還元床の調整が難しいというデメリットがあります。
還元床とは、竣工後に元々の土地所有者とディベロッパーが双方に占有する床面積のことです。還元床面積は大きいほど家賃収入が増えるため、双方が広く面積を欲しがることから、元々の土地所有者とディベロッパーとの間で利害が対立しやすくなります。
等価交換では土地と建物を等価で交換するという前提であるものの、実際に「土地価格」は価格の把握が難しいものです。建物価格は建築費の相見積もりを取ることで適正額を把握しやすいですが、土地価格は実際に売却するわけではないので適正額の把握がしにくくなっています。一般的には土地価格に関しては不動産鑑定評価を取得しますが、鑑定評価額も不動産鑑定士を変えると金額が変わってしまうことが多く、完璧なものではありません。
還元床の決定はディベロッパーとの間で揉めやすい部分であることから、どのように還元床を決めていくか、慎重に話し合いながら事業を進めていくことがポイントです。
以上、不動産の等価交換について解説してきました。等価交換とは、土地と建物を等価で交換して建物を建築する開発手法のことです。等価交換のメリットとしては、「借入金を組まずに事業ができる」、「知識がなくても土地活用ができる」などがあります。それに対して、「不動産の権利が複雑化する」や「還元床の調整が難しい」といったデメリットがありました。等価交換の話が出た場合には、メリットとデメリットを踏まえて決断するようにしましょう。
(記事は2021年8月1日時点の情報に基づいています)