目次

  1. 1. 土地の造成とは
    1. 1-1. 整地
    2. 1-2. 伐採・伐根
    3. 1-3. 地盤改良
    4. 1-4. 盛土
    5. 1-5. 土留め(土止)
  2. 2. 造成工事の費用の目安は
  3. 3. 造成の工事費は経費になるのか
  4. 4. 土地造成の注意点
    1. 4-1. 工事会社の選び方
  5. 5. まとめ

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土地の造成とは、土地を有効に利用するために区画や形を変更して整えることを言います。
例えば、相続した土地にアパートを建てて有効活用しようとしても、その土地が樹木が生い茂る傾斜地だった場合、そのままでは建築ができません。
そのため、樹木を根っこまで撤去し、傾斜している部分を削ったり土を盛ったりして地面を平らにしなければいけません。また盛土や切土によりできた斜面が崩れないように擁壁をつくる必要もあります。さらに、土を盛った部分はふかふかして地盤が弱いので土地を改良して強くします。
このようにして土地を整えれば、安心してアパートを建築することができます。
これらの一連の工事が土地の造成です。

造成のイメージ
造成のイメージ

その他にも次のようなケースなどでは造成工事が必要です。
● 田んぼのように道路よりも低い土地を高くしたいとき
● 広い土地に道路や宅地を造成するとき
● 土地に高低差があり土砂崩れを防止したいとき
● もともと軟弱な地盤に建物を建てたいとき

造成工事の内容には次のようなものがあります。

地面を平らにする工事です。あわせてコンクリートガラや石、草などを取り除き、表面を固めてきれいにします。
もともとでこぼこな土地のほか、建物の解体後や樹木の伐採・伐根後にも整地を行います。

建築に支障をきたす樹木がある場合は撤去します。その場合、樹木の幹や枝を伐採するだけではなく、根っこも抜き地中にも障害物がない状態にします。

田んぼや埋め立て地、あるいは以前は谷や川、海だった場所は地盤が軟弱なことが多く、そのまま建物を建築すると将来不同沈下して傾く恐れがあります。
地盤がどのくらいの重さに耐えられるかという強さを地耐力といいますが、建物の建築を計画する際には土地の地耐力調査を行います。地耐力が弱い場合は地盤を改良し、土地が長期的に建物の荷重に耐えられるようにする必要があります。
地盤改良には表層部分の土にセメント系の固化材を混ぜて固める表層改良と、建物を支えるために行う柱状改良や鋼管杭などの方法があります。

地盤面が道路や周囲の土地に比べて低いと大雨や台風などにより水が流れ込み、土地が水没したり建物が浸水したりする恐れがあるため、盛土をして地盤面を高くします。
また傾斜地の地盤を平らにして有効に利用できる面積を広げるために盛土を行うこともあります。
盛土とは反対に、勾配部分を削って平らにすることを切土といいます。

もともと高低差のある土地や盛土によってできた斜面が崩れないように擁壁をつくることです。鉄筋コンクリートやブロックなどで壁状の構造物を築造しますが、高低差などによって構造も変わります。

造成工事の費用は、土地の条件や計画の内容によって大きく異なるので、一概にいくらとは言えません。
各国税局では、宅地の相続税評価を行う際の宅地造成費を項目ごとに定めているので、参考にすることはできます。例えば、平坦な土地の造成費は下の表の通りです。

宅地の相続税評価をする際の平坦地の宅地造成費
宅地の相続税評価をする際の平坦地の宅地造成費

ただし、表の造成費は、あくまでも相続税評価のための便宜的な金額です。
実際の造成工事では、道路の幅や土地の広さによって使えるトラックや重機の大きさ、台数も変わるため工事費も異なります。また、処分する土が汚染されているかどうかによっても処分費が大きく変わります。
国税局の宅地造成費を鵜呑みにしてしまうと実際の見積り額とかけ離れていることも多いので注意してください。
それよりも、土地の利用計画を作成の上、工事会社に現場も見てもらった上できちんと見積りを作成してもらうようにしましょう。

造成費は、原則土地の取得費になりますが、造成の目的がアパート建築の場合、必要経費にすることができる部分もあります。
所得税基本通達38-10には
「埋立て、土盛り、地ならし、切土、防壁工事その他土地の造成又は改良のために要した費用の額はその土地の取得費に算入するのであるが、土地についてした防壁、石垣積み等であっても、その規模、構造等からみて土地と区分して構築物とすることが適当と認められるものの費用の額は、土地の取得費に算入しないで、構築物の取得費とすることができる。」
とあります。

造成工事のうちどの部分を必要経費にするかの判断については、国税不服審判所の裁決(2016年3月3日)が参考になります。
同裁決では、あるアパート建築のための造成費用が必要経費になるかどうかについては具体的な工事内容によって判断するとして、造成工事を以下の5項目に分け、それぞれについて判断しています。

  1. 掘削・埋め戻し・整地などの造成工事 → 土地の取得費
  2. 土留工事(隣接地との境界ブロックの撤去や積増し) → 必要経費
  3. 道路の歩道部分の切下げ工事 → 減価償却費
  4. 隣地との境界の明確化 → 必要経費
  5. 土壌汚染調査 → 必要経費

このケースでは、全体の造成工事のうち2.から5.について不動産所得の経費とすることが認められました。
実際の申告にあたっては、どの工事が経費にできるかどうかの判断は難しいため、税理士や税務署に相談をしてください。

土地造成を行うにあたっては、いくつかの注意点があります。
造成工事には、都市計画法、宅地造成等規制法という2つの法律が適用される場合があります。どちらも立地や土地面積などが一定の要件にあてはまると許可申請が必要になり、厳しい規制がかけられたり申請のための費用や時間がかかったりするため、事前に調査をする必要があります。

造成費用を抑えるためには、工事会社の選び方も大切です。
建物の建築をハウスメーカーなどの建築会社に依頼すると、造成工事も一緒に建築会社が請け負いますが、実際の施工は建築会社が指定する工事会社が行います。全体の工程がスムーズに進みやすいという安心感はありますが、その分工事費には建築会社の経費が乗せられます。
工事費を安く抑えるためには、全体の工事の流れや建物の保証に影響がない造成部分については、建築会社を通さずに直接工事会社に依頼するという方法があります。
その場合も、1社のみを検討するのではなく、複数の工事会社から見積りを取って比較をします。インターネットの一括見積サイトを利用する方法もあります。
ただし、見積額に大きな差がある場合、材料や工法が異なることもあるので、十分に説明を聞いて納得をしたうえで工事会社を選択しましょう。

以上、造成工事について解説をしてきました。
造成工事が必要になる場合は、信頼のできる会社を選択し、十分に打合せをしながら進めるようにしましょう。

(記事は2021年6月1日時点の情報に基づいています)

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