孤独死で実家が事故物件になる? 親亡き後の不動産売却の注意点
孤独死が社会問題になって久しく経ちます。そして不動産には孤独死のリスクがあります。実家に住む高齢の親が孤独死した場合、相続した実家の処分にはどのような影響があるのでしょうか。孤独死があった際の不動産の売却について不動産に詳しいファイナンシャル・プランナーが注意点をまとめました。
孤独死が社会問題になって久しく経ちます。そして不動産には孤独死のリスクがあります。実家に住む高齢の親が孤独死した場合、相続した実家の処分にはどのような影響があるのでしょうか。孤独死があった際の不動産の売却について不動産に詳しいファイナンシャル・プランナーが注意点をまとめました。
目次
一人暮らしの高齢者は年々増加しています。内閣府が公表した令和2年版高齢社会白書によると、一人暮らしの高齢者の3人に2人は持ち家で、高齢夫婦世帯の持ち家率は87.4%にも達しています。いずれ高齢夫婦のどちらかが亡くなると一人暮らしになる可能性があるため、ますます持ち家を所有する高齢単身世帯は増えると考えられます。
一方、一人暮らしの高齢者のうち、約半数の50.7%の人が孤独死を身近な問題と感じています。この数字には、家族や近隣との関係が希薄になっている事実が影響しています。周囲とのつながりが少ない状況から、今後持ち家に住む高齢者が孤独死するケースが増加すると予測されます。
自殺、殺人事件、事故などで人が亡くなった住宅などを「事故物件」といいます。事故物件は買主から敬遠されるため、売却ができなかったり、売却金額が大きく下がったりします。
事件性はありませんが、孤独死は一般的に事故物件に含まれます。事故物件には「心理的瑕疵」があるとされています。心理的瑕疵とは、不動産を契約するにあたって心理的に抵抗を感じる要因のこと。その家で孤独死があったことを買主が知ったために、購入を取りやめたというケースは心理的瑕疵によるものです。なお、心理的瑕疵には事故物件だけではなく、近所に工場、ごみ焼却場、暴力団事務所、墓地といった「嫌悪施設」がある場合なども含まれます。
売主は事故物件であることを隠したくても、事故物件には「告知義務」があります。不動産を売却する際には、買主に対して事故物件であることを伝えなければいけません。事故物件のような心理的瑕疵がある不動産は、買主がその事実をあらかじめ知っていれば契約しなかった可能性があるからです。万が一、事故物件であることを告知せずに契約し、後で買主がその事実を知った場合は、損害賠償を請求されたり、契約を解除されたりする可能性があります。
ただし、何が心理的瑕疵にあたるかについては、買主それぞれの感じ方によるため、明確な基準はありません。例えば、近所に小学校がある場合、まったく気にしない人もいれば、校内放送や子どもの声をうるさく感じるので嫌悪施設と捉える人もいます。孤独死に関しても、亡くなった原因、発見までの日数、発見されたときの状態などとあわせて、買主の受け止め方によっても心理的瑕疵になる場合とならない場合があります。
死因の種類にかかわらず、 孤独死があった場合は事故物件となります。では、そもそもどのようなケースが孤独死にあたるのでしょうか。
実は、孤独死には明確な定義はないようです。厚生労働省では、あえて孤独死ではなく「孤立死」という言葉を用い、「社会から『孤立』した結果、死後、長期間放置されるような『孤立死』」を防止する取組みが必要としています(※1)。また、2019年に大阪府警が実施した調査の中では、孤独死を「事件性がなく、誰にも看取られることなく屋内で死亡し、死後2日以上経過してから発見されること」としています。つまり、一人暮らしの人が亡くなっても、少なくても翌日までに発見された場合は、孤独死とは捉えないようです。
東京都福祉保健局の発表によると、東京23区内の一人暮らしの死亡では、39.2%が0~1日で発見されており、2~7日が37.0%、8~30日が17.0%、1カ月以上かかったケースが7.0%となっています(※2)。2日後以降に発見された一人暮らしの死亡のうち孤独死にあたるのは約6割で、約4割は孤独死ではないといえます。
ただし、亡くなった翌日に発見されたから孤独死ではなく大丈夫だろうと安易に考えていいわけではありません。告知せず、契約後に買主がその事実を知ったことにより、心理的瑕疵による契約不適合責任を問われる可能性もゼロではありません。すでに述べたとおり、心理的瑕疵は人それぞれの感じ方によるからです。告知義務の有無にかかわらず、後でトラブルにならないように、不動産会社にはあらかじめ亡くなったときの状況について事実を伝え、適切な対応をとる必要があります。
一般的に、心理的瑕疵がある不動産は買主から敬遠されやすいため、売却価格が大きく下がることもあります。また、亡くなってからすぐに発見され孤独死とはいえない場合でも、人が亡くなった住宅そのものを嫌がる買主もいます。
ただし、一人暮らしの人が亡くなった住宅が必ずしも売却しづらかったり、価格が下がったりするわけではありません。亡くなってから発見されるまでにかかった日数が短ければ、心理的瑕疵を全く感じないという買主もいます。あらかじめ、事故物件の取り扱いに詳しい不動産会社に相談し、売却方法や売却価格の目安について相談することをお勧めします。
孤独死の場合、遺体が発見されるまでの日数によっては心理的瑕疵だけではなく、遺体の腐乱による建物への損害など「物理的瑕疵」を生じる可能性もあります。
このような場合、特殊清掃やフルリフォームなどが必要になり、場合によっては建物を解体しなければならないケースもあります。また、遺品整理にも時間と費用がかかります。さらに、亡くなってからしばらく発見されずに放置され、腐敗臭によって近所の人が通報して発見された場合などでは、孤独死の事実を広く知られてしまうこともあります。
そうなると、個人に売却することが難しくなる可能性が高まります。その場合は、事故物件を取り扱っている不動産会社に買い取ってもらう方法もあります。
実家を事故物件にしないためには、万が一、親が一人で亡くなっても速やかに発見することが重要です。そのためには、家族間のコミュニケーションを密にとったり、近所の人にも声がけをしたりするなど、日頃から定期的な連携を心がけておくことが大切です。
※1厚生労働省「第2回安全生活創造事業検討会」(平成22年7月20日)
※2東京都福祉保健局「東京都監察医務院で取り扱った自宅住居で亡くなった単身世帯の者の統計」(令和元年)
(記事は2021年1月1日時点の情報に基づいています)
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