目次

  1. 1. 事業承継税制とは
  2. 2. どういった人に役立つのか
  3. 3. 一般措置と特例措置
  4. 4. まとめ|事業承継は時間をかけて準備を

まず、「非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例」いわゆる「事業承継税制」の内容から見ていきましょう。これは、後継者である受贈者・相続人などが、認定を受けている非上場会社の株式等を贈与・相続等により取得した場合に、一定の要件を満たせば、贈与税・相続税について納税を猶予・免除される制度です。

株式を公開していない中小企業の中には、経営者一族が株式を保有するいわゆる同族会社が数多くあります。こういった企業の場合、現経営者から次期経営者への事業承継の際に、自社株式を移転させていくことになります。

同族株主の保有する自社株式は、換金が難しい一方で、評価額算定の際には類似業種比準方式や純資産価額方式といった専門的な評価方法を用いて評価する必要があります。加えて、評価額によっては相続・贈与の際に多額の税金を現金で納税する必要があり、事業承継を進める上で大きな障害となっています。

そのため、中小企業の経営者の高齢化が進行する中で、円滑な事業承継を支援しようと設けられたのが、事業承継に伴う自社株式の移転に限った特例です。

前述のとおり、事業承継を円滑に行うことを目的とした税制であるために、基本的には中小企業の経営を引き継いでいく後継者が対象です。ここでの中小企業者とは、資本金や従業員数にて会社規模が判断されますが、基本的に上場会社・風俗営業会社・資産管理会社は対象外となります。

また、単に自社株式の移転を促すだけではなく、あくまでも経営者から経営者へと株式を引き継ぎ、事業を継続させることが、この制度の目的です。そのため、自社株式を渡す側の先代経営者は、会社の代表権を有していたこと、会社の筆頭株主であることなどが要件になります。

また、受け継ぐ側の後継者も筆頭株主になることや、相続であれば相続開始の直前において役員であり、かつその5カ月後には代表者である必要があり、贈与の場合においても3年以上役員であり、かつ代表者であることなどが必要となります。

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事業承継を円滑に実施することを目的とする事業承継税制ですが、2008年(平成21年)の税制改正で作られて以降、要件がかなり厳しいため、利用者の数はあまり増えませんでした。そのため、2018年(平成30年)の税制改正で10年間限定の特例措置が時限的に創設され、活用しやすいものとなりました。

具体的には、発行済議決権株式総数の3分の2までしか対象とならなかったものが、全株式対象となったり、一般措置では雇用について5年間の平均で80%を維持しなければならないという条件があったものが、特例措置では実質撤廃されていたりと、全体的に要件が緩和され利用対象が広がっています。

なお、この特例を利用するためには、2023年(令和5年)3月31日までに、認定経営革新等支援機関の指導および助言を受けた「特例承継計画」を都道府県に提出しなければなりません。そのため、利用を考えている場合は、まずは専門家に相談し、計画を立てて準備していくことをおすすめいたします。

※(編集部注)2024年度(令和6年度)の税制改正により、「特例承継計画」の提出期限は2026年(令和8年)3月31日まで延長されています。

今後10年の間に、経営者が70歳を超える中小企業・小規模事業者は半数を超えると言われています。一方で、事業承継はすぐに結果の出る問題ではなく、時間をかけて行っていくものです。円滑な事業承継のために、こういった特例の活用も視野に入れて検討を進めることが重要です。

(記事は2020年6月1日時点の情報に基づいています)