夫の死後、生前書いていたブログを発見 形見として保存したり引き継いだりできる?
家族が亡くなったあとになって、故人が生前に書いていたブログやSNSが見つかることがあります。ご遺族によっては形見としてのこしたり、サイトを引き継いだりしたいという方も多いといいます。どうやって保存や承継ができるのか、専門ライターの古田雄介さんが解説します。
家族が亡くなったあとになって、故人が生前に書いていたブログやSNSが見つかることがあります。ご遺族によっては形見としてのこしたり、サイトを引き継いだりしたいという方も多いといいます。どうやって保存や承継ができるのか、専門ライターの古田雄介さんが解説します。
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「相続会議」の税理士検索サービスで
岩手県で暮らす60代の女性からメールをいただきました。脳卒中で亡くなった夫が残したブログについてのご相談です。
「夫の遺品を整理しているとき、書斎のパソコンのなかに『ブログ下書き』と書かれたファイルを見つけました。夫は子供の頃から写真好きで、生まれ育った旧市街の風景を撮り続けているのは知っていましたが、ブログの存在はそのとき気づきました。もしかしたら生前も話していたのかもしれませんが、そういうことに疎くて・・・。
仙台に住む息子に相談したところ、当該のブログはすぐに見つかったそうです。夫が撮った写真がたくさん載っていて、コメントも多くの方からいただいていました。そして、最後の投稿のコメント欄には、夫の安否を心配されるものもありました。
私としては、夫のブログを形見としてずっと残しておきたいです。また、できれば読者の方にも現状をお伝えしたいです。息子がブログを引き継ぐと言ってくれていますが、具体的にどんな手続きをしていいのかは、正直なところまだ分かっておりません。どうかお知恵をお貸しください」
遺品整理の段で、遺族が故人のブログやSNSページの存在に気づくというケースはままあります。実際に引き継いで何年も管理している遺族も少なくありません。しかし、正式に引き継ぐには所定の手続きを経る必要があります。少し複雑になるので、かみ砕いて説明しましょう。
ブログやSNSのページといったインターネット上の個人スペースは、そのサービスを提供する運営元が作った仕組みの上に成り立っています。たとえば、Twitterなら一度に140文字までの文字を載せられて、後からの訂正はできない、というルールに従って多くの人が交流したり自分を発信したりしています。
そうした仕組みの細かなところをまとめているのが利用規約や会員規約、あるいはQ&Aページです。ここにアカウントの引き継ぎや譲渡の可否について記載しているサービスが多くあります。
「承継」や「譲渡」を認める条項があるなら、正式な手続きを経て引き継ぐことができます。運営元のサポート窓口に連絡し、持ち主が亡くなったことと連絡者の関係性、引き継ぎの意志を伝えましょう。必要な書類や情報などを説明してくれるので、それに従って手続きすればよいです。
しかし、どのブログやSNSでも相続できるわけではありません。
一身専属性といって、相続不可のスタンスを明記しているサービスも多々あります。ブログならココログ(@ニフティ)、SNSならLINEなどは一身専属性です。これらのサービスは、法定相続人であっても引き継ぐことができません。遺族に残された手続きはアカウントと該当ページの抹消のみということが普通です。
なお、Facebookは一身専属性ですが、故人のアカウントを保護モードにする「追悼アカウント」機能を備えていて、引き継ぎと抹消以外の第三の道筋を選ぶこともできます。(詳細は、3月に配信した「自分の死後、SNSはどうなる? 事前に追悼アカウントや抹消予約の指定ができる」でお読み頂けます。)
このように、サービスによって持ち主の死後の対応は変わってくるのです。
一方で、運営元は遺族等からの連絡がないと、アカウントの持ち主の生死を確認する術がありません。このため、サービスのIDとパスワードが分かっていたり、ログインしたままになっていたりする場合は、遺族がそのままアクセスすることもあります。
亡くなった直後に訃報や葬儀情報を伝えるなど、喫緊の対応について咎める運営元は聞いたことがありません。しかし、本人になりすましてログインしている状態ではあるので、その後もずっと利用するのは控えたほうがいいでしょう。
今回のご相談のように、形見として長く維持管理したいのであれば、運営元に相談するのが最善だと思います。運営元が一身専属性をとっている場合は、ブログの各ページをバックアップして中身そのものの消失を防ぐのも手です。
家族の死後にブログの存在を知り、全ページをプリントアウトしたという遺族もいますし、レンタルサーバーを契約してそこに故人のブログをコメントごと移設した遺族もいます。身内や知人に配るために自費出版して残すことを選んだ事例も複数ありました。
「死後は消してほしい」「実名とひも付けられたくない」などのご本人の意志が確認された場合は、慎重に行動したほうがいいと思いますが、一身専属性であっても色々とやりようはあるのは確かです。
このあたりは引き継ぐ方のスキルやかけられる手間によっても取れる方法は変わってくると思われます。加えて、ご遺族と故人、そして読者を含めたお仲間の気持ちと向き合ったうえで最善を選ぶのが理想的かもしれません。
前回は、Netflixなど故人の「サブスク」サービスを解約できるか、について書きました。今後もこちらのコラムで、デジタルの遺品や相続にまつわる疑問や不安にお応えしていきます。
(記事は2020年6月1日時点の情報に基づいています)