目次

  1. 相続不動産が売れずに空き家になるケースが多い
  2. 相続を考えたら不動産エージェントも選択肢に
  3. 相続対策に正解はない 不安を感じたらセカンドオピニオンへ

――相続不動産をどうすればいいのかと悩む人が多いと聞きます。やはり空き家として放置されているケースが多いのでしょうか。

長嶋:日本はかつて住宅が足らず、政府の政策の後押しもあって、住宅をどんどん建ててきました。しかし、人口減少もあり、現在は住宅余りが生じています。2018年時点の日本の空き家率は13.6%(約850万戸)と過去最高を記録しており、増加しています。近年の傾向としては、空き家問題が地方ではなく都市部でも目立ち始めているのが特徴です。今後の人口減少などを考慮すると、より空き家が増えてくることが予想されます。

――空き家が増える問題点は?

長嶋:個人としては、空き家を相続した人が困る問題があります。売りたくても売れない空き家も多く、仕方なく放置している。社会的な面として、空き家が放置されると、景観が悪化するほか、老朽化による危険や不法侵入などの犯罪につながるリスクがあります。空き家が増えるほど住民が減っているわけですから、自治体経営にとっても深刻な影響を与えます。

――不動産を相続しても売却先が見つからなかったり、ほかの相続人とどうするかで揉めてしまったりするケースがあると思います。

長嶋:相続した不動産をどうするか、早く決める必要があります。人が住まなくなった建物は老朽化が早く、不動産としての価値がなくなってしまいます。半年ほど放置すると、売ることも貸すことも難しくなってしまうこともあります。もし相続で揉めてしまって売却ができない場合でも、住宅としての価値を保つには定期的に換気や掃除をするような管理をしていくことが大切です。

さくら事務所の「ホームインスペクション(住宅診断)」の様子。建物に傾きがないか調べている。ホームインスペクションを通し、住宅の劣化や欠陥の有無、改修の必要性や費用について見極め、アドバイスを行います(写真:さくら事務所提供)

――相続した不動産について売るか売らないかの二択を迫られることもあると聞きます。

長嶋:実際、ビルの相続について、税理士事務所に相談したところ、相続税を準備するためには「売るしかない」と言われ、セカンドオピニオンとして我々の元に相談にこられたお客さんがいます。売る必要があるのかを検討し、そのビルは売らず、ほかに所有する不動産を売却することで相続税を支払うことを提案しました。確かに売ればお金は入りますが、その土地は二度と手に入らないかもしれませんので。

相続を専門としている士業も「不動産のプロ」ではないので、不動産の価値や、活用方法がわからないのだと思います。不動産は売る以外にも賃貸経営をしたり、解体して駐車場にしたりといった様々な選択肢があります。ただ、これらを提案するには不動産の知識が欠かせません。この知識がなければ、必然的に売るか売らないかの二択になるのだと思います。

――不動産に「売るか売らないか」の二択以外の新たな選択肢はないのかと悩んでいる人は誰に相談すればいいのでしょうか。

長嶋:そういった人は「不動産エージェント」に相談してみるのがよいと思います。不動産エージェントとは、売主とパートナーシップを組み、利益を最大化できるようにサポートするプロフェッショナルです。

不動産エージェントは、不動産を売るべきではないと判断したら「売らない選択肢」を様々な視点から売主に提案します。また売るとしてもどのように売るべきか、いつ売るべきかといった客観的なアドバイスも受けられるのが特長です。

さくら事務所のグループ会社である「らくだ不動産」もエージェント型の不動産仲介会社です。

――らくだ不動産での実際の相談事例を教えて下さい。

小池:「不動産相続で子どもに迷惑をかけたくないが、住む家を変えたくない」という相談がAさんからありました。

相談者Aさんはビルを所有しており、上階を自宅、下階は店舗物件として賃貸経営をしていました。今後の相続を考えるなかでビルについて子どもに相談したところ「ビルを相続するつもりはない」と言われ、どうすればいいのか悩まれていました。

ビルの管理会社に相談すると「売るしかない」と言われてしまったそうです。自分が住んでいるビルを売って引っ越ししたくないAさんは、どうすればいいのか途方に暮れてしまったそうです。

そこで私たちは、Aさんが自宅を売却してからも賃貸借契約を結んで住み続けられる「リースバック」を提案しました。リースバックを活用すると、不動産売却で得た現金で家賃が支払えるので、売却後の生活資金を心配する必要がありません。また、リースバックの契約書に「賃借人(Aさん)からの解約以外は認めない」という特約を記載したことで、Aさんが解約を申し出ない限りはそのまま自宅に住み続けられるようになりました。

「らくだ不動産」の小池正也さん(写真提供:さくら事務所)

――相続不動産が売れる物件ならよいのですが、築古物件だと、建物ごと売却するのは難しい印象です。

小池:一般的には古い家屋は解体してから売却するケースが多いですが、なかには「中古住宅」として売却できるケースがあります。

相談者Bさんから「介護施設に入所するので築27年の自宅を売却したい」という相談を受けました。築年数を考えると、通常であれば建物を解体して更地にしてから土地売却のケースが多いですが、建物の状態がよかったことから「ホームインスペクション(住宅診断)」を提案しました。

診断をしたところ、建物として十分に使用できる範囲だったので「中古住宅」として売却できました。Bさんには「住み慣れた建物が壊されずに残る」と非常に喜んでいただけました。

――相続税対策として、アパート建築や不動産購入を検討する人も多いと思います。相続税対策に不動産活用はおすすめですか。

長嶋:土地にアパートが建っていることで、相続税の評価額を下げられることから「相続税対策にはアパート建築がいい」面はあります。しかし、全てのケースで当てはまるわけではありません。アパート経営をするのであれば、今後の人口減少に左右されない安定したニーズを維持できる地域なのか。5年、10年経っても継続的に収益が見込めるのかといった投資家目線が重要になります。アパートを相続した子どもたちが困ったら元も子もないので、適した土地であるかどうかも専門家に相談しておくべきです。

相続税対策を相談するなら、税理士に相談することになると思います。ただし、相続不動産を活用して利益を最大化したいのであれば、セカンドオピニオンとして不動産エージェントに相談することも検討するとよいでしょう。相続した不動産が売れるものなのか、収益を生むものなのかといった総合的なアドバイスが受けられます。サブリースや住宅診断のような幅広い提案ができる不動産会社であれば、トラブルを低減させることができますので活用下さい。

さくら事務所

「人と不動産のより幸せな関係を追及し、豊かで美しい社会を次世代に手渡すこと」を目的に設立された不動産会社。中立・公正な目線で売主にとって最適な提案をする業界初の個人向けコンサルティングサービスを提供している。ホームインスペクション(住宅診断)など住宅診断士によるコンサルティングでも注目を集め、長嶋修会長はメディアへの出演、コメントも多数。

らくだ不動産

「売る・買う」を前提とすることなく、顧客の利益を最大化させる「エージェント型仲介」を提供する不動産会社。不動産の売却・購入の提案だけでなく、顧客のニーズに応じた不動産の有効活用や資産の組み換え等の提案、またセカンドオピニオンとしての相談も承っている。

(記事は2023年5月1日現在の情報に基づきます)