1.賃貸併用住宅における確定申告の必要性

個人の所得は、給与所得や不動産所得、事業所得、雑所得、譲渡所得、山林所得、退職所得、利子所得、配当所得、一時所得と呼ばれる10種類の所得に分類されます。
このうち、賃貸経営で得られる所得は「不動産所得」になります。

不動産所得とは家賃収入のことではなく、家賃収入から必要経費を差し引いた利益のことです。
不動産所得は以下の計算式で求めます。

  • 不動産所得=収入金額-必要経費

サラリーマンのような給与所得者は、年間収入金額が2,000万円を超えない人であれば原則として確定申告は不要です。

ただし、給与所得者であっても、「給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超える人」は確定申告が必要となります。

つまり、賃貸併用住宅のアパート部分で不動産所得が「年間20万円超」となる人は確定申告が必要になるということです。

確定申告は、前年の所得に対して、通常、毎年2月16日から3月15日の間に行います。

申告時期が近づくと、自治体が地元の税理士会と協力して確定申告の無料相談会を行っていることも多いです。

初年度はわからない部分も多いと思いますので、無料相談会を活用することをおすすめします。

都市部の無料相談会は混雑しますので、申告書をいったん自力で作成し、添削を受けに行くイメージで利用すると自分でスムーズに確定申告ができるようになります。

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2.確定申告の経費

アパート部分における確定申告の経費について解説します。

2-1.経費にできる費目

賃貸経営はアパートやオフィスビル、一棟貸し、借地等のように多種多様であることから、国税庁は不動産所得の経費を具体的に規定しているわけではありません。

「経費にできるもの」の考え方のみを示しており、国税庁の考え方に合致したものが経費となります。

国税庁の経費に対する考え方は、以下の通りです。

(1)総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額
(2)その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額

出典:国税庁「No.2210 やさしい必要経費の知識」

賃貸併用住宅の場合、一般的に以下のような費目を経費とすることができます。

【賃貸併用住宅で経費となるもの】

  • 公租公課(固定資産税、都市計画税、不動産取得税、登録免許税、印紙税)
  • 損害保険料(火災保険、地震保険)
  • 修繕費
  • 管理委託料
  • 入居者募集のための仲介手数料や広告宣伝費
  • 共用部分の水道光熱費
  • 解体費・立ち退き料
  • ローン保証料
  • 借入金利子
  • 減価償却費
  • 賃貸経営に必要な通信費・交通費・接待交際費・新聞図書費・消耗品費等

賃貸経営に関する経費については、住宅ローンやアパートローンの元本返済額は経費にならない点が最大のポイントとなります。

お金は借りても収入として課税されないのと同様に、返しても経費として節税できないという理屈です。

ただし、住宅ローンやアパートローンの「利子」の部分は経費となります。
元利均等返済(元金と利息の合計額が毎月固定額となる返済方法)で返済している場合、
返済表の中から利息部分を取り出して経費にすることが必要です。

また、減価償却費が経費になることもポイントとなります。
減価償却費とは、建物の取得原価を各会計期間に費用として配分するために発生する会計上の費用のことです。

1998年(平成10年)4月1日以降に取得した建物および2016年(平成28年)4月1日以後に取得した建物付属設備及び構築物は「定額法」と呼ばれる計算式を用いて減価償却費を計算します。

定額法による減価償却費の求め方は以下の通りです。

減価償却の計算式

  • 減価償却費=取得価額×償却率×(業務に供された月数÷12)

費用計上できる減価償却費はアパート部分だけですので、取得価額はアパート部分の建築費が対象です。

償却率は、耐用年数に応じて下表の数値を用います。

2-2.自宅との案分が必要な経費

賃貸併用住宅の中には、税金などの公租公課や損害保険料、ローン保証料、借入金利子等の自宅部分を含めて発生する費用が存在します。

自宅の部分も含めて生じる費用に関しては、面積案分してアパート部分のみを計上することが必要です。

経費をアパート部分に案分するには「アパート部分比率」を算出して、該当する経費に乗じます。

アパート部分比率の経費とアパート部分比率の求め方は以下の通りです。

  • アパート部分の経費=一括で支払う経費×アパート部分比率
  • アパート部分比率=アパート面積÷(自宅面積+アパート面積)

例えば、アパート部分比率が50%で建物全体の固定資産税が年間50万円だとしたら、25万円(=50万円×50%)が不動産所得を計算するために計上できる経費となります。

2-3.「家事」との案分が必要な経費

賃貸経営に必要な費用であれば、通信費や交通費・接待交際費・新聞図書費・消耗品費等も経費となります。

ただし、通信費や交通費に関しては、家事消費(私的に使った費用のこと)と分けて経費計上することが必要です。

例えば、交通費に関しては、管理会社との打ち合わせや他に所有しているアパートの見回り等で車を使っている場合、ガソリン代は経費となります。

ガソリン代の10分の1程度を賃貸経営に関することに使用していれば、年間のガソリン代のうち10分の1は経費とすることが可能です。

家事との案分が必要な経費は、案分割合を決めた根拠が重要となります。
活動記録や領収書をしっかり残しておき、税務調査がきたときに根拠をもって合理的に説明できるようにしておくことがポイントです。

3.住宅ローン控除の確定申告の仕方

住宅ローン控除の確定申告の仕方について解説します。

3-1.住宅ローン控除の対象となる部分

自宅部分に関しては、一定の要件を満たしていれば住宅ローン控除を利用することができます。

住宅ローン控除とは、年末の住宅ローン残高に一定率を乗じた額を所得税から控除できる制度です。

新築で自宅部分を区分登記(マンションのように独立して登記すること)していない賃貸併用住宅においては、住宅ローン控除を利用するために以下の要件を満たす必要があります。

  • 床面積が原則50平米以上であること
  • 居住用と居住用以外の部分があるときは、床面積の2分の1以上が居住用であること

給与所得者の場合、住宅ローン控除のための確定申告は、初年度のみとなります。

3-2.案分方法

住宅ローン控除が利用できるのは、あくまでも自宅部分です。
対象となる年末残高は以下の方法で求めます。

  • 年末借入金残高=全体の住宅ローン残高×自宅部分比率
  • 自宅部分比率=自宅面積÷(自宅面積+アパート面積)

尚、賃貸併用住宅の中には、「自宅部分は住宅ローン」、「アパート部分はアパートローン」と分けてローンを組んでいるケースもあります。

自宅部分を区分登記し、自宅部分だけ独立した住宅ローンとなっている場合には、自宅部分の住宅ローン残高がそのまま住宅ローン控除の対象です。

まとめ

以上、賃貸併用住宅の確定申告について解説してきました。
賃貸併用住宅では、給与所得者でも20万円超の不動産所得が生じれば確定申告が必要です。

確定申告で経費になるものとしては、固定資産税や火災保険料、借入金利子、減価償却費等があります。

建物全体で支払っている固定資産税や火災保険料等は、面積案分して計上することがポイントです。

自宅部分で住宅ローン控除を利用する場合には、給与所得者でも初年度は確定申告が必要となります。
住宅ローン控除を適用できる対象は、自宅部分の住宅ローン残高です。
確定申告の概要が分かったら、申告手続きを進めてみましょう。

(記事は2022年3月1日時点の情報に基づいています。)