目次

  1. 1. 利息は経費で元本は経費にならない
  2. 2. 住宅ローン控除の適用要件
  3. 3. 経費になるのは減価償却費
  4. 4. 耐用年数以上で住宅ローンを借りたときのリスク
  5. 5. まとめ

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住宅ローンで店舗兼住宅を建てた人や、自宅を事務所にしている個人事業主においては、毎月住宅ローンの返済が発生しています。

住宅ローンは、利息部分は経費になりますが、元本部分は経費にならないのがルールです。
元本部分が経費にならないのは、お金の貸し借りは損益に関係しないないということが理由になります。

税金は売上から費用(経費)を差し引いた利益に対して課税されます。
経費になるということは利益を小さくする効果があるため、節税ができるということです。

もしお金の貸し借りが損益に該当するとしたら、お金を借りたときは借りたお金が売上となってしまいます。借りたお金が売り上げになったら、大幅な利益がでてしまうため、お金を借りた年は大きな税金が課されることになります。

しかしながら、お金を借りたら大きな税金がかかるという話は聞いたことがないと思います。
理由としては、借りたお金は「売上」ではないからです。

同様の考え方で、返したお金も経費ではないということになります。
お金を借りたときに課税をされなかったわけですから、返しても節税はできないということです。

住宅ローンの返済は、家賃のように毎月発生しますので、経費になるのではないかと錯覚しがちです。

お金の貸し借りは、顧客や仕入れ先といった事業とは直接関係のない人との間で行う金銭のやり取りであるため、売上でも費用でもないのです。

つまり、借入金の元本返済部分には節税効果はなく、税引後の利益の中から返済しなければならないものとなります。

一方で、利息の部分は経費です。
店舗兼自宅の場合には、年間の利息を店舗部分の面積で案分した価額が経費に該当します。

元利均等返済を行っている場合は、返済表から利息の合計額を算出し、その金額に店舗面積の割合を乗じたものが経費です。

一定の要件を満たす店舗兼住宅では、自宅部分のみに対して住宅ローン控除を利用することができます。
住宅ローン控除とは、住宅ローンを組んで自宅を購入すると買主が所得税等を節税できる制度のことです。

店舗兼住宅で住宅ローン控除の適用を受けるには、以下の要件を満たす必要があります。

【店舗兼住宅で住宅ローン控除を受けるための要件】

  • 床面積の2分の1以上が自宅であること
  • 住宅を新築、または新築住宅を取得し、2009年1月1日から2025年12月31日までにその住宅を自己の居住の用に供すること
  • 工事完了の日または取得の日から6ヶ月以内に、自己の居住の用に供すること
  • 床面積が50平米以上であること

住宅ローン控除の適用が受けられるのは、あくまでも「自宅部分のみ」である点がポイントです。

住宅ローン控除の対象となるのは、年末住宅ローン残高に自宅部分の面積割合を乗じたものになります。

建物を保有している場合、住宅ローンの元本部分は経費にはなりませんが、その代わりに建物の減価償却費は経費になる点がポイントです。

減価償却費とは、建物の取得原価を各会計期間に費用として配分するために発生する会計上の費用のことを指します。

減価償却費は、会計の手続き上発生する費用のため、実際にキャッシュアウトされる費用ではありません。
しかしながら、減価償却費は会計上の立派な費用であることから、経費となり節税効果があります。

一方で、住宅ローンの元本返済額は、実際にキャッシュアウトするにも関わらず費用にはなりませんでした。
しかも、元本返済額は会計上の費用ではないことから、経費ではなく節税効果もないということになります。

つまり、減価償却費と住宅ローンの元本返済額は真逆の性質を有するということです。

仮に減価償却費と住宅ローンの元本返済額が同額であれば、利益とキャッシュフローは同額になります。
キャッシュフローとは実際の手残りのことです。

「キャッシュフロー経営」という言葉を聞いたことがある人もいると思いますが、キャッシュフロー経営とは、会計上の利益ではなく実際の手残りを重視した経営のことです。

仮に減価償却費よりも住宅ローンの元本返済額の方が大きい場合、キャッシュフローは利益の額よりも小さくなります。

元本返済額が大き過ぎれば、会計上の利益は黒字でもキャッシュフローはマイナスになってしまうこともあり得ます。

店舗兼自宅の場合には、土地の購入費も住宅ローンで借りているケースがあり、住宅ローンの元本返済額が減価償却費よりも大きくなっていることもあります。

減価償却費は建物購入額のみが対象となり、土地購入額は減価償却の対象ではないからです。

税理士に確定申告を依頼している場合には、減価償却費の額が確定申告書の中に記載されています。

もし、店舗面積で案分した住宅ローンの元本返済額が減価償却費よりも大きい場合には、利益よりもキャッシュフローが少ないという状況です。

利益が出ているのに貯金がなかなか貯まらない経営状態となっていますので、状況が悪化する前に、一度、支出等を見直すことをおすすめします。

店舗兼住宅を長期の住宅ローンで借りている場合の経営上のリスクについて解説します。

減価償却費は、キャッシュアウトは伴いませんが、節税効果がある「ありがたい経費」でした。
この減価償却費は、建物の耐用年数の間だけ計上される経費です。

耐用年数は、建物の構造によって決まっており、下表のように定められています。

減価償却費は経費となることから、減価償却費が計上されている耐用年数期間内は、税金が安くなります。

一方で、耐用年数が満了すると、減価償却費が計上されなくなることから利益が大きくなり、税金が増えてしまいます。
税金が増えるということは、キャッシュフローが悪化するということです。

ここで、35年の住宅ローンで店舗兼住宅を建てている場合、耐用年数満了後も住宅ローンの元本返済が残ってしまうという問題が生じます。

耐用年数は、木造なら22年、鉄骨造で3mm以下なら19年、3mm超4mm以下なら27年となっているため、これらの構造で35年ローンを組む減価償却費が計上できる期間よりもローンの返済額の方が長いです。

仮に、耐用年数が満了した以降に住宅ローンの元本返済が残っている場合、税金が増えているため、キャッシュフローが急激に悪くなってしまいます。

税引き後利益よりも住宅ローンの元本返済額が大きい場合、利益は黒字なのにキャッシュフローがマイナスとなるということもあり得ます。

耐用年数よりも長い期間で住宅ローンを組んでいる場合、耐用年数満了後に一気にキャッシュフローが悪化する恐れがあるため、長期の住宅ローンを組むことが一概に良いこととは言い切れないのです。

既に耐用年数よりも長い期間で店舗兼住宅の住宅ローンを組んでいる場合は、繰上返済等をしながら返済期間を短くしていくことも対策の一つとなります。

大幅に利益が出た年は、節税対策に奔走するのではなく、税金を払ってでも貯蓄を優先し、その貯蓄で繰上返済を行うことも適切な対応です。

以上、住宅ローンと経費の考え方について解説してきました。

住宅ローンは利息部分を経費にすることはできますが、元本返済部分を経費にすることはできません。
その代り、キャッシュアウトが発生しない減価償却費が経費となっています。

減価償却費は耐用年数以内しか生じませんので、住宅ローンの期間が耐用年数よりも長い場合には、耐用年数満了後のキャッシュフローの悪化を意識しておきましょう。

(記事は2021年12月1日時点の情報に基づいています。)

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