賃貸併用住宅の間取りのおすすめは? 狭小地でもできる間取りを解説

アパートと自宅の2つの用途を持つ賃貸併用住宅は、間取りを考えるのが結構難しいです。広い土地であれば余裕を持った設計をすることができますが、狭小地で賃貸併用住宅を建てようとするとさらに難しくなります。この記事では「賃貸併用住宅の間取り」について解説します。
アパートと自宅の2つの用途を持つ賃貸併用住宅は、間取りを考えるのが結構難しいです。広い土地であれば余裕を持った設計をすることができますが、狭小地で賃貸併用住宅を建てようとするとさらに難しくなります。この記事では「賃貸併用住宅の間取り」について解説します。
最初に賃貸併用住宅の種類について解説します。
賃貸併用住宅には、大きく分けて住宅ローンを使って建てる「一般タイプ」と住宅ローンを使わずに建てる「マンションタイプ」の2種類があります。
住宅ローンは、国が国民の住宅取得意欲を促すために政策的に組みやすくなっているローンです。
住宅ローンの金利は他の一般的なローンと比べて例外的に低く、また、35年のような長期で組むことも可能となっています。
一方で、アパートを建てようとすると、アパートローンを利用するのが通常です。
アパートローンは金利が高く、融資期間も短いことが一般となっています。
住宅ローンの金利は、例えば35年固定でも1%前後です。
それに対して、アパートローンの金利は、2.5~4%程度が相場となっています。
また、アパートローンの融資期間は建物の耐用年数内であることが一般的です。
耐用年数は、木造なら22年、鉄骨造で3mm以下なら19年、3mm超4mm以下なら27年となっています。
融資期間が短くなると、毎月の返済額が大きくなります。
金利が高く融資期間も短いアパートローンは、住宅ローンに比べると条件の悪いローンです。
住宅ローンで建てることができる賃貸併用住宅(一般タイプ)は、多くの銀行が自宅部分を50%以上とすることを要件としています。
そのため、一般タイプとすればアパート部分も含めて建物全体を住宅ローンで借りることが可能です。
ただし、一般タイプは自宅を50%以上としなければならないことから、設計上の大きな制約を受けることになります。
設計の自由度を上げたい場合には、マンションタイプを選択することが必要です。
マンションタイプは、自由な設計ができることから、アパート部分の面積を増やして収益性を上げることもできます。
自由な間取りを選択したい場合には、一般タイプにこだわらず、マンションタイプも含めて検討することがポイントです。
一般タイプかマンションタイプかを選ぶには、敷地に指定されている建ぺい率と容積率が重要なポイントとなります。
建ぺい率とは、建築面積の敷地面積に対する割合のことです。
それに対して、容積率とは、延床面積の敷地面積に対する割合になります。
建ぺい率は、建物を上から見たときの面積(建築面積)の割合です。
建ぺい率が大きければ、土地を広く利用することができます。
建ぺい率は、戸建て住宅街に多い第一種低層住居専用地域と呼ばれる用途地域では、50%または60%と指定されていることが多いです。
狭い土地であれば、60%に指定されている土地の方が、ゆとりのある設計をすることができます。
また、角地の土地は建ぺい率が10%加算されることもポイントです。
60%と指定されている土地でも、角地であれば70%まで利用できるため、さらにゆとりを持った設計をすることができます。
容積率は、建物全体のボリュームを決める数値です。
容積率が高く指定されている土地ほど、高層建築物を建てることができます。
マンションタイプの賃貸併用住宅を建てる場合には、高い容積率が指定されていることが条件です。
例えば、第一種低層住居専用地域では、建ぺい率が50%、容積率が100%と指定されていることがよくあります。
このような土地は、1階の床面積を土地面積の50%、2階の床面積も土地面積の50%とすることが多く、必然的に2階建てとなることが一般的です。
狭い土地で建ぺい率と容積率が「50%、100%」という組み合わせであれば、2階建てを建てることが通常であるため、賃貸併用住宅としては住宅ローンを利用する一般タイプを選択することが多くなります。
また、土地の用途地域では、第一種住居地域と呼ばれる用途地域で指定されている土地も多いです。
第一種住居地域では、建ぺい率が60%、容積率が200%と指定されていることがよくあります。
容積率が200%と指定されている場合、例えば1フロアの床面積を土地面積の50%とすれば200%を50%で割ると4階建ての建物を建てることが可能です。(その他の規制は考慮外)
広めの土地で、容積率が200%以上で指定されているケースでは、住宅ローンを利用しないマンションタイプの賃貸併用住宅も有力な選択肢となります。
40坪となると、賃貸併用住宅を建てるには狭いため、住宅ローンを利用する一般タイプの賃貸併用住宅が有力な選択肢となります。
一般タイプは自宅部分を50%以上確保しなければならないことから、自宅と賃貸部分の配置は縦配列か横配列かの2つが基本的な選択肢です。
縦配列を選択すると、自宅の中に階段が発生します。
狭い土地であれば、横配列を選択すると、自宅がマンションのようにフルフラットなつくりになりますので、横配列の方がおすすめです。
40坪で建ぺい率が50%で指定されている土地であれば、1フロア当たりの最大の面積が20坪(約66平米)となります。
66平米であれば、横配列を選択すると自宅部分を3LDKの間取りを建てることが可能です。
賃貸部分は、「22平米の1K、3戸」、「33平米の1DK、2戸」、「66平米の3LDK、1戸」のいずれかの選択肢になります。
賃貸部分の戸数が少なくなると、空室時の影響が大きくなります。
3戸であれば1戸の空室でも空室率は33%ですが、1戸しかないと空室率が100%です。
住宅ローンの返済は空室時でも続きますので、空室の影響を小さくするには戸数が最も多い「22平米の1K、3戸」の間取りプランが適切といえます。
敷地が60坪の場合、一般タイプだけでなく、容積率によってはマンションタイプの選択肢も出てきます。
一般タイプを選択した場合、60坪では1フロアの面積を土地面積の50%で抑えても30坪(約100平米)の床面積を確保することが可能です。
1フロアの面積が30坪あれば、自宅を縦配列で配置しても1階を50平米、2階も50平米とすることができ、一般の戸建て住宅に近い自宅を建てることができます。
また、アパート部分も1フロアあたり50平米あるため、25平米のワンルームを各階2戸、合計で4戸のアパートを作ることができます。
一方で、容積率が200%あれば、1フロアの面積を土地面積の50%とすることで4階建てのマンションタイプの賃貸併用住宅を建てることができます。
1フロアを30坪(約100平米)とできるため、例えば最上階を4LDKの自宅とするようなことも可能です。
アパート部分は、25平米のワンルームにすれば、各階4戸、合計で12戸のアパートを建てることができます。
アパート部分の間取りは、基本的にワンルームがおすすめです。
ワンルームは単身者向けとなるため、賃貸需要が強く、アパート経営を安定化させることができます。
アパート部分に3LDKのようなファミリータイプを作ってしまうと、竣工後の賃貸経営で苦戦します。
3LDKは面積が広いため、賃料総額が高くなり、借手が少ないです。
ファミリー世帯は住宅を借りるよりも買った方が一般的に安いため、ファミリー世帯の賃貸需要は単身世帯よりも弱くなります。
また、ワンルームは賃貸需要が強いだけでなく、戸数も増やすことができることから、空室時の影響を小さくすることができます。
賃貸併用住宅は、ファミリータイプを作ってしまうと、戸数が極端に少なくなってしまう傾向があり、空室時の影響が大きくなりがちです。
全体の空室率を低く抑えるためにも、ワンルームにして戸数を増やすことがポイントとなります。
以上、賃貸併用住宅の間取りについて解説してきました。
賃貸併用住宅の間取りは、敷地の広さや建ぺい率、容積率等の状況によって最適なものが決まります。
アパート部分に関しては、基本的にワンルームがおすすめです。
賃貸併用住宅の間取りの概要がわかったら、早速にプランの検討を開始してみましょう。
(記事は2022年1月1日時点の情報に基づいています。)