目次

  1. 1. 被保佐人とは?
  2. 2. 被保佐人が一人でできないこと・できること
    1. 2-1. 被保佐人が一人でできないこと
    2. 2-2. 被保佐人が一人でできること
  3. 3. 被保佐人と成年被後見人・被補助人との違い
    1. 3-1. 一人でできることの範囲が異なる
    2. 3-2. 資格制限の有無が異なる
  4. 4. 保佐人を選任する場合の注意点
  5. 5. まとめ|成年後見制度申立ては弁護士や司法書士に相談を

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「被保佐人」とは、家庭裁判所の審判により、一定の法律行為をするに当たって、保佐人のサポートを受ける必要があるとされた者をいいます。
保佐が開始されるのは、本人やその家族などから申立てを受けた家庭裁判所の判断により、本人が「精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分」の状態にあると認められた場合です。

裁判所によると、「支援を受けなければ、契約等の意味・内容を自ら理解し、判断することができない」と認められる場合には、上記の要件を満たすと解されています。
参考:成年後見制度についてよくある質問|裁判所

被保佐人には、判断能力が低下した状態で契約などを行った結果、大きな損失を被ってしまうことを防止する観点から、一人でできる法律行為の範囲が制限されています。

被保佐人が一人で行うことができないのは、「保佐人の同意権・取消権の対象になっている法律行為」です。

保佐人には、被保佐人(本人)が行う以下に挙げる法律行為について、同意権および取消権が認められています(民法13条1項、4項)。
(家庭裁判所の審判により、保佐人に代理権が付与される場合もあります(民法876条の4第1項)。

  1. 預貯金の払い戻し、貸付け、貸金の返済の受領など
  2. 借り入れ、他人の債務の保証など
  3. 不動産の売買・賃貸借の解除・抵当権の設定、株式の購入・売却など
  4. 訴訟行為
  5. 贈与、和解、仲裁合意
  6. 相続の承認、相続放棄、遺産分割
  7. 贈与の申込みの拒絶、遺贈の放棄、負担付贈与の申込みの承諾、負担付遺贈の承認
  8. 不動産の新築、改築、増築、大修繕
  9. 一定期間以上の賃貸借
  10. 1~9の各行為を、制限行為能力者(未成年者など)の法定代理人として行うこと

また、家庭裁判所の審判により、上記以外の法律行為についても、保佐人に対して同意権・取消権が付与される場合があります(民法13条2項)。

保佐人の同意権・取消権の対象行為を、被保佐人が単独で行った場合、被保佐人または保佐人は、当該行為を取り消すことができます(同条4項)。

保佐人の同意権・取消権の対象ではない法律行為については、被保佐人が単独で行うことができます。
例えば、遺言書の作成や結婚などは、被保佐人の単独の意思により行うことが可能です。

また、保佐人の同意権・取消権の対象とされている類型の法律行為でも、日常生活に関する法律行為については、被保佐人が単独で行うことが認められています(民法13条1項但し書き、2項但し書き、9条但し書き)。

被保佐人が有する判断能力の水準は、成年被後見人と被補助人の中間に当たります。
それに伴い、被保佐人と成年被後見人・被補助人の間には、サポート役の権限や、本人が一人でできることの範囲などに違いがあります。

被保佐人と成年被後見人・被補助人の違いとサポート役の権限の違い
被保佐人と成年被後見人・被補助人の違いとサポート役の権限の違い

被保佐人は前述のとおり、以下の法律行為をする際に、保佐人の同意を必要とします(日常生活に関する法律行為を除く)。

  • 民法13条1項各号所定の法律行為
  • 審判によって保佐人に代理権が追加付与された法律行為

これに対して、判断能力の低下がさらに進んだ「成年被後見人」の場合、日常生活に関するものを除く一切の法律行為につき、本人が単独で行うことはできません(民法9条)。

その代わりに、成年後見人に対して代理権・取消権が当然に付与されています。

一方、判断能力の低下の進行度が浅い「被補助人」の場合、補助人に対しては、本人の法律行為に関する同意権・取消権が、原則として付与されません。
ただし、家庭裁判所の個別的な判断により、特定の法律行為について、補助人に同意権・取消権・代理権が付与されることがあります(民法17条1項)。 

後見または保佐が開始した場合、成年被後見人・被保佐人は、弁護士・医師・会社役員・公務員などの職業に就けない「資格制限」が発生します。

これに対して、判断能力の低下があまり進行していない被補助人には、このような法的な資格制限は発生しません。

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家族について保佐の開始を申し立てる場合、親しい親族の誰かを保佐人とする場合も多いです。

ただし、保佐人は裁判所の判断で選任されるため、申立人の希望通りに選任されるとは限らない点に注意しましょう。

また、保佐人を辞任できるのは、正当な事由があると認められる場合に限られ、家庭裁判所の許可が必要です(民法876条の2第2項、844条)。
一度保佐人に就任すると、簡単には辞められないので、責任をもって職務を全うしてください。

なお、本人の親族ではなく、弁護士などの専門家が保佐人に就任した場合には、月額2万円~6万円程度の報酬が発生します。
参考:成年後見人等の報酬額の目安|東京家庭裁判所・東京家庭裁判所立川支部

成年後見制度を利用する場合、後見・保佐・補助の中から、認知症などの進行度に応じて適切なものを選択することが大切です。

また、成年後見人・保佐人・補助人の事務は煩雑であり、負担する責任も重いので、成年後見制度の利用を申し立てる際には、事前に弁護士や司法書士などへご相談ください。

(記事は2021年11月1日時点の情報に基づいています)

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