隣の土地を買いたい! 隣地の適正価格やローンの可能性を解説
昔から「隣地は高い価格を払ってでも買え」とも言われており、隣地購入はとても価値のある行為とされています。隣地が買えることは確かに幸運ではありますが、購入価格はいくらが妥当なのかについては判断に迷うところです。「隣地購入」について、例を踏まえながら解説していきます。
昔から「隣地は高い価格を払ってでも買え」とも言われており、隣地購入はとても価値のある行為とされています。隣地が買えることは確かに幸運ではありますが、購入価格はいくらが妥当なのかについては判断に迷うところです。「隣地購入」について、例を踏まえながら解説していきます。
最初に隣地購入の価格の考え方について解説します。
もともと持っている土地がA地で、購入する隣地をB地とし、購入後に一体となった土地をC地と想定します。
A地はもともとL地型の不整形な土地ですが、B地を購入することでC地は整形となり、二方路地から角地にもなります。
A地の所有者には、他の第三者よりもB地を購入する積極的な動機があり、B地を購入することで増分価値が生じます。この場合、増分価値とは、B地を購入することで生じる価値であり、以下の算式で求められます。
【増分価値】
ここで、以下の条件で増分価値を求めます。
(条件)
増分価値は以下のとおりです。
増分価値γはA地とB地のそれぞれの土地が貢献して生じるものであり、A地の増分価値αとB地の増分価値βを合算したものと考えます。
増分価値γの中にA地の貢献部分も含まれていることから、A地の所有者は増分価値γをすべて負担する必要はありません。A地の所有者はB地を「B地の価格+γ」ではなく、「B地の価格+β」で買えば妥当な価格で購入していることになります。
増分価値γをαとβに配分する方法には、以下の4つの方法があります。
それぞれの配分方法によって求められるβの割合は以下のとおりです。
(単価比による方法)
βの割合 = B地の単価 ÷ (B地の単価 + A地の単価)= 5万円/㎡ ÷ (5万円/㎡ + 3万/㎡)≒ 63%
(面積比による方法)
βの割合 = B地の面積 ÷ (B地の面積 + A地の面積)= 100㎡ ÷ (100㎡ + 300㎡)≒ 25%
(総額比による方法)
βの割合 = B地の総額 ÷ (B地の総額 + A地の総額)= 500万円 ÷(500万円 + 900万円)≒ 36%
(買入限度額比による方法)
βの割合 = (C地の価格-A地の価格)÷{(C地の価格-A地の価格)+(C地の価格-B地の価格)}= (2000万円-900万円)÷{(2000万円-900万円)+(2000万円-500万円)}≒ 42%
4つの配分法のうち、よく用いられるのが「総額比による方法」と「買入限度額比による方法」です。
総額比による方法が36%、買入限度額比による方法が42%でしたので、ここでは話を簡略化するために配分割合を40%とします(αは60%となります)。増分価値γは600万円でしたので、βは600万円のうち40%であることから240万円(=600万円×40%)になります。
再度、C地の価格構成を以下に示します。
適正購入価格は「B地の価格+β」であるため、740万円(=500万円+240万円)がA地の所有者が買っても良いB地の価格となります。
この章では隣地購入の手順について解説します。
隣地を購入する際は、最初に公図と登記簿謄本で隣地の状況を調べることがポイントです。公図と登記簿謄本は法務局で取得することができます。
公図は地型を表した簡易な図面であり、隣地の地番と形状がわかります。登記簿謄本は土地の所有者や所有権以外の権利を知ることができます。
登記簿謄本で注意したいのは、「所有者が誰か」という点と、「抵当権が設定されていないか」という2点です。抵当権とは、債権者(銀行のこと)が優先的に弁済を受けることができる権利を指します。抵当権が付いている場合には、抵当権を解除してもらうことを条件に購入することが必要です。
隣地購入で重要なのが購入額の決定です。周辺の相場を十分に調べ、増分価値があれば相場よりも上乗せした価格を検討しておく必要があります。
通常の土地の相場であれば、国土交通省が運営している土地総合情報システムで調べることができます。
隣地の購入といっても、たとえば広い土地が同じ接道条件の狭い隣地を購入するような場合、増分価値は生じないケースが多いといえます。
増分価値が生じないケースでは、特に高く買う必要はなく、通常の相場で購入すれば妥当な価格水準であるといえます。
自分で購入しても良いと思える金額の目安が決まったら、購入を打診します。
不動産会社を間に入れるべきかどうかはケースバイケースです。隣地所有者をよく知っている場合には、直接、話をしに行ったほうがうまく話がまとまることもあります。
一方で、隣地所有者のことをよく知らず、交渉に不安がある場合には、不動産会社を仲介に入れても良いでしょう。ただし、不動産会社を間に入れれば仲介手数料が生じます。仲介手数料は、取引額が400万円超の場合、「取引額×3%+6万円」(プラス消費税)が上限額です。
原則として、更地の購入では住宅ローンを組むことはできません。住宅ローンは本来、自宅を建てる際のローンであるためで、自宅を建築する目的以外では住宅ローンは組めないことになっています。
自宅を建てる場合でも、更地の購入時に組めるのは「つなぎ融資」と呼ばれるローンであり、住宅ローンは建物が竣工したときに実行されます。
ただし、例外的に購入する隣地が形状や利用目的などにより現在の自宅の敷地の延長の範囲内と客観的に判断できる場合には、融資を認めてくれる銀行もあるようです。
購入する隣地が大きく、現在の自宅の敷地の延長の範囲内とは認められない場合、ローンが組めないこともあります。
自宅の一部として融資を受ける場合、「もともとの自宅の土地建物」と「購入する隣地」のすべてに新たな抵当権を設定します。銀行は、競売時に法定地上権が発生することを避けるため、土地と建物を一括して競売にかけられるように土地にも建物にも同じ抵当権を設定することが一般的です。
法定地上権とは、競売時に土地と建物が別々の所有者になったときに建物について地上権(土地を借りる強い権利のこと)を認める制度になります。競売で法定地上権が生じてしまうと、担保価値が大きく下落してしまいます。
「もともとの自宅の土地建物」と「購入する隣地」のすべてに抵当権を設定すれば、土地と建物を一括して競売にかけることができるため、法定地上権の発生を防ぐことができます。そのため、隣地を購入するケースであっても、隣地だけでなくもともとの自宅も含めて抵当権を設定することが多いです。
もともとの自宅の土地建物に他行の抵当権が残っている場合、新しいローンの抵当権が後順位になってしまうため、住宅ローンが組めないことが一般的となっています。後順位の抵当権者は先順位の抵当権者に劣後し、競売時の配当を受け取れない可能性が高くなるからです。
隣地購入で住宅ローンを組めるケースは少ないため、ローンを利用したい場合は事前に銀行へ確認するようにしてください。
以上、隣地購入について解説してきました。
隣地の購入価格は、増分価値が生じるケースでは、通常の価格よりも高くなることが一般的です。
隣地を購入する場合には、公図と謄本で物件のことをよく調べ、価格を決めてから購入を打診します。隣地購入の概要がわかったら、迅速に土地の相場を調べることから始めましょう。
(記事は2021年9月1日時点の情報に基づいています)