新型コロナウイルスの感染が拡大する中、定年を控えている方や安定収入のある公務員、会社員に投資用マンションの営業マンから電話が多く掛かっているようです。私にも「お客さまを紹介頂き、成約した際には○○万円、物件価格の●●%、紹介料をお支払いします」という、よだれの垂れそうな金額を提示する営業電話を多く頂きます。そのような紹介業務を収入源にしている方もいるのかもしれません。

今年は年度末である3月に外出自粛などの影響を受け、なかなか数字を上げられなかった業者さんが多かったのだと思います。さて、以前であれば、新築の投資用マンションのケースが多かったのですが、最近は価格も高騰していたり立地に難があったりする物件も多いので、賃貸中の中古物件いわゆる「オーナーチェンジ物件」の購入話を持ちかけるケースも増えています。相続対策として賃貸投資を検討されている複数の方から「実際のところ、どうなのか?」という確認や問い合わせを多く頂きました。そこで、今回は、オーナーチェンジ物件の購入を検討した際に気を付けたいことのほか、メリットとデメリットについて、お伝えしていきます。

オーナーチェンジ物件は中古物件

オーナーチェンジ物件は、簡単に言うと中古物件の1つです。このため、まずは中古物件のメリットとデメリットから解説します。なお、数年前より中古物件はオフィシャルな言い回しではなくなり、マスコミや公官庁でも「既存物件」というようになりました。中古と言う用語が古い、悪いなどネガティブなイメージを持つからだと思われます。ただ、わかりやすさの観点からこのコラムでは、あえて「中古」という言葉を使います。

中古物件のメリット

では、まず、中古物件のメリットについてお伝えしましょう。

 

  • 中古物件は、新築物件に比べて、理論上、新築物件の利益分(おおよそ粗利20%前後)が削ぎ落ちているので、投資額(購入額)が割安なこと
  • 周辺の賃料相場が安定していれば、結果的に期待できるリターン(利回り)が高くなること
  • 新築物件では見えづらい管理状況などのリスク(不確定要素)が少ないこと

以上の点は投資対象として魅力を感じますよね。最初から家賃収入を得られる賃貸中の中古物件を勧められるケースも多くあります。これが、今回のテーマのオーナーチェンジ物件です。また、好んで中古物件に投資される方が多いのも事実です。

ただ、リスクとリターンはトレードオフ、表裏一体の関係です。あちらを立てればこちらが立たず、の状況になります。

中古物件のデメリット

デメリットは次の通りです。

  • 新築物件と比べ、中古物件は確実に経年劣化していることから、物件を補修しなければいけない可能性があること
  • 設備や意匠などが古くなり、周辺の物件と比較して見劣りしてしまう物件もあること
  • 建築当時は適法であった建築物が、その後、法令の改正などによって現行法に適合しなくなった既存不適格物件の場合、裏ワザ的な手法を使わないと建て替えや補修、ローン付けなどができないケースがあること

購入価格以上の費用がかさんだり、手間が増えたりすることもあるので、知識や情報を豊富に持つ、できれば実績のある宅建業者さんにサポートしてもらいましょう。

目に見えないリスクも

以上のように、オーナーチェンジ物件の場合は数字や見た目で有利に見えても、手続きや契約の段階で目に見えないリスクが顕在化することもあります。そのような点を踏まえた上で、投資の是非を判断しましょう。

例えば、「2020年に大家さんが知るべき『改正民法』のポイントは?売買で要注意」でもお伝えした通り、2020年4月から契約を規定する民法(債権編)が改正され、瑕疵担保責任から契約不適合責任に変更されました。
以前は不良品だと知らずに購入した買い手は法的に守られるのが原則でした。そもそも中古物件の売買では売り手が個人であるケースが多く、その場合、瑕疵担保責任は取らなくても良いことになっていました。

今後は契約内容をしっかり理解した上で契約しないと買主は守られないことになります。このため、契約を交わす際には今までにないほど慎重になる必要があります。

オーナーチェンジ物件の注意点

オーナーチェンジ物件は、すでにお伝えした通り、新築物件と違い、ハード面で難があるケースが多いので、チェックする必要があります。ただ、未入居の中古物件とも違うので、既存の契約などソフト面の確認も必要です。

オーナーチェンジ物件で最も気を付けなければいけないことは、「現に入居している方(借家人)との信頼関係構築&維持」です。それは、オーナーチェンジ物件の売買は所有権だけでなく、賃借権も同時に譲渡される、引き継ぐことになるからです。

そもそも所有権と賃借権は別々の権利です。売買をすれば自動的に賃借権も移動するというわけではありません。借家人(賃借人)に賃借権という債権を引き継いだというためのルール(対抗要件)があります。

このルールは、民法第467条に記載されています。以下に書き起こしてみました。

・民法 第467条(債権の譲渡の対抗要件)

  1. 債権の譲渡(現に発生していない債権の譲渡を含む。)は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。
  2. 前項の通知又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない。

分かりやすく言うと、大家の権利の移動(=賃借権の譲渡)を借家人(=賃借人・債務者)に主張し、新しい大家が家賃の支払いなど請求するためには、①譲渡人である「“前”の大家さんから借家人に通知してもらう」か、②「借家人自身から承諾を得る(納得して貰う)」必要があります。

これは、借家人から見ると誰が大家かわからないケースや、誰に家賃を支払ったら良いか分からず、二重に家賃を支払うケースなど、不都合がないように定められたルールです。新しい大家さんから考えると、少々手間がかかります。

通常、新しい大家になった場合には、借家人からの承諾を得るようにします。この手続きは、売買契約の仲介に入っている宅建業者に依頼するケースが多いでしょう。その後、この仲介業者に物件の管理を委託する可能性が高いです。ただ、大前提として、この仲介業者さんに債権譲渡をする権利はありません。

その一方、新しい大家さんから考えると、この原則を通すのは難儀です。そこで、例外的に新しい所有者さんは、大家(賃貸人)の地位を承継します(最高裁判例 昭和39年8月28日)。通常、必要な上記の通知についても不要とされ(最高裁判例 昭和33年9月18日)、所有権移転登記を受けていれば賃料も収取できます(最高裁判例 昭和49年3月19日)。新しく大家になった際、突然、家賃を値上げするなど、急な変更を加えると、借家人との間に感情的な禍根が生じます。大きなトラブルに発展するケースもあります。このため、慎重さが必要です。

このようなことを、わかりやすく説明できる管理会社(宅建業者)が少ないのも事実です。繰り返しになりますが、今年2020年4月から契約重視の社会に突入しています。自分自身で知識や優良な情報を得るか、信頼のおけるアドバイザーにサポートを依頼されると良いでしょう。

次回は、失敗事例をもとに新築物件と比べながら、オーナーチェンジ物件のリスクを考えます。

(記事は2020年7月1日現在の情報に基づきます)