近隣トラブルをなくすため 国が検討する所有者不明土地のルール改定
所有者が分からなかったり、共有者が多すぎて管理が不十分になっていたりする土地は、近隣に迷惑を及ぼすことがあります。国は、そういったケースを想定して、新しいルールを検討しています。
所有者が分からなかったり、共有者が多すぎて管理が不十分になっていたりする土地は、近隣に迷惑を及ぼすことがあります。国は、そういったケースを想定して、新しいルールを検討しています。
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近隣同士のトラブルのうち、所有者が分からないことで生じるものは、様々です。例えば、以下のようなケースが浮かんでくるのではないでしょうか。
国は、このような問題に新しいルールの設定を検討しています。ケースごとにみていきましょう。
例えば、境界の画定に必要な「隣地の使用」については、次の3点が目的であれば、必要な範囲内で、隣地の所有者に使用承諾を求められるようになります。
承諾を得ようとする側が、隣地の所有者に対して、隣地の使用目的や場所、その方法と時期のほか、一定の期間内に異議を述べることできる旨を通知したにも関わらず、相当の期間内に異議がないときは、利用できる仕組みです。使用承諾を無視されたとしても、事態を打開できるようになるのです。
隣地の所有者が分からない場合も同じです。既に挙げた2点を公告し、相当の期間内に異議がない時や災害など急迫の事情がある時は使用できるようになります。
「越境した枝の切除」については2つの案が出ています。隣の家から、根が伸びてきて、境を越えた場合は切除できますが、枝の場合は勝手に切ることはできません。こういった場合を想定して検討されている案の一つ目が、「請求者(土地所有者)は、自らその枝を切り取ることができる」ようになるものです。
二つ目が、今まで通り請求者は、「その竹木の所有者にその枝を切除させることができる。」という内容です。新しいのは、条件付きで、請求者自らその枝を切り取ることができるという+αのルールが加えられる点です。
例えば、竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、相当の期間内に切除されない時や所有者が不明な時、そして、災害など急迫の事情がある時は、切れるようになります。
二つのうち、一つ目は、いわゆる権利の濫用になる可能性が高いと感じます。もしかすると、勝手に切ってしまい、その後、トラブルに発展する可能性があります。このため、次の案が採用されると思います。
最後に、ライフラインの工事ができなくなるようなケースについてです。「電気やガス、水道管など自分自身が継続的に利用するライフラインが私道や隣地の下を通っている」ケースの対応も二つの案が出ています。
一つ目が、他の土地に囲まれて、電気、ガスもしくは水道水の供給または下水の排出その他の継続的給付を受けることができない土地の所有者(請求者)は、継続的なサービス提供を受けるために、その土地を囲んでいる他の土地に自分自身のライフラインを設置したり、他の人が設置したライフラインを自分自身のライフラインに接続したりできるようにします。ただ、その設置場所や方法は、近隣の損害が最も少ないものを選ばなければいけません。
二つ目は、請求者がライフラインを通そうとした際、隣地での工事が必要になった場合を想定しています。請求者が、隣地にライフラインを設置したり、接続する件の承諾を求めたりできるようにするものです。
請求者が隣地所有者に対して、ライフラインの設置場所や接続方法、その工事の方法や時期に加え、一定の期間内に異議を述べることできる旨を通知したにもかかわらず、相当の期間内に異議がない時は、利用できるようになります。所在がわからない場合も、前述の「隣地の使用」と同様、公告を経て、対応できるようになります。
他人の土地を無償で利用できるわけではありません。請求者は隣地の所有者に対して一定の償金を支払わなければいけません。
以上のようなルール改訂が検討されています。まだ、ルール改定まで時間が掛かると思いますが、この改定で得をする人もいれば、損をする人も出てくると思います。先読みする力を高め、事前準備を進めてください。
(記事は2020年6月1日現在の情報に基づきます)
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