法人化のメリットは? アパートやマンションを相続するときのポイント
親からアパート・マンションなどの収益物件を相続した場合、家賃収入も得られますが、不動産所得が増え、所得税・住民税などの税金が跳ね上がってしまうケースもあります。このような収益不動産を引き継いだ場合、税金対策のために法人化するという選択肢があります。今回は法人化のメリット・デメリットについて解説します。
親からアパート・マンションなどの収益物件を相続した場合、家賃収入も得られますが、不動産所得が増え、所得税・住民税などの税金が跳ね上がってしまうケースもあります。このような収益不動産を引き継いだ場合、税金対策のために法人化するという選択肢があります。今回は法人化のメリット・デメリットについて解説します。
目次
相続ではさまざまな財産が引き継がれます。
そのなかで、土地や家屋などの不動産が占める割合は約4割を占めています。不動産といえば、まず実家の相続が思い浮かびますが、アパート・マンションなどの収益不動産を引き継ぐ人も少なくないでしょう。
国税庁の統計によると、わが国で不動産所得を申告して納税している人は約222万人もいます。なかには、駐車場や借地、たまたま転勤で空いた自宅の賃貸などの所得も含まれますが、それでも相当数の人がアパート・マンション経営をしていると推測できます。このような賃貸オーナーが亡くなると、収益不動産は子どもなどが引き継ぐことになります。
なかには大規模なマンションや商業店舗などを相続し、いきなり不動産所得が増える人もいるでしょう。また、引き継いだ収益不動産からの所得は少なくても、もともと給与所得が高い人は所得税率も高いため、思ったよりも納める税金が増えてしまいます。このようなケースでは節税を図るために、いわゆる「法人化」を行うことが考えられます。
法人化とは、賃貸収入を法人と個人に分散することにより節税を図るため、会社を設立することをいいます。法人には、大きく分けると「不動産管理会社」と「不動産保有会社」があり、さらに不動産管理会社には、「管理料徴収方式」と「一括借上方式」があります。
親のアパート・マンション(以下、賃貸住宅)を子どもが相続した場合に、比較的設立しやすいのが、不動産管理会社です。
不動産管理会社には、次の2つの方式があります。
不動産管理会社が、個人が所有する賃貸住宅の集金や管理を行い、家賃のなかから管理料を受け取ります。管理料は、賃料の5%前後が適正といわれています。
不動産管理会社が個人から賃貸住宅を一括して借上げ、他の入居者に転貸します。法人が賃貸オーナーに支払う定額の支払い賃料と入居者から受取る家賃の差額が法人の手数料になります。通常、手数料は満室時の家賃の10%~15%程度と、管理料徴収方式による管理料よりも高額になります。ただし、空室が増えると、受け取る家賃が支払い賃料を下回ってしまうというリスクを負います。
不動産管理会社設立の主なメリットは次のとおりです。
〈不動産管理会社設立のメリット〉
半面、次のようなデメリットがあります。
〈不動産管理会社設立のデメリット〉
不動産保有会社を設立する手法では、賃貸住宅の所有者は法人になり、土地の所有者は法人から地代を受け取ります。
不動産保有会社の設立の主なメリットは次のとおりです。
〈不動産保有会社設立のメリット〉
主なデメリットは、次のとおりです。
〈不動産保有会社設立のデメリット〉
なお、不動産保有会社は、不動産管理会社と比べると、建物の所有権移転を行う必要があるため、設立の難易度は高くなります。
いずれの方式でも、法人化を検討する場合には、事前に設立・運営のための費用と節税効果などのメリットとを比較することが重要です。また、税務上の判断がむずかしい場面もあるため、税理士などの専門家のサポートを受けながら、ベストの選択をするようにしましょう。
(記事は2020年4月1日時点の情報に基づいています)