目次

  1. 1. 不動産投資を行う二つの目的
  2. 2. 不動産を投資対象に選ぶ三つのモノサシ
  3. 3. 効果的な実物不動産投資の生かし方
  4. 4. 実物不動産投資のデメリットとは?

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以前のコラム「相続対策に不動産投資は有効か?専門家が3つの対策と3つの活用法を解説」で、不動産投資には三つの方法があることを解説しました。

まずは、三つの方法をおさらいしましょう。

「実物不動産投資」は、土地をそのまま貸したり、土地の上に賃貸アパートやマンションを建築したり、ワンルームマンションなどを購入したりして、地主や大家として賃貸経営を行うことです。

「小口化投資」は、組合など複数名で共に投資用不動産を持ち、その不動産から得た収益をシェアすることです。

「証券化投資」は、不動産を投資対象にしたJ-REITなど金融商品(有価証券)を購入することです。

そもそも資産運用の手段として、不動産を使う理由は何でしょうか?
二つの理由があると思います。

一つ目は、キャッシュフロー(現金収入)を増加させ、保有資産を保全したり、増やしたりしていくことです。つまり、蓄財です。

二つ目は、現行法で認められた不動産への課税の優位性(節税メリット)を生かすことです。円滑に次世代に資産を保全し、継承していくことができます。

先ほど挙げた三つの不動産投資法の中で、一つ目の「キャッシュフロー(現金収入の増加)」については、どの投資手法も問題なく生かせるでしょう。ただ、「小口化投資」「証券化投資」は、投資スキームに業者などが確実に入るため、手数料などのコスト分が引かれ、収益が減少します。

「実物不動産投資」は知識や経験の有無や多寡によりますが、自分自身でコストを下げることができます。

また、「小口化投資」「証券化投資」は、不動産投資のデメリットと言える換金スピードの遅さを緩和するためにできた手法ですから、節税メリットは「実物不動産投資」ほどではありません。

運用資産は、不動産に限りません。その方法は、様々です。利用する資産を決める時の基準は三つあります。

「安全性」「収益性」「流動性」というモノサシです。

「安全性」とは、投資した元本が守られるかどうか、確実に戻ってくるかどうかという目安です。例えば、不動産や金(ゴールド)のような実物投資です。そのもの自体の価値が残るからです。

「収益性」とは、より多くの収益(儲け)が得られるかどうかという目安です。例えば、株式です。日々、価格が変わっていくため、大きな収益をあげられる可能性がある投資商品と言えます。

「流動性」とは、お金に換えるスピードが速いか遅いかという目安です。
例えば、預貯金などはすぐに換金できる商品になります。

ここで挙げたのは、あくまでタイミングや相対的な比較で、この三つのモノサシ全てに◎が付く資産はあるかもしれませんが、絶対とは言えません。

未来は誰にもわかりません。ですから、大事なことは、投資対象にするアセット(資産)を分散し、時々、バランスを調整して、継続的に投資をしていくことです。

実物不動産投資を行うメリットは、三つの相続対策のうち、「納税資金対策」と「節税対策」が同時並行にできることです。

つまり、節税をしながら、相続税の納税資金を確保し、資産を保全できる点です。

例えば、所得税の計算では、不動産所得として、給与とは別に減価償却費などの必要経費を計算でき、他の所得と合算する際に、その赤字を相殺できる「損益通算」や確定申告を行う青色申告制度が利用できるなど、税制メリットを活用できます。

また、相続税の計算でも、優遇された財産評価や各種特例などを生かしやすいので、預貯金や株式などを比較し、相対的に有利になるような計算になっています。

別コラムで書いた通り、やり過ぎはいけませんが、節税メリットを上手く利用することで、特に相続時のコスト(相続税額)を抑えることができます。

また、不動産投資は、その運用対象である不動産の流動性(換金性)が低いため、弥が上でも長期投資が前提になります。結果として価格が値上がりし、売却益(キャピタルゲイン)を得られることもあるかもしれませんが、賃貸市場にミスマッチさえなければ、メイン収入となる家賃は基本的に安定収入となり得ます。

ですから、その収益を原資として相続時の納税資金(相続税額)を確保し、保有資産を保全できるのです。

このように不動産が税制上で優遇されている理由の一つは、不動産が流動性(換金性)が低い資産であるが故でしょう。

逆に、この流動性(換金性)が低いことが、実物不動産投資のデメリットになります。

つまり、不動産は資産価格が高いため、売却しようにも、なかなか買い手を見つけられず、お金に換えたくてもすぐにできないというのが最大のデメリットです。

また、不動産は実物資産であるが故に、相続人の間で分割することが難しいです。

相続対策では、遺言を準備するなど事前にしっかり「争族防止対策」をしておかないと、次世代で遺産の分割争いが発生し、家族たちの間で争いが起きる可能性があります。

せっかく、自分で作り守ってきた財産が元凶となり、自分の子孫が不幸になる可能性があるのです。

2019年7月から民法(相続編)が変更され、自筆証書遺言を作成しやすくなりましたし、遺産分割争いが発生した際にその根拠とされてしまう遺留分に関する改正も行われました。

今後も未登記土地の問題が増え、人口減少・超高齢社会が到来することで、相続や共有解消に関するルールが変更されていくはずです。

常日頃から、優良な情報を確認して、情報の更新や知識の習得に努めてください。

(記事は2020年3月1日時点の情報に基づいています)

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