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金のおりんに相続税はかかる? 非課税となる条件と注意点を解説
金のおりんは非課税となる場合もありますが、資産として扱われるケースもあります(c)Getty Images
「金のおりんには相続税がかからない」と聞いたことがあるかもしれません。たしかに、おりんは仏具として「祭祀(さいし)財産」に該当する場合、相続税の課税対象外とされることがあります。しかし、すべてのおりんが無条件に非課税となるわけではありません。純金製など高価なものや、信仰目的で使用されていないと判断された場合は、資産として課税される可能性もあります。
金のおりんに相続税がかかるケースとかからないケースの違いや、注意すべきポイントについて、専門家監修のもとでわかりやすく解説します。
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1. 金のおりんとは
「おりん」とは、仏壇に置かれる仏具の一つで、礼拝や読経、供養の際に音を鳴らして用いられる道具です。丸みを帯びた金属製の器に、専用のりん棒を当てて音を出すことで、場を清めたり、仏様に祈りを届けたりする意味が込められています。
一般的には真鍮(しんちゅう)や銅合金などで作られたものが多いですが、なかには金や純金などの高価な素材で作られたおりんも存在します。これらは美術工芸品としての価値を持つ場合もあり、購入価格や資産価値が高額になることもあります。
見た目が似ていても、信仰のために日常的に使われているものと、資産として保有されているものとでは、相続時の扱いが異なる可能性があるため注意が必要です。
2. 金のおりんに相続税はかかる?
仏壇に供えられていた金のおりんは、見た目の豪華さから「相続税の対象になるのでは」と不安に思われることがあります。しかし、仏具は原則として「祭祀(さいし)財産」として扱われ、一定の条件を満たせば相続税はかかりません。ここでは、相続税法上の考え方と、おりんが非課税とされるための要件を整理します。
2-1. 仏具には相続税非課税が原則
相続税法第12条では、「祭祀財産」は相続税の課税対象外とされています。これには、仏壇・仏具・神棚・墓地・墓石など、故人や家系の信仰に基づく礼拝・供養のための財産が含まれます。
実務上は、次のような点を踏まえて、祭祀財産に該当するかどうかが判断されます。
【相続税法12条に基づく判断のポイント】
① 換金性が高くない
② 生前に購入されている
③ 死後に売却予定がない
④ 日常的に宗教的目的で使われていた
あくまで「祭祀のために用いられていたかどうか」が重要であり、使用実態や保管状況が判断材料となります。
2-2. おりんも通常は仏具なので非課税
おりんは、仏壇の前で合掌や読経を行う際に使用される伝統的な仏具のひとつであり、一般的には非課税の祭祀財産と判断されます。とくに、家庭の仏壇とともに使われていたもので、日常的に礼拝に使用されていたと認められる場合には、相続税の課税対象にはなりません。
また、社会通念上、家庭で使用される範囲の価格帯であれば、たとえ金製でも資産とはみなされないことが一般的です。ただし、後述のように素材や使用目的によっては、課税の対象となる場合もあるため注意が必要です。
3. 金のおりんに相続税がかかるケースとは
仏具として使用されていた金のおりんでも、相続税の課税対象となるケースがあります。相続税法上の「非課税財産」として認められるには、あくまでも信仰や祭祀のために使われていた実態が必要です。資産価値や保管状況によっては、仏具であっても課税の対象となる点に注意が必要です。
3-1. 市場価値が高く、資産や投資目的で保有していた場合
金製のおりんが相続税の対象と判断される典型的なケースが、その市場価値に基づき「資産」と評価される場合です。
金の純度や重さによっては、仏具としての役割を超えて、金地金や装飾品と同様の資産的価値があるとみなされることがあります。たとえば、鑑定価格が数十万円〜百万円以上になるようなおりんであれば、財産目録への記載義務が生じ、相続税の対象に含めなければなりません。
また、以下のようなケースでは「祭祀財産」として認められず、美術品や骨董(こっとう)品としての価値が重視される可能性もあります。
- 純金製・24金製などで換金性が高い
- 鑑定評価書や購入証明書で高額と明記されている
- 宗教的用途ではなく、展示や収集の目的で保有されていた
このように、使用目的にかかわらず資産性が強く認められた場合は課税対象となる点に注意が必要です。
3-2. 祭祀用・信仰目的で使用されていないと判断された場合
仏具としての外形を備えていても、実際に信仰や供養の目的で使われていなければ、相続税上の「祭祀財産」としては扱われません。
たとえば、仏壇と別に保管され、宗教的に使用されていなかった場合には税務署から祭祀目的でないと判断され、課税対象となる可能性があります。
特に注意が必要なのは以下のような状況です。
- 仏壇や墓地と無関係に単独で保管されている
- 宗教行為に使用された記録・証言がない
- 装飾品や工芸品として評価されている
課税されるかどうかの判断では、「誰が、どう使っていたか」よりも「実際に使われていたか」が重視されます。見た目や素材ではなく、あくまで信仰目的の実態があったかが重要です。
4. 金のおりんの購入は相続税対策になる?
仏具である金のおりんは、条件を満たせば相続税が非課税となる場合があります。そのため、「節税対策」として購入を検討する人もいますが、課税の有無はあくまで使用実態や購入の経緯によって判断されます。目的や使い方によっては、かえって課税対象になる可能性もあるため注意が必要です。
4-1. 亡くなる直前の購入などは課税逃れとみなされるおそれ
相続直前に金製の仏具を購入し、「祭祀財産だから非課税だ」とする行為は、税務署から不自然な節税行為と見なされるおそれがあります。
たとえば、普段から仏壇や位牌(いはい)がなかった家庭で、相続開始の直前に突然、純金製のおりんや高級仏壇を購入したといったケースでは、「信仰目的ではなく資産の移転が目的だったのではないか」と疑われる可能性があります。
祭祀財産として非課税になるためには、「信仰・供養のために使用されていた」実態が重視されます。形式的な購入だけでは認められず、申告漏れや追徴課税の対象となることがあります。
とくに金製品は換金性が高いため、相続税対策のために高額品を購入したと判断されやすい傾向にあります。節税目的の仏具購入は慎重に行うべきです。
4-2. 使用実態や保管状況が重要視される
金のおりんが非課税となるかどうかは、単に仏具であるというだけではなく、実際に使用されていたかどうかが重要な判断材料になります。
たとえば、購入後に開封もされずに保管されたままの状態や、誰も宗教行為に使っていないような状況では、「実際には使われていなかった」と判断される可能性が高まります。
以下のようなポイントが、非課税の可否を左右する判断材料になります。
- 仏壇に設置され、日常的に使用されていた
- 宗教行事(年忌法要など)で使用された記録がある
- 家族や喪主が仏具として使用していたことが確認できる
また、仏壇や位牌とセットで一体的に管理されていたかどうかも重要です。おりんだけが独立して存在していた場合、祭祀財産と認められにくくなる可能性があります。
4-3. 金額・材質が高すぎると「資産目的」と疑われやすくなる
たとえ仏具であっても、金額があまりに高額だったり、素材が純金や特注品であるような場合には、相続税の課税対象と判断されることがあります。
とくに金のおりんは、20万円~数百万円を超える高額品も存在し、購入の経緯や保有の目的が確認されることもあります。相場を大きく超えるような金製仏具は、「形式上は仏具でも、実質は資産として保有していたのでは」と疑われやすいです。
税務調査では、以下のような観点から「資産目的」の可能性を精査されることがあります。
- 他の仏具と比較して明らかに高額である
- 購入目的や使用履歴に合理性がない
- 生活状況に照らして不相応な高級品である
このように、税務署に「相続財産を減らす目的で金製品に換えた」と判断されると、非課税財産としては認められず、課税対象として扱われることになります。
仏具の購入は、あくまで宗教的な必要性や信仰心に基づいたものである必要があります。節税だけを目的とした不自然な購入は避けるべきです。
5. 金のおりんを相続する際の注意点と対処法
金製のおりんは、条件を満たせば非課税となる場合もありますが、誤った取り扱いをすれば課税対象となるおそれがあります。後になって申告漏れとされないよう、相続開始前後の段階で、保有目的や管理状況を整理しておくことが重要です。ここでは、具体的な確認ポイントと実務上の対応策を紹介します。
5-1. 課税対象かどうかを早めに確認する
まずは、そのおりんが「祭祀財産」として相続税の非課税対象になるか、それとも「資産」として課税対象になるかを判断する必要があります。使用目的や材質、金額などの要素によって判断が分かれるため、早い段階で税理士など専門家に確認しておくと安心です。
とくに金製で市場価値が高い場合や、仏具として使用された形跡が乏しい場合は、財産目録の作成時点でその取り扱いを明確に決めておくことが求められます。判断が遅れると、申告漏れを指摘される可能性があります。
5-2. 使用目的や保管状況の証明を準備する
相続税の申告において「祭祀財産」であることを示すには、信仰や供養に使用されていた実態を証明できる資料が有効です。以下のような証拠を残しておくと、税務署への説明がしやすくなります。
- 仏壇に設置された状態の写真
- 年忌法要や日常礼拝で使用された記録
- 購入時の領収書や納品書
- 家族による供養や礼拝の記録メモ
仏壇や位牌と一体で使用・保管されていた様子がわかる写真などは、信仰目的での使用を示す資料となります。
5-3. 相続財産目録に正しく記載する
相続税申告時に提出する「相続財産目録」では、金のおりんのような高額な仏具であっても、記載を省略しないことが重要です。
たとえ祭祀財産として非課税に分類する場合でも、その旨を記載し、他の財産とは区別して管理されていることがわかるようにしておくと、税務署の理解を得やすくなります。
一方、課税対象と判断されるような高額品である場合は、「その他の動産」などの区分で正確に記載し、評価額を記載することが求められます。記載漏れがあると、申告漏れや過少申告と見なされるおそれがあるため、注意が必要です。
6. 金のおりんと相続税に関連して、よくある質問
Q. 金のおりんは必ず申告する必要がある?
仏具として日常的に供養や礼拝に使用されていた場合は「祭祀財産」とみなされ、原則として金のおりんは相続税の対象にはなりません。この場合、申告義務は生じませんが、資産価値が高く、供養目的と認められにくい場合には課税対象と判断される可能性があります。不安がある場合は、税理士など専門家に確認し、必要に応じて申告しておくと安心です。
Q. 鑑定書や領収書がない場合はどうしたらいい?
購入時の領収書や証明書が残っていない場合は、専門の鑑定士に依頼することで評価額を明確にすることができます。また、同種・同等品の市場価格を参考に、相続財産としての評価額を見積もる方法もあります。加えて、仏壇で使用されていたことがわかる写真や、家族の証言も、祭祀目的での使用を示す資料として有効です。
Q. 相続人の誰が仏具を引き継ぐべき?
仏壇や仏具は、法律上の「祭祀財産」に該当するため、通常の相続財産とは別扱いとなります。民法上では、亡くなった人が遺言で指定などしていなければ、慣習に従って承継者(旧来であれば多くの場合は長男など)が引き継ぐとされています。ただし、実際には相続人全員の話し合いによって決めるケースもあります。
7. まとめ 金のおりんの相続税は「信仰目的か資産か」で判断される
金のおりんは、仏具として信仰目的で使用されていれば「祭祀財産」として非課税になります。一方で、素材が高価であっても仏壇とともに使用されていた実態があれば、原則として課税対象にはなりません。
ただし、相続直前に購入された高額品や、宗教的に使用されていないと判断された場合には、相続税の対象となる可能性があります。
評価の基準は「名義」ではなく「実態」です。迷ったときは税理士や弁護士など専門家に相談し、適切な対応をとることが大切です。
(記事は2026年1月1日時点の情報に基づいています)
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