1. 訳あり物件の査定は専門の買取業者に依頼するのが得策
訳あり物件の査定は専門の買取業者に依頼するのが得策と言える理由を示した図解。一般の不動産会社では取り扱い不可でも、専門業者なら買取に期待できる
買取業者とは、自らが購入した不動産にリフォーム、建て替え、区画分譲などを施して価値を高め、再生した不動産を再販・賃貸に出して利益を出す事業者です。
相続不動産、老朽化物件、事故物件などの訳あり物件の査定は、それらを専門に取り扱う買取業者に依頼するのが得策です。なぜ専門業者に依頼すべきなのか。その4つの理由を詳しく解説します。
1-1. 事故物件や老朽化物件なども適切に査定してくれる
訳あり物件専門の買取業者は、「訳あり物件のままで買い取っても、再生して収益化できるノウハウ」を持っています。現時点での資産価値を見るだけでなく、再生後の将来性も含めて査定価格に反映できます。
そのため、一般の不動産会社では取り扱えない難しい不動産でも、適切に査定した上での買取対応が可能です。
以下では、どのような不動産が一般的に訳あり物件と呼ばれるのかを解説します。
【事故物件】
物件内で他殺・自殺があった、火事が発生したなど、心理的な抵抗を与えるような事件・事故が起きた物件を一般的に「事故物件」と呼びます。事故物件専門の買取業者なら、遺品の処理やお祓い・供養などを手配してくれる業者もあります。
【共有名義不動産】
共有名義不動産とは、同一の不動産に2人以上の名義人が存在する状態の不動産です。
1人あたりが持つ所有権を、共有持分と呼びます。共有名義不動産には、「全体の売却や建て替えには共有者全員の同意が必要(民法第251条)」といった法律上の決まりがあります。
自分が持つ共有持分のみなら、自由に売却が可能です。しかし、購入しても自由にその不動産を活用できないことから、原則として一般の個人への売却は困難となります。
一方で、共有名義不動産専門の買取業者なら、共有持分単体でも買い取ってくれます。
【老朽化物件】
築年数30年以上、外壁・柱・設備などの著しい劣化などで老朽化が激しい物件も、建て替え・リフォームのノウハウを持つ買取業者になら適切な査定・売却が可能です。
【再建築不可物件】
再建築不可物件とは、建築基準法などの法律に適合しないことが原因で、新築や建て替えなどができない不動産です。
一般的には、建築基準法で認められた幅員4m以上の道路に、建物の敷地が2m以上接していない「接道義務」の違反が原因となっています。
再建築不可物件でよくあるケースとして挙げられるのは、建築基準法が制定された1950年より前に建てられたことが原因で、現在の基準に適合しない「既存不適格建築物」です。
不動産を再建築可能にして再販・運用するノウハウを持つ買取業者なら、再建築不可物件も査定が可能です。
【底地(借地)】
底地(そこち)とは、借地契約に基づき、借地人に貸している土地(貸す側の所有権)のことです。底地を持つ地主は、借地人から地代を受け取ります。
一方で、借地人側が土地を使う権利を「借地権」と言います。
借地人には、借地権と呼ばれる「底地の上に建物を建てること」「底地の上にある建物を自由に使用すること」が認められる権利が発生します。
底地は、単体での売却が可能です。しかし、「地主・借地人の間でトラブルになる」「借地権は地主の承諾を得なければ売却などができない」といった制限が原因で、一般的に訳あり物件として買主から敬遠されます。
底地の査定は、底地・借地権の取り扱い実績がある買取業者に依頼しましょう。
1-2. 士業と連携して法的問題にも対処してくれる
士業事務所と提携している買取業者なら、訳あり要素や抱えるトラブルに応じた各専門家を紹介してくれます。
そのため、法的問題への対応を専門家に任せた後、あらためて買取業者に不動産の査定・売却を依頼できます。窓口が一本化されることから、「弁護士に依頼した後、買取業者にも別途問い合わせる」といった手間を省けるのが大きな強みです。
買取業者と提携している士業事務所が解決できるトラブルの例を、以下にまとめました。
- 弁護士:遺産分割協議や共有者同士の話し合いの代理・仲介、相続人・相続財産調査のサポートなど
- 税理士:相続税や譲渡所得税などに関する確定申告のサポート、適用できる節税制度の紹介などの税務に関するアドバイス
- 司法書士:相続登記、抵当権抹消登記、所有権移転登記などの登記実務の代理
- 土地家屋調査士:境界確定、表題登記、分筆登記など土地に関する不動産実務の対応
例えば、遺産分割協議がまとまっていない実家を売却したい場合でも、提携している弁護士を紹介し、相続人同士の話し合いや紛争対応については弁護士にご相談いただけます。そのうえで、相続登記は司法書士、査定・買取は買取業者が担当する形で、ワンストップで進めることが可能です。
1-3. 査定結果に納得できればそのまま買い取ってもらえる
買取会社に査定を依頼し、その査定価格に納得できれば、そのまま不動産を買い取ってもらえます。買取業者が自ら買主となるため、仲介業者と異なり、買主を探す時間や他人と条件交渉するストレスがありません。
また、買取業者と結ぶ売買契約は以下の特長があるため、査定依頼から現金化までスムーズに進みやすくなります。
- 現況有姿買取に対応しており、こちらでリフォームや修繕、清掃などの対応をしなくても、ありのままの状態で売却できる
- 原則として契約不適合責任免責の特約があるため、売却後に不動産の欠陥やキズなどの問題が見つかっても、売主が責任を追及されることはない
- 早ければ数日、遅くとも1カ月程度で現金化できる
訳あり物件は物理的な問題や複雑な権利関係などを抱えているため、売買契約の際にトラブルが起きやすいです。
しかし、専門の買取業者なら訳あり物件でもスムーズに売却できる体制が整っており、売買契約の際のトラブルリスクを抑えられます。
1-4. 仲介業者だと訳あり物件の対応が難しいケースが多い
専門の買取業者なら積極的に対応してくれる訳あり物件でも、仲介業者に相談に行くと「うちでは扱えません」と断られるケースも多いです。買主が仲介業者自身ではなく、仲介を通じてマッチングした一般の個人になるからです。
訳あり物件は、居住用・事業用のいずれにおいても、一般の個人からの需要が低くなりやすいです。また、訳あり物件は担保価値が低く、買主側は住宅ローンが組めずに購入を断念することも珍しくありません。
要するに、仲介業者は訳あり物件に対して「時間や経費をかけても買主が見つからない」というリスクを警戒します。
仲介業者は売買成立時に受け取る仲介手数料が売上になるため、不動産が売れないと利益が発生しません。売れない可能性が高い訳あり物件については、取り扱いを断らざるを得ないのが実情です。
2. 訳あり物件の査定価格に影響する要素
訳あり物件の査定価格に影響する要素を示した図解。瑕疵の種類や程度などを踏まえて、訳あり物件の査定価格は決定される
訳あり物件の査定価格は、「どのような瑕疵(不具合や欠陥のこと)があるのか」「不動産自体の価値がどれくらいか」「買取業者が適切に評価できるか」によって左右されます。以下では、訳あり物件の査定価格に影響する要因を解説します。
2-1. 瑕疵の種類や程度
訳あり物件における「訳あり」とは、基本的に「不動産に存在する瑕疵(かし)」のことです。そして訳あり物件に存在する瑕疵の種類や程度は、査定価格に大きな影響を及ぼします。
訳あり物件によく見られる瑕疵は、次の通りです。
【心理的瑕疵】
心理的瑕疵とは、「住みたくない」「事実を知っていれば買わなかった」など、不動産の買主・借主に心理的抵抗感や嫌悪感を与える状態のことです。
心理的瑕疵がある不動産としてよく挙げられるのが、過去に他殺・自殺などが発生した事故物件です。
人の死以外にも、社会的影響が大きい事件や火災など、買主・借主に嫌な印象を与える出来事が過去にあった場合は、心理的瑕疵のある不動産として判断されることがあります。
とはいえ心理的瑕疵の判断基準については、明確な法律上の基準がありません。不動産会社の決まりや買主の感覚も関係することから、現在もあいまいな部分が見受けられます。
ただし、人の死に関する告知義務(物件の瑕疵や重要事項などを買主・借主に伝えるべき情報を説明する義務)に関しては、「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」という一定の判断材料が示されました。
【物理的瑕疵】
物理的瑕疵とは、老朽化が原因の破損や建築時に生じた傾きなどの欠陥といった、不動産自体に存在する不具合のことです。建物なら「外壁や内装などのひび割れや欠け」「雨漏り」「シロアリ被害」、土地なら「土壌汚染」「地盤沈下」「地中障害物」などが挙げられます。
【法律的瑕疵】
法律的瑕疵とは、不動産が法律や条例などの決まりに適合しておらず、使用、収益、処分に制限がかかっている状態のことです。代表的なものとして、接道義務違反による再建築不可状態や、違法建築による建築基準法違反などがあります。
他には、都市計画法や消防法違反などの法律違反、共有状態による制限や抵当権などの権利関係の不備などが挙げられます。
【環境的瑕疵】
環境的瑕疵とは、不動産そのものではなく、周辺環境にある問題のことです。例えば、近くに反社会的組織の建物、下水処理場、墓地などの施設がある場合は、環境的瑕疵があると見なされやすいです。
2-2. 築年数・立地など不動産の条件
訳あり物件の査定価格は、瑕疵の有無・程度以外にも「不動産そのものの資産価値」が大きく影響します。一般的に査定価格に反映される不動産の条件は、次の通りです。
- 築年数
- 構造・工法
- 交通アクセス(駅までの距離・利用路線など)
- スーパーや病院などの生活利便施設の充実度
- 所在エリアの知名度や人気
- 地域の治安
- 災害リスク
- 日当たり・眺望
- 土地の形状
マイナスポイントが多い訳あり物件であっても、「駅から徒歩5分以内」「人気エリアで事業用店舗として活用しやすい」などプラスポイントが大きい場合は、ある程度高値での売却を期待できます。
2-3. 査定する訳あり物件と買取業者の得意分野の相性
自分の物件の訳あり理由と、買取業者の得意分野がマッチするかどうかも、訳あり物件の査定価格に大きく影響します。
事故物件の査定は事故物件に強い買取業者、再建築不可物件の査定は再建築不可物件に強い買取業者に依頼しましょう。
例えば「訳あり物件に強い」と謳っている買取業者であっても、専門外の訳あり要素を持つ物件は、適切に査定してもらえなかったり査定を断られたりする可能性があります。
3. 訳あり物件の査定価格の主な相場
訳あり物件の査定価格の相場を示した図解。訳ありの原因によって相場は変わるが、通常物件よりも1割〜5割ほど差し引かれた金額が目安になる
訳あり物件の査定価格は、その物件の訳ありの理由や立地など、さまざまな条件をもとに算出されています。そのため、「訳あり物件だから査定価格はこれくらいになる」のように、査定価格を断言することはできないのが前提です。
とはいえ、「訳あり」と呼ばれる以上、通常の物件よりも査定価格は安くなるのが基本です。あくまで一般的な目安にすぎませんが、訳あり物件の相場は通常物件の1割~5割ほど下がると言われています。
また、買取業者に不動産を売却する場合、仲介業者を利用する場合と比較して安くなる傾向があります。買取業者の査定価格には、「不動産を再生するためにかかる各種経費」や「買取業者の利益分」などが反映されるからです。
上記を踏まえ、訳あり物件を売却した際の主な相場を解説します。
3-1. 事故物件の相場
実務上よく言われる目安として事故物件の売却相場は、仲介業者を利用した場合、通常よりも1割から5割程度下がります。
事故物件の売却価格が変動する要因は、発生した事故の内容や程度です。買主の心理的抵抗が大きくなりやすい事故ほど、査定価格が減額されやすくなります。
- 孤独死・病死などの自然死(発見が早く特殊清掃なし):減額なしのケースが多い
- 孤独死・病死などの自然死(発見が遅く特殊清掃を実施):1割から2割の減額
- 自殺:2割から3割の減額
- 他殺:3割から5割の減額
不動産の資産価値が3000万円だった場合は、1500万円から2700万円程度が相場です。買取業者に売却した場合は、さらに6割から8割程度にとどまり、900万円から2160万円になります。
事故の内容、遺体の状態、社会的影響力の大きさなどによっては、5割以上減額されるケースもあります。
3-2. 共有名義不動産や共有持分の売却相場
共有名義不動産全体は、原則として通常の不動産とほぼ同じ価格での売却が期待できます。
不動産全体を売却する場合、その時点で「共有者全員の同意を得た上で、全員が所有権を手放すこと」が決まっている状態です。そのため、買取業者も共有名義関係のトラブルに巻き込まれることなく、通常の不動産と同じ扱いで買い取ることができます。
上記のケースなら、共有名義であること以外に訳あり要素がなければ、買取業者ではなく仲介業者を利用したほうが高値での売却を期待できます。
一方で、共有持分単体の売却相場は、「共有名義不動産全体の売却価格 × 共有持分割合 × 2分の1から3分の1」が目安です。全体の資産価値が3000万円で共有持分割合が50%だった場合は、500万円から750万円程度になります。
3-3. 老朽化が進んだ物件の売却相場
老朽化が進んだ物件の売却相場は、不動産の築年数や建物の劣化・破損具合が大きくかかわります。
前提として、築年数が経過すればするほど建物の資産価値は減少するのが基本です。木造の戸建住宅を例に挙げれば、築10年で半減、20年でほぼゼロになるとも言われています。これは、木造戸建の法定耐用年数が、22年と定められていることも関係しています。
上記に加えて、「柱や基礎が劣化している」「外壁や内装が破損している」「付属設備が古い」などがあると、売却価格はさらに下がるでしょう。
3-4. 再建築不可物件の売却相場
再建築不可物件の売却相場は、通常の不動産と比較して5割から7割程度に減少するのが一般的です。
買取業者の査定価格が下がる理由として、「セットバックなど、再建築を可能にするための工事費用や土地の減少分が反映されること」「1950年より前に建築されており、そもそも老朽化が進んでいるケースが多いこと」などが挙げられます。
また、再建築不可物件は担保価値が低いため、買主が一般の個人だと住宅ローンを組みづらいことも、資産価値を低下させる原因となっています。
不動産の資産価値が3000万円の場合、売却相場は1500万円から2100万円です。買取業者に売却する場合は6割から8割程度に下がるので、900万円から1680万円程度になります。
3-5. 底地の売却相場
底地の買取相場は、更地価格の1割から5割程度と幅が広く、誰に売るか・契約条件・地域などによって大きく変わります。一般的に、底地買取業者に売却する場合、更地価格(土地上の建物がなく借地権や抵当権などが付いていない状態での資産価値)の1割から3割程度にとどまるケースが多いとされています。
たとえば、更地価格が3000万円なら、売却価格は300万円から900万円にとどまります。
底地は「借地契約の解除の難しさ」「活用幅の狭さ」「底地の収益性の低さ」などが考慮されるため、他の訳あり物件と比較しても安めの価格になる傾向が見られます。
4. 訳あり物件の査定を買取業者に依頼して売却するまでの流れ
訳あり物件の査定を買取業者に依頼して、実際に売却するまでの流れは次の通りです。
訳あり物件の査定を買取業者に依頼して売却するまでの流れを示した図解。まずは物件の状況や売却条件を確認し、必要書類を用意してから査定依頼を行う
4-1. 訳あり物件の状況や売却条件を確認する
査定を依頼する訳あり物件について、「老朽化がひどい」「親族間で遺産分割の話がまとまっていない」といった問題があるかどうかを洗い出し、状況を整理しましょう。
状況を正確に把握しておくことで、「どの買取業者に査定を依頼すべきなのか」「事前に買取業者に伝えておくべきことは何か」を明確にできます。
例えば、「相続した親の実家が祖父の代から相続登記未了になっていた」という場合は、「相続問題に強く、相続登記に対応できる司法書士と提携する買取業者を探そう」という方向性を定めることが可能です。
状況を確認した後は、「いくらで売りたいのか」「いつ売却して引き渡すのか」といった、売却条件についても整理します。
特に訳あり物件に関係する相続人や共有者が複数人いる場合は、売却について事前に全員と相談しておくと、後からトラブルが起こることを回避しやすくなります。
4-2. 必要書類を準備する
訳あり物件の査定や売却に必要な書類をあらかじめ用意しておくと、現金化までスムーズに進みやすくなります。まず、不動産の査定で基本的に必要となる書類は次の通りです。
- 顔写真付きの身分証明書
- 測量図や建物の図面など不動産の基本情報がわかる書類
- 固定資産税評価証明書
次に、売買契約を結ぶ際に主に必要となる書類を紹介します。
- 登記簿謄本(登記事項証明書)
- 印鑑証明書や住民票(いずれも発行3カ月以内のもの)
- 登記識別情報(登記済権利書)
- 建築確認済証・検査済証
上記に加えて、訳あり物件の種類に応じた書類の提出を求められるケースがあります。具体的な例は、次の通りです。
- 遺産分割協議書(相続不動産の場合)
- 被相続人の戸籍謄本・除籍謄本などの戸籍関係の書類(相続不動産の場合)
- 物件状況確認書(事故物件の場合)
- 土地賃貸借契約書(底地の場合)
「書類を紛失してしまった」という場合でも、多くの書類は再発行や代替手段があります。まずは手元にあるものだけで構わないので、何が必要になるのかを買取業者に確認してみてください。
4-3. 買取業者に机上査定を依頼する
買取業者の不動産査定は、「机上査定」と「訪問査定(現地調査)」の2段階に分けられているのが一般的です。
机上査定とは、物件のデータ(住所、面積、築年数など)や周辺の相場データだけを用いて概算価格を算出する方法です。「簡易査定」とも呼ばれます。
机上査定の依頼は、買取業者の公式サイトの問い合わせフォームやメールで行うのが一般的です。訳あり物件専門のポータルサイトや一括査定サービスなどを利用すれば、複数社から一度に査定結果を得られ比較できます。
机上査定は、あくまで概算価格であり最終的な査定結果ではありません。正確な査定価格を知るには、次の訪問査定へ進む必要があります。
4-4. 買取業者の訪問査定を受け査定価格を計算してもらう
机上査定の金額に納得できたら、次に「訪問査定」を依頼します。
訪問査定とは、買取業者の担当者が実際に現地に赴き、不動産を直接確認する査定方法です。訪問査定で提示された金額は、原則として「実際にその金額で買い取ります」という確定価格になります。
訪問査定では、「机上査定時に提示された不動産情報は正確なのか」「机上査定ではチェックしきれない部分はどうなっているか」などを確認します。主なチェックポイントは、次の通りです。
- 内装の汚れ、設備の故障、建物の傾き、雨漏りの跡など現況の詳細
- 日当たり、風通し、下水の臭い、騒音など実際に現地でしか得られない情報
- 前面道路の幅や障害物、隣地との境界杭の有無、近隣住民の雰囲気などの周辺環境
- リフォームやリノベーションなどの必要性
訪問査定を受ける際には、雨漏りやシロアリ被害の有無、過去の事故歴などのネガティブ情報も包み隠さず担当者に伝えましょう。
瑕疵を隠したまま売却して後で発覚した場合、契約不適合責任の免責特約が認められず、契約解除や損害賠償請求に発展するおそれがあります。
4-5. 売買条件を確認し契約を締結する
訪問査定の金額を確認したら、売買契約の内容について買取業者と最終的なすり合わせを行います。ここでは金額だけでなく、以下の条件をしっかり確認しましょう。
- 売却金額の算定根拠
- 売却代金の入金時期や不動産の引き渡し時期
- 現況有姿買取の詳細(残置物や瑕疵の扱いについてなど)
- 契約不適合責任免責の有無
- 所有権移転登記や抵当権抹消登記などの登記手続きの詳細
- 契約解除などその他条件・特約
売買契約書は原則として買取業者が作成してくれますが、「内容に間違いはないか」「不利な条件が盛り込まれていないか」などは必ず確認しておいてください。内容に問題がなければ、買取業者と売買契約を締結します。
4-6. 売却代金などの入金を確認した後に登記や引き渡しを行う
訳あり物件の売買契約を締結した後は、売却代金の決済手続きに進みます。着金を確認してから登記や引き渡しを行わないと、「名義人だけ書き換えられて、お金が振り込まれない」といったトラブルが懸念されます。
売却代金の決済は、売主、買取業者の担当者、登記を担当する司法書士、金融機関の担当者といった関係者全員が決済日当日に一堂に会して行うのが一般的です。
売却代金の入金が確認できたら、同日に不動産の鍵や関係書類を買取業者に渡し、引き渡し手続きも完了させます。その後、司法書士が買取業者への所有権移転登記や抵当権抹消登記手続きを行います。
5. 訳あり物件の査定を依頼する買取業者の選び方
訳あり物件の査定や売却を成功させるには、「自分の物件の悩みに合った買取業者を選べるか」が非常に重要となります。以下では、訳あり物件の査定を依頼する買取業者の選び方を解説します。
5-1. 物件の訳あり要素の取り扱い実績があるかを見る
前述の通り、物件が持つ訳あり要素と買取業者の得意分野がマッチしているかを、必ず確認しましょう。
物件の訳あり要素の取り扱い実績があるかどうかは、買取業者の公式サイトで公開されている「買取実績数」「得意分野」「解決事例」「提携士業事務所」などを見るのが基本です。
例えば、「共有名義や相続不動産について具体的な相談・解決実績あり」「〇〇万円以上での買取実績を数十件公開」「弁護士や司法書士と提携済み」という買取業者なら、「相続でもめている共有名義不動産について、遺産分割や相続登記の対応を含めて相談できる」と判断できます。
5-2. 訳あり物件が所在するエリアの買取に対応しているかを見る
買取業者には、主に「全国対応型」と「地域密着型」の2種類が存在します。買取業者を選ぶ際は、「訳あり物件が所在するエリアの買取に対応してくれるのか」「所在エリアの買取実績は豊富か」などを確認しておきましょう。
全国対応型は比較的規模が大きい買取業者が多く、豊富な資金力や経験のおかげで取引が進めやすい傾向があります。近年ではオンライン対応も充実しており、遠方の訳あり物件でも査定や売却手続きをスムーズに進めやすくなっています。
一方で地域密着型の強みは、買取業者独自の情報や販路を駆使した査定力です。「地元民しか知らない利便性」「市が独自に進めている都市開発情報」など、大手が見逃すような価値を評価した査定を期待できます。
ただし、地域密着型は「〇〇県〇〇市」と、非常に限定的なエリアのみを取り扱っているケースも珍しくありません。自分が持つ訳あり物件があるエリアに対応しているかを、しっかりと確認しておきましょう。
5-3. 過去の口コミや行政処分歴を見る
買取業者の信頼性をチェックするには、過去の口コミや行政処分歴など、第三者による評価を見る方法がよいでしょう。
口コミは、GoogleマップやSNSに掲載されたものを見るのが一番客観的です。ただし、「レビューの内容が具体的か」「投稿者は信頼に値するか(作りたてのアカウントではないか)」などをチェックしておくことも大切です。
行政処分歴は、国土交通省が運営する「ネガティブ情報等検索サイト」にて、会社名を検索すれば確認できます。
過去に業務停止命令などの重大な行政処分を受けている業者は、法令遵守や取引姿勢に構造的な問題を抱えている可能性があり、同様のトラブルが再発するリスクを完全には否定できません。
「現在の評判がよいなら行政処分歴は関係ないのでは」と思われるかもしれませんが、過去に業務停止命令などの重い処分を受けている買取業者は、避けることをお勧めします。
5-4. 無料相談や価格交渉時に真剣に話を聞いてくれるかを見る
買取業者を選ぶ際には、無料相談や価格交渉をした際に、担当者がどのような態度だったかも判断基準になります。
いくら査定価格を高く提示した買取業者であっても、雑な対応をされた場合は、売買契約時や物件引き渡し時にトラブルに発展するリスクが高まります。
担当者が誠実に対応してくれているかは、以下のポイントで確認してみてください。
- こちらの事情や希望、悩みを聞いてくれるか
- マイナス部分を含めて査定根拠をていねいに説明してくれるか
- 連絡の返信が早いか
- 訳あり物件に関する質問にわかりやすく答えてくれるか
金額などの条件も大切ですが、「安心して任せられる」と思える担当者に出会えるかも、訳あり物件の売却の成功に大きく影響します。
5-5. 複数社に査定を依頼して比較検討する
買取業者を選ぶときに大切なのは、1社だけに依頼して即決しないことです。複数の買取業者に査定を依頼し、査定結果や担当者の対応力を比較検討しましょう。
買取業者を比べることで、「安く買い叩こうとしている業者」と「適正価格を提示している業者」の違いが一目瞭然になります。
特に訳あり物件の場合は、「訳あり要素に対するリスク評価」「物件を再生した後の収益性」「再生ノウハウや再販ルート」「得意分野や地域性」など、買取業者の能力や体制によって評価が大きく変わります。
買取業者の違いで数百万円の差が生まれる可能性があるため、この手間は惜しまずに必ず複数社に査定を依頼し比較してください。
6. 訳あり物件の査定・売却を買取業者に依頼する際に注意すべきポイント
訳あり物件の査定や売却を買取業者に依頼する際には、以下の注意すべきポイントがあります。
6-1. 事前に瑕疵に対応しておくべきかは買取業者と相談すること
訳あり物件の査定や売却でよく見られる失敗は、「自費で建物のリフォームや解体をしてしまうこと」です。
ほとんどのケースでは、不動産に手を加えずありのままの状態での引き渡しを買取業者から求められます。
買取業者は、買い取った不動産を独自のノウハウで再生し、自社方針に沿った付加価値を付けて再販・賃貸などを行います。もし売主の一方的な判断で中途半端な対応をしてしまうと、買取業者の活用プランとずれてしまう可能性が高いです。
買取業者からすると、「リフォームのやり直し」「解体して新しく建て直す」などの二度手間が発生し、余計な経費がかかります。売主の立場から見ても、リフォームや解体費用を支払ったのにすべてムダになるという状況になります。
以上のことから、訳あり物件の瑕疵にこちらで対応すべきかは、事前に買取業者と相談しておくのが良いでしょう。
6-2. 共有者や地主が関係する場合は早めに相談しておくこと
共有名義不動産や底地など、「自分以外にも不動産に関する権利を有する人がいる訳あり物件」の場合は、その関係者に早めに相談しておきましょう。
相談を怠ると、売却に関する手続きの協力を得られなかったり、感情的な対立が生じて人間関係が悪化したりするリスクがあります。
あらかじめ全員に話を通しておけば、「自分の共有持分を他の共有者に売却する」「借地人が底地の買取を提案してくる」といった、買取業者への売却以外の選択肢が生まれるかもしれません。
他の共有者や借地人、地主が買主になるなら、買取業者よりも高値で売却できる傾向があります。
6-3. 売却益が出た場合は確定申告を忘れないこと
訳あり物件を売って売却益が出た場合は、売却益に関する確定申告と納税が必要です。原則として、売却した年の翌年2月16日から3月15日頃が申告・納付期限です。
確定申告を忘れると、無申告加算税や延滞税などのペナルティが課せられます。また、本来の金額よりも低い金額で申告し納税すると、過少申告加算税が追加で課される可能性があります。
7. 訳あり物件の査定に関するよくある質問
Q. 買取業者に買取を依頼する際に仲介手数料はかかりますか?
買取業者の買取は仲介会社を通さない直接取引となるため、仲介手数料はかかりません。 仲介業者に依頼する場合は、宅地建物取引業法に基づき、売却価格に応じた仲介手数料が発生します。
Q. 事故物件の告知義務はいつ消えますか?
事故物件を売却する際の告知義務は、ガイドラインによる時効は定められていません。賃貸取引に関しては、事案の発生からおおむね3年が過ぎるまでは告知する義務があります。
まとめ|訳あり物件の査定は専門の買取業者に依頼しよう
訳あり物件の査定は、訳あり物件専門の買取業者に依頼しましょう。
専門の買取業者なら、訳あり物件の瑕疵状態や将来の収益性などを踏まえた査定が可能です。一般的な不動産会社では取り扱いを断られやすい訳あり物件でも、積極的に引き受けてくれます。
買取業者を選ぶ際は、買取業者の買取実績、得意分野、対応エリアなどを確認し、査定を依頼する予定の訳あり物件とマッチするかを見極めましょう。買取業者選びは訳あり物件の査定や売却の成功を大きく左右するため、妥協せずに進めることが大切です。
(記事は2025年12月1日時点の情報に基づいています)
【PR】「訳あり不動産」の相談は、クランピーリアルエステートへ
クランピーリアルエステートは、底地や共有持分、再建築不可物件といった、いわゆる訳あり物件を専門的に取り扱う不動産企業。これまでに培ったノウハウと、不動産専門の弁護士や税理士などの全国ネットワークを活かし、問題を解決します。
お問い合わせ先
電話:0120-479-831
詳しくはこちらへ