戸建て賃貸経営は儲かる? 利回りは? メリット、失敗しないためのポイントを紹介
賃貸経営の一つに、一戸建てを貸す「戸建て賃貸経営」があります。人口減少でアパート経営が不安視されるなか、供給量の少ない戸建て賃貸経営にも注目が集まっています。戸建て賃貸経営には一定のメリットはあるもののデメリットも存在するため、失敗しないためのポイントを押さえておくことが大切です。本記事では、戸建て賃貸経営のメリットとデメリットを、不動産鑑定士がわかりやすく解説します。
賃貸経営の一つに、一戸建てを貸す「戸建て賃貸経営」があります。人口減少でアパート経営が不安視されるなか、供給量の少ない戸建て賃貸経営にも注目が集まっています。戸建て賃貸経営には一定のメリットはあるもののデメリットも存在するため、失敗しないためのポイントを押さえておくことが大切です。本記事では、戸建て賃貸経営のメリットとデメリットを、不動産鑑定士がわかりやすく解説します。
戸建て賃貸経営とは、一戸建てを賃貸物件として経営し、家賃収入を得ることをいい、建物と土地の所有状況によって以下のように大別されます。
いずれの方法も賃料収入を得ることができますが、土地から購入する方法を選ぶと、投資金額の回収に多くの時間を要します。一方、あらかじめ土地を所有している、もしくは土地と建物を所有していると、戸建て賃貸経営で儲かりやすくなります。
本記事では、土地あるいは建物を所有している、もしくは相続した想定で解説します。
戸建て賃貸経営のメリットは、以下のとおりです。
一つ目のメリットは、供給量が少ないという点です。アパートに比べると供給過剰になりにくく、賃料の値下げ競争には巻き込まれにくい傾向があります。
二つ目のメリットは、投資額が抑えられるという点です。戸建て賃貸の建物面積は、平均で80㎡前後であるため、建築費は2000万円前後となります。
投資額を抑えられれば、借入金も少なくすることができ、賃貸経営のリスクを下げることができます。
三つ目のメリットは、狭い土地でも経営できるという点です。一戸建てが建築できる面積さえあればいいので、30坪程度の敷地から行うことができます。狭い土地や形状が悪い土地など活用が難しい土地に向いています。例えば、アパートを建てるには狭すぎる実家を相続した場合に行うことができる土地活用だといえます。
四つ目のメリットは、長期的な入居が見込めるという点です。戸建て賃貸のターゲットはファミリー層になりますが、子どもがいる家庭はむやみに転校を選択しないことから、単身世帯に比べると入居期間が長くなる傾向があります。入居者の入れ替えが少なく、入居者募集費用等のコストが抑えられる効果を期待できます。
五つ目のメリットは、相続した建物をそのまま利用できるという点です。場合によってはリフォームが必要になりますが、フルリフォームでも1000万円未満で投資額を抑えることができるため、利回りは高くなります。土地だけでなく、思い出のある実家の建物を残せる点もメリットです。
建物を建築する際には、なるべく多くの業者の提案を比較することが大切です。朝日新聞社が運営する相続会議の土地活用プラン請求サービスを利用すると、複数のハウスメーカーから設計プランと建築費、竣工後の管理等の提案を受けることができ、比較できます。
戸建て賃貸経営のデメリットは、以下のとおりです。
一つ目のデメリットは、戸建て賃貸経営は収益性が低いという点です。収益性の低さは戸建て賃貸経営の最大のデメリットであり、戸建て賃貸の供給量が少ない主たる原因となっています。
戸建て賃貸とアパートの利回りを比較すると、下表のとおりです。建築費は、戸建て賃貸は坪85万円、アパートは坪95万円で計算しています。
建築費を戸建て賃貸は坪85万円、アパートは坪95万円と想定しても、収益性(利回り)はアパートのほうが1.1~1.3倍高い結果となっています。アパートの利回りが高い理由は、賃料単価が高いからです。
住宅の家賃には、総額を抑えると単価を上げることのできる「単価と総額の関係」が存在します。
たとえば、75㎡の戸建て賃貸なら月15万円、25㎡のアパートなら月7万円で貸すことのできるエリアがあるとします。同じ75㎡の建物を建てたとしても、戸建て賃貸は75㎡で1戸のみであるため、月15万円しか稼げません。それに対して、アパートでは75㎡の建物の中に25㎡の部屋を3戸詰め込むことができるため、月21万円(=月7万円×3戸)を稼ぐことができます。
このように、アパートは同じ面積で賃料単価の高い住戸を複数戸つくることができ、利回りも高くなり、収入総額も大きくなります。
土地活用の検討段階で戸建て賃貸とアパートを比較すると、十中八九、アパートのほうが儲かる結果となります。客観的な数字によって、アパートのほうが収益性は高いと説明されてしまうため、戸建て賃貸を選択する人が少なくなってしまうのです。
二つ目のデメリットは、空室時の悪影響が大きいという点になります。
戸建て賃貸は、一つの建物を一人の借主に貸す方法です。一棟貸しの賃貸経営は、入居者が退去すると賃料収入がゼロ円になります。賃料収入がゼロ円のときであっても、借入金の返済等は発生します。戸建て賃貸経営で空室が長期化した場合、借入金の返済等を貯金や他の収入のなかから返済することになります。
一方で、アパートの場合、複数戸の住戸があるため、空室時の影響は小さいです。10戸あるうちの1戸に空室が発生しても、他の住戸の賃料収入で借入金の返済等を行っていくことが可能です。同じ1戸の空室でも、戸建て賃貸とアパートでは与える影響が全く異なるといえます。
三つ目のデメリットは、戸建て賃貸は根本的に借主を見つけにくいという点です。戸建て賃貸はファミリー世帯をターゲットとすることから、賃貸需要が少なく、空室が発生すると次の入居者がなかなか決まらない傾向があります。
ファミリー世帯は、住宅ローンを組んで家を購入したほうが安いケースが多いので、基本的に「借りるより買うこと」を選択する傾向があります。
一方で、単身世帯は基本的に「買うよりも借りること」を選択します。住宅ローンを組んで家を購入する単身者は少数派であり、借りるほうを選択する人が多いのが現状です。
アパートであれば、住戸面積を小さくして単身者をターゲットとすることができます。単身者向けは賃貸需要が多いため、空室が発生しても次の入居者が決まりやすいのです。
戸建て賃貸経営は、空室時の悪影響が大きく、収益性が低い特徴があります。投資金額が回収できなかったり、キャッシュフローが悪化したりする状況にならないためには、戸建て賃貸経営で失敗しないためのポイントを押さえておくことが大切です。
狭い土地や形状の悪い土地など、アパートが建てられないような土地は戸建て賃貸が適しています。収益性は基本的にアパートのほうが高いため、アパートを断念せざるを得ないような土地が戸建て賃貸に向いています。
学童保育がある小学校の近辺は、ファミリー世帯の賃貸需要があるため、比較的戸建て賃貸に向いている土地です。コンスタントに入居者を決めやすく、空室の発生を少なくすることができます。
また、車が欠かせない場所かどうかの確認が必要です。必要な場所であれば、駐車場付きの戸建てが好まれます。一方、都心部の駅近であれば不要との判断もありえます。
戸建て賃貸は、ファミリー層がターゲットになります。近年のファミリー層は共働き世帯が多いため、例えば子どもの帰宅を遠隔で確認できる見守りサービスを付ける等も工夫の一つです。在宅ワークも増えているため、3LDKのような部屋数が多い間取りを検討することも望ましいといえます。
戸建て賃貸で失敗しないようにするための最大のポイントは、延床面積を大きくし過ぎないことです。延床面積を大きくすると家賃総額が上がり、入居者を確保しにくくなります。戸建て賃貸は、延床面先は最大でも80平米以内に抑えることが良いといえます。
80平米以内にしておけば、借りやすい家賃に設定できるため入居者を確保しやすくなり、賃料単価も相応に維持することができます。
延床面積を小さくすれば、建築費の総額も抑えられる点がメリットです。空室が発生しにくく、かつ、高い利回りを実現するのは、「小さな戸建てを建てる」ことがセオリーとなります。
賃貸経営は、借入金がきちんと返済できるように余裕を持った返済計画を立てておくことが適切です。特に戸建て賃貸は、空室時に賃料収入がゼロ円になることから、空室が長期化しても返済ができるように貯金は残しておく必要があります。
また、賃貸経営のおける修繕費は、原則として貸主負担です。施工会社に長期修繕計画を作成してもらい、将来の修繕にも備えるようにしておきます。
以上、戸建て賃貸経営について解説してきました。土地ありの戸建て賃貸経営の利回りは、東京だと10%程度、埼玉や千葉だと4~5%台です。戸建て賃貸のメリットには、「供給量が少ない」や「狭い土地でもできる」といった点が挙げられます。
一方、デメリットとしては、「収益性が低い」や「空室時の影響が大きい」といった点が挙げられます。従って、実際に一戸建て賃貸を始める際は、アパートと十分に比較検討したうえで決断することをおすすめします。
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(記事は2023年1月1日時点の情報に基づいています)