1.戸建賃貸経営の利回り

世の中にアパートは次々と供給されていますが、戸建賃貸がなかなか増えないのには戸建賃貸経営は儲からないという背景があります。まず、この事実について認識しておきましょう。

そうした点を踏まえたうえで、戸建賃貸経営の利回りについて解説します。戸建賃貸は、一般的に木造の戸建住宅を建築して貸し出します。木造の戸建住宅の建築費相場は、「坪70万円~80万円」程度です。

建築費を坪75万円と想定した場合、首都圏における戸建賃貸経営の表面利回りは下の表のとおりです。

出典:月額賃料と建物面積は公益財団法人東日本不動産流通機構「年報マーケットウォッチ2019年・年度」(http://www.reins.or.jp/library/nmw2019.html)

賃料については、「年報マーケットウォッチ2019年・年度」における「首都圏 賃貸戸建の成約状況」の2019年の数値を採用しています。

戸建賃貸の建物面積は、平均で80㎡前後となっています。坪75万円で想定すると、建物投資額は1800万円前後です。

建物投資額に対する表面利回りは、東京では10%を超えています。埼玉県や千葉県では5%台です。

2.戸建賃貸経営のメリット

戸建賃貸経営のメリットは、以下のとおりです。

■ 戸建賃貸経営のメリット
・供給量が少ない
・投資額が抑えられる
・狭い土地でもできる

一つ目のメリットは、供給量が少ないという点です。アパートに比べると供給過剰になりにくく、賃料の値下げ競争には巻き込まれにくい傾向があります。供給量が少ない理由は、「3.戸建賃貸経営のデメリット」のなかで詳しく解説します。

二つ目のメリットは、投資額が抑えられるという点です。戸建賃貸の建物面積は、平均で80㎡前後であるため、建築費も1800万円前後となります。アパートは、規模によっては1棟あたり1億円近くになることも多いです。

投資額を抑えられれば、借入金も少なくすることができ、賃貸経営のリスクを下げることができます。

三つ目のメリットは、狭い土地でも経営できるという点です。一戸建てさえ建てばいいので、30坪程度の敷地から行うことができます。狭くて活用が難しい土地に向いている土地活用となります。

3.戸建賃貸経営のデメリット

戸建賃貸経営のデメリットは、以下のとおりです。

■ 戸建賃貸経営のデメリット
・収益性が低い
・空室時の影響が大きい
・借主を見つけにくい

一つ目のデメリットは、戸建賃貸経営は収益性が低いという点です。収益性の低さは戸建賃貸経営の最大のデメリットであり、戸建賃貸の供給量が少ない主たる原因となっています。

戸建賃貸とアパートの利回りを比較すると、下表のとおりです。建築費は、戸建賃貸は坪75万円、アパートは坪90万円で計算しています。

出典:賃料単価は公益財団法人東日本不動産流通機構「年報マーケットウォッチ2019年・年度」(http://www.reins.or.jp/library/nmw2019.html)

建築費を戸建賃貸は坪75万円、アパートは坪90万円と想定しても、収益性(利回り)はアパートのほうが1.1~1.3倍高い結果となっています。アパートの利回りが高い理由は、賃料単価が高いからです。

住宅の家賃には、総額を抑えると単価を上げることのできる「単価と総額の関係」が存在します。

たとえば、75㎡の戸建賃貸なら月15万円、25㎡のアパートなら月7万円で貸すことのできるエリアがあるとします。同じ75㎡の建物を建てたとしても、戸建賃貸は75㎡で1戸のみであるため、月15万円しか稼げません。それに対して、アパートでは75㎡の建物の中に25㎡の部屋を3戸詰め込むことができるため、月21万円(=月7万円×3戸)を稼ぐことができます。

このように、アパートは同じ面積で賃料単価の高い住戸を複数戸つくることができ、利回りも高くなり、収入総額も大きくなります。

土地活用の検討段階で戸建賃貸とアパートを比較すると、十中八九、アパートのほうが儲かる結果となります。客観的な数字によって、アパートのほうが収益性は高いと説明されてしまうため、戸建て賃貸を選択する人が少なくなってしまうのです。

二つ目のデメリットは、空室時の影響が大きいという点になります。

戸建賃貸は、一つの建物を一人の借主に貸す一棟貸しの賃貸経営です。一棟貸しの賃貸経営は、入居者が退去すると賃料収入がゼロ円になります。賃料収入がゼロ円のときであっても、借入金の返済等は発生します。戸建賃貸経営で空室が長期化した場合、借入金の返済等を貯金や他の収入のなかから返済することになります。

一方で、アパートの場合、複数戸の住戸があるため、空室時の影響は小さいです。10戸あるうちの1戸に空室が発生しても、他の住戸の賃料収入で借入金の返済等を行っていくことが可能です。同じ1戸の空室でも、戸建賃貸とアパートでは与える影響が全く異なるといえます。

三つ目のデメリットは、戸建賃貸は根本的に借主を見つけにくいという点です。戸建賃貸はファミリー世帯をターゲットとすることから、賃貸需要が少なく、空室が発生すると次の入居者がなかなか決まらない傾向があります。

ファミリー世帯は、基本的に「借りるよりも買うこと」を選択します。住宅ローンを組んで家を購入したほうが安いケースが多いので、買うほうを選択するのです。

一方で、単身世帯は基本的に「買うよりも借りること」を選択します。住宅ローンを組んで家を購入する単身者は少数派であり、借りるほうを選択する人が多いのが現状です。

アパートであれば、住戸面積を小さくして単身者をターゲットとすることができます。単身者向けは賃貸需要が多いため、空室が発生しても次の入居者が決まりやすいのです。

4.戸建賃貸経営が向いている土地

戸建賃貸経営が向いている土地は、以下のような土地が挙げられます。

■ 戸建賃貸経営が向いている土地
・狭い土地
・形状が悪い土地
・学童保育がある小学校の近辺

狭い土地や形状の悪い土地など、アパートが建てられないような土地は戸建賃貸が適しています。収益性は基本的にアパートのほうが高いため、アパートを断念せざるを得ないような土地が戸建賃貸に向いています。

また、学童保育がある小学校の近辺は、ファミリー世帯の賃貸需要があるため、比較的戸建賃貸に向いている土地です。コンスタントに入居者を決めやすく、空室の発生を少なくすることができます。

まとめ:戸建賃貸の検討はアパートとの比較が必須

以上、戸建賃貸経営について解説してきました。戸建賃貸経営の利回りは、東京だと10%超、埼玉や千葉だと5%台です。

戸建賃貸のメリットには、「供給量が少ない」や「狭い土地でもできる」といった点が挙げられます。

一方、デメリットとしては、「収益性が低い」や「空室時の影響が大きい」といった点が挙げられます。

戸建賃貸には収益性が低いというデメリットがありますので、アパートと十分に比較検討したうえで決断することをおすすめします。

(記事は2021年6月1日時点の情報に基づいています)