後継者選びの三つの選択肢

2020年になり、ここ数年で会社の相続、事業承継の相談が増えています。

60歳代から70歳代の経営者の共通の悩みは、事業承継です。ただ、多くの経営者が何から手を付けたらよいか分からないという方が多くいます。

皆様の会社では、後継者はお決まりでしょうか?
後継者を誰とするかによって、事業承継の選択肢は大きく三つに分かれます。

1.親族内承継:子どもなど親族への承継
2.社内承継:(親族ではない)役員・従業員への承継
3.第三者承継:M&A

以前は、会社の後継者は子どもなど親族が継ぐのが大半でしたが、最近は親族以外の役員・従業員が後継者となるケースや第三者へのM&Aも増えてきました。

親族内承継はなるべく少ない資金負担が、社内承継や第三者承継は適正な時価での売買で買手側の資金調達がポイントとなります。

これら事業承継の方針を決める際の検討の流れは次の図のとおりです。

事業承継の方針決定の流れ

親族内で承継する場合の進め方

次に、最も相談の多い親族内承継について、進め方や留意点を整理していきます。
親族内承継には、後継者を一流の経営者に育成し、後継者を支える会社の体制づくりなどを含む人的承継と、現経営者が保有する自社株式という財産をどのように承継させるのかという物的承継に分かれます。人的承継は会社内で行うべきことですが、物的承継は税負担を伴いますので税理士等の専門家に相談しながら行うケースが大半です。

最初に現状分析から始めます。
事業承継を心配している会社経営者の中には、「私の会社は業績もよいし、不動産も所有しているから株価は高いに違いない、相続税が多額にかかるに違いない、何をすればよいのか分からない」と心配している方がいますが、漠然と心配していても何も問題は解決しません。
現状分析を行って問題点を洗い出しましょう。問題点が把握できれば、何をすればよいかは見えてきます。

現状分析は、以下の手順で整理して行うのが良いでしょう。

1.株価算定・相続税試算

税務上の株価算定は、類似業種比準価額、純資産価額やこれらを組み合わせた折衷方式など特殊な計算をします。定期的に専門家に株価算定を依頼するとともに、自社株式以外の個人財産も含めた相続税の試算をして、相続税がどの程度見込まれるのかを把握しましょう。

株価算定を行う際には、現状の株価だけでなく、将来推移も試算してもらいましょう。業績の良い会社は通常、株価は右肩上がりで上昇し、5年後・10年後の株価が数倍になるケースも珍しくありません。また、株価の一つである類似業種比準価額は各期の業績によって大きく変動し、大きな設備投資や大きな損失が計上された事業年度の株価は大きく減少することもあります。

自社株式の承継の方法には、贈与・相続・売買がありますが、いずれの場合も、株価は低い方が税負担・資金負担は少なくなりますので、会社の今後の事業計画も織り込んだ株価の将来推移を試算し、自社株式の移転時期を検討するのが良いでしょう。

2.遺産分割・家族間のバランス

経営者が所有している自社株式は、個人財産でもあります。業績の良い会社や歴史の古い会社は、株価が高く、個人財産のうち大きな割合を占めているケースも多くあります。

このような場合に、例えば後継者は長男で、子どもは他に会社とは関係のない長女がいる場合に、皆様は自社株式をどのように渡すお考えでしょうか?
子どもには財産を平等に遺したいとお考えの方は多く、兄妹間の財産バランスをとるために長女にも自社株式を相続してもらうつもりだという方もいますし、既に毎年の生前贈与で長男だけでなく長女にも自社株式を少しずつ渡している方もいます。

事業承継の最も大切なポイントの一つは、後継者が安心して経営ができるような体制を作ること、そのためには後継者が経営権をしっかりと握ることが必要です。後継者が決めた方針を他の株主から反対されて進められない状況は望ましくありません。会社の重要な意思決定は株主総会で決定します。株主総会での決議は普通決議で2分の1超、特別決議で3分の2以上の賛成が必要です。後継者が経営権を確保するためには、自社株式が分散するのは避け、後継者にできれば3分の2、少なくとも2分の1超の議決権割合となるように株式を承継してもらうのが望ましいでしょう。

そのため、現状分析では、株式の承継について社長の現在のお考えを確認し、承継後の株主構成で後継者の経営権に支障がないかを確認することが必要です。

また、自社株式はすべて後継者である長男に渡したいお考えである場合には、将来の遺産分割でもめる可能性はないか、遺言を作成する場合には他の相続人の遺留分に問題はないかなども確認をしておく必要があります。

3.相続税の納税財源

株価算定及び相続税の試算をし、相続税の納税財源に問題がないかを確認してください。相続税は相続人ごと別々に納付する必要がありますので、相続人ごとに納税財源が確保できているかを確認する必要があります。

ここでのポイントは、後継者は評価額の高い自社株式を中心に相続し、自社株式を相続しない弟妹は金融資産を中心に相続するケースが多いため、後継者は納税財源が足りないことが多いということです。

後継者の納税財源が不足する見込みなら、対応策を検討しておく必要があります。対応策としては、会社から如何に効率的に資金調達をするかということや事業承継税制の活用などが考えられます。

事業承継の期間は3~5年 検討は早めに

会社の相続、事業承継は経営計画の一部です。スムーズに進められるか否かによって、会社の成長や存続にも大きな影響が出てきます。事業承継の検討から実行までの期間は、3年から5年程度かけて行うことが多いので、早めに検討をはじめ計画的に進めてください。
まず、現状分析から始めてみてはいかがでしょうか。