相続税額はどうやって求める?計算方法や控除の仕組みを解説
相続税を申告することになった場合や生前に相続税対策を考えたい場合は、事前に税額がいくらになるかがわかれば安心です。しかし相続税の税額計算は、もらった遺産の額に税率をかけて求めるような簡単なものではありません。多くの手順を踏む必要があるほか、不動産などの価格は自分で評価しなければなりません。この記事では、相続税の税額計算の方法をできるだけわかりやすく解説します。
相続税を申告することになった場合や生前に相続税対策を考えたい場合は、事前に税額がいくらになるかがわかれば安心です。しかし相続税の税額計算は、もらった遺産の額に税率をかけて求めるような簡単なものではありません。多くの手順を踏む必要があるほか、不動産などの価格は自分で評価しなければなりません。この記事では、相続税の税額計算の方法をできるだけわかりやすく解説します。
目次
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相続税の税額は、各相続人がもらった遺産の額から個別に算出するのではありません。まず、遺産を合算した後、相続人が全員で納める相続税の総額を求めます。総額を実際に相続した割合で割り振った金額が、各相続人が納める税額となります。
相続税の税額計算のしくみを図で示すと次のようになります。
相続税の税額計算では、最初に課税対象になる遺産の価格(課税価格の合計額)を求めます。
課税対象には、亡くなった被相続人の遺産のほか、死亡保険金や被相続人から生前贈与された財産も一部含めます。借金や未払税金などの債務や葬儀費用などは差し引きます。
家族名義の預金も課税対象に含めなければならない場合があります。家族名義でも、実際には故人が管理していた場合や、資金の出どころが故人の収入からであった場合は課税対象です。このような預金を名義預金といいます。名義預金は特に申告漏れが多いので注意が必要です。
死亡保険金や死亡退職金をもらった場合は、その金額も課税対象に加えます。ただし、それぞれ非課税限度額(500万円×法定相続人の数)にあたる金額は差し引きます。
生前贈与された財産も一部は課税対象になります。故人が死亡するまでの3年以内に生前贈与された財産のほか、3年以上前に行われた生前贈与でも相続時精算課税を適用しているものは課税対象になります。
課税価格の合計額は、故人の死亡日時点のそれぞれの遺産の価格を合算します。ただし、遺産の価格をそれぞれ個別に鑑定すれば、手間がかかるだけでなく鑑定する人や方法によって価0格にばらつきが出るおそれがあります。そのため、財産の価格を決める一定の規則である「財産評価基本通達」をもとに、価格を求めます。
遺産の中でも土地の評価は特に複雑です。原則では、道路ごとに定められた1㎡あたりの路線価に面積をかけるか、固定資産税評価額に所定の倍率をかけて価格を求めます。しかし、土地の形状や接する道路の数などによってさまざまな補正が必要で、専門家である税理士でも評価に迷うことがあるほどです。
故人が自宅や事業に使っていた土地については、価格を最大で80%減額できる小規模宅地等の特例があります。節税効果が大きいので、条件に当てはまれば忘れずに適用を求めましょう。
課税対象になる遺産の価格(課税価格の合計額)がわかれば、次に実際に課税される遺産の総額(課税遺産総額)を求めます。
課税遺産総額は、課税価格の合計額から基礎控除額を差し引いて求めます。基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です(図参照)。
課税価格の合計額から基礎控除額を差し引いた値が0かマイナスになれば、相続税は課税されません。税務署に申告する必要もありません。
【例】次のような家族を例に、実際に課税される遺産の総額(課税遺産総額)を求めます。
法定相続人は3人なので、基礎控除額は4,800万円となります。
課税遺産総額は、課税価格の合計額1億円から基礎控除額4,800万円を引いた5,200万円となります。
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相続の相談が出来る税理士を探す実際に課税される遺産の総額(課税遺産総額)が計算できれば、相続人全員で納める相続税の総額を計算します。
このときは、実際に遺産をどのように分けたかにかかわらず、民法で定められた法定相続分の割合で課税遺産総額を分配して各相続人の仮の税額を計算します。この合計が、相続人全員で納める相続税の総額です。
法定相続分は相続人の構成によって、主に次のようになります。子供、両親、兄弟姉妹が複数いれば、相続分を人数に応じて等分します。
各相続人の仮の税額は、速算表を使って計算します。相続税の税率は段階的に設定される超過累進税率で、遺産のうち一定額を超える部分にはより高い税率で課税されるしくみになっています。
【例】次のような家族を例に、相続人全員で納める相続税の総額を求めます。
課税遺産総額を法定相続分で分けると、配偶者は2,600万円、子供は1,300万円ずつとなります。
速算表から税額を求めると、配偶者の仮の税額は340万円、子供の仮の税額は145万円ずつとなり、相続人全員で納める相続税の総額は630万円となります。
相続人全員で納める相続税の総額が分かれば、実際に遺産を分けた割合に応じて各相続人に割り振ります。各相続人の税額は、個別の事情に応じて加算や控除を行います。
まず、配偶者と1親等の血族以外の相続人(法定相続人以外で遺産をもらった人も含む)の税額は2割加算します。その上で、配偶者の税額軽減、未成年者控除、障害者控除などを適用して相続人ごとの納付税額を求めます。
配偶者の税額軽減とは、相続した遺産のうち1億6,000万円または法定相続分以下の部分までは相続税が課税されない特例です。多くの場合で配偶者は相続税の納税が免除されますが、申告書は提出しなければなりません。
【例】次のような家族を例に、相続人ごとの納付税額を求めます。
相続税の総額630万円を3人で均等に分けると、各人の税額は210万円となります。
配偶者の実際の相続割合は法定相続分(1/2)以下であるため、税額軽減により納付税額は0になります。その結果、子供2人が210万円ずつ納付することになります。
相続税は故人の死亡から10か月以内に税務署に申告し、主に金融機関を通じて納税します。期限を過ぎて申告や納税をすると、無申告加算税や延滞税が課されるので注意しましょう。
相続税の申告方法や納税方法は、本サイトの別記事を参照してください。
「相続税の申告方法~申告の準備から税務署への提出まで」
「相続税の納税方法~現金だけでなくカードでも納税できる」
ここまで、相続税の税額計算方法を紹介しました。税額計算は多くの手順を踏む必要があります。また、税額計算そのものより遺産の価格を求めるほうが難しい場合もあります。
相続税の税額計算が難しいと思った場合は、相続税申告の実績が豊富な税理士への依頼をおすすめします。素人判断で税額を計算して申告すると、相続税を払い過ぎるか、のちに税務調査を受けて相続税を追加で支払うことになりかねません。
税理士報酬の目安は遺産総額の0.5%~1.0%とされていますが、相続税の過不足が生じることを思えば必要経費と言えるかもしれません。
(記事は2020年1月1日時点の情報に基づいています)