目次

  1. 1. 相続税の申告でソフトを使う理由
  2. 2. 有料ソフトと無料ソフト、どちらを選ぶ?
  3. 3. ソフトを使って申告をするメリット
  4. 4. ソフトを使って申告をする上での注意点

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所得税の申告書に比べて、相続税の申告書は非常に複雑です。相続税申告書の様式の数だけで見ても50を超え、これらの様式を正しく使って申告書を作るのは非常に難しいと言えるでしょう。

しかも、所得税、消費税、贈与税の申告書は国税庁のウェブサイトに公開されている無料のシステムから作成できますが、相続税の申告には対応していません。現状では、相続税の申告書を作る場合、手書きで作成するか、市販されている作成ソフトを使うほかないのです。

市販されている相続税の申告書作成ソフトは複数あり、中でもよく知られているのが「相続税の達人」(NTTデータ)です。さまざまな税務申告書の作成に対応した「達人シリーズ」の一つで、機能等に応じて年間利用料を支払って使うことができます(無料体験期間あり)。

一般的に、所得税と違って相続税の申告書を作成する場面は多くありません。相続税の達人を利用する場合は、業務で相続税申告を代行する税理士などは別として、1年間の利用料で十分でしょう。

一方、無料のソフトもあります。たとえば、税理士法人が無料公開しているソフトもあり、基本料金は無料で、必要に応じて有料で税理士によるサポートを受けられるといったしくみとなっています。

有料ソフトと無料ソフトを比べると、当然ながら有料ソフトのほうが機能は充実しています。たとえば相続税の達人の場合、相続税の申告書作成に加えて、遺産分割協議書の作成や、事業承継税制への対応などが備わっており、複雑な内容の申告書作成にも対応しています。

いずれにしても、作成ソフトを利用する際には、その機能をあらかじめ調べて、自分だけで申告書作成を完結できるかを検討する必要があります。まずは無料のものを使って、機能が不足すると感じた場合には有料ソフトに切り替える、もしくは税理士によるサポートを受けると良いでしょう。

相続税の申告書作成ソフトを使うメリットは、正確性と効率性を高められる点にあります。

前述のとおり、相続税の申告書の様式は数多く、正しく記載して税額計算まで完結させるのは至難の業です。国税庁はマニュアルとして「相続税の申告のしかた」という冊子を毎年作成し、ウェブサイト上でも公開しているのですが、これを見ても申告書を作るのは難しいでしょう。

とくに陥りがちなのが、「書く欄が分からない」という問題です。たとえば、被相続人の相続財産を書く欄は第11表にあり、債務や葬式費用は第13表に記載します。これらの記載内容を集計した数値を第1表に転記して、税額計算を第2表で行う……。このように相続税申告書を作る手順は複雑であり、理解することは容易ではありません。

その点、ソフトを使えば、ガイダンスにしたがって必要項目を入力するだけで、申告書の該当する欄が埋まり、最終的な税額計算まで行ってくれます。税率なども税制改正により変わることがありますが、通常、作成ソフトは税制改正にも対応しているため、わざわざ税率などを調べる手間も省けます。

相続税の計算を何度かシミュレーションをしたいときにも作成ソフトは便利でしょう。相続税は、相続財産や債務額、遺産分割の結果などによって結果が変わるため、そうした状況が変わる都度、相続税の申告書を作るのは手間です。ソフトであれば、相続人の氏名など、基本的な情報は記録したまま、相続財産などの入力項目を変えて税額計算をやり直すことができるため、気軽にシミュレーションすることができます。

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ソフトを使うことで、相続税の申告書作成は楽になりますが、必ずしもソフトだけで申告手続きを完結できるわけではありません。相続税の計算や申告書作成の機能があっても、その前提となる相続財産や債務などの情報は自ら把握する必要があります。

たとえば、相続人の情報を入力するには、戸籍から親子関係や年齢などを調べる必要がありますし、土地家屋などの固定資産については、相続開始時点の価格(評価額)を算定する必要があります。とくに土地の評価額計算については、土地の形状などによっては調整計算が必要となり、簡単に算出できないことも考えられます。

このような意味から、相続税のソフトを使って申告書を作る場合であっても、ある程度の知識が必要であると言えます。まずは国税庁のパンフレットなどから相続税申告の概要を知り、ソフトの機能を理解したうえで、利用するかどうかを検討してください。

(記事は2020年2月1日時点の情報に基づいています)

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