目次

  1. 1. 不動産を相続登記せずに売却することは原則できない
  2. 2. 不動産の相続登記をせずに売却したときのリスク
    1. 2-1. 売買契約を履行できない可能性がある
    2. 2-2. 損害賠償請求される可能性がある
    3. 2-3. 違約金が発生する可能性がある
  3. 3. 相続不動産を早く売却するためのポイント
    1. 3-1. 売却予定の不動産を優先して遺産分割する
    2. 3-2. 相続登記を司法書士に依頼する
    3. 3-3. 相続登記と並行して売却相談を進める
  4. 4. 不動産の相続登記から売却までの流れ
    1. 4-1. 遺産分割協議で不動産を引き継ぐ人を決める
    2. 4-2. 法務局で相続登記を行う
    3. 4-3. 不動産会社に査定を依頼する
    4. 4-4. 不動産会社と契約する
    5. 4-5. 物件の決済・引渡し・所有権移転登記を行う
  5. 5. 不動産の相続登記から売却までにかかる費用・税金
    1. 5-1. 相続税
    2. 5-2. 登録免許税
    3. 5-3. 必要書類の取得費用
    4. 5-4. 司法書士報酬
    5. 5-5. 印紙税
    6. 5-6. 譲渡所得税
    7. 5-7. 仲介手数料
  6. 6. 不動産の相続登記から売却までに適用される特例制度
    1. 6-1. 取得費加算の特例
    2. 6-2. 空き家の3000万円特別控除
    3. 6-3. マイホームの3000万円特別控除
  7. 7. 相続不動産の売却でトラブルを避けるための注意点
    1. 7-1. 相続人全員から売却への合意をとる
    2. 7-2. 売却の窓口となる代表相続人は慎重に選ぶ
    3. 7-3. 売却で発生する費用の負担について話し合っておく
  8. 8. 不動産の相続登記に関するよくある質問
  9. 9. まとめ|相続不動産を売却するには、まず相続登記を完了させよう

相続不動産を売却するには、原則として相続登記が必要です。相続登記とは、不動産の名義を被相続人(亡くなった人)から相続人へと変更する手続きです。

相続登記を行わない場合、不動産の名義は被相続人のままになります。この状態では、相続人が正式な所有者であることを法律上証明できず、不動産を売却できません

相続不動産を売却する場合は、まず被相続人から相続人へ名義を変更する「相続登記」を行い、その後に相続人(売主)から買主へ名義を移す「所有権移転登記」を行います。売却を急いでいるからといって、被相続人から買主へ直接名義を移すことはできません。

なお、相続登記は2024年4月1日から義務化されています。「不動産を相続したことを知った日」または「遺産分割協議が成立した日」から3年以内に登記を行う必要があります。正当な理由がないのに手続きをしない場合は、10万円以下の過料が科される可能性があります。

不動産の相続登記をせずに売却したときのリスクを示した図解。売買契約を履行できない、損害賠償請求などのリスクがある
不動産の相続登記をせずに売却したときのリスクを示した図解。売買契約を履行できない、損害賠償請求などのリスクがある

相続登記をしないまま不動産を売却しようとすると、取引がスムーズに進まないだけでなく、買主との間でトラブルになる可能性があります。ここからは、相続登記をせずに売却しようとした場合に起こり得る主なリスクを解説します。

相続登記を行っていない不動産は、登記簿上の名義が被相続人のままです。そのため、相続人が売主として売買契約を結んだとしても、買主へ名義を変更する「所有権移転登記」を行えません。

理論上は契約を締結できる場合もありますが、登記手続きができないため、取引を完了できない可能性があります。

このような場合、契約上の義務を果たせない「債務不履行」と判断され、買主から契約を解除される可能性があります。契約が解除されると、売主は受け取った売買代金や手付金の返還を求められます。

相続登記をしていないことが原因で売買契約を履行できなかった場合、買主から損害賠償を請求される可能性があります。

例えば、買主が住宅として利用する予定でリフォーム工事の契約をしていた場合、契約解除によってキャンセル料が発生することがあります。また、引っ越しの準備を進めていた場合には、仮住まいの費用や引っ越しの延期費用などが発生することもあります。

このような費用は、契約を履行できなかったことによる損害として、売主に請求されることがあります。相続登記を行わずに売却を進めると、想定外の金銭的負担につながるおそれがあるため注意が必要です。

不動産売買契約では、契約違反があった場合に備えて、違約金の条項が設けられていることが一般的です。相続登記をしていないことが原因で契約を履行できなくなった場合、契約違反とみなされ、違約金の支払いを求められることがあります

違約金の金額は契約によって異なりますが、一般的には売買価格の10%から20%程度が相場です。

例えば、売買価格が3000万円の場合、違約金は300万円から600万円程度になることがあります。不動産取引は金額が大きいため、違約金の負担も大きくなりがちです。

このようなトラブルや経済的な損失を防ぐためにも、不動産を売却する際は、あらかじめ相続登記を済ませておくことが重要です。

相続不動産を早く売却するためのポイントを示した図解。不動産を早く売却したい場合にはこれらのポイントを可能な限り対応しておくのが得策
相続不動産を早く売却するためのポイントを示した図解。不動産を早く売却したい場合にはこれらのポイントを可能な限り対応しておくのが得策

相続不動産を売却するには、遺産分割協議や相続登記などの相続手続きを進める必要があります。これらの手続きに時間がかかると、売却の開始が遅れてしまうこともあります。

できるだけ早く売却を進めるためには、相続手続きと売却準備を効率よく進めることが重要です。ここからは、相続不動産を早く売却するための主なポイントを解説します。

相続不動産を早く売却したい場合は、遺産分割協議で不動産を取得する相続人を早めに決め、相続登記の手続きに進むことが重要です。相続手続きが長引くと、その分だけ売却の開始も遅れてしまうためです。

遺産分割協議は、すべての相続財産を一度に決める必要はありません。不動産について争いがない場合は、その不動産だけ先に相続人を決める「遺産の一部分割」を行うことも可能です。

例えば、相続人全員が「早めに売却して現金で分けたい」と考えている場合や、不動産を取得する相続人が決まっている場合は、不動産のみを記載した遺産分割協議書を作成して相続登記を進められます。

相続手続きがすべて完了するのを待たずに売却準備を進められるため、結果として不動産を早く売却しやすくなります。

相続登記を司法書士に依頼すると、手続きを効率よく進められ、結果として売却までの期間を短縮できる可能性があります。

相続登記は自分で行うこともできますが、書類の不備や手続きのやり直しが生じると、登記完了までに時間がかかることがあります。

司法書士に依頼すれば、必要書類の確認や申請書の作成、法務局への登記申請などを任せられるため、手続きをスムーズに進められます。

相続登記の手続きを進めながら、不動産会社に売却相談をすることも可能です。

例えば、相続登記の準備段階でも、不動産会社に査定を依頼したり売却価格の目安を確認したりできます。

早い段階で不動産会社に相談しておけば、相続登記が完了した後にスムーズに売却活動を始められます。

相続不動産を売却するには、まず遺産分割協議や相続登記などの相続手続きを完了させる必要があります。売却までの主な流れは次のとおりです。

  • 遺産分割協議で不動産を引き継ぐ人を決める
  • 法務局で相続登記を行う
  • 不動産会社に査定を依頼する
  • 不動産会社と契約する
  • 物件の決済・引渡し・所有権移転登記を行う

相続不動産を売却するには、遺産分割協議で不動産を引き継ぐ相続人を決める必要があります。

その前提として、まずは相続人の確定と相続財産の調査を行います。相続人を調べる際は、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を取得し、結婚・離婚・養子縁組などの履歴を確認します。

相続人を正確に確定しないまま手続きを進めると、後から新たな相続人が判明した場合に、遺産分割協議や登記手続きをやり直さなければならない可能性があります。

また、相続では不動産や預貯金などのプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も引き継がれるため、財産全体を把握しておくことも大切です。

そのうえで、相続人全員で遺産分割協議を行い、不動産を誰が相続するのか決めます。

遺言書がある場合は、その内容に従って相続が行われます。遺言書がない場合は、相続人全員の合意により、不動産の取得者を決める必要があります。

話し合いがまとまったら、内容を遺産分割協議書として書面にまとめ、相続人全員が署名・押印します。この書類は、その後の相続登記で必要になります。

遺産分割協議で不動産を引き継ぐ人が決まったら、不動産の名義を被相続人から相続人へ変更する「相続登記」を行います。

不動産の所在地を管轄する法務局の窓口や郵送で申請します。登記・供託オンライン申請システム」を利用したオンライン申請も可能です。

主な必要書類は次のとおりです。

  • 登記申請書
  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
  • 被相続人の住民票の除票または戸籍の附票
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 新名義人の住民票
  • 相続不動産の固定資産評価証明書
  • 遺言書または遺産分割協議書

書類の収集や申請手続きに不安がある場合は、司法書士に依頼すると手続きをスムーズに進められます。

相続登記が完了したら不動産会社に査定を依頼し、売却価格の目安を確認します。

不動産の売却方法には、「仲介」と「買取」の2種類があります。仲介は、不動産会社が買主を探して売却する方法で、市場価格に近い金額で売れる可能性があるのが特徴です。時間をかけてでもできるだけ高く売りたい場合に向いています。

一方、買取は不動産会社が直接物件を買い取る方法で、短期間で現金化しやすいという特徴があります。ただし、一般的に仲介より売却価格は低くなる傾向があります。早く売却したい場合や、空き家の管理が難しい場合などに向いている方法です。

査定を依頼する際は、1社だけでなく複数の不動産会社に依頼し、査定額や提案内容を比較することが大切です。

不動産一括査定サイトを利用すれば、物件情報を入力するだけで複数の不動産会社に査定を依頼できます。まずは机上査定でおおよその価格を確認し、その後に訪問査定を依頼して、より正確な査定額を把握するとよいでしょう。

査定内容に納得できたら、不動産会社と契約を結びます。

仲介で売却する場合は、まず不動産会社と媒介契約を締結します。媒介契約とは、不動産会社に買主を探してもらうための依頼契約です。不動産会社が広告掲載や購入希望者の案内などの売却活動を行い、買主が見つかった段階で売主と買主の間で売買契約を締結します。

一方、買取の場合は、不動産会社が直接物件を購入するため、媒介契約は行いません。不動産会社と売買契約を締結すると、そのまま決済や引き渡しの手続きへ進むのが一般的です。

仲介の場合は買主と、買取の場合は買取業者と売買契約を締結したら、物件の決済と引渡し、所有権移転登記を行います。

決済日には、買主もしくは買取業者から残代金を受け取り、司法書士が所有権移転登記の申請を行います。物件の鍵を引き渡せば、不動産の売却は完了です。

不動産の相続登記から売却までには、主に次のような費用や税金が発生します。

  • 相続税:相続財産の総額が基礎控除額を超える場合に発生する税金
  • 登録免許税:相続登記で発生する税金
  • 必要書類の取得費用:相続登記に必要な書類の取得費用
  • 司法書士報酬:相続登記を司法書士に依頼した場合に発生する費用
  • 印紙税:不動産売買契約書の作成で発生する税金
  • 譲渡所得税:不動産売却で利益が出た場合に発生する税金
  • 仲介手数料:仲介で売却した場合に不動産会社へ支払う手数料

ただし、すべての費用や税金が必ずかかるわけではありません。例えば、相続財産が基礎控除額以内であれば相続税は発生せず、仲介を利用しない場合は仲介手数料もかかりません。

相続税とは、被相続人から引き継いだ財産の総額が、基礎控除額(3000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)を超えた場合に発生する税金です。税率は10%から55%の8段階の超過累進税率が適用されます。

相続税が発生するかどうかは、次の計算式で求めます。

  • 相続財産の総額 − 基礎控除額(3000万円 + 600万円 × 法定相続人の数) = 課税価格

課税価格がゼロもしくはマイナスになる場合は、相続税は発生しません。例えば、法定相続人が3人の場合は、基礎控除額が4800万円となるため、相続財産の総額がこの金額の範囲内であれば課税されません。

一方、相続財産が5000万円の場合は、次のような計算になります。

  • 5000万円(相続財産の総額) − 4800万円(基礎控除額) = 200万円(課税価格)

この場合は200万円が課税対象となります。国税庁の相続税の速算表に基づく税率10%を適用すると、相続税は20万円となります。

登録免許税は、不動産の名義変更を行う際に課される税金です。相続登記を行う場合は、次の計算式で算出します。

  • 固定資産税評価額 × 0.4% = 登録免許税

例えば、固定資産税評価額が4000万円の不動産であれば、登録免許税は16万円になります。この税金は、収入印紙を登記申請書に貼り付けて納付します。

相続登記を行う際には、戸籍謄本や住民票、固定資産評価証明書などの書類を取得する必要があります。これらの発行手数料は相続人の人数や戸籍の数によって異なりますが、5000円から1万円程度が目安です。

被相続人の戸籍が複数の市区町村に分かれている場合や、相続人の人数が多い場合は、取得する書類の枚数が増えるため、その分費用も高くなる傾向があります。

また、郵送請求を利用する場合は、発行手数料に加えて郵送料がかかるため、費用がやや高くなることがあります。

相続登記の手続きを司法書士に依頼する場合は、報酬が発生します。費用の目安は5万円から15万円程度ですが、不動産の数や相続人の人数、手続きの複雑さによって変わります。

また、相続登記だけでなく、相続財産の調査や遺産分割協議書の作成などをあわせて依頼する場合は、その分費用が高くなることがあります。依頼する前に、どこまでの業務を任せるのか確認しておくことが大切です。

司法書士の報酬は事務所ごとに異なるため、事前に見積もりをとり、複数の事務所を比較したうえで依頼するとよいでしょう。

印紙税は、経済取引などで作成される「課税文書」に対して課される税金です。不動産の売買では、売買契約書を作成する際に印紙税が発生します。

印紙税は、契約金額に応じて国税庁が定める税額を、契約書に収入印紙を貼り付けて納付します。不動産売買契約書にかかる主な印紙税額の目安は次のとおりです。

  • 100万円超500万円以下:1000円
  • 500万円超1000万円以下:5000円
  • 1000万円超5000万円以下:1万円
  • 5000万円超1億円以下:3万円

※税額は、2027年3月31日までに作成される不動産売買契約書に適用される「軽減税率」の金額です。

例えば、相続不動産を3000万円で売却する場合、印紙税は1万円となります。

相続不動産を売却し、利益(譲渡所得)が出た場合には譲渡所得税が発生します。税率は、不動産の所有期間によって次のように異なります。

  • 所有期間が5年超(長期譲渡所得):20.315%
  • 所有期間が5年以下(短期譲渡所得):39.63%

※所有期間の判定は「不動産を譲渡した年の1月1日時点」で行います

なお、相続不動産の場合は、被相続人が取得した日からの所有期間を引き継いで判定します。譲渡所得は、次の計算式で求めます。

  • 売却価格 −(取得費 + 譲渡費用) = 譲渡所得

取得費とは、不動産を購入した際の購入代金や建築費、改良費などの費用を指します。相続の場合は、被相続人が取得したときの取得費を引き継ぐことになります。

また、譲渡費用には、仲介手数料や測量費、登記費用など、売却のためにかかった費用が含まれます。

計算の結果、譲渡所得がゼロまたはマイナスになる場合は、譲渡所得税は発生しません。例えば、不動産の売却価格が3000万円、取得費や譲渡費用の合計が5000万円の場合は、譲渡所得税は課税されません。

仲介で不動産を売却する場合は、不動産会社に仲介手数料を支払います。

仲介手数料とは、不動産会社と媒介契約を結び、買主が見つかって売買契約が成立したときに発生する成功報酬です。売買契約の締結時に半額、物件の引き渡し時に残りの半額を支払うケースが一般的です。

仲介手数料の上限は宅地建物取引業法で定められており、売買価格が400万円を超える場合は、「売買価格 × 3% + 6万円 + 消費税 = 仲介手数料」の計算式で求められます。

例えば、不動産を4000万円で売却した場合、仲介手数料の上限は次のように計算されます。

  • 4000万円(売買価格) × 3% + 6万円 + 12万6000円(消費税)= 138万6000円

また、2024年7月1日の制度改正により、売買価格が800万円以下の不動産について、仲介手数料の上限が33万円(税込)まで引き上げられました。相続不動産が低価格帯の場合でも、この上限額が適用される可能性があります。

なお、不動産会社が直接買い取る「買取」で売却する場合は、仲介手数料は発生しません。

相続不動産を売却して利益(譲渡所得)が出た場合は、譲渡所得税が発生します。ただし、一定の条件を満たすと、税負担を軽減できる特例制度を利用できる場合があります。ここでは、代表的な特例制度を紹介します。

取得費加算の特例とは、相続税として支払った金額の一部を、不動産の取得費に加算できる制度です。

譲渡所得は「売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)」で計算するため、取得費が増えるほど譲渡所得は小さくなります。そのため、取得費加算の特例を利用すると、結果として譲渡所得税の負担を軽減できる可能性があります。

相続の場合、取得費は被相続人が不動産を購入した際の取得費を引き継ぎます。さらにこの特例を利用すると、支払った相続税の一部を取得費として加算できるため、課税対象となる譲渡所得を減らすことができます。

この特例を利用できる主な条件は次のとおりです。

  • 相続または遺贈によって財産を取得していること
  • 相続税が課税されていること
  • 相続開始から3年10カ月以内に売却していること

相続不動産が空き家になっている場合、一定の要件を満たすと「空き家の3000万円特別控除」を利用できる可能性があります。

この制度を利用すると、空き家を売却して得た利益(譲渡所得)から最大3000万円を控除できます。そのため、譲渡所得税の負担を大幅に抑えられる場合があります。

例えば、空き家を売却して3000万円の譲渡所得が発生した場合でも、この特例を利用すれば課税対象は0円となり、譲渡所得税は発生しません。なお、2024年1月1日以降の売却において、相続人が3人以上いる場合は、控除額の上限が1人あたり2000万円となりますのでご注意ください

主な適用要件は次のとおりです。

  • 1981年5月31日以前に建築された住宅であること
  • 相続開始直前に被相続人以外の居住者がいなかったこと
  • 売却代金が1億円以下であること
  • 相続開始日から3年を経過する年の12月31日までに売却すること

このほかにも、耐震基準や利用状況などの細かな要件があります。適用できるかどうかは個別の状況によって判断されるため、詳細は国税庁の資料を確認するか、必要に応じて税理士などの専門家に相談すると安心です。

ただし、この特例は取得費加算の特例と併用できないため、どちらを利用するかは節税効果を比較して判断する必要があります。

相続した家に自分が住んでいた場合は、「マイホームを売ったときの3000万円特別控除」を利用できる可能性があります。例えば、親と同居していた家を相続した後に売却するケースなどが該当します。

この制度では、自宅を売却して得た利益(譲渡所得)から最大3000万円を控除できます。そのため、譲渡所得税の負担を大きく軽減できる場合があります。

主な適用条件は次のとおりです。

  • 自分が居住用として利用していた住宅であること
  • 住まなくなってから3年を経過する年の12月31日までに売却すること
  • 親族など特別な関係がある人への売却ではないこと
  • 売った年、その前年および前々年に同様の特例を利用していないこと

この特例を利用すれば最大3000万円まで控除できるため、譲渡所得税が発生しないケースもあります。

相続不動産の売却でトラブルを避けるための注意点を示した図解。トラブルを避けるためにも可能な限り実行しておくことが得策
相続不動産の売却でトラブルを避けるための注意点を示した図解。トラブルを避けるためにも可能な限り実行しておくことが得策

相続不動産を売却する際は、相続人同士の認識の違いや手続きの進め方によってトラブルが生じることがあります。特に相続人が複数いる場合は注意が必要です。ここでは、相続不動産の売却でトラブルを避けるために押さえておきたい主な注意点を紹介します。

相続人が複数いる場合は、相続不動産を売却する際に、相続人全員の合意を得る必要があります。誰か1人でも売却に反対している場合は、売却手続きを進められません。

そのため、不動産の売却を検討する際は、売却の必要性や売却価格の目安、売却時期などについて相続人同士で十分に話し合っておくことが大切です。

話し合いの内容は、後のトラブルを防ぐためにも遺産分割協議書などの書面にまとめておくと安心です。

相続人が複数いる場合は、不動産会社とのやり取りを担当する「代表相続人」を決めておくと、売却手続きを進めやすくなります。

不動産の売却では、査定の依頼や売却条件の相談、契約書の確認など、不動産会社とやり取りする場面が多くあります。窓口となる相続人を決めておくことで、連絡や意思決定が整理され、手続きが円滑になります。

また、相続不動産の売却では、書類の準備や相続人同士の連絡調整など、一定の手間や時間がかかることがあります。そのため、代表相続人には、相続人間の連絡をとりまとめながら責任をもって手続きを進められる、信頼できる人を選ぶことが大切です。

仕事の都合などで対応する時間が取れない人を代表相続人にしてしまうと、手続きが進まず、売却までに時間がかかる可能性があります。比較的時間に余裕があり、相続人同士の調整を行える人を選ぶと安心です。

ただし、代表相続人が独断で売却条件を決めてしまうと、後から相続人間でトラブルになる可能性もあります。重要な判断を行う際は、必ず相続人全員で内容を共有し、合意を得たうえで進めることが大切です。

不動産を相続して売却するまでには、登記費用や測量費、仲介手数料などさまざまな費用が発生します。

一般的には、これらの費用は売却代金から差し引いて清算することが多いですが、相続人の間で費用負担の考え方が異なるとトラブルになる可能性があります。

次のような点について事前に話し合っておくと安心です。

  • 仲介手数料や登記費用を誰が負担するのか
  • 売却に必要な修繕費や測量費をどのように負担するのか
  • 売却代金をどの割合で分配するのか

あらかじめ費用負担のルールを決めておくことで、売却後の金銭トラブルを防ぎやすくなります。

Q. 相続登記をしない場合、売却できない以外にどんなリスクがある?

相続登記をしないまま不動産を放置すると、売却できないだけでなく、さまざまなトラブルが生じる可能性があります。主なリスクは次のとおりです。
・正当な理由なく相続登記をしない場合、10万円以下の過料に科される可能性がある
・不動産の売却や担保設定ができない
・長期間放置すると相続人が増え、権利関係が複雑になる
・公共事業や災害時の補償手続きが進められない場合がある
・他の相続人が相続分を第三者に売却すると、第三者と共有関係になる可能性がある

なお、相続登記をしていなくても、管理責任や固定資産税の納税義務は相続人に発生します。

また、相続登記をしないまま空き家を放置すると、管理が行き届かず「特定空き家」に指定される可能性もあります。特定空き家に指定されると、住宅用地特例の対象外となり、固定資産税の負担が増えることがあります。

相続登記を放置すると、時間が経つほど手続きが複雑になる傾向があります。不動産を相続した場合は、できるだけ早めに相続登記を行うことが大切です。

Q. 相続登記にはどれくらいの期間がかかる?

相続登記にかかる期間は、相続関係の状況や必要書類の準備状況によって異なります。一般的には、戸籍の収集や法務局での審査などの期間を含めて、1カ月から2カ月程度が目安とされています。

相続人が1人で必要書類がすでに揃っているなど、相続関係がシンプルな場合は、1週間から2週間程度で手続きが完了するケースもあります。

一方で、相続人が多い場合や遠方に住んでいる場合、必要書類の収集に時間がかかる場合などは、さらに長い期間を要することもあります。

なお、司法書士に依頼すれば、必要書類の確認や登記申請を任せられるため、登記完了までの期間を短縮できる可能性があります。

相続不動産を売却するには、原則として相続登記を行い、相続人の名義に変更する必要があります。相続登記をしていない場合、所有者であることを証明できないため、不動産の売却手続きを進められません。

相続不動産を早く売却したい場合は、「遺産の一部分割」で不動産の遺産分割を優先したり、司法書士に依頼して手続きを進めたりするとよいでしょう。また、相続登記と並行して不動産会社に売却相談をしておくと、売却活動をスムーズに進めやすくなります。

相続不動産の売却を検討している場合は、まず相続登記の状況を確認し、早めに手続きを進めるようにしましょう。

(記事は2026年4月1日時点の情報に基づいています)

【PR】「訳あり不動産」の相談は、クランピーリアルエステートへ

クランピーリアルエステートは、底地や共有持分、再建築不可物件といった、いわゆる訳あり物件を専門的に取り扱う不動産企業。これまでに培ったノウハウと、不動産専門の弁護士や税理士などの全国ネットワークを活かし、問題を解決します。

お問い合わせ先

電話:0120-479-831