目次

  1. 「相続登記について広く知ってほしい」との思いで開催
  2. 俳優・秋野暢子さんが「終活」をテーマに講演
  3. 相続登記の基礎知識から最新情報までを専門家が解説
  4. 相続登記の義務化や遺言の重要性を説明
  5. 「住所・名前の変更登記の義務化」なども紹介
  6. 「登記情報提供サービス」といった便利なサービスの案内も

2026年2月22日に鯱城ホールにて、愛知県司法書士会、名古屋法務局・名古屋市の共催で「相続トーキングライブ2026~準備は早めに!『もしも』に備える相続登記対策。」が開かれました。

超高齢化社会が進む社会情勢の中で、登記簿を見ても現在の所有者やその連絡先が分からない「所有者不明土地」や、空き家が今後ますます増加することが考えられます。本セミナーはこうした問題を踏まえて、市民が相続登記について正しく理解し、早めの備えをすることを目的として実施されました。定員600名に対して1千名近くの応募があり、当日も会場には多くの人々が集まりました。

セミナーではどのような講演がされたのか、その詳しい様子を抜粋で見ていきましょう。

セミナー第1部:講演「私なりの後始末-整理整頓して始まる-」(俳優 秋野暢子さん)

第1部では俳優の秋野暢子さんが登壇し、自身の経験を交えながらシニア世代の整理整頓の重要性を語りました。

38歳の時、母親を見送った秋野さん。母親は前々から延命処置を望まないことを明言していたため、秋野さんもその意思を尊重したといいます。そして自身が母が亡くなった年齢と同じ60歳になった時、「母が延命処置を望まなかったのは、娘である私に迷惑をかけたくなかったからだ」と気づいたそうです。そこから、自身も子供に負担を残さないよう整理整頓を始めたと話しました。

秋野さんは整理整頓の一環として、エンディングノートに自身の財産や希望する葬儀の内容などをまとめ、定期的に見直しをしていることを紹介。さらに、紙の写真や衣類の大半を処分したことも話しました。スマートフォンのロック解除に数十万円かかる可能性がある問題や、サブスクリプションサービスが本人の死後も継続してしまう問題など、デジタル関連の整理についても具体的に解説し、その重要性を強調しました。

さらに2022年に頸部食道がんに罹患(りかん)し、約1年間の闘病生活を送った後の自身の取り組みも紹介。「がん罹患を通じて『毎日が奇跡だ』と知った」といい、人生を前向きに過ごすために起床後に鏡の前で笑う時間を作ること、寝る前に「幸せ日記」を書くことなどを実践していると語りました。

秋野さんは「整理整頓は自分の人生を振り返り、今日からの人生を新しく始めるためのもの。ただし、整理整頓には気力・体力・時間・きっかけの4つが必要なので、身の回りを一気に片付けようとすると大変。引き出し1つやタンス1つを1週間程度かけて整理していくことから始めると良い」と、聴衆にアドバイスを送りました。

講演中は秋野さんから客席への問いかけも積極的に投げかけられ、会場全員で笑う練習をする時間も設けられるなど、終始明るく朗らかな雰囲気に包まれていました。

セミナー第2部:トークセッション「今から始める、相続への備え。〈遺産分割・空き家対策・遺言〉」(愛知県司法書士会 佐々木聡史氏、名古屋法務局 佐々木拓氏、白川吉郎氏、名古屋市 松田麻希氏、俳優 秋野暢子さん【ゲスト】、司会 福田ちづるさん)

第2部のトークセッションでは、愛知県司法書士会の佐々木聡史氏、名古屋法務局の佐々木拓氏・白川吉郎氏、名古屋市の松田麻希氏が登壇。

1部に引き続き登場した秋野さんと司会進行を務める福田ちづる氏が市民目線で率直な疑問を投げかけ、それに対して専門家が回答するという流れで進行しました。

トークセッションでは「そもそも相続登記とは何か?」といった基礎的な内容から、相続登記の義務化が始まった背景、相続登記にかかる費用や相続発生時に行うべき手続きまで、幅広い内容が取り上げられました。

前半で特に詳しく解説されたのは、相続登記の義務化に関する内容です。相続登記の義務化は、2024年4月1日から始まった制度。相続する不動産があることを知ってから3年以内の登記が必須となり、正当な理由なく登記を怠ると10万円以下の過料が科される場合があります。

この義務化の背景にあるのは、「所有者不明土地」の全国的な増加です。自治体による公共事業や災害復興事業が円滑に進まなかったり、土地の管理が行き届いていないために隣接する土地への悪影響が生じたりといった大きな社会問題となっています。

これについて名古屋法務局の佐々木拓氏は、現在の所有者不明土地は全国の土地の約23%であるという国土交通省の調査結果と併せて、これが九州本島に匹敵する面積(約410万ha)であることや、2040年には720万haと北海道本島の面積に匹敵する広さになる可能性があるという民間の調査結果を会場に共有しました。

また、空き家問題にも取り組む名古屋市の松田氏が、相続登記がされていない空き家の現所有者に連絡を取る難しさに触れながら、「相続登記が促進されることで、空き家問題の解決につながると思っている」と語る場面もありました。

その後、愛知県司法書士会の佐々木聡史氏が自身の20年以上の司法書士経験を振り返りながら「相続をスムーズに進めるために遺言が有効」と説明。相続発生時に遺言がない場合は、相続人全員による遺産分割協議が必要で、話し合いがまとまらない場合、家庭裁判所での調停に発展するケースもあると述べました。

さらに2022年には遺産分割調停事件のうち半年以上かかっているケースが全体の67%を占めたことや、遺産分割協議が10年以上続いている例もあるといったデータを提示。「自分の財産をめぐって家族にもめてほしくない方は、今すぐ遺言を作成したほうが良い」と強調しました。

トークセッション後半では、愛知県司法書士会の佐々木聡史氏・名古屋法務局の佐々木拓氏から相続登記に関連する最新の制度についても紹介がありました。ここで取り上げられたのは、2026年2月から始まった「所有不動産記録証明制度」と、同じく2026年4月から施行される「住所・名前の変更登記の義務化」の2つです。

所有不動産記録証明制度とは、法務局において、指定された住所と名前が登記簿上の所有者として記録されている不動産を全国的に一括して調査し、所有不動産記録証明書というリストで証明する制度です。証明書の発行には1週間程度かかりますが、全国にある不動産を一括で確認できるため、相続登記が円滑に進むことに期待できます。

住所・名前の変更登記の義務化とは、引っ越し・結婚などにより登記簿上の不動産の所有者の住所・名前が変わった場合は、その日から2年以内に変更登記をしなければならないというものです。2026年3月以前に変更があった場合も義務の対象となるので、2028年3月末までに登記が必要です。併せて、事前に手続きをしておけば住所などが変更された場合に法務局側で変更登記を行う「スマート変更登記」が始まることも紹介されました。

名古屋法務局の佐々木拓氏は「皆さんの負担が少しでも減るように新しい制度も始まっているので、ぜひ活用してほしい」とし、法務局で配布されているパンフレットやWebサイトなどの閲覧を促しました。

トークセッション中は各専門家から、相続登記を進める際に利用できる便利なサービスが多数案内されました。

名古屋法務局の佐々木拓氏は、「登記事項証明書のオンライン請求」や「登記情報提供サービス」について解説。相続登記をする際に必要な登記簿の内容確認の方法として、自身のスマートフォンやパソコンから登記事項証明書(謄本)を請求できる「登記事項証明書のオンライン請求」やインターネット上で登記の内容を参照できる「登記情報提供サービス」が利用できることを説明しました。「登記事項証明書のオンライン請求」は、窓口で請求する場合と比べて手数料が安く、証明書は郵送で受け取り可能であること、「登記情報提供サービス」は「登記事項証明書のオンライン請求」よりもさらに安く利用できるためぜひ利用してほしいと呼びかけました。

名古屋法務局の白川氏は、2020年にスタートした「自筆証書遺言書保管制度」を取り上げました。自筆の遺言書を法務局で保管する制度で、紛失や改ざん、形式不備により無効になる事態を防げること、手数料は1件3900円であり、遺言者の死亡後に交付請求ができる遺言書情報証明書や、通知制度に触れながら「安心、簡単・安価、親切がそろった制度」だとして、積極的な利用を促しました。

なお、名古屋法務局本局では相続登記の義務化、住所・名前の変更登記の義務化に伴う登記申請の増加を見据え、全てオンラインで手続きされた不動産登記申請の処理を優先的に3業務日以内で完了させる「ファストトラック化」の試行を2026年1月から全国で唯一実施しています。名古屋市内の不動産を所有していて、相続登記、住所・名前の変更登記をする予定の方はぜひ名古屋法務局のWebサイトなどを確認してみるとよいでしょう。

名古屋市の松田氏からは、名古屋市が各区役所・支所に設けている「おくやみコーナー」が案内されました。名古屋市在住の方が亡くなった場合、必要な申請書を区役所・支所で一括して作成し、各窓口を案内する制度です。このほか、窓口で必要な手続きについてまとめたパンフレットの配布や、低所得かつ身寄りのない高齢者を対象とした「名古屋市あんしんエンディングサポート事業」についても触れました。

今回のイベントでは、秋野さんの講演に熱心に耳を傾ける人、配布された資料に細かくメモを取る人の姿が会場中で見られました。相続や遺言、また新たに始まった制度に対する関心の高まりもうかがえました。

相続対策に興味はあるものの、なかなか最初の一歩が踏み出せていないという方も多いはず。まずは一度こうしたイベントに足を運び、情報収集をすることから始めてみてはいかがでしょうか。

【愛知県司法書士会ホームページ】
相続登記はお済みですか?相続登記が義務になりました。
https://www.ai-shiho.or.jp/topics/souzoku_tohki_202404/

【名古屋法務局ホームページ】
相続・遺言に関する手続のご案内
https://houmukyoku.moj.go.jp/nagoya/page000489.html
住所・名前の変更登記の手続のご案内
https://houmukyoku.moj.go.jp/nagoya/page000001_00951.html

【名古屋市ホームページ】
空家等対策の推進についてのご案内
https://www.city.nagoya.jp/bousai/anzen/1034530/1014550/1014555.html

(記事は2026年3月1日時点の情報に基づいています)