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――ユニセフ・ラオス事務所で教育チーフを務める深水さんは、子どもたちの学ぶ環境を整えるための支援に取り組んでいます。
深水:ラオス事務所には100名強のスタッフがいます。うち教育チームは10名ほどで、様々な国からきているスタッフもいれば、現地ラオスのスタッフもいます。
ラオスは、小中学校にあたる基礎教育においても、教育を受けることができるアクセス面、教育の質の面でまだまだ課題があるのが現状です。すべての子どもが学ぶことができ、十分な学習成果につなげられるよう、ユニセフは、ラオスの教育スポーツ省や関係省庁に働きかけ、共同で政策立案を行うとともに、その政策を教育の現場で実現すべく、コミュニティや学校といった草の根レベルでも支援を行っています。
―ラオスは現在、深刻な経済危機にあり、子どもたちも非常に厳しい状況におかれている、と深水さんは指摘します。
深水:経済危機によって格差が広がり、学校に行けない子どもが増えてしまいました。データとしては、学齢期の子どもの14%が小学校に通えていない状況です。学校を中退してしまう子もどんどん増えていて、地域によっては入学した子どもの半数以上が無事に中学校を卒業することができません。
子どもがほかの国に出稼ぎにいく保護者に伴い、ラオスを離れなければならないケースもあります。女の子の場合は「児童婚」といって、18歳未満で結婚を強いられてしまう、あるいは中学校が村になくて安全面から通うことをあきらめざるをえないこともあります。こういった様々な理由がありますがすべて、貧困が原因です。
深水:実は経済危機の前から、ラオスの教育現場では「学校に行っているのに学んでいない」という長年の問題がありました。たとえば、ラオスは小学校が5年生までで6年生から中学になりますが、小学5年生のうち、5年生で目標とするレベルの読み書きができる子は、全体のたった2%しかいません。算数も同じような状況で、5年生で身に着けるべき最低限の計算ができるのは6~8%にすぎません。読み書きができないといま困るだけではなく、今後10年も20年も30年も貧困から脱けだせなくなってしまいます。
これには、先生の数が足りないことと、教育の質の問題が影響しています。先生の数が圧倒的に足りないせいで、一人の先生が複数の学年の子どもを教えなければなりません。また、先生方にテストを行ったところ、算数や国語といった基礎教科の内容を理解していない先生、基本的な教授法を習得していない先生も多くいることがわかりました。
ラオスは多言語国家ですが、学校の授業は公用語であるラオ語で行うことが法律で定められています。小学校に入学してくる子どもたちのなかには、ラオ語を母語としない子もいて、親のサポートも限られているなか先生たちの負担は大きく、一方で教育予算が足りていないため、先生は増やせない、かつ給料も低いという現状があります。
先生の能力とやる気が、子どもの学習成果に影響するというデータがあります。ユニセフは、この現状を少しでも改善するため、先生の能力やモチベーションの向上を目的として研修を実施しています。
長いスパンでみたときに教育はとても力があって、子どもたちの将来を変える大切な支援のひとつだと信じています。この思いから私自身、長年、教育の支援に携わることができてすごくありがたいと思っています。
―厳しい状況にあっても、ラオスの子どもたちはひたむきで、明るい兆しも感じている、と深水さんは話します。
深水:2019年に一度ラオスを離れ、2023年に戻ってきたとき、中学生、高校生の子たちが新しいことに非常に興味をもつようになったな、新しいことを学ぶモチベーションが高くなったなと感じました。
やる気も社交性もあり、どんどん新しいことに挑戦する。若い子たちに、そんな気概を感じています。コロナ禍でのオンライン学習やインターネットで、世界が広がったのかもしれません。子どもたちに、世界のいろんなことを学べる環境をつくり、様々な選択肢が与えられるような教育を提供することで、国のあり方も変わっていくでしょう。
一方で、都市と地方の格差は広がっています。スマホは地方でも普及しているのですが、学習に使えるかは別です。地方の子どもには圧倒的に情報量が足りていません。村の外の世界を知らないまま育っていく子が多いのです。最も弱い立場におかれた子どもたちにも、未来への扉がひらかれるよう、必要な支援をしていきたいと思っています。
―子どもたちの状況を変えるには、保護者に働きかけることも必要だ、と深水さんは話します。
深水:子どもの発達において、保護者は非常に大事な役目を担っています。保護者の方々に教育の大切さを認識してもらい、子どもの教育を支えていただけるよう啓発活動を実施しています。
ラオスは、「教育は大切なんだ」という意識が比較的あるほうだと思います。ただ、現在ラオスは非常に厳しい経済危機の中にあるので、文房具を買ったり、制服を買ったりなどこまごまとした出費も家庭には大きな負担になります。「学校に行くのは大切だよ」とだけ訴えるのではなく、学校に行ったら、将来この子たちの社会生活がどのように変わるのか、どのように国やコミュニティの発展に貢献できるのかということを、きちんと伝えることが大切だと考えています。
ラオスは社会主義国ですので、国にどれだけ貢献できるか、社会参加できるかということは大きな意味をもちます。保護者がこうした未来を描きながら、子どもの学びを継続して支え、そして子どもが健全に学び、遊べるように、保護者の意識改革も含めた「ペアレンティング・プログラム」を導入しています。
ラオスは多言語国家なのもあって、保護者の中には字が読めない方たちもいます。そのため、保護者の能力強化にも重点を置いています。具体的には保護者を集め、ラオス政府の人たちの支援のもと、村長やコミュニティから選ばれたボランティアが「ファシリテーター(進行役)」として主導し、ワークショップを行います。内容は、読み書きや昔話などのストーリーテリングを学ぶことから、予防接種や健康診断の必要性を伝えることまで様々です。ユニセフは、国に対してファシリテーターの研修を行うなど、国が制度に基づいて自立してやっていけるように働きかけています。
―さいごに、深水さんが心に残っている支援についてうかがいました。
2018年、ラオス南部を襲った大洪水で何十という村が水没。警報が直前まで出なかったために避難が遅れ、多くの方が亡くなったそうです。深水さんは大洪水の発生直後、緊急支援チームの隊長として現地に入りました。
深水:被災した村では、命からがら逃げた人たちが避難所でテントを立てて生活していました。被災後、私も隊長としていの一番で現地入りしました。もちろん、安全な飲み水やトイレなどのライフラインの確保にも注力しましたが、ユニセフの緊急支援チームは、避難所の子どもたちが学びつづけることができるよう、ほかのNGOにも協力してもらい、テントを使った仮設の学校を設置しました。
子どもたちだけでなく先生たちも被災し、トラウマを抱えていたので、そのメンタルケアもしつつ、対応できる先生たちに協力してもらいクラスを開きました。教室には障がいのある子たちもきて、どんな子も一緒に学んでいました。子どもたちにとって、非常事態下にあっても学校に行くルーティンが戻ることは、心理的に非常に大切なことなのです。仮設の学校にきてくれた子どもたちの顔つきはとても生き生きしていましたね。
のちになって、被災した村の人たちから「大切な援助で必要だった」と声をかけていただいたり、子どもたちが喜んでくれるのを目にしたりして、頑張ってよかったなと思いました。
深水:ユニセフは一人ひとりの職員が、子どもと母親、子どもを支える人たちのために、という強い使命感をもって、日々活動しています。
ユニセフの支援は、一方的に与えるのではありません。子どもや保護者、先生方、コミュニティの人たちなどのニーズをくみあげ、どのようにしたら効果的な支援ができるのか、必要とされているところに手が届くのか、子どもを主体とした支援を大切にしています。
また、こうしたユニセフの支援は、支援者の方々のご協力により支えられています。ラオスのみならず、世界各地でユニセフが支援を継続していくため、また災害に対する備えや、紛争などの緊急事態が起きたときすぐに緊急支援に取りかかるため、皆さまからお寄せいただくユニセフ募金は大変貴重です。皆さまの子どもたちへのお気持ちに心より御礼申し上げます。
―今日も世界各地で、深水さんのようにたくさんのユニセフ職員が、子どもたちのために奮闘しています。その日々の支援活動を支えているのは、世界中から寄せられる子どもたちへの想いとご寄付です。日本ユニセフ協会は、日本におけるユニセフの公式窓口として、相続財産寄付を含むご寄付を受け付けています。
ユニセフ・ラオス事務所 教育チーフ
1973年、愛知県出身。早稲田大学法学部卒業後、日米教育委員会(フルブライト・ジャパン)でアシスタントとして勤務。米国・スタンフォード教育大学院修士課程(国際比較教育)修了。その後、ユネスコ・ジャカルタ事務所で3カ月のインターンシップを経験。青年海外協力隊の教育プログラムオフィサーとして2年間、グアテマラ共和国・トトニカパン県教育事務所に勤務し、女子教育の大切さを実感。「『人を育てる』教育こそが、子どもにとって大切な支援」という思いから、教育分野での活動に従事している。
2004 年4 月からユニセフ・バングラデシュ事務所に勤務後、アンゴラ事務所、タジキスタン事務所、東ティモール事務所などを経て、2015 年ラオス事務所へ。2019 年スリランカ事務所に勤務し、2023 年より再びラオス事務所にて教育チーフを務めている。