結婚資金の非課税枠は300万円 挙式や指輪、新婚旅行費はどうなるの?
結婚・子育て資金の一括贈与は一定の要件を満たせば1000万円まで贈与税が非課税となる制度(以下「本制度」)があります。この制度の特色は税務署ではなく金融機関で手続きをすることです。結婚資金の場合は300万円までが非課税ですが、非課税対象となる結婚資金にはどのようなものが含まれるのか? 結婚資金贈与の内容や手続きの方法を紹介します。
結婚・子育て資金の一括贈与は一定の要件を満たせば1000万円まで贈与税が非課税となる制度(以下「本制度」)があります。この制度の特色は税務署ではなく金融機関で手続きをすることです。結婚資金の場合は300万円までが非課税ですが、非課税対象となる結婚資金にはどのようなものが含まれるのか? 結婚資金贈与の内容や手続きの方法を紹介します。
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祖父母や父母から必要な都度支払われる生活費や教育費は、本制度の適用を受けていなくても贈与税は非課税です(相続税法21条の3①二)。ただし、この非課税の取扱いは、本制度と違い、あくまでも必要な都度、通常必要とされる金額(生活費や教育費の実費相当)しか認められませんので、一度にまとまった金額を今後の結婚・子育て資金の予算として贈与したい場合には本制度を適用する必要があります。
本制度の適用を受けるにあたり、はじめに検討すべき要件は表の通りです。なお適用期間は令和7年(2025年)3月31日まで延長されています。
本制度の非課税枠は、受贈者1人あたり1000万円までですが、この1000万円のうち結婚資金に充てられる部分は300万円までです。1000万円の非課税枠に加えて別途300万円の非課税枠(合計1300万円)があるわけではありません。また、適用期間内に既に本制度の適用を受けて700万円贈与受けているような場合、まだ非課税枠が300万円ありますので、追加結婚・子育て資金非課税申告書を金融機関に提出することにより、追加で300万円までなら本制度の適用を受けることができます。
本制度の対象となる結婚資金の具体的な範囲は、大きく以下3つの項目ごとに定められています。それぞれについて、「非課税となる費目」「非課税とならない費目」を見ていきましょう。※内閣府HP資料(一部筆者加筆)
1 婚礼に係る費用
下記非課税となる費目で、その領収書等に記載された支払年月日が、受贈者の婚姻の日の1年前の日以後のものが本制度の非課税対象となります。
2 家賃等に係る費用
上記非課税となる費目で、その賃貸借契約書の締結日が、婚姻の日の前後各1年の期間内で、受贈者名義で締結したもののみが本制度の非課税対象となります。なお、当該賃貸借契約に基づき今後支払われる家賃が全て非課税となるわけではなく、契約締結日から3年を経過する日までに支払われたもの(36か月分)が非課税対象となります。
3 引越しに係る費用
上記非課税となる費目で、転居の年月日が、婚姻の日の前後各1年の期間内のものが本制度の非課税対象となります。なお、転居の年月日がその期間内であれば、複数回の引越し代も対象となります。
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相続の相談が出来る税理士を探す本制度の適用を受けるためには、税務署ではなく、金融機関等において以下所定の手続きを行う必要があります。
・「結婚・子育て資金管理契約」の締結
・「結婚・子育て資金口座」の開設
口座開設には、贈与契約書、受贈者の戸籍謄本又は抄本・住民票(コピー不可)、確定申告書の控え、源泉徴収票などの提出が必要となります(詳細は手続きする金融機関で要確認)。
・「結婚・子育て資金非課税申告書」の提出
金融機関に提出することで、税務署に提出されたものとみなされるため、税務署で行う手続きはありません。
結婚・子育て資金口座から非課税対象となる結婚資金を払い出す場合、受贈者が口座開設時に選択した払い出し方法に応じて以下の通り所定の期日までに領収書等を金融機関に提出する必要があります。
1 受贈者が、結婚資金を支払った後にその支払った金額を専用口座から引き出す方法を選択した場合
領収書等に記載された支払年月日から1年以内に領収書等を金融機関に提出し、金融機関の確認を受けたうえで専用口座から払い出しを受けます。
2 1以外の方法を払い出し方法として選択した場合
事前に専用口座から払い出しを受けた後、領収書等に記載された支払年月日の翌年3月15日までに領収書等を金融機関に提出して確認を受けます。なお、専用口座から払い出した後に結婚・子育て資金に充てていなかった場合には課税の対象となります。
本制度の注意点として、使い残しに対して贈与税や相続税が課税される点が挙げられます。具体的には以下の通りです。
1 受贈者が50歳になった場合、使い残しに贈与税がかかる
受贈者が50歳になった時に専用口座等は終了しますが、その時点で使い残し(預金残高-結婚・子育て資金として支出した金額)があれば、その使い残しについて受贈者に対して贈与税が課税されます。
2 贈与者が死亡した場合、使い残し分が相続財産に加算される
契約終了前に贈与者が死亡した場合、その時点で使い残しがあれば、その使い残しは、贈与者の相続財産に加算され、相続税の課税対象となります。受贈者が孫の場合、上記使い残しに対応する相続税額については、相続税額の2割加算(相続税法18条)の適用はありません。また、受贈者である孫が、上記使い残し以外の財産を取得しなかった場合、相続開始前3年以内の贈与財産の加算(相続税法19条)の適用はありません。
これら贈与税や相続税の申告書は、金融機関ではなく税務署に所定の期限までに提出する必要がありますので、必要に応じて税理士に相談することをお勧めします。
(記事は2020年11月1日時点の情報に基づいています)
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