相続開始日はいつから計算する? 死亡日や「相続を知った日」との違いに注意!
「相続開始日」とはいつを指すのでしょうか? 法律上や税務上、「相続開始日」や「相続を知った日」から期間を計算しなければならない場面があります。例えば相続税の申告、相続放棄などには「期間」が設けられているため、正確に計算できないと遅延が生じてしまうリスクがあります。今回は相続開始日や死亡日、相続を知った日の意味を解説します。
「相続開始日」とはいつを指すのでしょうか? 法律上や税務上、「相続開始日」や「相続を知った日」から期間を計算しなければならない場面があります。例えば相続税の申告、相続放棄などには「期間」が設けられているため、正確に計算できないと遅延が生じてしまうリスクがあります。今回は相続開始日や死亡日、相続を知った日の意味を解説します。
目次
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相続開始日は「被相続人が死亡した日」です。具体的には「死亡診断書」や「死体検案書」に書かれた「死亡日」が相続開始日になります。
役所へ死亡届を提出すると被相続人の戸籍(除籍)に「死亡日(相続開始日)」が記載されるので、相続開始日を知りたければ戸籍をとると良いでしょう。
長期に渡って行方不明となったために、失踪宣告を申し立てた場合の死亡日はいつになるのでしょうか?
実は「普通失踪」と「特別失踪」とで相続開始日が異なります。
普通失踪は通常時に行方不明になったときの失踪宣告、特別失踪は難破や飛行機事故、天災に巻き込まれたなどの危難によって行方不明になったときの失踪宣告です。
普通失踪であれば「生死不明となって7年が経過した日」が相続開始日、特別失踪であれば「危難が去った日」が相続開始日となります。
相続税の申告や納付には、期限が設けられています。
具体的には「相続開始を知った日の翌日から10カ月」であり、死亡日とは必ずしも一致しません。例えば相続人が死亡を知ったのが死亡から30日後であれば、死亡後31日目から10カ月を計算します。
【計算の具体例】
Aさんの叔父が2021年7月1日に死亡。Aさんは叔父の相続人となりましたが、生前あまり付き合いがなかったために死亡を知ったのは2021年8月15日でした。この場合、相続税の申告期日は「死亡を知った日から10カ月後」である2022年6月15日になります。
失踪宣告の場合、「失踪宣告の審判確定を知った日から10カ月」が相続税の申告納付期です。
以前に相続人廃除されていたが廃除が取り消されて相続人の地位を回復した場合、「廃除取消の審判確定を知った日から10カ月」後が相続税の申告納付期限です。
死後認知された場合、「死後認知の裁判確定を知った日から10カ月」後が相続税の申告納付期限です。
胎児の場合は「法定代理人が胎児の生まれたことを知った日から10カ月」、幼児の場合には「法定代理人が相続開始を知った日から10カ月」が相続税申告納付期限です。
被相続人が事業を営んでいた場合などには、相続人が所得税の準確定申告をしなければなりません。「相続開始を知った日から4カ月」が申告納付期限となります。
借金などの遺産を相続したくない場合「相続放棄」すれば相続人の地位を放棄して遺産を相続せずに済みます。
相続放棄は「自分のために相続があったことを知ってから3カ月」以内に行わなければなりません。この期間を「熟慮期間」といいます。
一般的には「相続開始を知ってから3カ月」が熟慮期間であり相続放棄の期限です。
ただし、例外的に「相続開始を知ってから3カ月」が経過しても相続放棄が認められるケースがあります。「遺産がないと信じており、信じたことに正当な理由がある場合」です。
前順位の相続人が相続放棄したために後順位の方が相続人になってしまった場合、「先順位者の相続放棄を知ったときから3カ月」が熟慮期間となります。
例えば子どもが相続放棄したために兄弟姉妹が相続人となった場合などです。
相続放棄の申述は「自分のために相続があってから3カ月」の熟慮期間内に行わねばなりません。しかし遺産内容が複雑で相続人が遠方に居住している場合などには、熟慮期間内に遺産の調査を終えられないケースもあるでしょう。そういった特殊事情があれば、熟慮期間を延長してもらえる可能性があります。
熟慮期間を延長してもらいたい場合、熟慮期間内に家庭裁判所へ「熟慮期間伸長の申立」を行いましょう。認められれば数カ月間、熟慮期間を延ばしてもらえます。期間内であれば再延長の申立も可能です。
ただし必ず延長が認められるわけではありません。遺産の種類が多い、全国に分散している、相続人が海外居住など「早期の判断が困難」な事情を説明する必要があります。
自分で申立をしても認められないリスクが高くなるので、熟慮期間伸長の申立は弁護士に依頼しましょう。
全国47都道府県対応
相続の相談が出来る弁護士を探す遺言や贈与によって「遺留分」を侵害された場合、遺留分侵害額請求を行って侵害された金額を払ってもらうことができます。
遺留分とは兄弟姉妹以外の相続人に認められる最低限の遺産取得割合です。遺留分侵害額請求は「相続開始と遺留分侵害を知ってから1年」以内に行わなければなりません。
つまり、以下の2つを知ってから1年が期限です。
● 相続開始(被相続人の死亡)
● 遺留分を侵害する遺言書や贈与の事実
被相続人が死亡したことや遺言書の存在を知らなければ、遺留分侵害額請求の期間は進行しません。
ただし遺留分侵害額請求にはもう1つの期間制限があります。
● 相続開始日から10年
被相続人の死亡や遺言書、贈与の事実を知らなくても「死亡日から10年」が経過したら遺留分の取り戻しはできなくなってしまいます。
遺留分を侵害されて納得できないなら、早めに遺留分侵害額請求を行いましょう。
「相続開始日」「相続を知った日」「自分のために相続があったことを知った日」など、各種の手続きによって「期間の計算方法」が異なります。
間違えると税金を滞納してしまったり借金を相続してしまったりして不利益を受けるリスクも発生します。
相続放棄や遺留分侵害額請求については弁護士へ、相続税については税理士に相談しながら期限を過ぎないうちに確実に各種手続きを行いましょう。
(記事は2021年7月1日時点の情報に基づいています)
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