目次

  1. 1. 推定相続人とは
    1. 1-1. 法定相続人との違い
    2. 1-2. 相続人との違い
  2. 2. 推定相続人が相続できないケース
    1. 2-1. 推定相続人が被相続人よりも先に死亡した場合
    2. 2-2. 被相続人が遺言書を作成していた場合
    3. 2-3. 相続欠格者の場合
    4. 2-4. 推定相続人の廃除
    5. 2-5. 廃除の方法
    6. 2-6. 廃除の対象者
    7. 2-7. 廃除の取消し
  3. 3. 推定相続人の調べ方
  4. 4. まとめ 廃除の制度を検討する場合は弁護士に相談を

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推定相続人とは、現時点である人が亡くなったと仮定した場合に、相続人になるはずの人のことです。その人が亡くなっていない時点での予測に過ぎませんので、「推定」になるわけです。

例えば、相続太郎・花子さんという夫婦がいたとします。配偶者は基本的に相続人になるので、太郎さんとの関係では花子さんが、花子さんとの関係では太郎さんが推定相続人です。

推定相続人の順序や範囲は、法定相続人の順序や範囲の考え方と同じです。配偶者は基本的に推定相続人となり、これに加えて子が第1順位、直系尊属(親や祖父母)が第2順位、兄弟姉妹が第3順位で推定相続人になります。先の順位の人がいれば、後の順位の人は推定相続人になりません。例えば、子がいれば、親や兄弟姉妹は推定相続人にはなりません。子が亡くなっている場合でも、その子に子(被相続人との関係で孫)がいれば代襲相続するので、その場合は、孫が推定相続人になります。

法定相続人は、ある人が亡くなった場合において、相続人になるはずの人のことです。推定相続人とほぼ同じ意味です。被相続人が亡くなる前に「推定相続人」と呼ばれていた人が、同人が亡くなった後には「法定相続人」と呼ばれるイメージです。

相続人とは、法定相続人(推定相続人)の中で、実際に相続することになった人です。法定相続人(推定相続人)であっても、相続放棄や相続欠格などにより実際には財産を相続しない人もいるので、必ずしも法定相続人(推定相続人)=相続人とはなりません。

被相続人よりも、先に推定相続人が亡くなった場合は、その推定相続人は相続できません。もっとも、前記のとおり、その推定相続人が子である場合、同人に子がいれば(被相続人との関係では孫)、その子が代わって相続することになります(代襲相続)。

遺言書がある場合は、その遺言書の内容が優先されます。そのため、例えば、推定相続人以外の者にすべての財産を遺贈する内容の遺言書があれば、推定相続人は相続できません。

もっとも、兄弟姉妹以外の推定相続人には遺留分がありますので、遺留分に相当する金額を取得することは可能です。

相続欠格というのは、被相続人との身分関係からすると相続権があるものの、欠格事由に該当する場合には、当然に相続権が失われるという制度です。例えば、下記のような事由です(民法891条)。

● 故意に被相続人や他の相続人を殺したこと
● 被相続人が殺されたことを知っていたのに告発や告訴をしなかったこと
● 詐欺や脅迫によって被相続人が遺言をしたりするのを妨げたこと
● 詐欺や脅迫によって被相続人に遺言をさせたりすること
● 被相続人の遺言書を破棄・隠匿したこと

相続に関する法秩序を乱して違法に利得しようとする人には相続権は与えないという趣旨の制度です。ただし、前記の「代襲相続」は適用されますので、相続欠格者に子がいれば、その子が代襲相続することになります。

相続資格を当然に否定するほどの重大な事由はないものの、被相続人がその者に財産を相続させたくないことも当然と思われるような事由がある場合に、被相続人に意思に基づいて、その相続人の相続権を失わせる制度です。具体的には、被相続人に対して虐待や重大な侮辱、その他の著しい非行があった場合です(民法892条)。相続欠格と同様、「代襲相続」が適用されます。そのため、廃除された相続人に子がいれば、その子が代襲相続することになります。

相続欠格の場合と異なり、廃除をするためには、被相続人が生前に家庭裁判所に申立てするか、あるいは遺言で廃除の意思を表示しておくことが必要です。後者の場合は、被相続人の死後、遺言執行者が家庭裁判所に申立てをします。ただ、申立てをすれば、当然に認められるわけではありません。相続権を失わせるという強力な効果があるので、家庭裁判所は、廃除を認めて良いかどうかを慎重に判断します。認められる場合は多くはありません。

廃除は、遺留分を有する推定相続人のみが対象です。なぜなら、遺留分を有しない推定相続人に相続させたくなければ、そのような内容の遺言書を書けば良いからです。

廃除は、上記のとおり、被相続人の意思に基づく制度ですので、当該相続人との関係性が回復した場合、廃除の取消しをすることが可能です。

遺言や家族信託をする際は、推定相続人を調べることが大切です。なぜなら、推定相続人を把握しておかなければ、適切な内容の遺言書や契約書を作成することができないからです。では、どのようにして、推定相続人を調べれば良いのでしょうか。

推定相続人を調べるためには、戸籍を収集する必要があります。具体的には、最初に、被相続人の現在の本籍地の役所で取得できる戸籍をすべて取得します。そして、結婚や転籍で本籍地が変わっていた場合は、変わる前の戸籍をその本籍地の役所で取得します。被相続人の出生時の戸籍が取得できるまでこれを繰り返します。また、兄弟姉妹が相続人になる場合には、被相続人の父母の出生から死亡までの戸籍も収集する必要があることに加え、結婚などで転籍した兄弟姉妹や、兄弟姉妹が亡くなっていれば甥や姪の戸籍をたどっていく必要があります。

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相続欠格や推定相続人の廃除の制度はあまり知られていません。ある人に欠格事由や廃除事由が認められるかどうかは、過去の裁判例を参考にするなど、専門的な知見を要します。推定相続人廃除の申立てをしたい場合や申し立てられた場合など、これらの該当性が問題となるケースでは、自己判断で動かずに、まずは弁護士に相談してみることが得策です。

(記事は2021年4月1日現在の情報に基づきます)

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