目次

  1. 1. 司法書士にできること
    1. 1-1. 相続登記
    2. 1-2. 裁判所提出書類の作成
    3. 1-3. 遺産整理業務(相続財産管理業務)
  2. 2. 司法書士にできないこと
    1. 2-1. 相続人間の紛争解決
    2. 2-2. 相続税の申告
  3. 3. 司法書士に依頼するメリットとデメリット
  4. 4. 司法書士選びのポイント

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相続手続きにおいて司法書士が行うことができる代表的な業務は、下記一覧表のとおりです。相続登記以外にもさまざまな手続きを業務として行うことができます。すべての手続きについて解説すると長くなってしまいますので、今回は司法書士が特に得意としている「相続登記」「裁判所提出書類の作成」「遺産整理業務(相続財産管理業務)」の3つについて、詳しく解説していきます。

司法書士とほかの専門家との業務の違いの一覧図
司法書士とほかの専門家との業務の違いの一覧図

遺産のなかに不動産がある場合には相続を原因とする所有権移転登記、いわゆる「相続登記」が必要となります。司法書士は、登記に関する手続きについて代理することを主要業務としていますから、この「相続登記」も司法書士が得意とする手続きの一つです。

相続登記を申請する際には、亡くなった人の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人の戸籍謄本や住民票、遺産分割協議書などさまざまな書類を添付しなければなりません。司法書士が相続登記の依頼を受けた場合には、申請手続きはもちろん、戸籍謄本など各種証明書の取得や遺産分割協議書の作成も附帯業務として行うことができます。

なお、相続登記については、2024年4月に義務化されました。正当な理由なく3年以上放置してしまった場合には10万円以下の過料に処される可能性もありますので、速やかに手続きを行う必要があります。主要な遺産が不動産である場合には、まず登記の専門家である司法書士に相談してみるのが良いでしょう。

裁判所に提出する書類を作成することも、司法書士の業務の一つです。「裁判所」というと刑事裁判や民事裁判をイメージする人が多いと思いますが、裁判所は相続手続きにおいてもさまざまな役割を担っています。

たとえば、亡くなった人に借金があるなどの事情で相続を放棄する場合には、家庭裁判所に対して相続放棄の申述を行う必要があります。また、自筆証書遺言が発見された場合には、遺言書の内容を明確にして偽造変造を防止するために家庭裁判所で検認という手続きを経る必要があります。

これらの手続きを行うためには家庭裁判所に対して申立書や附属書類を提出しなければなりません。これらの書類を相続人に代わって作成することも司法書士の業務として認められています。

相続放棄は、相続があったことを知った日(原則としては被相続人が亡くなった日)から3カ月以内に手続きをしなければなりません。遺言書の検認については、相続放棄のような期限はありませんが、遺言書の内容がわからないと相続手続きを進めることができません。そのため、こちらもできるだけ速やかに行う必要があります。相続放棄を検討している場合や自筆証書遺言を発見した場合には、できるだけ早く司法書士に相談することをおすすめします。

司法書士は、相続人から依頼を受けて相続財産の管理や処分を行うことを業務とすることができます。

具体的には、法定相続人や相続財産の調査(戸籍謄本、残高証明書、評価証明書等の取得)に始まり、遺産分割協議書の作成、預貯金の解約払戻し手続き、有価証券の名義変更、不動産の名義変更(相続登記)、相続財産の換価手続き(不動産等の売却手続き)など、相続手続きの大部分を司法書士が代行することができます。

これらの手続きをすべて相続人自身で行うには、かなりの時間と労力が必要となります。多忙や高齢などの理由で相続手続きを行う相続人がいない、遺産の種類が多くて何から始めたらいいかわからないといった場合には、司法書士が遺産整理受任者(相続財産管理人)となり全面的にサポートすることができるのです。

相続人間で話し合いがまとまらない場合に、司法書士が話し合いに介入する行為はできません。遺産分割調停や遺産分割審判などの裁判手続きにおいて相続人の代理人になることもできません。相続について紛争の解決を図ったり、特定の相続人の代理人として他の相続人と協議を行ったりできるのは弁護士のみです。

たとえば相続登記を申請する前段階として、誰が不動産を取得するかをめぐって相続人間に対立が生じてしまった場合、司法書士が遺産分割協議を主導することはできませんし、特定の相続人が取得できるように働きかけることもできません。そして、分割協議がまとまらない以上は登記申請も行うことができないのです。

すでに相続人間で意見の対立が生じているか、または対立が生じる可能性が高い場合には、最初から弁護士に相談したほうが良いかもしれません。ただし、弁護士へ依頼することで相手方の態度をさらに硬化させてしまう可能性もあるので、慎重に検討してみてください。

遺産の総額が基礎控除額(3000万円+[600万円×法定相続人の数])を超える場合には相続税の申告が必要となります。この申告を相続人に代わって行うのが税理士です。相続税の申告には、相続財産の評価方法や小規模宅地の特例措置など専門的な知識が必要となります。

遺産を相続することでどれだけの税金を納める必要があるのかは、相続手続きのうえで重要なポイントになります。相続税の申告が必要な場合や申告の要否がすぐに判断できない場合には、まずは税理士に相談することをおすすめします。

そのほか、車の名義変更や許認可手続などは行政書士、年金や社会保険に関する手続きは社会保険労務士といったように、法律によって業務として行える専門家が決まっている手続きがあります。これらの業務については、司法書士が行うことはできません。

冒頭の一覧表からもわかるように司法書士は相続手続きにおいて幅広く業務を行うことができます。そのため、遺産の種類や必要な手続き、かけられる予算などご自身の状況に合った依頼が可能であることが大きなメリットです。

とりあえず戸籍謄本を取得してほしい、相続登記だけお願いしたい、相続登記とあわせて預貯金の解約も頼みたい、できるだけすべての手続きを任せたい──といったように広い選択肢のなかから業務を依頼することができます。相続手続きには相当な時間と労力がかかりますが、司法書士を上手に利用することでご自身やご家族にかかる負担を大幅に軽減することができるでしょう。

逆にデメリットとしては、報酬が発生することが挙げられます。これは司法書士に限ったことではありませんが、時間に余裕があり相続に関する知識が一定程度ある人であれば相続手続きは自分で行うこともできるので、費用をできるだけ抑えたいという場合には専門家を頼らないという選択肢もあります。

また、前述のとおり依頼者である相続人同士が揉めてしまうと、紛争に関与することができない司法書士は、途中で手続きを終了せざるを得ないというデメリットがあります。最初は司法書士に依頼していたものの、途中から弁護士に依頼することになってしまった場合には、報酬が二重に発生することもあるので注意が必要です。

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司法書士を選ぶときのポイントは、依頼する人が「何を重視するか」によって変わってきます。専門性、費用、業務のスピード、事務所の立地など依頼する業務の内容と相続の状況に応じて優先度を決めていくべきです。

ただ、あえて非常に大切なポイントを挙げるとすると、「相性が合う」ということになると思われます。相続手続きではご自身やご家族のプライベートな部分を話す機会も多く、業務内容によっては数カ月間にわたってやりとりをすることもあります。相性が合う相手であれば気軽に質問することができますし、質問や雑談を交わしていくなかで信頼関係が生まれ安心して業務を依頼することができます。

初回相談は無料という事務所も多くありますので、まずは司法書士と直接会って、ご自身の抱えている疑問や不安をぶつけてみましょう。話しやすく疑問や不安に誠実に応えてくれる司法書士だと感じたらぜひ依頼してみてください。

(記事は2024年5月1日時点の情報に基づいています)

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