目次

  1. 1. 「控除できるもの」と「できないもの」
    1. 1-1. 控除できるもの
    2. 1-2. 控除できないもの
  2. 2. 領収書などの証拠を残しておこう
    1. 2-1. 被相続人が契約書として積み立てていた場合
    2. 2-2. 相続人が契約者として積み立てていた場合
  3. 3. 相続財産から葬儀費用を出す場合の手続き

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一口に葬儀といっても、現在は遺族のニーズに合わせていろいろなプランがあります。代表的な葬儀のプランを以下にご紹介しますが、一般的に葬儀に関連する支出は1から順に高額になります。

  1. 火葬式(又は直葬):通夜と告別式を行わず、火葬のみ執り行うプラン
  2. 一日葬:通夜は行わず、告別式から火葬までを1日で執り行うプラン
  3. 家族葬:通夜と告別式を行うが、葬儀の参列者を身内に制限するプラン
  4. 一般葬:通夜と告別式を行い、身内以外の一般参列者もお呼びするプラン

ここでは、通夜と告別式を行う3と4を前提に葬儀費用として相続財産から控除できるものとできないものをご紹介します。

  • 遺体の捜索費用
  • 遺体や遺骨の運搬にかかった費用
  • 医師による死亡診断書(死体検案書)の発行費用
  • 葬儀社に支払う遺体安置費用
  • 葬儀社に支払う通夜、告別式に要する費用
  • 葬儀のお手伝いの方へのお礼・心付け・お車代
  • 領収書がない場合が多いため、支払先、支払額等、メモしておく必要があります。
  • 通夜、告別式における飲食費用
  • 会葬御礼にかかった費用

会葬御礼と以下香典返しとの違いに注意が必要です。

  • 相続人が支払った生花代・供物代
  • 宗教費用(お布施、戒名料、読経料など)

領収書がない場合が多いため、支払先・支払額等、メモしておく必要があります。
・火葬や埋葬、納骨をするためにかかった費用

・香典返しにかかった費用
いただいた香典について遺族側で贈与税の課税対象とならないことから、香典返しも葬儀費用として相続財産から控除できないこととされています。葬儀費用として控除できる会葬御礼と控除できない香典返しの違いが重要です。会葬御礼は、通夜や告別式の参列者全員に香典の有無にかかわらずお渡しする返礼品です。香典返しは、香典をいただいた方に後日お送りするお返しです。香典返しの時期は、一般的に四十九日以降とされていますが、会葬御礼と一緒に香典返しを行う「即日(当日)返し」もあります。

・初七日、四十九日、一周忌、三回忌等の法会(法事)にかかった費用
これらは、死者を葬る儀式である葬式とは異なり、死者の追善供養のために営まれるものですので、葬儀費用には含まれません。

・墓碑や墓地の買入費、墓地の借入料、仏壇や仏具の購入費用、これらへの彫刻費用
葬儀には関係ない費用ですので、葬儀費用には含まれません。

・医学上又は裁判上の特別の処置に要した費用
具体的には、死体の解剖費用がこれにあたります。葬儀には関係ない費用ですので、葬儀費用には含まれません。

いくら葬儀費用として控除できる費用を支払ったとしても、その証拠が残っていないと控除はできません。具体的には、領収証や請求書等、葬儀費用の支出を裏付ける証拠を残しておく必要があります。特に、宗教費用(お布施、戒名料、読経料など)や葬儀のお手伝いの方へのお礼・心付け・お車代などの費用は、相手から領収書や請求書をもらっていない場合も多いかと思われますので、支払先、支払額、支払日をメモしておく必要があります。

被相続人が生前に自身の葬儀費用について相続人の負担にならないように積み立てておきたい場合に利用するサービスとして「互助会」というものがあります。互助会積立金がある場合の相続税申告にあたっては、だれが契約書となり積み立てていたのかにより以下の通り相続財産と葬儀費用の金額が異なるので注意が必要です。

互助会積立金50万円、互助会積立金充当前の葬儀費用総額150万円とすると、互助会積立金50万円は被相続人固有の相続財産となり、控除できる葬儀費用は150万円となります。結果的には、控除できる葬儀費用は互助会積立金充当後の100万円となります。

1と同様、互助会積立金50万円、互助会積立金充当前の葬儀費用総額150万円とすると、互助会積立金50万円は相続人固有の財産ですので、被相続人の相続財産に含める必要はなく、控除できる葬儀費用は150万円となります。

金融機関が被相続人の死亡の事実を把握した場合、預貯金が凍結されますので、遺産分割を行うまでは原則として預貯金を引き出すことができません。ただし、相続人としては葬儀費用としてまとまった金額を支払う必要があり、相続財産である預貯金から葬儀費用を支払いたいというニーズがありました。そこで、こうしたニーズに応じるために遺産分割前の預貯金の払戻し制度(令和元7月1日施行の改正民法909条の2)ができました。具体的に、各相続人が単独で払い戻しができる金額は、金融機関ごとに以下①②のうちいずれが小さい方の金額までとなります。

<単独で払い戻しができる金額の計算式>
①相続開始時の預金額(口座基準)×1/3×払い戻しを行う相続人の法定相続分
②150万円

なお、本制度を利用する際に必要な書類としては、金融機関ごとに異なる場合がありますが、基本的には以下の資料を準備する必要があります。

  • 被相続人の除籍謄本、戸籍謄本または全部事項証明書(出生から死亡までの連続したもの)
  • 相続人全員の戸籍謄本または全部事項証明書
  • 預金の払戻しを希望する相続人の印鑑証明書

葬儀のプランにもよりますが、葬儀費用として各種様々な支出が生じ、相続財産から控除できるものとできないものの区分が繁雑となります。また、遺産分割前の預貯金の払戻し制度を利用した場合、預貯金の払戻しをした相続人が払戻額を遺産の一部分割により取得したものみなされますので、その後の遺産分割や相続税申告にも影響を及ぼします。葬儀費用として各種様々な支出が混在している場合や葬儀費用に充てるため遺産分割前の預貯金の払戻し制度を利用した場合などは、相続税申告の難易度が高まりますので、できるだけ早めに税理士に依頼した方がよいでしょう。

(この記事は2021年1月1日現在の情報に基づきます)

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