目次

  1. 1. 放っておくと近隣とのトラブルに?
  2. 2. 共有状態の解決策は?
  3. 3. 早期解決に役立つ代償分割
  4. 4. 共有者が所在不明の場合・・・

2010年以降、人口減少と高齢社会が進展しており、今後、相続が増加することは容易に想像できます。それとともに、空き家や管理不全土地の問題が大きくなるのを国は見過ごせません。今後、所有者不明土地の問題を解消しようとする流れは止まらないでしょう。

さて、今回は近隣の土地に複数の共有者がいたり、所在が分からなかったりりすることで生じる迷惑と課題について説明していきます。

近隣の土地や住宅が十分に管理されていないと、その周辺の住民が人命や健康、生活環境などで被害を受ける可能性があります。

例えば、老朽化や自然災害による倒壊といった危険性があります。また、犯罪や火災(放火など)を招く懸念もあるでしょう。土地や住宅を放っておくと、木の枝が隣家に伸びたり、雑草が生い茂ったりすることもあります。ごみの不法投棄や病害虫の発生を招くかもしれません。

私道や埋設物などの権利関係のもめ事を話し合おうと思った時、所有者が分からないと、もちろんできません。また共有されている土地だと、話し合うことができたとしても、共有者間で合意できないと、そのまま放置せざるを得なくなります。

そのような不動産が増えてしまうと、地域に悪影響を及ぼしてしまいます。

売却や境界画定、私道の承諾や苦情への対応は、資産価値自体に大きく影響するので、法的にも「変更」行為とみなされ、共有者全員の同意が必要になります。

前回のコラムでもお伝えした通り、共有物を利用するためには、究極的には共有者の全員を探して交渉する必要があります。ですから、現行の民法では、共有者の1人が反対したり行方知らずだったりすると、全員の同意を取ることができず、土地の利用や処分は難しくなります。

そうなる前に、その対処法について明確にしておかないとマズイということになります。

現在のところ、共有物の通常の管理について、基本的なルール変更はないようです。

ただ、本年4月に改正土地基本法が施行されました。今後、不動産の管理関連のルールについて変更される可能性が高いでしょう。

その一つの方法は、不動産の共有者が他の共有者に対し、決められた期間内に共有物の管理に関する行為に同意するかどうかを回答するよう督促でき、回答がないときは、他の共有者全員の同意で変更できるような変更です。

また、他の共有者が誰か分からなかったり、所在が分からなかったりする場合は、一定の期間を定めて、所在が分からなくなっている共有者に対して同意するかどうかを回答すべき公告をすることができるようになりそうです。

そして、その不動産を売却するなど変更・処分する場合に、前述の督促や公告がされた場合、一定期間内に所在が分からなくなっている共有者から回答がないときは、催促や公告をした共有者が、所在の分かっている共有者全員からの同意を得て、その変更又は処分をすることができるようになります。

今でも、共有の分割について、協議がととのわない時や協議できない時は、共有者はその分割を裁判所に請求することができます(民法258条)。

ただ、この内容に少々、変更が加えられそうです。

現在、裁判所が共有物の分割方法を判断する際、①現物を実際に分割する ②共有物を一人または複数の共有者に取得させて、その人から他の共有者に対して持分の価格を賠償させる代償分割 ③共有物を競売して、現金に換えてから分ける、の三つがあります。

その際、裁判所が、共有物を一人又は複数の共有者に取得させることが相当と考え、取得に関して共有している者の間で公平を害す恐れがない時には、代償分割で分割を命じることを原則にする形で検討が進んでいます。なぜなら、早期の解決に好都合だからです。

そうすると、共有物を取得したい人は相当額の現金を用意する必要があります。例えば、相続時であれば、遺産を引き継がせた人を死亡保険金の受取人として指定し、その保険金を代償分割の原資に使えば、スムーズに遺産分割を終えることができます。

共有者が所在不明の場合には二つの案が出ています。

一つ目は、共有者の間で時価相当額を決められる案です。

所在が分からない共有者のいるケースで考えます。その所在が分からない共有者の持分について、他の共有者が欲しいと思ったとしましょう。その場合、所在のわからない共有者の持分の時価相当の金額を供託して、以下のことを請求できます。

・ 所在が分からない共有者の持分を、請求した共有者が取得すること
・ 所在の分からない共有者以外の共有者全員から同意を得て、その不動産の所有権を第三者に売却等変更行為をすることができる権限を得ること

ただ、この案は、所在の分からなかった共有者が、後日現れた時、「持分時価相当額」を巡って争いになる可能性が高いと感じています。

二つ目の案が、裁判所が介在する形です。後日、争いが起きる心配がありません。

不動産が数人の共有になっている場合で、そのうち、共有者の所在がわからないときは、その共有持分が欲しい共有者が、裁判所に請求することができます。そして、裁判所が、所在のわからない共有者の持分の時価として相当と認められる金額を決め、供託させて、以下の処分を命じることができます。

・ 所在不明共有者の持分を所在不明である共有者に取得させること
・ 所在のわからない共有者以外の全員同意を得て、その不動産の所有権を第三者に売却することができる権限を請求した共有者が得ること

遺産分割については、「期間制限(10年)を過ぎても遺産分割をしない場合は、法定相続分で遺産分割をしたものとみなされる」ことも検討されていますが、その後の共有権の分割については、この共有を解消するルールに従うことになるはずです。
いずれにしろ、今後、共有権の解消も容易にできるようになることが予想されるので、時間のある今のうちに検討を重ねておきましょう。

(記事は2020年5月1日現在の情報に基づきます)

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