遺言書を作成してもらう方法をアドバイス 一歩ずつの前進が大事
遺言書に悩むのは、作成する人だけではありません。「相続でもめないよう、親に書いて欲しい・・・」と思いながら、二の足を踏む人もいます。さまざまな人から相談を受ける立場から、行政書士がアドバイスします。
遺言書に悩むのは、作成する人だけではありません。「相続でもめないよう、親に書いて欲しい・・・」と思いながら、二の足を踏む人もいます。さまざまな人から相談を受ける立場から、行政書士がアドバイスします。
目次
「相続会議」の弁護士検索サービスで
「どうしたら親に遺言書を書いてもらえるでしょうか?」
「どうしたら旦那に遺言書を書いてもらえるでしょうか?」
行政書士として仕事をしていると、こういった質問を受けることが多いです。
近年、遺言書を作成したほうがいいというイメージが広がっています。しかし「親が遺言書を書いてくれない」などという悩みは、依然としてなくなりません。どうしてなのでしょう?
これまで相談を受けてきた経験から、親や夫が遺言書を書かない背景には、次のような考え方があるように思います。
「うちは財産が少ないから大丈夫」
「子どもたちは仲がいいから大丈夫]
でも、本当にそうなんでしょうか?
財産が少なくても、もめるケースはあります。私が聞いた事例では、母親が亡くなり、預貯金80万円の分け方で4人の子どもがもめていると聞いたことがあります。
また、きょうだい同士の仲が良いように見えても、実際は親に心配をかけたくないから、親の前では不満を我慢しているケースもよくあります。この場合、両親が亡くなってから、きょうだい同士が不満を吐き出すことになります。そこで、もめてしまうのです。
ですから、遺言書は、早めに準備した方が良いと思います。たとえ、家族の仲が良く、「もめないだろう」と思っていても、遺言書があればスムーズに相続手続きができますし、戸籍謄本などの必要書類も少なくて済むなど、利点が多いからです。
親や配偶者が亡くなったことを考え、相続を心配している人も多いと思います。ですが、あまり強く「遺言書を書いて!」と言ってしまうと、逆に相手の気持ちが後ろ向きになったり、「縁起でもない」と怒られたりすることがあるかもしれません。
背中を押す際には「遺言書を書いてほしいな」と優しく言えば問題ありません。しかし、「遺言書を書いてくれないと、介護しない!」などと強い口調になると、民法に基づいて「強迫による相続欠格」とされ、相続人の資格を失いかねません。そうなると、財産を相続できない可能性も出てきます。
やはり、一番理想的なのは、ご家族の皆様が、円満に気持ちよく遺言書を完成させる形です。
全国47都道府県対応
相続の相談が出来る弁護士を探すでは、遺言書を作ろうとしない親や配偶者に作ってもらうには、どうしたらいいのでしょう。
私の場合、遺言書セミナーに一緒に参加してもらえるようお願いすることをお勧めしています。遺言書セミナーは、最近、全国各地でやっています。
もしも、「遺言」という言葉に抵抗感があるようでしたら、「エンディングノートセミナー」に誘ってみるのは、いかがでしょう。エンディングノートには、遺言書のように法的な効力はないものの、心理的なハードルが低く、その分、気楽に参加してくれるかもしれません。遺言書を意識する初めの一歩としては、それでも良いと思います。
もし、一緒に参加してくれたら、次の一歩が大事です。
あまり日数がたたないうちに、セミナーの話題について話し合ってみるのです。セミナーに参加してみて、親や配偶者の考えが変化すれば、遺言書の作成にさらに一歩近づきます。
「遺言書がないと、うちの相続手続きは大変だ」「遺言書がないと、子どもたちが財産の分け方を話し合うのは難しいだろう」と気持ちが変わるかもしれません。
それでも、うまくいかないことも予想できます。そういう相談を受けると、私は遺言書の説明をしています。あくまで「説得」ではなく「説明」です。基本的な遺言書の作り方に加え、遺言書がある時とない時の相続手続きなどについて話します。遺言書があると、後々、役に立つことを冷静に説明すると、理解してくれる人も中にはいます。
遺言書を書くのも書かないのも、遺言者には理由があります。誰も強要はできません。「遺言書を書いてもらいたい」というお気持ちは、よくわかります。しかし、遺言書の主人公は遺言を書くご本人。だから、ご本人の気持ちを大切にしながら家族で話し合い、一緒に作成に向かって進んでいけるといいでしょう。
どうしても難しい、と感じたら専門家に相談してみてください。同じようなケースでうまくいった事例を知っていてアドバイスしてくれるかもしれません。
(記事は2020年2月1日時点の情報に基づいています)